◉ りんころ成長記

運動会への旅路 後編〜ノリノリ少年の奮闘〜

今回も前回に引き続き、りんたろくんの運動会への道。

極めてファミリー的で平和な内容なのでおヒマな人だけどうぞ。

マゾ観覧希望の読者の方は、最後の方だけ読んでください。


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涙に暮れた土曜日。

子は運動会を失い、親はフィルムフェス、握力、父親威厳、そして1万円を失った。


その翌日、日曜日。

運動会の順延開催日。

もちろんこの日も、前日を遥かにしのぐ大雨だ。


これにより完全に運動会はアウトかと思いきや、何とさらに平日の月曜日に順延というではないか。

正直月曜日は週で一番忙しいから、会社を休むのは気が引ける。

でも台風も来てるし、予報も雨だから恐らく月曜もダメだろう。

まあ気の毒だが晴れてもらってもお父さん困っちゃうよ。


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月曜日。

予報を大きく裏切る、信じられない「大快晴」がやって来た。

望んでいない時は大概こんなもんだ。


僕は嫁に「さすがに今日会社休むのは厳しいなあ」と言えば、嫁は「お前がやると言ったから親子競技にエントリーしている。代わりに私がやるなんて絶対嫌だからね。ちゃんと責任を取れ。」なーんて言うじゃない。

渋々僕は午前中だけ会社に休む事を申告し、そのまま場所取りに行かされる事に。


そして「絶対に一緒に連れて行ってね」と言われている、りんたろくんサポーターの「ガンQ」と二人で場所取りにいそしむ。

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こんだけ睨み効かせてれば、誰もこの場所を奪わんだろう。

でもこのキショいフィギュアと僕だけという光景が、周りにどう映ったかが気になる所。

親御会で話題にならなきゃいいけど。

しかもこのあと、ガンQが立ってるこの場所が見知らぬおばちゃんに取られちゃってたりするというまさか。



しかしやはりここに来てりんたろくんのテンションは非常に高い。

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やっと念願の運動会を迎える事に成功し、父親による妙な旅路に連れ回される事からも解放された男。

随分とここまで遠回りして来たが、やっとこの日を迎えられてよかったね。


やがて運動会が始まり、彼のテンション上昇は止まらない。

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勢い余って、何故か突然女性陣に向かって乳首を露出し始めた。

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彼の中で何かが弾けている事は間違いない。

僕がここで同じ事したら、恐らく瞬時に連行されてしまう事だろう。


そしてついに「ボク、1番になるからね」と言っていたかけっこ競争が始まった。

ここで彼のコーフンはマックスに。

スタート地点で妙な行動を取り始めているぞ。

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どうした?

お前の中で今何が起きているんだ?

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そしてこの時、無情にも「パーン」とスタートの合図。

見事に踊りに夢中で不意をつかれ、完全に出遅れた我が息子。

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見事に他の子に突き放され、約2馬身差でブッチギリのドベに。

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こうして彼の人生初のかけっこ大会は「最下位」という華々しい結果に。

しかしゴール後になぜか彼だけ競技場に戻ってその場に仁王立ちし、「どうだ」と言わんばかりの誇らしげなポーズ。

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慌てて止めに入る先生。

そしてそんな兄の勇姿を、信じられない程の冷めた表情で眺めるこーたろくん。

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この顔は、まさに屁をこいた時の僕に浴びせられる嫁の表情と瓜二つ。

頼むからそんな目でお兄ちゃんを見ないでやってくれ。

彼には彼の考えあっての行動なんだ。



そしてその後の障害物競走でも、

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見事にブッチギリの最下位を果たし、

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また競技場に戻って先生に止められている。

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どうにも落ち着きがなくて、行動におかしな所があるあたりお父さんっぽいぞ。

そして変な行動をした挙げ句結果が出せない所も。

まあ楽しけりゃいいんだから、結果なんてどうでもいいぞ。



やがて沢山練習したというダンスタイムへ。

エンジンのかかりが遅い彼は、ダンスが始まってもケツを掻きまくる余裕さを見せつける。

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そして切ない表情で、おもむろに股間をひたすら触り出す。

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これでエンジンがかかったか。

突然のハイテンションダンス。

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そしてダンスタイム終了後も、一人で踊り続けるという熱狂ぶり。

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やがてマイケル並みの「ポゥー」を炸裂させて大満足のりんたろくん。

結局彼は最後までみんなとは違う踊りを踊り通し、自分の世界を見事に表現する事に成功。

その魂の踊りは、「俺は周囲の色には染まらない」と雄弁に語っていたぞ。

その個性は大いに磨いて行って欲しい所だ。


そして先生たちのにんじゃりばんばんのダンスを、

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昭和の大映画監督のような佇まいで眺め、

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いよいよご満悦なりんたろくん。


そしてここで会社を半日休んでまで来た「責任」を果たすべく、お父さんが出陣。

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周囲のお父さんが普通の格好なのに対し、全力のランニングスタイルで本気を出す男の登場。

しかしそのやる気とは裏腹に、距離にしてわずか10mくらいのステージ。

明らかに己のオーバースペックな格好とやる気が空回り。

「やるからには絶対に一番になる」と宣言して参加したが、特に順位とか関係ない感じで終わってしまった。

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正直このままの状態で保育園を駆け抜けて、そのまま金華山でも登ってやろうかと思ってしまった程の不完全燃焼だ。

まあ冷静に考えてみれば、あくまで保育園の運動会なんだからこんなもんなんだろう。


そして「人が足りないから」と言う事で、結局全ての親子競技に参加する事に。

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途中でカードを引くと「ダッコして走る」という指令が。

もちろんここは南木曽岳で身に付けた、「連れ去り型ダッコ」にてぶっちぎってやった。

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我々親子の間での「ダッココンビネーション」は、そんじょそこらの親子には負けない。

今まで散々ダッコして山登って来たんだからな。

参考:南木曽岳の時の連れ去りスタイル↓

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そして3つ目の親子競技の、椅子取りゲームみたいに座布団を取り合うゲームに突入。

明らかに場違いに本気な男の「やる気に満ちた前傾姿勢」が非常に痛々しい。

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一方でりんたろくんの「どうでもいい感」も際立っている。


まるで噛み合ない親子の熱量。

結果的に一番この運動会を楽しんでいるのはお父さんじゃないのか?


当然息の合わない親子は2回戦敗退。

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なんとも「敗退」の二文字の似合う親子だ。

しかし勝負事なんてどうでも良い。

形は負けたとしても「楽しかった」と思えれば、何事も人生はコールド勝ちのようなものだ。

敗退マニアのお父さんはそう思うぞ。

そう思わないと、このDeNAベイスターズみたいな黒星だらけの人生には耐えきれないんだぜ。



最後は健闘を称えて、親からのメダルの授与です。

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周りはほとんどがお母さんからのメダル授与だったが、もちろん嫁はこのような表舞台には出てこない。

まるで我々だけ父子家庭のような状態で、どこか物悲しい。


なんにしても、色々あったがこれにて運動会は無事に終了。

土曜日にお父さんが色んなものを失ったおかげで、それが快晴代償になったようで良かった。

そしてこの後も、お父さんは地獄のような仕事量が待つ会社に向かって行ったよ。

晴れた日に運動会やるってことは中々大変なんだね。


これから毎年運動会の度に君の成長を感じるんだろうな。

そしてその度にお父さんは衰えて行くんだろうね。


君の成長とお父さんの老衰のポイントが重なったとき。

その時は二人で涸沢の紅葉でも見に行こうじゃないか。


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そしてこの日の夜。

何が嫁の気に障ったのか、突然僕に向かって「おい、ランバダ踊れ。」とか言ってくるじゃない。

このような理不尽なサディスト要求に突然見舞われるのが我が家の日常だ。


もちろん僕は、疲れた体にむち打って泣く泣く一人でランバダを踊る。

ひゃっひゃと喜ぶ嫁と、不思議そうにその光景を眺めるりんたろくん。


僕はランバダを踊りながら「ねえ、りんちゃん助けて。お父さん、このままじゃお母さんに遊ばれて殺されちゃうよ。岡崎に返されちゃうよ」と訴えてみた。

すると、やはりこの三日間で強まった親子の絆からか。

彼は嫁に向かって「僕の大事なお父さんをいじめないで!まだ岡崎に返さないで!」と言ってくれるではないか。

非常に嬉しくもあり、「まだ」返さないでって所が若干気になる所だ。


そんなりんたろくんに対し、嫁は笑顔で「りんちゃん、お父さんの口塞いでごらん。面白いよ。」と何とも残酷な指令。

結婚前の優しい彼女の姿は、海底2万マイルの闇の彼方に沈んで行ってしまったのだろうか?


しかしそれに対してもちろん反論するかと思ったりんたろくんは、なんと笑顔全開で「ひゃっひゃっひゃ」と言いながら僕の口を塞いできた。

さっきまで「僕の大事なお父さんをいじめないで!」と言っていた男とは思えない驚きの二面性。

そしてサディスティック母子の勢いは増し、嫁が「鼻も塞いでしまいな」とキルビルのヤッチマイナ風に言ったかと思えば、りんたろくんはその指示通り笑顔で父のライフホールを完全密閉。

そして男は息が出来ず、顔を青くしながら「やめろよぅ」と抵抗する。

どこかしら嬉しそうな笑みを浮かべながら。



こうして親子三人による、平和な夜の大SM運動会も無事に終了。

りんたろくんは「かけっこ」で1番になれなかったが、父と母はそれぞれ「さどっこ」と「まぞっこ」で1番になったようだね。

こういう夫婦の形もあるんだよ。

世の中って広いよね。



そんなとある家族の平和な秋の三日間でした。



運動会への旅路 〜完〜



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