僕は1週間後の9月16日(金)深夜からの富士山登山にむけて、万全の準備を進めていた。
今までやって来た富士登山順応シリーズも、1ヶ月半10山登頂もこの時に照準を絞ってやって来たと言える。
そんな激しいトレーニングが続き、富士登山1週間前の9月9日(金)の時点で疲労はピークに達していた。
あとは週末の9月10日(土)に、乗鞍で高度順応と荷物の最終テストを兼ねた登山に行ってすべてのトレーニングが終わる。
そして1週間バッチリ体を休めて、かつて無い程のベストコンディションで富士登山の本番を迎えるのだ。
9月9日(金)6:00、目を覚まし、いつも通りの日常の朝が来た。
普段通りに僕は会社に向けて出勤していった。
その時彼はまだ知らない。
ジャックバウワー顔負けのマゾドラマ「42」が始まっていた事を。
彼の長い長い42時間のドラマが幕を空けた瞬間だった。
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昼休み明けの第7話までは、いつも通りの日常ホームドラマ。
習慣になっている昼休みのウォーキングから戻ると、携帯に1通のメールが。
来週富士山の頂上で合流予定のB旦那さんからだ。
「とうとうキタね。今日は何時頃取りつき予定かな?」
「とうとうキタね」って1週間前から随分やる気満々だなと思ったが、その後の文章が僕を凍り付けた。
今日?
きっとB旦那さんは打ち間違えたに違いない。
電話して確認してみると、なんと僕が富士山登山日を1週間勘違いしていた事が発覚。
来週じゃなくて今日の夜からだったのだ。
背筋に電流が走り、軽いパニック状態に陥りつつも平静を装って「もちろん行きますよ」と言って電話を切った。
なんてことだ。
とにかく急いで岐阜の家に帰って、荷物をまとめて富士山に向かわなければならなくなった。
突如破壊された日常。
唐突にスタートした「9月富士山弾丸日帰りご来光登山」。
ドラマは7話目にしてホームドラマからサバイバルドラマへと急激な展開を見せる。
しかも体調は最悪。
12kgザック深夜の徘徊トレーニングで足首と腰を激しく痛めている。
さらにボルダリングジムの後遺症で、まだ腕が筋肉破壊から回復していない。指の皮もケロイド状態をキープしている。
おまけにさっきの昼休みでウォーキングをして、余分な体力を消費している。
減量ピーク時に突然リングに上げられたボクサーの気分だ。試合になるのか?
なにやらアラスカの時の「橋崩落、24時間耐久アラスカ大迂回」の惨事を思い出させる。(アラスカ珍道中参照)
僕は即座に今日中にやらなければならない仕事を、ブラックジャックの手術のような猛烈なスピードで終わらせていく。
そして会社の上司に告げる。
「急遽、今から富士山に登らねばならなくなったので帰ります。」
大企業なら一発でリストラ候補ランキングNo.1に躍り出る発言だ。
上司も目を丸くしている。言ってる僕も軽いパニック状態。もうどうなってもいい。
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逃げるように会社を飛び出し、僕は名古屋から岐阜の家に向かって最速で車を走らす。
突然真っ青な顔で、平日の昼間に帰って来た僕を見て驚くお義母さん。
僕は一心不乱に荷物をまとめる。
慌てすぎて、テレビ台で人差し指を激しく痛打し、爪の間から流血。
まだ、登山もしていないのに早くも負傷してしまった。
「落ち着け。落ち着け。まだ富士山-5000合目だぞ。」と己をなだめるが気持ちばかりが焦ってしまう。
パニックは収まらず、浅くなっていく呼吸。まだ家なのに、もう高山病の症状が出て来た。
戦いは始まっているんだ。さすが富士山、ハードな山登りだ。
急いでシャワーを浴び、荷物をバタバタと車に運び入れる。
そんな殺気立った僕を見て、我家の犬が僕に向かって吠えまくる。
あまりに吠えるので、お昼寝中だったりんたろくんが目を覚まし激しく泣き出す。
あわててなだめに入るお義母さん。
先ほどまでの平和な我家の日常が、あっという間に大混乱。
またも僕は逃げるように車を富士山に向けて走らせた。
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ほぼ休憩無しで走らせた5時間のロングドライブ。
ふらふらになりつつも、富士スカイライン手前の最後のコンビニに寄る。
行動食のアンパンを買わなければならない。
そのコンビニではまさかの光景。パンがひとつも売っていないじゃないか。
パンの陳列棚に何も無い状態というのを始めて見た。
結局アンパンだけの為に道を戻って別のコンビニへ。
クリームパンしか売っていないじゃない。
実に細かいボディブローが弱った体に突き刺さっていく。
結局不本意だがクリームパンを買って、一路富士スカイラインへ向けて車は富士の樹海へ吸い込まれていった。
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僕の車1台だけで走る富士の樹海は半端なく怖いものがあった。
徐々に霧に包まれ、暗く寒々しい光景が目の前に広がる。
想像力豊かな僕はバックミラーを見る事も出来ない。
途中樹海脇の測道に1台の白いバンが。いろんな想像が浮かんでしまう。
思いとどまっていてほしいのものだ。
やがて富士宮口登山道へ続く道へ出た。
さらに車を走らせていくと、標高2400mの富士宮口富士山5合目の駐車場に出た。
この時点で夜の10時頃。朝起きてから16時間。
ドラマは16話目にしてやっとスタート地点にたどり着いた。
「やった、ついた。まにあったぞ。」
へろへろの状態で車を停めエンジンを切る。
かつてないほどの達成感と疲労感。もう登らなくてもいいんじゃないだろうか。
しかしここまで来てそんな事は言ってられない。
僕は車から降りて準備を始める。
寒い。とても寒いじゃないか。
当たり前だ。半袖Tシャツ、短パン、サンダルですっ飛んで来たんだ。
準備をしていると、友人から電話がかかって来た。
「なんか占いによるとね、今日は登山大凶らいしいよ。」
彼はそれを告げると満足げに電話を切った。
不安で一杯の僕に対してなんて男だ。
実はここに来て急激に緊張が始まった。
あまりの突然すぎるこのチャレンジに、明らかに心の準備が追いついていない。
減量+12ラウンドほど戦ったボクサーが、これから日本チャンピオン「富士山」に挑むのだ。
初の富士山、初の領域3,776m、初の夜間登山。
これから童貞を失う男と同類の「期待」「不安」「緊張」「恐怖」が僕を支配する。
しかも相手は百戦錬磨の富士子ちゃん。中二男子なら逃げ出す状況だ。
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さらに黙々と準備をしていると、今回の登山隊の一人で以前共に富士川を下ったジャバザハットS君が僕を発見して声をかけて来た。
一緒にトイレに行ったが、帰りの10段ほどの登り階段を登る二人の息は切れていた。
なんと言ってもここは2400m。早速不安が募る。S君も顔が青くなっている。
一旦S君と別れ、準備を済ませ車内で横になる。
1分1秒でも体を休ませなければならない。
しかし富士子ちゃんのシャワー待ち状態の僕は、緊張と不安で全く寝付けない。
次第に心臓の鼓動が激しくなって来た。
これは早くも高山病の気配なのだろうか。もう逝ってしまいそうだ。
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そうこうして休めないまま車内にいると、今回の登山メンバーが集結して来た。
頂上で集合の予定だったが、やはり9月富士山は人が少ないので容易にお互いが見つかる。
お互いに自己紹介を済ませ記念撮影。
普段は僕一人だから、これだけ仲間がいると笑顔も飛び出すが目は疲労充血で赤くなっている。
メンバーは僕を誘ってくれた富士川・長良川でお馴染みのBさん(以下:B旦那)。
富士川で一緒だったジャバザハットS君(以下:ジャバS)、バター大好きNちゃん(以下:バターN)、自称女優のサディスティックEっちゃん(以下:女優E)。
そしてお初のメンバーが屋久島タオラーSさん(以下:タオラーS)、悪天候男東の横綱Kさん(以下:横綱K)、一見体格が柔道家かラグビー経験者かと思いきや実は元美術部のKさん(以下:元美のK)。
そして悪天候日本代表、なで肩ジャパン主将のマゾ野郎(以下:僕)を含めた8人だ。
合流したからと言って、みんなで一緒に登るわけではない。
僕の場合、いつも単独登山だから自分のペースが遅いのか早いのかも分からないので、迷惑をかけたくないので先行して行く事にした。
バターS君は僕より15分ばかり先行して「行ってきますわ」とコンビニにタバコを買いに行くような軽い感じでスタートして行った。
続いてPM11:15にいよいよ僕も登山口に向かう。
ついに(というか唐突に)始まった9月の富士山登山。
いつも悪天候を運ぶ旅の神も、今日のめまぐるしい展開にさすがに追いついて来れてないのか、天気は珍しくとてもよろしい。
空には星があふれ、満月が足もとを明るく照らす。
体調以外はベストコンディション。
さあ、登ってやるぞ、富士子ちゃん。
日本一のサド山は僕にどんな経験をさせてくれるだろうか?
〜富士6苦フェス2へつづく〜
富士6苦フェス1〜マゾストーリーは突然に〜
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ども!B旦那です。
土曜日はお疲れでした。
金曜出だしはやはり、イロイロあったんだね。
ネタに事欠かないなぁ。
2話目以降が楽しみです。
ちなみに、ボクは本日仕事が超絶なことになってしまい、大ピンチw
ここにきて富士のツケが回ってきたようだ。。。
あぁ、明日仕事に行きたくない。
現実逃避したい気分で。
つか、今週末でアレだけど、もし暇なら日本が誇る急流で流れましょw
予定が合えば。
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どうもです!
実は僕もかなり忙しくなってしまいました。
金曜日の早退が響いてるようです。
中々記事書けないんで、2話目以降気長に待ってて下さいね。
当日の写真も落ち着いたら送りますんで。
今週末はさすがにちょっと言い出しにくいもんがあって、まだ未定ですがちょいと厳しいかもしれません。
腰も整体に通って、必死でリペア中です。