「罪を犯した者には、相応の罰を与える必要がある」
金曜日の夜、新年会で暴飲暴食をしてしまった。
あれ程、ストイックな減量信念を貫いて来た己への裏切り行為。
さらにニンニクを食い過ぎた為に、嫁に殺されそうになる始末。(前回記事参照)
ニンニクを食べる事は、雪山登山よりも致死率の高い罪な行為だという事も知った。
そして外出禁止令が施行された土曜日は、ひたすらグウタラに過してしまった。
暇すぎてお菓子も沢山食べてしまった。
そんな自分を自分で許すことができない。
大いなる罪を背負った自分へ、鉄槌を下す時が来た。
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日曜日。
前回の御在所岳登山で嫁を怒らせてしまったため、雪山はしばらく行かせてもらえない。
しかしりんたろくんを担いでの低山登山なら、皆が楽出来るから許される。
僕はりんたろくんを連れ出して、岐阜県民の修行の場「金華山」へ向かった。
りんたろ登頂記としては3度目となる金華山。
前回はDSY登山の実験(秋の大実験)で登っている山だ。
今回は己へ罰を与える為の登山。
だから、始めて登った時に地獄を見た「馬の背登山道」の直登ハード健脚コースで登る。
前回は、途中で力尽き半死半生で登りきった因縁の登山道だ。
もちろんりんたろくんとザックと荷物の合計、およそ20kgを担いで。
この登山道は自衛隊が訓練で登る程のワイルドコースだ。
しかしここを登るだけで償える程、僕の罪は軽くはない。
今回、自分で自分に与えた刑罰は次の通り。
「被告人は馬の背登山道を30分以内で駆け上がり金華山を制覇せよ。そして下山して再び馬の背登山道を30分以内で駆け上がり、金華山を二度制覇せよ。」という重い罰則が与えられた。
同じ日に二回も同じ山を登るマゾプレイ。
これは罰なのか、それとも快楽なのか?
確かめる価値はありそうだ。
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久しぶりの親子金華山。
お父さんの勝手なマゾプレイに巻き込まれて、りんたろくんもウンザリ気味か?
ひとまずは「瞑想の小径」を登って行く。
しばらく登って行くと因縁の「馬の背登山道」が登場。
看板の注意書きも相変わらずだ。
前回は看板の忠告も無視して「老人並みの体力の男が幼児を背負って」登り、悲惨な目に遭っている。
しんどいのは分かっているさ。
しかしこれは登山ではない。刑罰なんだ。
楽しい要素なんて、一つとして必要は無い。
ストイックな自分を取り戻せ。
今回はあくまで「己イジメ」がメインなので、道中写真は撮っていない。
写真は馬の背登山道の出だしを撮ったこの1枚のみ。
こんな感じの傾斜度70度くらいの岩場を、ガシガシ両手両足使って登って行く「男道」。
まさに「岐阜城、攻めてます」って感じが男心(M心)を刺激してやまない。
しかし、前回の僕とは違うんだ。
あれから数々のサド山を登って来た僕にとっては、きっと軽々と登れるようになっている事だろう。
「グハッグハッ、ぐぇ、ぷ、グハッーー!」
少しも楽じゃない。
馬の背女王様のムチは相変わらずしなりまくって、僕を容赦なく打ちつける。
例えるなら、常に全力疾走で走り続けているかのようなしんどさだ。
いいぞ。いいぞぉ。
これでこそ、自堕落な行為をした自分への制裁行為だ。
苦しめ、反省しやがれ、このブタ野郎。
どんなに辛くても、休憩する事を許さない。
結局前回40分以上かけて登った馬の背を、20分で駆け上がった。
普通にロープウェイで上って来た観光客がいる中、子供を背負ったフラフラな男が天守閣へ向かう。
みんな寒そうに厚着している中、体から湯気をモクモク発している男が横切って行く。
そして、まずは1回目の登頂記念撮影。
撮影を依頼したおじさんがまさかの中国人観光客だったというトラブルもあり、ちょっともたついたが何とか撮影完了。
地元民が外国の観光客に写真を撮ってもらう奇妙な光景だ。
さすがにちょっと休憩。
りんたろくんにおやつを与えなければならない。
観光客が沢山いるから、さっさと下山しよう。
子供背負ってる時点で、目立って恥ずかしいんだ。
そう思っていた矢先、りんたろくんがベビースターを地面に落としてぶちまけた。
途端にベビースターにまみれる足下。
この写真はある程度片付けた後に、思い出したように撮った1枚だから実際はもっと大量に散乱した。
当然、僕は観光客の嘲笑に晒される。
これも罰のうちか。
己を罰するのも、中々つらい作業だ。
さあ、のんびりしている暇はない。
前回DSY登山時に登って来た「瞑想の小径」にて下山。
多少景色を堪能するが、一瞥してから一目散に下山した。
丁度良くりんたろくんも眠りに落ちた。
さあ、二度目の金華山。
下山後再び馬の背登山道を駆け上がる。
途中、「あれ、あなたさっきもここ登ってなかった?」と他の登山者に問いかけられる。
「はい、新年会で飲み過ぎましたので。」と答えた。
今思えば、恐らく「こいつは一体何を言っているのだ」と思われた事だろう。
ふくらはぎをムキムキにしながら、再び20分で登頂。
正直、吐いてしまいそうだ。
そして本日二度目の登頂記念撮影。
もし一回目も目撃されていたとしたら、「こいつどんだけ岐阜城好きなんだ」って思われているに違いない。
しかし、とりあえずはやりきった。
これで少しは、不抜けた自分に活を入れる事は出来ただろう。
やっと落ち着いて昼メシを食らう。
りんたろくんとおにぎりを食べていたら、おもむろに武将が現れた。
昨今、休日に城に行くと必ず武将がいる。
しかも武将の内容もだんだんとマニアック度が増して来ている。
そこにいたのは「斎藤義龍」「斎藤龍興」「竹中半兵衛」の三人。
竹中半兵衛は人気あるから分かるが、義龍・龍興親子はどう考えても人気ないだろうに。
せっかくなんで、記念撮影をお願いした。
かつての城主だった斎藤義龍にカメラを渡して、撮影を依頼する平民の僕。
すごい偉い人なのに、義龍は陽気に「はい、チ〜ズ」とか言ってやがる。
何ともシュールなひと時だ。
りんたろくんの、もの凄く嫌そうな表情も印象的だ。
さあ、そろそろ下山しようかと準備し始めて異変に気づく。
僕のグローブが無いぞ。
このモンベルのグローブは、低山ハイクからランニングまで幅広く活躍していた大事なグローブ。
さっきの武将達との撮影時に落としたのか?
僕は戻って、竹中半兵衛に「この辺にグローブ落ちてなかったですか?」と聞いてみたが見当たらない。
半兵衛も「え、グローブっすか?いやあ、無いですけどねえ」と軽い感じで応対してくる。
かつての城主二人と大軍師竹中半兵衛は、僕と一緒にウロウロと彷徨ってグローブを探す。
とても良い人達だ。
しかしグローブは見つからなかった。
多分、昼メシ前にトイレ行った時に置き忘れて、そのまま誰かに持って行かれたんだろう。
思いがけず、とても大事なグローブを失いがっくりと肩を落とす。
馬の背二連発程度では、まだ罪は償いきれて無かったのか。
そして、馬の背の次にハードな「百曲り登山道」を下山して僕は帰って行った。
こんな思いをするんだったら、もううかれて暴飲暴食なんてしない。
そう誓った一日だった。
というか、こんな事しなきゃよかった。
そう思った一日だった。
罪と罰
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MATATABI BASE
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