8月17日早朝。
朝早くから車を走らせ、やがて十勝川をすぎて僕は南下を続けた。
どんよりとした雲に覆われた空の下、僕は未舗装の直線道路を延々と車を走らせていた。
今日からは歴舟川を1泊2日で下る予定なので、ゴールの河口付近にMTBを置きに来たのだ。
しかし中々海が見えてこない。
やがて道が草むらに吸い込まれた先は、行き止まりじゃない。
ここは焦らず落ち着いて今後の事を考えようと、タバコ片手に車から降りた瞬間、またしても草むらから大量のアブが奇襲をかけて来た。
僕はまるでヒッチコックの映画「鳥」状態で、ただただなすすべなく数カ所を刺されて車に戻った。
やられるがままの情けない気持ちのまま、僕は来た道を戻りながら考えた。
天気はどんよりとした厚い雲、チラッと見た歴舟川は渇水状態、釧路川の疲れと度重なるアブどもの襲撃、どうもテンションが上がらない。
こんな時僕はなぜかいつも支流の川を下る事を選んでしまう。
本流より水が奇麗で、なにより情報量の少なさから来る恐怖心と冒険心が、いやが上にもテンションを上げるのだ。
熊野川では赤木川を、古座川では小川を、四万十川では黒尊川を、天竜川では気田川を、吉野川では穴吹川をといった具合に数々下ったが、すべてに於いて僕の旅心を満足させてくれたからだ。
事前に歴舟川をネット等で調べてるうちに、いつもひっかかって気になっていたあの支流の川を下ろう。
その名もヌビナイ川。
まずこのネーミングがにくい。
北海道の川はカタカナ名の川が多いが、なにやらカナダ辺りの怪しい川を下るような緊張感が漂うのは僕だけだろうか?
しかも”ヌ”から始まるあたりただならぬ気配を感じてしまうのだ。
おまけにヌビナイ川のさらに支流の名前がクマの沢川などという名前なのだ。
激しい冒険心を抑えられなくなり、ヌビナイ川下りを決心した僕は、ゴール地点を歴舟川と合流した直後のカムイコタンキャンプ場と定めそこに向かった。
キャンプ場の駐車場にMTBを置いて、出発地点の見当もないままにヌビナイ川へと車を走らせた。
最初の橋、ヌビナイ橋より川を覗く。
水がとっても奇麗だ。すばらしい透明度。
しかしやっぱり水少ない。
当然だ、本流の歴舟川に水ないんだからね。
水が奇麗ならちょっとくらい歩かされてもへっちゃらさ、とさらに上流へ向かった。
僕が今タイムスリップできるなら、そんな彼を引き止めたであろう。
北海道中膝栗毛12
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MATATABI BASE
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