◉ 愛すべき旅道具

僕とポールの攻防史

欲望が止まらない。

ずっとごまかしてやってきたが、そろそろ僕とポールさんの間に生じた問題を解決したい。


これは前回の個人輸入にまつわる物欲螺旋男の記事の続きだ。

前回は冬山に向けた装備の買い足しだったが、せっかくの個人輸入。

送料の事を考えると、今ここでアイツも買うべきじゃないのかと思い立つ。

アイツとは、あの悲しみのリコールによって大失敗に終わったトレッキングポールだ。(参考記事

ビートルズにポールが必要不可欠なように、僕の登山にもポールは無くてはならぬものだ。



僕はこの数ヶ月ずーーっと考えていた。

僕の壊れたレキのポールはリコールにより部品の調達が出来ずにずっと修理不能。

いつ部品が入るのか、そもそも部品が来るのかすら分からない状況がずっと続いている。


以来、なんとかごまかして生きている別々のポールを使ってきたが、そろそろ気分的にも限界。

そこで、今度こそ間違いの無いベストなポールは何かを模索し続ける日々が続いていた。

そんな最中に今回の個人輸入だったから、ついに新たなトレッキングポールご購入の運びとなった。


そんな僕のトレッキングポールにまつわる悩みまくった苦悩の歴史を振り返る。


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僕の初めてのポールは「マジックマウンテン」というメーカーの、2本で6000円くらいの安価な物だった。

でもアンチショックも付いてる上にとても軽量で丈夫だったので、結構気に入って使っていた。

しかしこのマジックさんの片っぽが、僕が藤原岳でシリセード中に失踪。(参考記事

必死の捜索も空しく、マジックさんの1本はマジックのように消えてしまった。

その時のへこんでる男の図↓

IMGP5223.jpg

この時の悲劇を機に、一生使える最高のポールを購入しようと画策。

そして手を出したのが、ポール界のメルセデスベンツこと「レキ」のポールだった。

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LEKI(レキ)

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IMGP5721_20120829165916.jpg

このポールの持ち手の部分が非常に気に入っており、下山時は持ち手の頭の部分がとてもしっかりと手に馴染んでとても重宝していた。

やっと一生物のポールを手に入れたと喜んでいた、そのわずか半年後。

片っぽのポールの継ぎ目が突然スカスカに。

修理に出したらまさかの「リコール」によって修理不可能のお達しで、瞬く間に僕を悲しみの淵に突き落として来た。


これ以降、左手に「マジックさんの生き残り」右手に「リコールさんの生き残り」を持って山に登るという状況下に置かれる事になる。

この「左はスペアタイヤで右はスタッドレスタイヤを履いて走行している」かのような不快感を、もう何ヶ月も楽しんでいるというわけだ。


こう見えて僕は左右バラバラなの事が、性格的に許せないしそもそも美しくない。

上半身ぷよぷよで下半身ムキムキの僕が言うのもなんなんだが。


もはや「レキ」に激しい不信感を抱いてしまった僕は他社の物で自分にあったポール探しの旅に出た。

今回も前回に引き続きマニアックな記事なので、好き者だけご入店ください。


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最初は「アンチショックで長さ調節はすべてワンタッチのロック式」という観点で探していた。

やっぱり現場でサイズ調節する際にいちいちクルクルやってるのは面倒だから、調節はあくまでもワンタッチロックだろう。

そこでヒットしたのがブラックダイヤモンドの「トレイルショック」。

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これは二段ともフリックロックだし、アンチショック機能もレキみたいに繋ぎ手部分にあるわけじゃないからリコールで部品がないなんて事にはならんだろう。

アンチショック機能は構造的に持ち手の中にあるという画期的システムで、見た目もカッコよろしい。


でもこいつは結構重量がある(2本で556g)ことが難点だった。

軽さは僕の中では非常に重要な要素なので、この重さはいただけない。


そしてそもそもアンチショック機能はいるのか?という疑問が浮上。

僕は今までその恩恵を感じた感じた事があまり無いぞという事に気付いた。(人によるだろうけど)

アンチショック機能があれば手が疲れないというが、そもそもポール自体が重かったらそれで疲れちゃうじゃないかと。



そこでアンチショックはいらないから軽量のものでワンタッチロック式のものを探した。

すると、なんとあのヘッドライトでお馴染みのペツル社が素晴らしいトレッキングポールを出していた事が判明。

「Compact Composit」って商品で、カーボンで出来ているからスペシャルに軽く、且つワンタッチのロック式。

2本合わせて420gしかないという驚きの軽さ。(参考ページ


「これは来た」って思ったけど、日本では取り扱ってる店も少なく値段も高い。

生産も終了しているらしく、もはや骨董品のような扱いで少数店舗が取り扱っている。


それこそ修理や部品の取り寄せなんかで難儀しそうだし、ポールに2万近い金を出す気にはなれない。

そしてカーボンはアルミに比べて強度的に若干心配な部分もあった。

せっかく見つけ出したけど、残念ながらこいつはボツだ。




そこで思った。

ワンタッチロックのシステムって、レキのを使っていて思ったけど意外とそこまでスペシャルに便利なものじゃなかったじゃないかと。

結構地面に突いた勢いで縮んでしまった事があったし、縮まないように調節したら今度は固くなって長さ調節に難儀したりしたぞ。

そもそも長さ調節なんて持つ手の場所を変えればいいだけの話じゃないかと。

だったら軽量重視でこれでいいじゃないかと。

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こいつは長さ調節は出来ないけど、持ち手の部分が長いから調節は持つ場所を変えればいいというシンプルな心意気。

無駄な物を一切排除した軽さは脅威の2本で340g。

さらに軽いカーボン製のウルトラディスタンス(270g)ってのもあるけど、さすがにこれはトレランじゃない限り強度に不安がある。


でもやっぱり多少のサイズ調節がワンタッチで出来ると最高なのになあって思っていたら、そんなのがあった。

ブラックダイヤモンド(BlackDiamond) ディスタンスFLブラックダイヤモンド(BlackDiamond) ディスタンスFL
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重量は460gまで上がってしまうが、上段だけで15cmくらいの高さの調整が出来る。

ここら辺がちょうどいいラインだと判断。

コンパクトに折り畳めてザックに入るから、以前の藤原岳のようにポールを失うことも防げるではないか。


さあ、購入だって思ったらなんと冬用のスノーバスケットが取付けられない事が発覚。

これじゃ雪山ではズブズブ埋まって使い物にならない。

一応このタイプの冬用モデルが出てるんだけど、なんか重量もアップした挙げ句に色味がダサい。

さらによくよく考えてみると、やっぱりブラックダイヤモンドのポールは下山時に持ち手上部では体を支えにくそうだ。



結局振り出しに戻って呆然とする。

そんな僕の前に現れたのは因縁のアイツだった。

それはやっぱり「レキ」さんでした。

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結局軽量さは今までの物とほぼ変わらないが、「折りたたみ式である」「十分な強度」「スノーバスケット可能」で、何よりも一番気に入っているエルゴノミックな取っ手の構造。

軽さだけは折りたたみ式なのに500gと残念な部分だが、僕は下り時に結構体重をかけるやり方だからこのくらいの強度は必要だろう。

そして因縁のレキだが、アンチショック機能も無く、継ぎ目も調整しない仕様のものだから、リコールで部品がどうこうという心配も無い。

もう、壊れるとしたら「折れる」くらいしか無いからだ。


という事で前回の個人輸入にこいつを潜り込ませた。

結局元の鞘に納まってしまった感じ。

理想は行く山に応じてコイツとブラックダイヤモンドのディスタンスを使い分けると最高なんだろうが、今後暫くはこのマイクロスティックで落ち着きたい。

もし次にリコール起こしやがったら本気で怒るぞ、頼むぞレキ。


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と、ここまでが昨日までに書き上げた記事。

でもさらにさらに僕の中のモヤモヤがスッキリしない。

よくよく考えてみると、これじゃあ今まで使っていたやつが折りたたみ式になっただけの話じゃないか。

重量も重い500gだし、何よりせっかく買うのに新鮮味も無い。

その上、輸入で買うにもかかわらず13000円くらいする。


急速に我に返ってすぐに注文をキャンセル。

さらに調べに調べまくった。

そして最終的には結局コイツに落ち着いた。

ブラックダイヤモンド(BlackDiamond) ディスタンスブラックダイヤモンド(BlackDiamond) ディスタンス
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もう無駄な物なんていらないんだ。

物事は突き詰めて行けば自ずとシンプルな物に落ち着くのです。

そして背中を後押ししてくれたのがこちらの二つ記事達。


・ディスタンスに自作でスノーバスケットを取付ける方法(こちら

工作が必要だが、これで冬場でもスノーバスケットを取付けることが出来ると分かった。


・ザックの前面にポールを取付ける方法(こちら

これなら岩場の時はササッとザック前面に取付けて両手がフリーになる。

いちいちザック背面にしまう手間が省けるから、これってかなり僕の中でスペシャルヒット。

折りたたみ式で軽量なディスタンスならではの芸当だ。


さらにアシストは続く。

CAMPSAVERでこのポールがなんと40%オフという驚異的な価格。

ただでさえ安くて円高なのにさらにセール中ということで、日本だと1万くらいするのに4800円程度で購入する事に成功。

これなら例え不具合があってもショックは少なくて済む。


ポチッとご購入。

やっとこれで長かったポールの悩みから解放されそうだ。

なんだか疲れ果ててしまったよ。



結局は前回と今回の記事は、第二子誕生前の最後の散財のご報告でした。

そもそもリコールが無ければこんな苦労はしてなかったんだけどね。

トレッキングポールごときでここまで悩む奴も珍しいけど、僕の場合は石橋を叩いて渡っても突然橋が大爆発するような不意の事態が多々あるからこのくらい悩んだ方が良いのだ。

ハッキリ言ってポールなんて木の棒でも十分ですよ、みなさん。


もはや段々と趣味になって来た。

恐るべし欲望の螺旋。

大昔のイヌイットのように、僕の頭に「貯金」という概念はない。

これでもし入院中の一眼カメラが完全死していたら僕の貯金も完全に死んじゃうね。

まあそうなってもこの新しいポールさんが僕を支えてくれるだろう。

なるようになれだ。


Let it Be.

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