富士山/静岡

富士6苦フェス〜エピローグ〜

みんなと別れ、僕は岐阜を目指し動き出した。

ここからは家までの、5時間ロングドライブ地獄が待っている。

30時間以上不眠不休の体調で、それは結構なハード登山に等しい。

タイムリミットはりんたろくんのお風呂の時間(8時半頃)までに家に帰らねばならない。

基本的に僕が子供を風呂に入れなければ、僕は嫁から恐ろしい仕打ちを受けるのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

運転を始めてわずか10分程。

強烈な眠気が僕を襲う。

何度も意識を失い、ビクッと起きては急ブレーキ。このままでは事故ってしまう。

限界だ。次の路肩駐車スペースが出てきたら、仮眠をとろう。


最初のスペースには車が止まってた。

次のスペースにはなぜか救急車が止まってた。

次もなぜか警察の車が止まってた。

次は事故直後のバイクと携帯で電話をする男が。


止まれないじゃないか。

しかも全体的に良く分からない状況になっているぞ。何が起きてる。

そんな事よりも、目を開けているのがやっとの状態だ。

頼むから休憩させてくれ。


結局、そのまま町まで出てしまって手頃な休憩場所がない。

とりあえず腹も減ってきたので、飯を食おう。せっかくだから富士宮やきそばでも食ってみるか。

富士宮やきそばののぼりが立っていたので、体をふらふらさせながら一件のお店に入る。


やきそばを注文してから、実に30分程が経過した。

なぜだ。焼きそばだぞ、なんでこんなに時間かかるんだ。

僕の他に客は3人程。別に混んでる訳じゃない。

だめだ。もうここで寝てしまおうか。

そう諦めた時、やっと焼きそばが出てきた。

しかし、出来立てのはずの焼きそばがなぜかぬるいじゃない。

でもつっこむ元気もないので、もさもさと焼きそばを食す。


店を出て、見上げるとそこには富士山が。

IMGP1046.jpg

あそこを登ってきたんだね。

でも油断はしない。家に帰るまでが登山だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お腹も満たされて眠気モードは最高潮だ。

延々と東名高速を走らせる。

恐らく、何度か白目になって運転していたはずだ。

愛知県に入ったあたりで限界の限界が来てしまったので、嫁に電話して一つの提案を試みてみた。


「さすがに事故りそうだから、岡崎(僕の実家)で泊まって明日の朝帰るじゃまずいでしょうか?」

すると嫁は「自分で考えな。」と言って電話を切った。

限りなく「NO」に近い言い草だ。

僕が提案を押し通したら、「育児よりも遊び」「ご両親に迷惑をかける」「家庭を顧みない男」のレッテルを貼られる分、たちの悪い言い方だ。

なんて女だ。本当に事故ってやろうか?

僕は苦渋の表情で岡崎インターを通り過ぎ、そこからさらに2時間のドライブを余儀なくされた。


やがて意識が朦朧としてきた。

実に朝起きてから36時間程が過ぎようとしていた。

さすがのジャックバウアーでも、36話目ともなれば意識は混濁となるだろう。

僕はサービスエリアで泥のように仮眠をとった。


1時間程の仮眠の後、再び走り出す。

フロントミラーを見た僕はビクッとする。

僕の目の白目部分は、その90%が充血で真っ赤になっていてまるで悪魔のような目になっている。

限界を超えた人間が辿り着く、ギリギリのラインだ。


僕は何度か「ああ、ああ」と奇声をもらしながらも、ついに8時30分頃家に到着した。

間に合った。りんたろくんのお風呂に間に合ったぞ。

荷物も置きっぱなしにして、家に入ると驚愕の光景が目に入る。

そこには風呂上がりのりんたろくんの姿があった。

夕方草むしりを終えたお義父さんが、汗を流すついでで入れてしまったとのこと。


だったら。 だったら岡崎で泊まってきてもよかったんじゃねぇぇ。


そう嫁に言うと「クサッ!近寄らんといて」という始末。

僕の中では富士山を遥かに凌ぐ、5000m級のS山だ。

そんな事言われても、もはや僕は風呂に入る気力さえも残っていなかった。

「りんちゃんかわいそー」という嫁を尻目に、僕はりんたろくんを抱えて2階へ。

生還報告の記事を書いて、エンターのボタンを押した時、この富士登山のすべてが終了した。

実に朝から42時間の時が経過していた。


僕はりんたろくんとともに泥のような眠りに落ちて行った。


富士6苦フェス 〜完〜


ーおまけー

この夜のりんたろくんは、よほどお父さんが臭かったのか、いつにも増して何度も激しく夜泣きをした。

その度に僕は起こされてあやす。

彼のドラマはシーズン2へと突入して行った。


そして一週間後。

本来僕が富士登山の日だと思っていた日は、バッチリ雨が降った。


そして僕の腰痛はあれから日々酷くなっている。

フェスティバルは終わらない。



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コメント

    • MIN
    • 2011年 9月 18日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    よくこの状況の中、生還報告書けたね〜(笑)
    すごいっす!しかし、静岡の店は、どこの店も出てくるのが遅いってのが通常なんかね。おでんも恐ろしく遅かったもんね(笑)しかし、ぬるいやきそば…。いやだー!!

    • B旦那
    • 2011年 9月 22日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    どもーB旦那改めC3-POです。
    この前の富士山は楽しかったですな。
    実はいろいろ大変なことがあったみたいで(笑

    こっちも、腰から下を完全に換装して全快であり。
    ところで、またも弾丸なんだけど、
    今週末土曜日に日帰り甲斐駒ケ岳なんてのを予定してるんですわ。

    もし暇ならどーです?
    ちなみにルートは以下に。

    北沢峠⇒双児山⇒駒津峰⇒甲斐駒ケ岳⇒
    摩利支天(余裕あれば)⇒駒津峰⇒仙水峠⇒北沢峠

    メンバは今回ボクとH君で突貫す。
    日本三大急登のドMワールドがあなたを待っています。
    (黒戸尾根ルートではないですが。。。)
    いいお返事期待してまっせー!

    • yukon780
    • 2011年 9月 22日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    腰が全快とはうらやましい限りです。
    僕は未だに腰の鈍痛が続いていて、激しいことが出来ずに悶々と日々を過ごしております。

    甲斐駒ケ岳、強烈に行きたい!
    でもその日は嫁に「たまには家族サービスしろ」と言われて、日本昭和村というところに行かねばならんのです。
    日本三大急登というフレーズが相当M心刺激しますが、まずは腰の完治と嫁の機嫌取りに邁進してまいります。

    また、誘って下さいねー!

    • B旦那
    • 2011年 9月 23日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    腰ではなく、家族サービスで…なのですな(笑
    まぁ、またどっかのぼりいくときは連絡しますね!
    とりあえず、今から南アルプスの女王落としてきますわ(*^-^
    それではー!

    • yukon780
    • 2011年 10月 02日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    がんばって来てください!
    またお話楽しみにしてます!

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