◉ りんころ成長記

エロ太郎とマゾ太郎〜ブレない男達の春の祭典〜

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前回お送りした37歳春の脱走劇。

胃腸風邪から始まった、ある一人の養子男の反抗心が産んだ涙の回だった。(参考記事:ムコドノ脱走〜37歳の地図〜


わずか一日での捕獲騒動の後、自宅内の暗い一室に隔離された男。

その後も男の「ええ、どうせ私は菌ですから」といった大人げない抵抗は続き、嫁とは一言も口を聞かない日々。



そんな中、いつものように暗い一室でいじけているとお義父さん達の会話が聞こえて来た。

「明日はりんちゃんの入園式だな」と。



なんて事だろう。

僕はりんたろくんの入園式が明日だって事を今初めて知ったぞ。

何も聞かされてなかったという驚愕。

自分の子供の入園式の日をまさか盗み聞きで知る事になろうとは。


というか、こんな夫婦仲が険悪な状況で入園式に突入して行くこと事態が実にハードだ。

しかし大人の事情でりんたろくんの晴れ舞台を台無しにするわけにはいかない。

今回の夫婦喧嘩は時間が解決してくれると思っていたが、そんな事も言ってられなくなってしまった。


こうなったら必殺技を発動するしかない。

夫婦円満奥義「なかった事に作戦」だ。


今回の一連の騒動を強引に「なかった事」にしてしまおうという荒技。

これは「お互いに一歩も譲れずに謝る気もないが、急を要する事態が迫っていて夫婦円満にならなければいけない場合」にのみ繰り出してよい奥義。

恐らく多くの「おしどり夫婦」と言われる芸能人が、ケンカ中でもテレビ出演を余儀なくされた時に使用している技だろう。


僕は隔離部屋から徐々に顔を出し、何度か家族の目の止まる場所に登場してさりげなく存在をアピール。

そしていつの間にかリビングに居座り、何事もなかったようにお茶をすする。

そして何事もなかったように、お義父さんに「明日、天気悪そうですね」と日常会話を振る。

で、徐々に家庭の空気感に溶け込んだあたりで、おもむろに嫁に対して「明日の入園式は何時からだ?」とごく自然に切り出す。

まさに高速道路に自然に侵入して行くあのタイミングだ。


淡々と繰り返して行く日常会話。

家出した過去を無理矢理に風化させようという、一世一代の渾身の日常会話。


こうして見事に「なかった事作戦」は功を奏し、強制的にではあるがなんとか入園式に向けて体裁を整える事に成功。

なんとか冷戦夫婦から仮面夫婦まで持って行く事が出来たぞ。

結果的にはまたりんたろくんに助けられた形になったね。


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入園式当日。

玄関の前で陽気にポーズを取るりんたろくん。

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そして背後には微妙な距離感の仮面夫婦の姿が見てとれる。

くしくもこの日は「不要な外出は控えるように」とテレビが言う程の大嵐。

まるで現在の我々夫婦の関係性のようなドス黒い雲と突風の嵐の日だった。


写真では分りにくいが、保育園は散った桜が竜巻上に巻き上る壮絶なトルネード会場と化していた。

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保育園は瞬く間に、お母さん達のスカートがマリリンモンロー的に巻上るスペシャル会場に。

でもお父さんも砂まみれで目が開けられないような状況。

これも悪天候男の僕のせいなのだろうか?

会場の全ての人に対して謝って回りたい気分だ。


一方でりんたろくんは終始ゴキゲンだ。

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風が吹くと、お父さん譲りの彼の天然ソリコミがあらわになる。

彼も30年後には僕のようなM字ハゲのM野郎になってしまうのだろうか?


しかし部屋に入れば、お父さんとは真逆の「人見知りしない協調性」ですぐに周りに溶け込んだ。

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感慨深く彼を見つめるお父さん。

これまで山や川で「濃密すぎる親子だけの時間」を過ごして来ただけに、これしきの事でもちょっぴり寂しくなってしまうものだ。

これで彼も「変なお父さん」から解放されて、やっと人並みの子供として成長して行く事だろう。


そして最近はだんだんと「兄」としての自覚が出て来たのか、ひたすらに赤ちゃんの世話をし始める。

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いつもお母さんやお父さんがやっているのを見ていたんだな。

これには自然と仮面夫婦の顔からも笑みが浮かぶ。

そして気がつけば普通に会話をしている夫婦。

子はかすがい。

彼には感謝しなくてはいけないね。


でもそれじゃ、こーたろくんの頭に血が上っちゃうぞ。

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彼が再現しているのはこーたろくんではなく、お父さんがお母さんに虐待されている姿なのかな?

ああ、ついにはこんな事に。

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この赤ちゃんが他人の気がしない。

頼むからもうちょっと優しく扱ってください。お願いします。


そうこうしていると彼のエロ太郎スイッチオン。

かわいい子を見つけると、にじり寄ってガン見を繰り返す。

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顔が真剣すぎてやばいぞ。

だから顔、ヤバいって。

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こんな錦三丁目的なおっさんエロ顔の3歳児を他に知らない。

ポジショニングも見事で、男の子は皆後ろなのに彼だけ女性に挟まれたポールポジションをキープ。

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他の子は遠慮がちに手を添えているだけなのに、彼だけはがっちりとロックオン状態。

お父さんにも学生時代にこれくらいのガッツがあればよかったんだが。

彼に教わる事は多い。


やがて入園式開始。

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しかし僕の席からは、ボリューミーに盛られた前席のお母さんの頭でりんたろくんが微かにしか見えない。

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結局僕は式の大半を、息子の晴れ姿ではなく、知らないお母さんの晴れ後ろ姿を見て過ごした。


それでも要所要所で身を乗り出してりんたろくんをカメラに収める。

在園児が歓迎のお歌を披露。

一緒にお歌を歌っているかな?

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なんて失礼な男だ。

せっかく歓迎のお歌を歌ってくれているのに、露骨に拒否しているぞ。

「俺はただではお前達の色には染まらないぞ」と言った反骨精神が伺える。


次は何気ない姿も撮影してやろう。

ふいに身を乗り出して取った写真。

そこには園長先生がお話ししている最中に、思いっきり後ろを向いてカワイイ子をガン見するエロ太郎の姿が写っていた。

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逆に凄いな、あんた。

まじまじと見るのはやめなさい。


続いて先生達の自己紹介。

給食担当の人が「みんなに美味しい給食とおやつを用意している〇〇です」と、お菓子を見せながら自己紹介。

すると、何やらお菓子に反応して前に飛び出して行った子がいるぞ。

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あの後ろ姿は間違いなく我が子だ。

そして皆が注目する中「お菓子お菓子ー」っと先生に催促している。

まるで戦後の「ギブミーチョコレート」を彷彿とさせる、ひもじさ全開の少年の登場だ。


こうして冷や汗にまみれた入園式が終わった。

その後も彼はガールズトライアングルのセンターに陣取り、

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早くも所帯持ちのような光景に。

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彼にはとてつもないジゴロの才能があるのだろうか?

それともおねえ的な気質が芽生え始めているのか?

どっちにしても将来はお父さんみたいな顔になるんだ。

モテてるうちに、精一杯人生を謳歌しておきなさい。


まあ、何にしても入園おめでとう。

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これから楽しい保育園生活の始まりだね。

お父さんにも保育園の良い思い出がるよ。

誰かが僕を指差して「先生、〇〇くんが臭いです。ウンコもらしてます。」とリーク。

僕はかたくなに「ボクはウンコもらしてません」と言い張り、先生は必死で僕を擁護してくれた。

まあ、もらしてたんだけどね。

そこで先生から「やさしさ」ってものを教えてもらったんだよ。


何はともあれ君のおかげで何とか夫婦仲も回復傾向だし、助かったよ。

がんばれよ、りんたろう。


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翌日。

新たなスタートを切った息子に負けじと、お父さんも動き出す。

ここんとこ胃腸風邪で何も出来なかったが、やっと完全回復したから久しぶりにランニングだ。


桜が咲き始めた頃に発病し、やっと動けるようになったらと思ったらすっかり桜は散った後。

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昨日の嵐で完全に桜が持って行かれたんだな。

それでもまだかろうじて屋台も出てて、やっとこさ花見気分のランニング。


りんたろくんも新生活がスタートしたし、お父さんも今日からが本当の意味でのスタートだ。

これから徐々に暖かくなって、いよいよ本格的なアウトドアシーズンだ。

体調も戻ったから、この健康体を引っさげて遊び倒すぞ。



と思った矢先。

何もない平地で激しく右足をグネった。

あまりの唐突なグネりっぷりに何の対処も出来ず、美しすぎる大転倒が炸裂。


桜が散ったとは言え、よりによって桜の名所を走っていた男。

花見客とガードマンが男の一部始終を目撃。

僕はあまりの恥ずかしさに後ろを振り返ることが出来ず、びっこを引きながらとりあえずその場から逃げるように退散した。


しかしあまりの足の痛さにそれ以上動けず、人がいない場所でうずくまる。

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散った桜が空しさに拍車をかける。

「さあ、これから僕も元気な体でアウトドアシーズンスタートだ」なんて息巻いていた数分前が、まるでウソのような痛々しい光景。


ただでさえ出て来る前、嫁に「病み上りにそんな無理するもんでいつも痛い目に遭うんだ」と言われたばかり。

もしこれでお義父さんに車で迎えに来てなんて電話しようものなら、間違いなく嫁に勝ち誇った顔で「ほれみたことか」と言われるのが目に見えている。

それだけは絶対に避けたい。

僕はひたすらに足の痛みが引くのを待ち続けた。


その間、嵐の暴風が汗冷えした僕に吹き荒れ続ける。

やがてガタガタと震え出した頃に、「今だ」という号令とともに雨が降り注ぐ。

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僕の親友の「雨さん」が、快気祝いに駆けつけてくれたのだ。

これには僕の体も喜んで反応して、みるみる冷えて行った。


足の痛みが大分引いた所で、ボロ雑巾のように歩きながら帰途につく病み上り男。

弱った体と心にしんしんと雨が降り注ぎ、暴風の祭り囃子が鳴り止まない。


こうしてりんたろくんの新生活スタートに合わせ、お父さんも美しすぎるマゾスタートを切った。

もちろん家に帰ってからも、かたくなに足を痛めただなんて言わない。

かたくなに「ボクはウンコもらしてない」と言い張っていたあの頃と何も変わっちゃいない。

青木裕子風に言えば「ブレない素敵なお父さん」と言った所か。



そして今朝。

お父さんは喉の痛みで目が覚めた。

間違いなく「風邪」を召している模様。

胃腸風邪明けの風邪男。


春の祭はまだまだ終わらない。



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MATATABI BASE

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コメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんにちは。楽しく読ませてもらいました。写真が綺麗でオシャレなブログですね。このブログを今後も参考にさせてもらいます。ありがとうございました。

    • yukon780
    • 2014年 2月 25日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    萌音さん、ありがとうございます。
    オシャレなブログなんて言われた事無いし、どっちかと言えば変なブログですが何かの参考になったようで何よりです。
    今後ともよろしくお願いします!

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