近江八幡/滋賀

初夏の大実験〜DSY漕行記〜

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ちょっと前の記事で、GW前半に嫁のアウトドア化を目指すクエスチョンを出題した事がある。(参照:ハード・クエスチョン

インドア、無体力、無気力、無感動のこのサディスティックガールをいかにしてアウトドアの世界に引きずり込むか?

絶望的にハードなこの目標に対して、今回精一杯の実験を試みてみた。



去年の秋の大実験では、子供でも登れる金華山にて「登山」させてみるという挑戦をしてみた事がある。

しかし結果は惨憺たるもので、軽く夫婦間に亀裂を生じさせる結果になってしまった。(参照:秋の大実験〜DSY登山記〜


なので今回は、出来るだけ動かずに済む「静水域でのお気楽カヌー」をチョイス。

流れもなく、漕がなくても良くて、トイレがあって、そこそこ楽しんでもらえそうな所と言ったら、ついこないだ花見カヌーで行った近江八幡の「水郷巡り」しかなかった。

正直桜も散っているからどうかとは思うが、どこにも行かないよりはマシだ。



僕としては6月の鮎釣り解禁前なので、川に行きたくてしょうがないけど我慢の水郷巡り。

嫁としては、夫がせがむからしょうがなく行く水郷巡り。

子供としては、よく分からずに連れて行かれる水郷巡り。


一体、この旅で誰が幸せになれるというのか?

分かっちゃいるが、これは今後の僕の人生に関わる重大な実験だ。

とにかく、なんとか嫁を持ち上げて「カヌーって楽しい」と言わしめたい。


そして、今回はついにりんたろくんのカヌーデビュー。

彼も最近「ヤマ、キライ。オトウさん、キライ。」等と言い始めて激しく僕を不安にさせている。

この子が一体どちらの血を色濃く受け継いでいるのかも、今後の僕の人生を大きく左右する。



それでは、実験の結果をご報告して行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


基本的に早朝に移動して、午前中にカヌーをするのが僕のスタイルだがあまり無理はさせられない。

最低限の時間、朝6時に起床させた。

準備は前日にバッチリ済ませてあるから、ささっと用意してすぐにでも出て行ける状態だ。

7時前には出発出来るだろう。



7時。まだか?

8時。まだなのか?

9時。何やってんだ?


いつまで経っても嫁の準備が終わらない。

朝からのんびり風呂に入り、ワイドショーを見ながらゆっくりとメシを食らい、髪のセットにも余念がない。


しかしここは我慢のしどころだ。

ここでキレてしまってはご機嫌を損ねてしまう。

僕はグッとこらえて、外の田んぼでりんたろくんと遊び続けた。

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もうかれこれ2時間近く悶々とした田んぼ遊びが続いている。

まだ家だというのに、すっかり疲れ果ててしまった。



結局起床から3時間半後の9時半頃に家を出て、現地に到着したのは11時過ぎ。

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午前中にカヌーして、午後から観光という僕の立てた計画はさっそく破壊されてしまった。

挙げ句、嫁に「何も分かってないよね。もっとサービスエリアでのんびりしたかったのに。」って言われる始末。

言い返したい事は山ほどあったが、僕はグッとこらえて笑顔を絶やさず「ごめんなさい」。


いつもの場所で出艇準備。

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りんたろくんが楽しそうにパドルを持って「かぬー、かぬー」と言っているではないか。

僕は嬉しくて泣きそうになりながら感慨深く息子を眺めた。

天気も最高で、風もない「幸せカヌー日和」。

これなら嫁も満足してくれるに違いない。


しかし嫁は「暑い。しんどい。」と言い出すではないか。

僕にとって「快晴」が何を意味するかも知らないで、なんという贅沢発言だ。

たちまち、先ほどまでの嬉し泣きが悔し泣きに変わって行く。

しかし、そこはグッとこらえて笑顔を絶やずに記念撮影。

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やっと、こんな写真が撮れる時が来るなんて。

「家族でカヌー」という、アバターよりも映像化不可能と思われた快挙を達成したぞ。(以前から、ブログ上で顔を出したら殺すと言われているのでSで隠します)


そしていよいよスタート。

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ついにあのDSYが僕の目の前でカヌーで浮かんでいる。

左手のパドルの持ち方が変だが(つまんでる)、あまり教えようとして刺激しない方がいい。

ただ、「楽しー」とか「こわーい」とか「うわー」とかの言葉が一向に発せられない気がかりだ。

後ろからはその表情を読み取れないので、彼女の感情が揺れているかどうかは把握出来ない。


ひょっとしたらこんな表情をしているかもしれない。

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こんな大惨事になっていない事だけを祈りながら、進んで行く。


やがて、以前は桜の回廊だった水路へと突入。

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何やら、彼女の手が止まって見えるのは気のせいか?

まだ開始5分くらいなんだが。


ここで嫁の前に座っていたりんたろくんが、後ろに移動すると言い出す。

怖くて振り向けない嫁。

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そしてこんな写真を撮っていたら、「ちょっと!早くしてよ!」と凄い勢いで叱られてしまった。

しまった、ミスった。ご機嫌を損ねてしまったぞ。


そしてりんたろくんが汚い水路の水を触ってるのを僕がぼけーっと見てたら、「ちょっと!破傷風になったらどうすんのよ!」と再び怒られてしまった。


これはいよいよDSY登山記の再来か?

こりゃまずいぞ。


一方でりんたろくんを見てみれば、この楽しそうな表情だ。

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少なくとも楽しんでいないように見えるがいかがか?

試しに「カヌー、楽しいか?」と聞けば、この顔のまま「うん、たのしい。」と言う。


その年にして、お父さんの為に気を使ってくれているのか?

であれば、よく覚えておきなさい。

表情もちゃんと作らないと逆に人を傷つけてしまうんだよ。



ここでワーキングウーマンの嫁の携帯に仕事の電話。

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せっかくの親子水入らずカヌーを楽しんでいる(楽しんでいる?)所になんて無粋な電話だ。

しかも、何やらトラブルのようですこぶる長い上に嫁の機嫌も悪くなって行く。

頼むから、今彼女を刺激するのはやめておくれよ。

僕の今後の人生がかかってんだよ。頼むよ。



長い長い電話が終わった頃には水路を抜けていた。

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もうすっかりパドルを持つ手に力がみなぎっていない事が後ろからでもよく分かる。

りんたろくんも嫁のケツに手を入れていてよく分からない行動に出ている。


まあ、表情を見る限りきっと楽しんでいるんだろう。

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そう願いたい。


そしてランチスポットに上陸です。

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桜は終わったけど、何やら奇麗な花も咲いてるし、芝生も奇麗だ。

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なんという絶好の平和的な風景。

風もないし、こんな場所でランチだなんてきっと満足してくれるはずだ。


桜の時期が過ぎてるから、ほぼ独占状態。

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ステキすぎる。

僕が女なら、旦那に抱きついてアツい接吻をお見舞いしてやるところだ。


しかし彼女の口から「素敵」とか「楽しい」とか「最高」という言葉はなく、ましてや抱きついて接吻なんてことは予兆すらうかがえない。

というのも、ここに来てトイレに行きたくなったらしくそれどころではないと言うじゃない。

しかし抜かり無く、ちゃんとここにはトイレがあるのだよ。


僕は彼女を紳士的にトイレまでエスコートした。

しかし嫁がトイレを見て、「キタナッ!クサッ!ムリッ!」の三段活用。

やむなく我慢する事が決定され、「素敵」という言葉は大いに持ち越されてしまった。


気を取り直してランチタイム。

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少しでも「幸せな家族」の写真になるよう、得意のセルフタイマー。

出来るだけステキな家族に見えるように、自作自演のステキな笑顔で嫁とりんたろくんの輪に入る男。

嫁に無視された挙げ句、このあとその笑顔のままそっとカメラまで戻って行きました。


そういう視点で以下の写真を見ると、「幸せな家族」というより「のけ者にされたお父さん」という絵が浮かび上がって見えるから不思議だ。

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後に嫁にこの写真を見せたら「何この足の筋肉。キモッ。」って言われた。

僕もそう思うが、「この時楽しかったね」って言葉を期待していただけに度肝を抜かれた。


でも、そこはやはり子供。

ちゃんとりんたろくんは楽しそうに駆け回っていた。

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良かった。

君の笑顔にお父さんは心底救われた気持ちだよ。

君がアウトドアを嫌いにならないように、今後は慎重に行く場所をチョイスして行こう。

間違っても標高3000mの-1C°の世界へはもう連れて行かないでおこう。

あの時彼の唇は紫色に変色していたからな。(参考:惨敗に乾杯〜乗鞍岳〜


楽しそうなりんたろくんを見て、嫁の機嫌も良くなってきたぞ。

これはそろそろ「カヌーって楽しいね」って言葉がいただけるんじゃないか?


そう思っていた矢先、複数台の草刈り機の激しいエンジン音が「ババババババッ」と轟音で響き渡る。

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地元のおっさん達が、突然草刈りを開始しやがった。

さっきまでの平和な空間が一転、騒音のけたたましい世界に豹変した。

しかも、徐々にこっちに迫って来る。

全く落ち着けずに、追い立てられるように僕らはそこを後にした。



出発の際、たまたまそこにいたカメラマンのおっさんが「撮りましょうか?」と言って写真を撮ってくれた。

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そして、このような相当レアな写真が撮影された。

数年後にオークションで凄い値段で取引されるに違いないほどの貴重なショットだ。

この三人でカヌーに乗る姿がこれで最後になるのか、はたまたここがスタートなのかは今後の僕のおもてなし次第だ。



嫁がシングルパドルがめんどくさいという事で、予備で持ってきたダブルパドルに変更。

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お、これはちょっとやる気を出し始めたのか?


ここで結構岸にぶつかって座礁とかしたんだが、通常なら可愛らしい声で「きゃあ、ぶつかる〜」なんて一般の子ははしゃいで盛り上がる場面だろう。

しかし嫁はとても低い声で「うおっ」と言ったきり、何も盛り上がらなかった。

先は長そうだ。



やがてよしの大竜神の祠に到達。

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わずか二週間前に僕はこの場所で「嫁が優しくなりますように」と祈願したばかりだ。

今日は本人を連れてまいりましたよ、竜神様。


現在この日から3日が経とうとしているが、残念ながら未だに優しくなりそうな兆候はない。


一旦この後迷子になって軽く「チッ」と舌打ちされつつも、橋をくぐれば中々見応えのある空間が広がった。

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「どうですか?中々いいでしょ?楽しくなって来ましたか?」と聞いたが「んー」という、どう判断していいか分からないうめき声のような返答が帰って来た。


振り返れば、新緑の巨木越しの和船。

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非常に美しき空間で、きっと嫁も満足してくれたに違いない。

「んー」としか言わないのは、恐らく感動で言葉も出ないのだろう。



この後、無事にスタート地点に戻って来てゴール。

上陸しても「楽しかった」的な発言はなく、淡々とりんたろくんを着替えさせていた。

果たして我が嫁はカヌーを楽しんで頂けたんだろうか?

カヌーの上では笑顔を見せなかったりんたろくんも心配だ。



こうして初夏の大実験は終了した。

実験結果は以下の通り。

DSYがカヌーを楽しめたか未だ不明だが「カヌーを淡々とこなす」という事実が判明した。

そこにはあまり喜怒哀楽は存在せず、彼女にしたら「夫のわがままを聞いてやった」的なお仕事感覚だったのかもしれない。

しかしこれは「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ」。

人類の進歩と調和。

夢のDSYアウトドア化への夢の未来に向けて、その一歩を踏み出したのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜おまけ〜


僕のおもてなしは続く。

とにかく楽しい思い出にしてもらって、次の登板へ弾みをつけるのだ。


景気づけに120円のジュースを200円で購入。

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8枚の10円硬貨が出て来て、僕の財布が膨張したのと同時に不安も増大。

何事もなければいいが。


りんたろくんはカヌーに乗っている時とは明らかに違うハイテンションで走り回る。

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そしてここには「八幡山」というかなりお気軽な山がある。

わずか20分ほどのハイキングで登頂出来る山だ。


早速僕はハイキングを提案してみた。

たちまち嫁の眉間に二本の縦筋が入り、ご機嫌を損ねてしまった。

折衷案で、やむなくロープウェイという結果になってしまった。

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金華山よりも、半分以下の距離の八幡山でもダメだったか。

もう完全にDSYの山ガール化は不可能だと判決が下った。

やはりサドガールに、登山を楽しむ感情は存在しないようだ。


ロープウェイに乗って山頂直下まで移動。

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ここまで5分程の距離。

琵琶湖の景色が素晴らしい。

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これにはさすがに感動したか?

ふと、嫁を見てみるとぐったりしているぞ。

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どうやらロープウェイの終着駅からここまでの5分の歩きで燃え尽きてしまったようだ。

なんという根本的な体力の無さなのか。

確かに登山なんてやらせたら、この人は死んでしまいかねない。


「もう、無理。降りる。」って言ってる。

まだロープウェイを降りたばかりで、山頂にも行ってないし何の観光もしてないのに。

一人往復800円を支払って、滞在時間わずか15分。

すっかり悪い思い出を植え付けてしまったようだ。

余計な事をせずに、カヌーが終わってあのまま帰れば良かったのか?



その後、機嫌と体力を回復してもらおうと温泉に行った。

りんたろくんは僕と一緒に入るから、彼女にはのんびりしてもらおう。

僕もりんたろくんと親子水入らずで、のんびり本日の疲れを癒すんだ。


しかしこの温泉。

露天風呂が異様に「家畜」臭い。

近くで近江牛の飼育でもやっているのか?

硫黄と家畜の匂いが凄まじいケミストリーで僕の心を癒さない。


挙げ句、なぜか小学生くらいの男の子が「うあああああああ」と叫び続けている。

周りのお客さんに注意されても「うおおおおおお」と叫ぶ最高に迷惑なヤツだ。

しばらくこいつが出て行かないかと我慢していたが、うっとうしさと家畜臭さに我慢ならんくなって風呂から出た。

その直後にその小学生も上がって来て、脱衣所で「ううううおおおお」と叫ぶ。


まるで疲れを癒す事無く、不快さを増大させて温泉から脱出。

嫁の「豚臭かった」という文句が僕に向けられるという悲しい一幕もあった。



こうして、僕のGW初日の家族サービスが終わった。

初日にしてこの「燃え尽き感」といったらどうだ。

正直ここには書ききれなかった細かい出来事もいくつかあった。

僕は塩焼きそばが食べたかったのに、嫁の意向でソース焼きそばに変更され、挙げ句「私、焼きそばいらない」って言われる理不尽なプレイもあった。

一日の後半に「なんか私、文句言ってばっかだね」って一言に、思わず「今!今それ言うの!」って言っちゃったり。

まあ、彼女なりに楽しんだという事にしておこう。



DSYアウトドア化への道。

まだこの険しい道のりは始まったばかり。

今後も不定期にDSY大実験シリーズを継続して行きます。

僕の心が折れるまで。


その時は意外とすぐそこなのかもしれない。



初夏の大実験〜DSY漕行記〜 完

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