魅惑の仙丈ヶ岳の翌日は、お義父さんの退職記念BBQだったのでさすがに大人しく肉食ってました。
ガラスの膝も治していかなければいけないから、しばらくは大人しくしておこう。
そう思っていた翌日の体育の日。
じっとしてようと思ってたのに、晴れてるじゃないか。
そしてハッと気がついた時には「鍋倉山(1050m)」の登山口に到着していた。
隣にはりんたろくんも一緒だ。
りんたろ登頂記もついに記念すべき10番目の山だ。
彼は乗鞍岳パープルリップ以来の登山だ。
僕自身も膝が痛いのは重々承知している。
来週末は天気悪いみたいだから、今行っとかないとっていう不思議な理由が我々親子を突き動かす。
いきなり、またよく分からない場所に連行されてしまったりんたろくん。
iPhoneのしまじろうを、電車待ちのサラリーマンのような険しい表情で眺めている。
ここからが鍋倉山の登山口だ。
この山は東海自然歩道を使って頂上までいけるので、膝を痛めている僕でも行けるだろうと判断した。
お気楽な里山登山だ。
入口に登山注意の看板があったので、読んでみる。
まるで文字が読めない。全部文字がはげている。
逆に恐怖感をあおる看板だ。
我々は何に対して注意すればいいのだろうか。
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しばらくは舗装路を歩いて行く。
古民家なんかもあって、中々いい里山の雰囲気だ。
しかし、分岐点の看板には「熊注意」の看板が。
いかにも後付け感タップリの新しめな表記が気になる。
さっきの看板といい不安を煽ってくるなあ。
いつものように登山者は我々しかいないようだ。
秋の三連休の登山日和だと言うのに、この寂しさと言ったらどうだ。
マニアックな山ながら、まあそれなりにのんびりとした雰囲気を味わえる。
登山道は東海自然歩道だけあって、実に歩きやすい道が続く。
この手の雰囲気だと、またヒルクライムになるかと心配だったがもう時期的に大丈夫みたいだね。
よほど登山者がいないのか、木のテーブルもジブリ映画のような苔むしっぷりだ。
まっくろくろすけ的な視点で我々を覗いてみる。
映画のタイトルは「となりのマゾヒスト」が妥当か。
その映画に夢はない。打ちのめされたままエンドロール突入の救いのない映画だ。
でもこういう所で親子水入らずも悪くない。
きっと心のどこかに焼き付いてくれる事だろう。
そしてそこにはお母さんはいないのだよ。
りんたろくんへの密かな洗脳作戦は続いて行く。お父さんとアウトドアしてるのは楽しいだろ?だろ?
気持ちのいい道は続いて行く。
道しるべもポイントポイントにあるから分かりやすい。
気持ちよくなってしまったのか、りんたろくんも登頂前に眠ってしまった。
相変わらず、首は大丈夫なんだろうか。
やがて尾根に出て、心地いい日差しと風を浴びながら頂上を目指す。
ただ、最後の30分ほどは結構な距離の登りが延々と続いている。
結構ぜぇぜぇ言いながら登って行く。
ここで目を覚ました背中のりんたろくんが、しきりに「アンパン、アンパン」と僕をせかす。
アンパンマンのマーチを歌えという事だ。
僕はキツい登りで息を切らしながらも、
「そ…だ…うれしっひっだ…フゥ…生ぃきる…よろこび…ハァ…」
富士山並に酸素濃度が薄くなって行く。
この登りで何度も何度も繰り返し歌わされるアンパンマンのマーチ。
今最もアンパンマンに助けてほしいのはこの僕だ。
りんたろくんもやはり嫁の血を引いているのか。
最近息子のサディスト化がお父さんは気になっているぞ。
そんなこんなでやっと山頂に到着。
軽い気持ちで登って来たが、たっぷり3時間かかってしまった。
なにげに今回本格的にテストした、以前紹介したiPhoneアプリも順調に動いた。
そして覚悟はしていたが、質素すぎる山頂にて記念撮影。
まるで展望なんてない。そりゃ誰も来んわな。
とりあえずメシを食う。
看板も朽ち果てて壊れていたので、そこを椅子とする。看板屋としては心が痛いが仕方なし。
景色は見えないが、落ち葉やドングリなんかがあって結構りんたろくんは楽しんでいる。
しばらくして下山を開始する。
多少ましにはなって来たが、相変わらず膝痛い。大人しくしておくべきだったか。
所々休みながらのんびりと下って行く。
途中、とてもキレイな流れがあった。
夏のくそ暑い日なら結構楽しめそうだ。人も少なそうだし。
見ると結構川に魚がいる。アマゴだろうか?夏なら間違いなく潜ってたな。
ふとりんたろくんを見ると、何が癇に障ったのかトレッキングポールでバシバシと木を叩いている。
これ以上嫁に似ないでおくれよ。
その木がお父さんに見えて来たよ。
舗装路まで戻って来たので、ここからはりんたろくんも歩かせた。
トレッキングポールを駆使して猛ダッシュして行くりんたろくん。
案の定、激しく前のめりに転倒する我が息子。
そういう姿を見ると、やはり僕の血も受け継いでいるのだと認識する。
すっかり顔を擦りむいて赤くなってしまった。
擦り傷は男の勲章だが、嫁に見せるのが怖い。
帰宅後に僕も顔から流血なんて事にならなければ良いが。
結局彼は学習する事を知らず、この後も激しく転んでは大泣きしていた。
同じ過ちを何度も繰り返すこの落ち着きのなさは、一体誰に似たんだ。
じっとしてられないのか、君は。
嬉しくもあり、とても心配だ。
こうして大人しく出来ない男二人のささやかな里山登山が終わった。
いい加減、しばらくは体の回復にいそしみますね。
落ち着けない二人〜鍋倉山〜
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MATATABI BASE
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