生肉をほおばり、口から血を滴らせる男がいる。
彼は「やっぱり肉は血の滴る生肉に限る」とニヤリとした。
サバイバル登山家・服部文祥ばりのワイルドさのこの男は、もちろん我が息子りんたろくんだ。
実はこれは血ではなく、誕生日ケーキについていた食紅を使った「カーズ」のチョコを食べて、このような凄惨な雰囲気の写真となった。
そう、彼はこの度めでたく3歳の誕生日を迎えたのだ。
気づいてみれば、君が生まれてもう3年の月日が流れたんだね。
相変わらず手のかかる男で、まだ夜泣きはするし、落ち着きはないし、言う事も全く聞かない困った野郎だ。
でも、ここ最近お父さんは君の事が好きで好きでたまらないんです。
この「まだ火をつけている所なのに、早く火を消したくて我慢できない」という感じが僕そっくりだ。
そしてこの写真のように、僕も嫁に何度「待て」とやられたことか。
目の前の面白そうな事に対してジッと出来ない息子に、すぐ山や川に行ってしまう僕の血を感じてならない。
そんな所も愛くるしい。
多分父親って奴は母親に比べて子どもへの愛情の構築スピードが圧倒的に遅いと思う。
女性は子供が生まれた瞬間に「お母さん」に変身し、その時点から母子間には絶対的な親子関係が築かれる。
(ウチの場合はお母さん誕生と同時に「ドS嫁」も誕生し、夫婦間に絶対的な主従関係が築かれた)
一方で男親は赤ちゃんの頃はなす術もなく、おっぱいをあげられないジレンマを抱えながらの必死の育児。
真剣に育児に向きあえば向きあうほど無力な自分を責め、正直必死すぎて「愛情」とか考える暇もなかった。
ほんと、ノイローゼになるほど辛く大変な日々だった。
でも2歳を過ぎて共に遊べる時間が増えていくほどに、やっと父親と子どもとの間に友情とも違う不思議な絆ができるんだね。
半ば強引にお父さんに担がれて、沢山の山を一緒に登ったからな。
今はもうお父さんにも、母子間にも負けない強い君への愛情が芽生えているよ。
それでは3歳の記念に、君が2歳児だったこの1年を振り返ってみるかね。
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思えばりんたろくんのこの1年も濃い1年だった。
2歳の誕生日目前に、いきなりお父さんに「池田山」に強制連行されたのが始まりだった。
今思えば、この頃から明らかに表情が楽しんでいない。
しかしこの日を境に、彼の2歳児アルピニストの日々が始まった。
「伊吹山」に登った頃は、まだベビーキャリアも購入前だからお互いに大変だったね。
これ、腰で支えられないから全体重がモロにお父さんの肩に食い込んだんだよ。
でもこの後、モンベルでベビーキャリアを買ってからお父さんの暴走が始まるんだよね。
「金華山」ではりんたろくんは神々しく昇天していたね。
これ以降、何度もこの金華山でお父さんのアホな挑戦(DSY大実験や連登実験やタイムアタックなど)に無理矢理付き合ってもらったね。
ほんと、ごめんね。
「妙法ヶ岳」では、お父さんがヒルまみれで大流血なんて凄惨な一コマもあったね。
君は死んだように寝てたけどさ。
これ以降、この「ぐにゃり寝」が君の代名詞となったね。
首、大丈夫なのか?
「国見岳」ではスタートから下山まで全て寝通した事もあったね。
君の記憶の中にこの山は存在しないんだろうな。
「瓢ヶ岳」では悪夢のような笹の海を一緒に泳いだね。
この時の恐怖はお父さん、しっかり記憶してるけど君はどうかな?
ていうか寝てるから知らないか。
でも残念ながらもう二度とこの山には登らないよ。
「百々ヶ峰」では一緒に猛暑の中で階段地獄を楽しんだね。
このとき君は、お父さんの「アクロバティック放尿」で命を救われた事を忘れるなよ。
危うく君は救急車と消防車にひかれそうになったからな。
「笹尾山」の時は関ヶ原ウォーランドで恐ろしい人形共に囲まれてずっと君は怯えてたね。
この日の君の夜泣きは凄かったよ。
妙なトラウマが残ってなければ良いけどね。
そして忘れもしない「乗鞍岳」。
ついにエスカレートして、2歳児を3000mの山に登らせようとして大惨事に見舞われたね。
お父さんは今でも反省しているよ。
3026mの登頂手前50mでの無念の撤退。
君の唇は低体温性で紫色と化し、お父さんは膝を激しく打撲してあわや救助要請なんて一コマもあったね。
今でも「乗鞍パープルリップの悲劇」として語りぐさだが、この頃から君が「山、嫌い」と言い出すようになった気もします。
やはり2歳児に3000mはまだ早かったようだね。
で、標高の低い「鍋倉山」では何も展望できない山頂を楽しんだね。
君のアンパンマンのマーチのリクエストでお父さんは死にそうになった事を覚えているよ。
君の中にウッスラと嫁のサドの血が流れている事を感じた登山だったね。
「入道ヶ岳」ではお父さんは二日連続10キロランの翌日登山で死んでいたね。
でもここの山頂は気持ちのいい開けた場所だったから、やっと君も楽しんでくれた気がするよ。
で、調子に乗って登った「三上山」ではこんな事になったね。
2歳児と登る山ではなかった気もするよ。
そして親子揃ってウンコ漏らしたね。
今では懐かしい思い出だね。
「春日井三山」では2歳児にして雪山デビューも果たしたな。
頂上で「帰る。もう帰る。」と言ってお父さんを困らせたね。
まあ、無理もないくらい寒風が吹きすさんでいたからな。
悪い事をしたよ。
そしてカヌーデビューとなった近江八幡水郷巡りでは、満面の笑みで楽しんでいたね。
このあたりはお母さん似なのかな?
まあ、そんなこんなでここには書ききれないほど他にも色々な所に行って遊んだね。
2歳児にしては随分アクティブな人生を送っているように思うよ。
そんな君もついに3歳になった。
3歳と言えばもう立派な大人だ。
今まで以上にお父さんとハードな遊びを楽しもうじゃないか。
もうベビーキャリアも使用限界の3歳だから、これからは自分の足で歩くんだぞ。
今年もいっぱいいっぱいお父さんと遊ぼう。
そして「いっぱいいっぱい」を楽しもう。
今年もよろしく頼むぜ、りんたろくん。
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誕生日会のあとに、本家に誕生したばかりの赤ちゃんを見に行った。
りんたろくんも、来年の1月にはお兄ちゃんになるのだよ。
弟なのか妹なのかはまだ分からないけど、ちゃんと面倒見るんだぞ。
あと、お母さんに見捨てられたお父さんの面倒もちゃんと見るんだぞ。
頼むよ、ほんと。
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MATATABI BASE
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