◉日々のツレヅレ

もんもんサンデー

覚悟は出来ていたはずだった。

今週の日曜日は嫁がエステで、僕はお留守番だって分かっていた。

昨日、背中もツッて首だって回らない状態だ。


なのに止まらないロマンとため息と貧乏揺すり。

溜まって行くフラストレーションと、やり場のない心の叫び。

そんな僕を挑発的に見下ろす快晴の伊吹山。



快晴時のお留守番野郎の、悶々とした日曜日の一日を振り返ってみよう。


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今年に入ってから、日課にしている事がある。

それは毎朝、起き抜けの「伊吹山状態チェック」だ。


次回の雪山登頂目標に掲げている冬山中級レベルの山。

だから出来るだけ快晴・無風の日のアタックデーを僕は待ち続けて来た。


しかし伊吹山ってやつは中々快晴にならない山で、平地が晴れててもいつも雲の中に隠れている事が多い山だ。

以前にそこそこ晴れたチャンスデーの時、僕は無念にもアンパンマンミュージアムに行く事になり涙をのんだ過去もある。


そんな中、今回の日曜日の朝の伊吹山チェック。

家から見る伊吹山は、今シーズン最高の晴天に包まれていた。

IMG_0224.jpg

今まで見た事も無い程の快晴。

雲一つない上に、風も無風に近いほど穏やか。

伊吹山が手を広げて、「さあ、私を抱きなさい」と言っているようではないか。


でも、でも、でも今日はお留守番。

背中も痛いし、トレッキングポールだってまだ1本しかない状態。


僕は目覚めてから30秒で床に膝をついた。

起き抜けのKPP。

なぜ、なぜ今日なんだ?


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こんな日に、どうしてみんな平然と家でテレビを見てられるんだ。

嫁もご両親もインドア派なので、僕の懊悩を計り知る事は出来ないだろう。


僕は何度も大きな溜め息を吐く。

時折、衝動に耐えきれずに体が「ビクッ」と動く。

頭をかきむしる。

心の中にムンクの叫びの情景が広がって行く。


そんな中、嫁とお義母さんが買い物に出かけた。(嫁がエステに行くのは午後から)

そこでりんたろくんがナイスアシスト。

ついて行くと言ってだだをこね始め、結局りんたろくんも買い物について行った。


しめた。

これで2時間程の発散タイムが確保されたぞ。


僕はギャバン並みのスピードで戦闘服に着替えて、車で飛び出して行った。



向かった先は池田温泉の道の駅。

IMG_0225.jpg

登山なんてもちろん無理だから、この限られた時間で己の体をいじめ抜く。

要はランニングなんだが、いつもと違う所を走る事によって多少「旅をした感」を味わいたい。

もちろんツった背中の痛みはあるが、短時間でマゾを楽しむにはある意味調度いい痛みだろう。


道の駅から出発。

池田山の山麓道なので中々にアップダウンのある道だ。

ちなみにこの時点で手袋を忘れた事に気がつく。

あの例のiPhoneをザクザクに操作してしまう、優れもののグローブだ。(参考記事:聖なるピンチヒッター

こんな時こそ必要なのに。

寒さで手を真っ赤にしながらも、坂道を駆け上がって行く。


やがて池田山の登山口が見えて来てしまった。

IMG_0228.jpg

ウズウズが止まらない。

今にもこのまま登り出して行ってしまいそうだ。

しかし時間は限られている。

留守番しているはずの男が、池田山の山頂にいるなんてあっては行けない事だ。

僕は後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。


でもここのコースは中々眺めがよく、気分よく走れる。

IMG_0229.jpg

気分よく走れるって言っても、それは普通の日の話。

今日の僕は天気が良いほどに、気分が悪くなって行く。


早くそんな悶々気分を振り払いたい。

こんな時は足腰が立たない程に自分を痛めつけるのが吉だ。

ランニングなのに、坂道をひたすらダッシュして行く。

IMG_0232.jpg

ああ、いいぞ。

大分気分が落ち着いて来た。

もう心肺がバクバクの足ガクガクで、山に登りたいなんて気も無くなって来たぞ。

僕はこうでもしないと落ち着けないのか。

マゾとして生きて行くのも楽じゃない。


そんなことしていたら、天も粋な計らいをかましてくる。

ちょっと前まで雲一つない青空だったのに、凄い勢いで雲が頭上に広がった。

IMG_0233.jpg

見事という他ない。

瞬く間にいつも通りの環境へと追い込まれた。

町の方はまだカンカンに晴れているのに。

IMG_0234.jpg

写真を見てお分かりの通り、僕の頭上にだけ雲が覆っていて境界線もハッキリだ。

こんなクラウドサービスなんていらない。

僕は天にマイナス運気をアップロードし、雨雲をダウンロードする。

次々にバージョンダウンして行く僕の幸せOS。

もう割り切って走り続けるしかない。



ちなみにここは「揖斐茶」の栽培地で有名な場所だ。

IMG_0239.jpg

かつてサッカー日本代表監督にオシムが選出された際、この土地は大いに盛り上がった事があった。

イビチャ・オシムの名前の「イビチャ」に無理矢理乗っかって、強引に「いび茶」を売り出そうと必死のプロモーション活動が展開された。

千載一遇のチャンスとばかりに町ぐるみで盛り上がった結果、まさかのオシムの電撃病気退任。

以来、この町は静けさの中から這い上がれていない。


そんな悲しみの茶畑を眺めながら走っていると、こんな人を発見した。

IMG_0238.jpg

遥か遠くの、終わってしまった南アフリカのワールドカップに思いを馳せているのだろうか?

時勢に乗り切れなかったこの町を、僕も切ない気持ちで走らせてもらった。



終盤に差し掛かり8キロ地点。

懐かしい痛みが僕を襲う。

IMG_0241.jpg

まるで心臓病をおしてサッカーをする三杉君のようだが、さにあらず。

こすれにこすれた乳首が悲鳴を上げたのだ。


急いで家を出て来たから、乳首に絆創膏を貼り忘れて来てしまった。

痛恨のミスだ。

この写真は自分撮りをするために片手になっているが、この時以外は両手で乳首を押さえながら走る。

ハァハァ言いながら、両手で胸を押さえて苦悶の表情を浮かべながらの変態ランニング。



そんなハプニングがありつつ、なんとか10キロ完走。

嫁達の買い物が終わってしまうので、急いで帰宅した。


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帰宅後すぐに昼メシを食って、休む間もなく嫁を駅へと送って行く。


たかだかエステに行くのに、1時間くらいかけて電車に乗って行くなんて僕にはまるで理解出来ない。

そんな暇と金があるなら、登山靴買って山に登った方がよっぽど痩せられるのに。

もちろんそんな事は言えません。


それどころか、なぜこんなことを言われたのか覚えていないが「全裸で逆さにして玄関に吊るすぞ」って言われる始末。

わざわざ駅まで送ってあげてるのに、この言われようといったらどうだ。

それでもめげずに無事駅まで送り届けた。


さあ、僕はここから素直に帰るような男じゃない。

帰りにちょっとだけ「本屋さん」へ寄り道しますとお義母さんには言っておいたのだ。


わずかな時間でも、天気の良い日にじっとしてるなんて出来ない。

もちろん僕が向かったのは本屋さんではない。

急いで駅の近くの市民センターへ向かった。

ここにはサーキットトレーニングルームがあるのだ。



入口を入ったら、こんな看板があって一瞬ビックリした。

IMG_0243.jpg

力強い書体で、何やら凄い卑猥な事が書いてある気がしてならない。

「ボカシ」ってなんか肥料みたいなんだけど、どうしても別な感じで捉えてしまう。


気を取り直して、100円を払って誰もいないトレーニングルームへ。

IMG_0242.jpg

全マシン13回×3セット。

グハグハ言いながらの無休憩ノンストップマゾダンシング。

最後にはへろへろになって、足もふらついて吐きそうだ。


ここまでやれば、さすがにもう山に登りたいなんて気が無くなって来た。

やっと落ち着いた日曜日を過ごせそうだ。


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本屋に行っていたはずの男が、なぜかフラフラになって帰宅。

ここからは子守りタイムだ。


2階のパソコンで、YouTubeのアンパンマン鑑賞。

りんたろくんはすっかりのめり込んでいるが、お父さんは退屈でしょうがない。

次第にジッとしている事に我慢ならなくなって来た。


そこで僕は画期的な子守り方法を開発。

IMG_0245.jpg

この方法なら子供の様子を見守りつつ、別の部屋で溜まっていた録画番組を消化しながら、なんと踏み台昇降まで出来てしまうじゃないか。


こうして、ここからはひたすら踏み台昇降。

とにかく動き続ける事が重要だ。

晴れた日の僕には、それしか救われる方法はない。


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やがて夕方になり、嫁を迎えに行った。

僕は朝からの蛮行によって全身が汗臭くなっていて、嫁が車に乗って来るなり凄いしかめっ面をされた。

迎えに来ているのに、何だかやるせないね。



そして帰ってりんたろくんにメシを食わせて、僕もメシを食って、一緒に風呂に入って、歯を磨かせ、寝かしつけつつ僕も寝る。


完璧なる隙間のない日曜日の完成だ。

留守番デーといえども、やろうと思えば一日中動き続けることが出来ると判明した。

なんとか快晴の日曜を、ストレス溜めずに突破する事に成功したのだ。



しかし翌日。

僕は激しい筋肉痛と、悪化した背中の痛みを抱えて出勤する事になる。


何事も「ほどほど」が肝心だ。

でも体はボロボロになってしまったが、心が砕けるよりはマシか。




放浪病に侵された者には、今回のような症状が現れます。

あなたの旦那さんは大丈夫ですか?


僕が女なら、こんな男とは一緒にいたくはない。

そんな事を思った、快晴の日曜日でした。

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