とある実験を試みてみた。
何気なく嫁に「山登ってみる?」と聞いたら以下の条件を提示された。
・早朝出発はイヤだ
・10分くらいで登れる山がいい
・きれいなトイレがある
・つらくなったら即下山
・山頂にレストランがある
正直うんざりするような条件だ。
しかし、今後の為にも少しでもこの嫁にアウトドアの楽しさを知らしめたい。
以前一度だけカヌーに乗せたことがあるが、ひとつも彼女は楽しんでいなかった事がある。
その時は嫁はマグロかと思うほどの無感情だった。
しかし登山なら、昨今女性でも気軽にやれる事なので、ウマくすればはまってくれるかもしれない。
そうなれば、僕も遊びに行きやすくなる。
僕にとっても重要なプレゼンとなるのだ。
上記条件を満たす山なぞは存在しないが、10分は無理でも50分で登れる「金華山」をチョイス。
下山がしんどければロープウェイで降りて来れるし、山頂にレストランもある。
今回の実験のテーマは「果たしてドSの嫁は、登山というマゾの世界で楽しめるのか?」だ。
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結局うだうだと準備するもんだから、金華山の麓の駐車場に着いた時にはもう12時を過ぎていた。
こんな時間から登り出すなんて、僕としてはあまり気分は良くないが仕方ない。
駐車場から歩いて登山口に向かっていると、「もうしんどい」とか言い出す始末。
おまけに僕がこの何もない道で、いつものように左足をグネると「何やっとんじゃ、このハゲ野郎」とか言ってくる。こういう時はすごく楽しそうな顔をする。
きれいなトイレがあったので、登山前にトイレ済ましときなって言ったら、
「イヤだ、きたない」とか言い放つ。
信じられない。とてもキレイなのに。
僕が昨日花房山で遭遇したトイレはこれだぞ。↓
これを思えば、極上のトイレのはずなのにインドア派の嫁には伝わらないのか。
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そしていよいよ登山口から登り出す。
瞑想の小径という名のファミリーハイクとして難易度の低いルートだ。
嫁のテンションはとても低い。
嫌々感がはっきりと表情に出ている。
出発後間もなく、りんたろくんは早くも寝てしまった。
最近お気に入りの「ベニキノコビト」を握りしめている。
まるで僕の肩に小人がいるみたいになっていて、とても邪魔だがしかたない。
この小人、拡大するとこんな感じ。
ちょっと僕に似ているのだ。
嫁に罵倒されて「えぇ〜」ってなってる時、ちょうどこのような表情になる。
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とても歩きやすくて感じのいい登山道だが、嫁にとっては何も楽しくないのだろう。
その背中からもやる気のなさがビンビン伝わってくるではないか。
「お腹が痛い」「腹が減った」「蚊が多い」などの細かい愚痴を吐き続けながらもなんとか登って行く。
やがて景色のいい所に出た。
通常「わー、すごい」等の感嘆形の言葉が出る所だが、彼女は無言だ。
まるで表情もない。感情が読み取れない。
感動していない事だけは確かだ。
まずい。だんだん不機嫌になって来てるじゃないか。
風も強くなってきて、登山道も思いのほかキツくなって来た。
まずいな。ファミリーコースで楽々だと言って連れて来たのに結構ハードじゃないか。
明らかに機嫌が悪くなって来た嫁はどんどん無口になって行った。
やはりドSの人には登山は向いていないようだ。
すっかり彼女は座り込んでしまった。
目の前の展望スペースでは、若いカップルがいちゃついている。
僕はうらやましく彼らを目を細めて眺めた。
我々夫婦にはあのような体験は出来ないようだ。
僕は心の中で彼氏君に語りかける。
「そこの君。君の横にいる女は将来出産を期にドS嫁に変身するかもしれない。今を楽しめ。噛み締めよ。」と。
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完全に嫁は戦意を喪失してしまっていたが、もはや引き返すよりも登りきった方が早い。
彼女は渋々登山を続ける。
このままでは嫁は完全にアウトドアが嫌いになってしまう。
一発笑ってもらおうと、僕はこじゃれたジョークをかましてみた。
「足下に気をつけて。君はついつい僕に見とれてしまいがちがだからね。あんまり見てると落ちちゃうよ。恋ってやつにね。」
僕はただ笑ってほしかっただけだった。
嫁はすごい形相で僕を見たあと「死ね、豚野郎」と虫の息で言って来た。
いつもの勢いがない。相当打ちのめされているようだ。
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かろうじて山頂の岐阜城へ到着した。
記念撮影しようよって言ったら、はっきりと断られてしまった。
恐る恐る「達成感はどうでしょうか?」と聞くと、驚くほどの無表情で「ない」と言われてしまった。
「また山に来たいとかっておも・・・」「ない」即答だ。
コミュニケーションにならない。
山頂レストランで食事をした後、意思の確認をするまでもなく我々はロープウェイに向かっていた。
この時の僕の表情は、今りんたろくんの握りしめている「ベニキノコビト」と同じ顔になっていた。
もうこの家族三人で山に登る事はないのだろう。
こうして秋の大実験「ドS嫁は登山というマゾの世界で楽しめるのか?」というテーマの答えが導き出された。
答えは「楽しめない」だ。
そして夫婦は軽く喧嘩する事になると補足しておこう。
今後も僕は孤独に旅する単独行野郎で生きて行く。
そう誓った秋の一日だった。
秋の大実験〜DSY登山記〜
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MATATABI BASE
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毎度お世話になります。鯉です。
もう見ていられませんでした…
私事になりますがお盆休みに念願のファミキャンに行きましてその時の自分とかぶってしまいもう目から出る汗が止まりませんでした。
私もそれはそれは綿密な計画を立て豪勢なキャンプ料理と花火と水遊びと子供達が寝静まった後の妻との焚き火&大人の時間を計画して行ったのですが、まあいつもの流れですっかり嫁との時間は取れずに(無言でテントに消えていき朝起きたら嫁と子供は車で車中泊していました)独りでスキットルを咥えながら流れ星を見て過ごしました。
流れたのは星であって涙でないと信じていますが真偽の程は定かではありません。
その後山がダメなら海だと思い立ち盆休みの最終日に「海に行こう!シーカヤックで優雅な海上散歩しましょうよ!」と誘ってみるも嫁と子供から「海はサメがおるから行かん」との非常な一言で私の盆休みは車庫に格納してあるカヤックのラダーに油をさすという地味なものになりましたww
色々愚痴ってしまいましたがこれからも諦めずに鋼鉄の嫁の潔癖の扉をこじ開けるためになんとか頑張っていきます!
たぶん無理だと思うんですけどね….
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どうもです。また随分と古い記事を見つけましたね。
今見ると山に嫁がいるってだけでUMA並みの貴重映像を見ている気分です。
僕はもうファミキャンという名の地獄絵図はもうごめんなので諦めました。
今は仕事で平日に山とか川に行けるようになったんで、ある意味週末はおとなしく家族と「施設的」なところに行ってご機嫌をとれております。
鯉さんもまた随分苦労というか、勝ち目のない戦に邁進しているようで戦友感を感じますよ。
こういうのはほんと価値観が合うもの同士じゃないと成り立たないし、子供は圧倒的にお母さんよりなんでこっちは完全に「変なことやらせる人」になるのが辛いところです。
ちなみにうちも「海はクラゲがおるからいかん」であります。
とりあえずあまりその難攻不落に城に挑み続けると僕のように白髪だらけになりますんで、ほどほどラインで己の自由な道を開拓してくださいませ。
諦めたらそこで試合終了です!
まあ僕はもう試合終了してますけど。