池田山/岐阜

接待登山〜足酸っぱい思いで〜

写真


曇り時々雨の予報だった日曜日。

当初は天気も悪いという事で、山に行かずに部屋の掃除でもしようかと思っていた。


しかし朝目覚めると凄い快晴が広がっていた。

話が違うじゃないか。


思ってもいなかった展開にしばし呆然と僕は立ち尽くした。

ここで一旦僕の記憶が飛んだ。


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そしてハッと我に返った時には、何故か僕は池田山を登っていた。

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おかしいな。

なぜこんな事になってしまったのか記憶がない。

今日の僕は大人しく部屋の掃除をするんじゃなかったのか?

なぜかりんたろくんも一緒だし。



かすかに記憶が蘇る。

僕はりんたろくんの「山、嫌い」発言以来、彼がアウトドア嫌いにならないように慎重に接して来た。

出来るだけ「山」というキーワードを使わずに、彼から「山での嫌な記憶」が消えるのを待った。


そして今朝、快晴の空を見て僕は思わず彼に聞いてしまった。

「おい。山、行くか?」と。

すると「行くー。ボクも山行くー。」と言うではないか。

試しに「山、好きか?」と問えば「山、スキー」と言う。

ついでに「お父さん、好きか?」と問えば「おとうさん、大スキー」と言うじゃない。


ここ最近でこんなに嬉しかった事があったろうか?

嫁はもちろんだが、もう長い事「大好き」なんて言われた事がない。

子どもの気まぐれなんて言わせない。

とにかく僕は嬉しかったんだ。



で、気づいたら池田山の登山口に来てたってわけ。

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ここでのりんたろくんはかなりのハイテンションだった。

実は最近のりんたろくんはなぜか「注意書き」に強烈にハマっている。

何が楽しいのかさっぱり分からないが、この登山口は注意書きが乱立していてたまらなかったんだろう。



それにしてもりんたろくんを担いで山に登るのは4ヶ月ぶりくらいだ。

当たり前だが、こいつ随分と重くなっている。

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正直、腰痛持ちのお父さんには相当にハードだ。

このベビーキャリアも「3歳16キロまで」と書いてあるからそろそろ限界だ。

でも筋トレにはもってこいだから、行ける所まで使い倒す。

りんたろくんが乗れなくなるか、僕の腰が破壊されるかの戦いだ。


りんたろくんと会話しながら進む。

「山、楽しいか?」と問えば「うん。山、楽しい」と答える我が息子。

背負っているから彼の表情は伺えないが、きっと満面の笑みが炸裂している事だろう。


どんな表情をしているのかな?

試しにカメラで後方を撮影してみた。

すると彼はやはり満面の笑みでカメラにおさまっていた。

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僕はこれほど無感情な子どもの表情を見た事がない。

この表情でこの男は「山、楽しい」と言っていた。

お父さんに気を使ってくれていたのか?

なんて甲斐甲斐しい息子だろうか。




池田山では雪山デビュー戦以来の登山だ。

僕はここのところの「毎日ランニング」の効果でスイスイ登っていけるもんだと思っていた。

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しかしゲロ吐きそうなほどにしんどいじゃない。

りんたろくんが重くなった事もあるが、おそらく毎日ランニングの効果で「蓄積疲労」がハンパなかったんだろう。

本末転倒の見本のような男はその後もガハガハ言いながら登っていく。


やがてりんたろくんはいつも通りスリープモードに入った。

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途端に重量がズシリとアップし、お父さんはさらなる筋トレモードだ。

正直、撤退を考えてしまったほどに何だかとてもしんどい登山となった。



やがて中腹の東屋に到着。

全く動いていなかった男が嬉々としてメシに食らいつく。

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子守り登山に休憩なぞは存在しない。

これはりんたろくんに気分良く山を堪能してもらって、今後もお父さんと遊んでもらえるようにする為の「接待登山」。

僕は息子に誠心誠意尽くし、可能な限りヨイショをかかさない。


おかげでこのような笑顔がやっと溢れ出た。

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しかも僕のトレッキングポールを奪って自ら歩き出す。

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「ナイスポール!」

僕は接待ゴルフのおっさんのように精一杯の笑顔で彼を褒め称えた。


そして調子に乗って突き進むりんたろ社長。

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すると一発目の段差でまさかの転倒。

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しまった。

ご機嫌を損ねてしまう。

まさかこんなにも早くつまずくなんて思ってもいなかった。


僕は社長が「山、嫌い」と言う前に即座に背中のリムジンにご乗車いただいた。

そしてすかさずアンパンマンのマーチを歌ってご機嫌の回復を計る。


何度もアンパンマンの歌を歌いながら登って行く。

うつむきながら登っていたから、折り返した先のベンチで人がいる事に気がつかなかった。

僕もビックリしたが、相手もビックリしただろう。

山中で突然下の方からおっさんが一人で(正面からは子供を背負っているのは分かりにくい)アンパンマンを歌いながら、グハグハと登ってくるのだ。

相当に恥ずかしかったぞ。



りんたろ社長のご機嫌も良くなったので、再び歩かせてみた。

木の枝を持って凛々しく行進を始めてご機嫌な社長。

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どうやら今回の接待は成功のようだ。

と思った矢先、またしても激しく転倒してケツを痛打する男。

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なぜこんな何も無い所でこけるんだ?

まるでお父さんじゃないか。


まずいな、機嫌悪くしたかな。

トミカの赤帽トラックで遊びだしちゃったよ。

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このままじゃ商談が成立しない。

こんな時は神頼み。

神社に到着です。

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竜神様の口に枝を刺す罰当たりな息子。

しかしご利益があったのか、徐々に機嫌が良くなるりんたろくん。


やがて今回のゴール地点のパラグライダー離陸所に到達。

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正直今回は山頂まで登る気力はなかった。

景色もいいし(山頂は展望無し)、ここがゴールでいいじゃないか。

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お父さんはもう接待に疲れたよ。

という事でここで記念撮影です。

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と言ってもあなたあんまり景色には感動しないんだよね。

まだ3歳だから無理も無いか。

それにしてもご不満そうな表情ですね社長さん。

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分かってますよ、社長。

魚心あれば水心。

ちゃんととっておきの接待を用意しているんですよ。


今回は久々に以前紹介したジオキャッシングに挑戦です。

これで隠されたお宝(おもちゃ)を探し当てるんです。

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これでおもちゃをあげてご機嫌を取れば今回の接待登山は完成して、彼も山好きになる事間違い無しだ。

「お父さんがおもちゃを探し当てるからな」と言うとりんたろくんもとても嬉しそうな顔になった。


宝の地図はパラグライダーの離陸台を指していた。

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この台の下が間違いなく怪しい。

我々はこの台の下に潜り込んで行く。


しかしここは車でも来れる場所なので、こんな感じで他に結構人がいる。

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正直、我々はかなりの怪しさを醸し出していた。

壮大な景色には一切目もくれずに、台の下をウロウロしている。

なんか周りから見たら、スカートで来た人のパンツを下から覗こうとしているおっさんに見えやしないだろうか?


お宝も全く見つからず、次第に強烈に恥ずかしくなって来た。

ついにいたたまれなくなって来て、僕はお宝探しを諦めた。

そんな僕を期待に満ちた顔でりんたろくんが眺めて「おもちゃは?」と聞いてくる。


痛い、心が痛い。

結果的にお父さんは嘘をつくような形になってしまった。

余計な事をするんじゃなかった。


こうして接待に大失敗した僕は、再び社長を担いで下山。

なんだかよく分からない登山だったが、それなりに楽しんでくれてたみたいだ。

最後には「また行く、山行く」と言ってくれた。

お父さんの誠意は何とか伝わったようで本当によかった。


その後は仲良く温泉へ。

サンダルを忘れて来た事が発覚し、風呂上がりに裸足で汗だくの登山靴を履くというハプニングもあった。

IMG_0723.jpg

まあそれもいい思い出さ。

こうしてまた3歳になった君とも思い出を作って行けたんだ。

いい気分じゃないか。


結果的に部屋は片付いてないし、お父さんの足も酸っぱくなっちゃったけどね。

こんなお父さんで良ければまた山行こうね。

よろしくお願いします、りんたろ社長さん。


あとは会長(嫁)も接待していかんと。

登山て仕事も楽じゃないのだ。



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