北海道中膝栗毛

北海道中膝栗毛13

若気の至りを全身に身にまとった僕は、もうひとつ上流の橋で車を降りた。

ふと川を見ると、なんの魚だか分かんないが1mクラスの魚の群れが目に飛び込んで来た。

全身からアドレナリンが溢れ出し、急いで降りれる場所を探した。

すると手すりはついてるが、恐ろしく急な階段発見。

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ほとんど崖といっていいその階段をカヌーを先に落としながら、10m程降りる。

早くも大冒険的な匂いがプンプンとしてくる思いだ。

もう一度車に戻り、出会い頭のお魚さんにいつでも対応できるように常に車に置いてある3本のタモと銛と水中眼鏡と足ひれを担いでカヌーに戻る。

とても三十路手前の立派な大人には見えない。
そうしていろいろ準備している僕を挑発するかのように、どでかい魚が目の前を行ったり来たりする。

背中がボコンと膨らみ、全身傷だらけで、あのとんがったシャクレ顔はひょっとしてシャケなのか。

この時期にこんなでっかいシャケが川にいるのかと疑問を持ったが、そんな事はどうでもいい。

その場でカヌー等はおっぽって、タモを両手にひたすらシャケ(なのか?)と格闘。


常にギリギリでかわされるといったデッドヒートがおよそ2時間程続いた。

そして、何処の世界にもいるものだ。
隠れているつもりで、体が隠れきってない居眠りした馬鹿な魚を発見。

そーっと近づき、頭からそっとタモをかぶせて一丁上がり。

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さっきから追ってた奴らとは見た目も大きさも違うが50cm程の魚だ。

キャッチ&イートが信条の僕は、その魚に感謝をした後即座にハラを出し、三枚におろし、塩で味付けをし、ウィスキーで蒸し焼きにして食った。

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白身のぷりぷりした感触でうなぎの白焼きの感触だった。
いったい何と言う魚だったんだろうか。
(筆者注:後に分かったことだがカラフトマスだったようだ。この魚が川に遡上してきた際は絶対に穫ってはいけないお魚さんのようです。もう時効なので勘弁してください。)


この魚を食ってる最中、念のため持って来てた携帯電話が鳴った。
こんな大自然で、ワイルドに捕らえた魚を食ってる時のデジタル音ほど不快なものはない。
おまけに会社からだ。
唐突に暗い気持ちに突き落とされた。

休みの日ぐらいほっといてくれ、日本人め。
愚痴りながらもとりあえず腹を満たした僕はようやくカヌーをスタートさせた。

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この川は、とにかく奇麗だが水が少なく、岩多く、流れ早く、倒木もあり、油断も隙もありゃしない。

流れの速い岩だらけの浅瀬を歩くのは本当に骨が折れた。

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ほとんどをこうしてカヌーを曳いて歩いた。
川下りというより、ハードな川歩きと言った方が適切だ。

十数キロという行程の、約半分くらいを歩いたんではないだろうか。

たまに水深があってカヌーに乗って進んで行くと突然滝が!というと大げさだが、1m程の突然の落ち込みに激しく狼狽した。

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たった十数キロの川旅に要した時間、実に6時間。

歴舟川を下る前のちょっとしたおやつ程度に考えていたので、大変な疲労感だ。

ヌビナイ川。
その名に恥じぬワイルドな川だった。

恐らく魚を穫りにくる事はあっても(筆者注:それはダメなんです)、カヌーで下る事はもうないだろう。

激しい疲労で翌日の歴舟川下りはかなり迷った。

DSC04269.jpg

写真からもその疲労感がにじみ出ているのがお分かりだろうか?

携帯で翌日の天気を見るとくもり時々雨の予報。
これにプラス雨男と考えれば降水確率100%の雨に間違いない。

僕は悔しかったが翌日の歴舟川を断念した。

せっかくのいい川だ、体調も天気も良き日に下りたい。
こうして僕は天気予報の晴れの地方目指しカヌーを畳んで旅立った。

この自由さが単独行の強みである。



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