◉ 愛すべき旅道具

サンザイにバンザイ〜双子兄弟船の昼休み〜

私は馬鹿である。

はたまたキヨハラである。

何にせよ、欲望に逆らえぬ哀れな子豚である。


なぜいつもこの様な事になってしまうのか?

ダメだダメだと己を律するほど、我が闇への転落は加速してしまう。


今年の冬はアイス道具一式買ったし、お高いパーソナルトレーニングジムも始めた。

これによって私の個人貯金は、もはや風前の灯火だったはず。

もう今年の冬は何も買わないと心に決めたはず。


ではこれはなんだ?

今私の目の前に展開している、この見た事ないニューアイテムは何事なのだ?

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そう。

風前の灯火とは言え、まだ灯火が消えないうちは欲望列車は止まらない。

貴重な最後の灯火だろうと、何の迷いなく散財してこそ漢。

貯金残高を見て胸の奥がざわついてしまうのは、きっと武者震いに相違ない。

決して今になって急に怖くなってしまったからでは断じてないのである。


痛い散財だったが、これはあくまでも己の欲のためではない。

あくまでも愛すべき「仲間たち」のために捧げたブルース。

極上の「宴会」のためだけに我が身を引き裂いて買った、言わば愛の結晶なのである。



と、こんな感じで、やっちまった感が高い商品を買った時ほど無駄に前置きが長くなりますね。

ざわついた気持ちを落ち着かせるため、このように書かざるを得ないんです。


さて、そんな私が欲望に勝てなかったこの商品は、MSRの「ツインブラザーズ」というもの。

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僕が今持っているシャングリラ3のようなフロアレスシェルターで、さらなるビッグな空間をご提供してくれる小粋な双子の兄弟。

シャングリラ3でも宴会するには十分だったけど、どうしても4人も入るとキュンキュン感が強かった。

僕以外がキャッツアイの3人ならキュンキュン大歓迎だが、基本的に我が仲間は荒くれた野郎率が高い。

こないだの赤岳鉱泉では、「うまい棒臭いノッポ」「顔の濃いヤク中殺人鬼」「ホモいモンゴル人」という3人との濃密すぎる宴会となってしまった。

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やってやれなくはないし幕の張り方にもよるけど、正直これでは窮屈だ。

仲間にキャッツアイがいない以上、ここはアメリカの双子兄弟に助けを求める他なかったのである。


そんなメゾン・ド・ツインブラザーズの間取りは以下の通りである。

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4人が余裕で寝られて、我が身長と同じ高さ172cmの広々空間。

宴会場としては申し分ない広さ。

しかもこれなら雪中キャンプの宴会場だけに留まらず、夢のファミリーキャンプにおいても強力なアイテムとなって来る事も我が背中を押してしまった。

今までのシャングリラ3のネストを内部に組み込めば、相当快適なキャンプをする事が可能。

これは仲間のためだけでなく、わが愛する家族のための投資。

決して私欲で買ったのではない。

もう一度言う。

決して私欲で買ったのではない。

我が身を犠牲にして周りを幸せにするという尊い精神。

私はただただ皆の笑顔が見たいだけであって、物欲に負けた弱い男などではないのである。



だいぶ気持ちが落ち着いて来たぞ。

多少貯金残高の恐怖と罪悪感から解放されて、胸のドキドキも鎮まって来た。


そもそも事の始まりは、闇の物欲商人ランボーNが「シャングリラ8があれば超快適ですよね」と僕に囁いた所からだ。

でも製造元であるゴーライトは倒産し、今やシャングリラ8はオークションで20万とかの高値で取引されている始末。

で、そこから類似品を探す長い旅が始まり、辿り着いた先はローカスギアの「ソリス・シル」。

111.png

あまりにも美しいその佇まい。

そして1.87kgという脅威の軽さ。

これには一発で一目惚れしたが、いかんせん12万円という価格に一発でKOされた。


そこでヤフオク平原へと旅に出る。

そこでMSRのツインブラザーズが5万で売られていたのに目が止まる。

実は元々一昨年から欲しかった商品だったので、そこからは頭の中はツインブラザーズで一杯に。

でもお金ないから、落札ボタンをクリックするのをグッと堪え続けた。


しかし1週間経っても、2週間経っても売れないツインブラーズ。

売れたら諦めがつくと思っていた私は、その2週間ひたすら苦しんだ。

目の前で全裸の石原さとみが「5万で好きにしていいよ」と言っているのに、一切手を出さずに拳を握りしめて正座し続けていたような気分だ。


しかし3週目に突入した時。

ついに我が我慢も限界の時を迎えた。

何かがプツッと切れる音がしたかと思うと、私は石原さとみに向かってダイブしていた。

そこから先の記憶はない。


ハッと気づいた時には、もうすでにさとみは我が腕枕の中で眠っていた。

目の前に映るは「おめでとうございます。あなたが落札しました。」の文字。

「またやっちまった…」

そう呟いた時には、眩しいほどの朝陽が窓から降り注いで二人を包み込んでいた。



で、しばしの時を経て、石原さとみが出産してしまったのがこの双子の兄弟だったわけである。

もちろん週末まで我慢なんてできやしない。

出産翌日の会社の昼休み、近くの公園に行って早速双子兄弟と戯れる。


四隅をペグダウンして…

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ポール二本立てて…

できあがり!

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わずか2分という早漏設営。

シャングリラ3の六辺固定と違って、四角固定だから随分と簡単に感じる。

張り網でサイドもテンションかければ、より内部の空間は広くなる。

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さらに下部にスノースカートがあるおかげで、シャングリラ3の時みたいに多くの雪で空間を敷き詰める手間が緩和する。

これがあるとないとでは、結構設営の大変さは変わって来るはずだ。


そして内部のこの広々空間。

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152cmx213cmのオールウェザーブランケットが余裕ですっぽり。

高さも172cmの僕がジャストサイズですっぽり。

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これなら着替えも楽々。

フロアは雪だから、掘ってしまえばもっと居住空間は広がってしまう。


なんだかもうワクワクが止まらない。

午後もまだ仕事があるんだが、もう気持ちはすっかり雪山だ。

嗚呼、散財ってなんて楽しいんだろう。

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もうすっかり仕事のやる気は八万光年彼方に飛んで行ってしまった。

もうお昼休み終わるけど、本気でここで寝てしまいたい。

ずっとこの双子兄弟を、このお昼休み中ウキウキウォッチしていたいのである。


ちなみに重量は本体とポールで2,200g。

雪山に持って行くには決して軽くはないが、宴会用の快適空間と割り切ればギリ許容範囲。

その分共同装備や仲間で荷物分散をすればいいだろうしね。

幸いチーム・マサカズには歩荷マニアのジョンボーAもいるから、私は担ぐ必要すらないのである。


心配な点は、やっぱシャングリラ3の六角形に比べて横長四角形なので強風には弱いだろうってこと。

ほんとはイーストンの62cmペグでがっつり固定したかった所だが、もう廃番で売ってないんだよね。

いかに現状のブリザードステイクでうまく固定出来るかが、今後の快適な雪山生活の鍵となるだろう。


とりあえず先週末のジョウゴ沢山行が中止になった分、この週末あたりに早速どっかで現場テストだ。

週末は中々の強風予報になっているから、買って早々いきなり谷に飛ばしてしまうかもしれない。

まあそれはそれで男らしいから良しとしよう。


ただ一番の問題は、これで完全に遊びに行くための交通費すら厳しくなってしまったという現実。

しかし散財こそ男、散財こそ正義。

私は何も間違っていないはず。

貯金なんてクソ食らえ。

でも迫り来る嫁へのホワイトデーが恐ろしい。



サンザーイ

君を好きでよかった

このまま ずっとずっと

ラララ

双子で



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