三上山/滋賀

富士急ハードランド〜三上山〜

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この写真をご覧いただきたい。


この男は「富士山」を登っている。

しかも重さ12キロのりんたろくんを背負って。

何故この男はこの過酷な状況下で、子供を背負ってこのような岩登りをする羽目になったのだろうか?

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この日の朝の時点では、僕は山に登る予定は無かった。

天気もよくなかったし、雪山用のパンツもサイズでかくて返品中(前回記事参照)だし。

でも、体は絶対動かしておきたかったから、その日はランニングでもするつもりだった。


しかし嫁が唐突に「竜王のアウトレットパークに行きたい」と言って来た。

家から1時間半位の、滋賀県のアウトレットパークだ。


正直、今のこの金欠状態でそんな所には行きたくなかった。

腹ぺこ状態で目の前に宮廷料理を並べられるようなものだ。

そもそも人がゴミゴミしてるところに行きたくはない。

そしてどうしても行きたくない上に、本日は運動がしたいんだ。


そこで、最低男の最低提案を嫁にしてみた。

それは嫁を一人竜王のアウトレットパークに降ろして、僕とりんたろくんで近くの山を攻めるという非道な提案だ。

殺されるのを覚悟して提案してみたが、思いのほかあっさりと受諾された。

僕は「移動手段」としか捉えられていないのかもしれない。


早速、アウトレットパーク周辺の山をチェックした。

すると前々からこの辺りを車で走っていた時に、気になっていた山に目を付けた。

その名は「三上山」。

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平地に突如として現れる、見事なもっこり山。

この山は「近江富士」と呼ばれて、地元の人々に愛されているもっこりだ。

記事の出だしに「富士山」を登っているなどと大きく書いてしまったが、標高432mの超低山だ。


この山なら2.3時間で下って来れそうだ。

最初は完全に「ハイキング」「散歩」程度の山だとなめてかかっていた。

結局は標高が低いだけで、山の形の通り「ひたすら急登」のハード登山となった。

ここに「富士急ハードランド」という、素敵なマゾレットパークが姿を現した。

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久しぶりの「りんたろ登頂記」だ。

12番目の山、近江富士こと「三上山」をバックに出発前の記念撮影。

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この時はお気軽登山の気分満々で、まさかこの後「急登ヒットパレード」が始まるとは微塵も思っていない。


登山口からして、実に鋭角に山の中へと誘導してくる。

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イノシシよけのフェンスを開けて、急登ヒットパレードの幕が開ける。

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さすがはマゾレットパーク。

マゾ的急登の大安売りだ。

会場には「楽しさ80%オフ」の値札が入り乱れている。


そしてこの時点で、いつものようにりんたろくんはすでに眠りについています。


次第に会場はジャングルのような装飾で溢れ、「セール感」が漂い始める。

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やがて苦痛の出血大サービス、「岩登りタイムセール」に突入だ。

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「軽い散歩」と思って来ているだけに、その衝撃度は計り知れない。

決して子供を背負って来場してはいけないテーマパークだ。


そして本日の目玉商品。

広告の品「鎖deマゾ岩登り」の登場だ。

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はっきり言って、子連れ登山の限界を越えていた。

実はこの写真は出だしの見せかけで、すぐ横のチキンルートを通って上に登って行きました。


そして、本来ならこんな感じで細い岩の切れ間から這い出てくる道だ。

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なんてエキサイティングな散歩道なんだ。

誰だ、こんな山を選んだ大馬鹿野郎は。



その後も富士急ハードランドのハードなアトラクションが目白押しだ。

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もう、足下も昨日の雨で滑ること滑ること。


それでも、だんだんと景色が眼下に広がり始める。

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独立峰ならではの、中々スカッとした景色だ。

432mの山にしては中々のお得感か。

しかし、ここまでに支払ったマゾプレイの代償としてはいささか物足りない気もするが、まあ良しとしよう。


そして、やっと頂上の神社に到達。

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いつものように、この時点でりんたろくんは目を覚ます。

彼はここまでのハードな展開を、一切目撃する事無く登頂を果たしたわけだ。

りんたろくん、本年度最初の登頂となりました。

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眺めもまずまず。

この山は結構地元の人達が登ってくる。

子供を背負って登って来た事も驚いていたが、僕の登って来た登山道が「健脚コース」の上級者登山道だったらしく、さらに驚かれた。

やはり誰に言われる事も無く、望んでもいないマゾコースを選んでしまう辺りさすがな親子だ。


りんたろくんもだんだんと目が覚めて、ご機嫌になって来たぞ。

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と思って写真を撮っていたら、突然まさかの転倒。

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すかさず彼のテンションが下がってしまった。


嫁を迎えに行かねばならんから、あまりのんびりはしてられない。

即座に我々は下山を開始した。

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さすがにもう登って来たマゾコースで下る勇気はなかったので、一般コースの裏道登山道で下山する。

しかし、足下が濡れた岩場が多いから結構慎重に下って行く。


景色的には、結構シダ(って言うのか?南国的な葉っぱ)が濡れてキラキラしていてキレイだった。

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低山にしては中々面白い雰囲気を味わえる山だ。

りんたろくんもどんどんテンションが上がって来て、「アンパンマン、アンパンマン」と叫び続ける。

僕が「山好きか?」と聞くと、「やま、スキーー!」と言うではないか。

これは息子のアウトドア化作戦の効果が出始めて来たか。

嬉しい限りだ。



ご機嫌な親子はそんな感じで楽しく進んで行ったら、どうも登山道が怪しくなって来た。

どんどん登山道が不明瞭になって行き、不安がよぎる。


しかし遭難マニアの僕としては、最近だんだんと自分がこれから遭難しそうだという事を察知する能力が身に付いて来たらしい。

誰よりも遭難の恐ろしさを知る僕は、即座に迷う事無く元来た道を戻って行く。


やはり案の定、分かりにくい標識を発見した。

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標識のくせに自然に同化するのはやめてもらいたい。

危うく「標高200m地点」での超低標高遭難という恥辱を味わう所だった。


しかし危機を脱して気を緩めてしまったのか。

僕はこの場所で足下の泥に足を滑らせて、絵に描いたような見事なズッコケを披露した。

IMGP4632.jpg

山に対して激しくスライディングを決める僕。

背中のりんたろくんを守る為に、ひねりを加えたスクリューズッコケ。

YouTubeで「ズッコケ」と検索したら、トップヒットを飾りそうな程に見事なコケっぷりだった。


さっきまであんなに楽しそうに叫んでいたりんたろくんも、ショックですっかりテンションが下がってしまったようだ。

途端に無口になってしまい、やがて僕の背中で「かえる、ブーブー、かえる(車に帰りたいという意味)」と悲痛な訴えを発し出す。

試しに再び「山、好きか?」と聞いてみたら、「キラーーイ、おとうしゃん、キラーイ」と言うではないか。

山のみならず、僕まで嫌われてしまった。


今後、足下はちゃんと注意して歩いて行こう。

父親の威厳を保つ為にも。



そんなこんなで無事下山。

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さらば、近江富士。

標高の割には、富士と名乗るだけはある見事なサド山だったぞ。

男は満足して、嫁を迎えに竜王アウトレットパークへ向かって行った。


富士急ハードランド〜三上山〜 完


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〜おまけ〜

嫁を迎えに竜王アウトレットパークの駐車場に到着した時、りんたろくんに異変が起きていた。

変なポージングで微動だにせず、切ない表情をしている。

途端に車内に異臭が蔓延した。


僕はすかさず彼に聞いてみた。

「おい、おまえ。さてはうんこしてないか?」

りんたろくんは何も答えない変わりに、ニヤリと笑った。


野郎、うんこしてやがる。

まさに、今ひねりだしてますって雰囲気だ。

ここで嫁が合流したが、とりあえずまたアウトレットパーク内に戻ってトイレで爆発物処理をしなくてはならない。


ばりばりに登山の格好した男がパーク内に入って行く。

しかも、例の「ズッコケ」のせいでケツには激しく泥が付いている。

うんこみたいな泥を付けた親が、うんこ中の我が子を抱えてオシャレなアウトレットパークへ侵入。

うんこ親子のトイレットパーク騒動。

正直この時の恥ずかしさが、本日一番のハードプレイだった。


うんこ野郎でマゾ野郎でブタ野郎。

果たして僕の人生に救いはあるのか?

僕の自分探しの旅路はまだまだ終わらない。



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