週末の土曜日。
父親の十三回忌のため、さすがに山には行っていない。
久しぶりに喪服を着たらブカブカだった。
確か一番太っていた時期に買ったもので、今後も太るだろうと予測して買ったアジャスター付きのやつ。
痩せた嬉しさもあるが、まるでボンタンヤンキーのようだ。
ベルトが全然余ってしまったから、穴をあけようとしてバックルを壊してしまった。
代わりになるようなベルトも無かったから、普段しているゴッついベルトで喪服を着た。
そしてネクタイをしようとした瞬間、背中にピキッと電流が走る。
右肩甲骨の下。
お馴染みの場所が、またしてもツってしまった。
この場所は、一冬の間に必ず最低3回はツって僕を苦しめる。(参考記事:冬の手前のミステリー)
ほんとに一体どういうシステムになっているんだ?
普段スーツを着る事が無いから、たまにフォーマルな格好をするとなぜか体のどこかを痛める。
もう僕は、堅苦しい格好を受け付けない体になっているようだ。
もう少し、機動力重視のフォーマルウェアは無いものか?
できればGORE-TEX素材で、吸湿速乾に優れたものが理想だ。
そんなこんなで、日帰りだけど久しぶりに実家に帰った。
そこには、以前紹介した(参考記事:ガラスの少年時代)ジュリがヨボヨボになって佇んでいた。
もう目もよく見えなくなって、耳もかなり遠い。
かつて矢作川限定カヌー犬として一時代を築いたジュリだったが、寄る年波には勝てなかったか。
今は矢作川を飛び越えて、三途の川へと漕ぎ出そうとしている。
さすがにその川では僕はコンビを組む事は出来ない。
できるだけ、長生きして欲しいものだ。
さて、ひと足先の13年前に三途の川へリバーツーリングに行ってしまった父さんに会いに行く。
お墓はなく納骨堂なんだけど、ここのお寺さんが画期的だ。
向かった先は西本願寺の西光寺。
これ、一応お寺です。
本場インドのお寺の様式を継承しつつ、モダンにアレンジした建物。
お寺にして、グッドデザイン賞も受賞している。
この建物は裏路地のさらに裏の裏にあるから、知らない人が発見する事は不可能だ。
内装はこんな感じで、まるで教会のようだ。
最初は「どうなの?」って思ったもんだが、ここまでやってくれると痛快だ。
お寺だからって、なにも「お寺お寺」する必要は無いんだ。
芯さえしっかりしていれば、これくらいの個性もアリだろう。
久しぶりに父さんに挨拶。
思えばこの人も変わった人だった。
普段は無口で何も喋らない。
体格は相撲取りで、いつも横になって寝ていた。
休日になれば、何も言わずふらふらと山や神社仏閣をうろついては帰って来る人だった。
そして帰って来ても、どこに行って来たとかの話もせずまた眠る。
暑い日なんかは、パンツ1枚で外をうろつくからほとんど変態だ。
おそらく僕の放浪癖は、この人からの遺伝と思われる。
よく怒られてビンタを食らったが、いつも以上に猛烈に怒った事がある。
母さんの話だと、どうやら僕は裸で寝ていた父さんの乳首をハサミで切ろうとした事があったらしい。
今になってはなぜそんな事をしたのか思い出せないが、多分子供ながらに「切ったら生えてくるんじゃないか」と思ったんじゃないだろうか?
僕もふいにりんたろくんに、乳首を切り落とされないように注意をしなくてはならない。
でも未だに尊敬している事がある。
ある日、警察から家に電話がかかって来た。
どうやら火事の中から人を救い出した人がいて、それが僕の父さんだったらしい。
そんなビッグな出来事があったにも拘らず、彼はいつものように何も話す事無く日々を過ごしていた。
普通自慢げに人に話したくなる出来事なはずなのに。
父さんは警察からの感謝状も固辞した。
父さんの中では、当たり前の事をしただけだったんだろう。
そういうところが、今でもとても好きな所だ。
ジッと出来ずにパンツ一丁で町を彷徨っていた父さん。
休みの日にはジッと出来ずに、川や山にいってしまう僕。
お経を読んでるお勤め中に、ひとつもジッと出来ない息子りんたろくん。
放浪野郎の系譜は脈々と受け継がれて行くのだ。
放浪野郎の系譜
記事が気に入ったら
股旅ベースを "いいね!"
Facebookで更新情報をお届け。
MATATABI BASE
この記事へのコメントはありません。