この本の中に僕がいた。
正確にはもちろん僕が書いた本ではないし、そんな事を言うと筆者に失礼だ。
でも確かにそう感じてしまった。
本のタイトルは「マッケンジー彷徨〜川が空へと流れるほうへ〜」。
作者は僕とほぼ同年代の人で、10代の頃の夢を35歳で実現させた麻生弘毅さん。
僕もそうだが、彼も思いっきり野田知佑さんの影響を受けた一人。
彼は若い頃に野田さんの名著「北極海へ」を読み、マッケンジー川に強い憧れを抱き続けていた。
色んな悩みを抱えながら、35歳にしてついにマッケンジーでの単独行を開始した。
僕が野田さんの「ユーコン漂流」に憧れ続け、28歳の頃にユーコン川単独行に行ったのと同じように。
この本の中で麻生さんが旅の中で感じた事や、旅に関する持論があまりにも僕の考え方とリンクしていて驚いた。
まあお互いに深く野田さんの影響を受けているから当然と言えば当然なんだけど。
そして陰鬱で内省的な旅の中で、もがき、自己に対する否定と肯定を繰り返していく様は、読んでいて痛々しいほどに僕の感情までも揺さぶった。
そして読み進むうちに、次第に僕は自分と向きあっているような感覚に陥った。
もちろんその感覚は野田さんの本を読んでいて感じられるものじゃなく、同世代の同じ感覚の持ち主が綴る物語だからそう感じたんだろう。
野田さんの世界は圧倒的な格好良さがあり、どこか遠い存在に感じていたのは事実だ。
その後、第二世代の堀田貴之さんやシェルパ斎藤さんや本田亮さんなどによって徐々にアウトドアや旅という世界が身近になった。
そして第三世代でホーボージュンさんや村石太郎さん、八幡暁さんや髙橋庄太郎さんなどの現在油が乗りまくっている「兄貴的」な人達が、今の若い人達に影響を与えている。
いずれも抜群のアウトドアの技量と経験を持つ突き抜けた人達で、やはり遠く憧れの範疇にいる。
でも麻生さんは僕にとっては初めて最も身近に感じられた等身大のヒーローだ。
代弁者と言ってもいいかもしれない。
それだけにこの本の世界はより深く僕の心をえぐっていった。
正直、僕は長い事この手の本を読む事を意識的に避けて来た。
仕事と家庭と子育てに埋もれる中で、こんな着火材のような本を読んでしまうのが怖かった。
でも我慢できずに読んでしまった。
おかげで現在僕の押し殺していた感情がくすぶり始めて、めちゃくちゃ旅に出たくなってしまっている。
こいつはちょっと困った事になってしまったよ。
再びカナダかアラスカの荒野で茫漠とした救いのない日々を過ごしたい。
また全力で一日を生き抜くフルライフがしたい。
きっとこの本は今若さにもがいている人々にとって、僕らが野田さんに受けたものと同様の影響を与えるだろう。
20代前半の人はもちろん、同年代のカヌーをしない人にも読んで欲しい。
そんなおすすめの一冊のご紹介でした。
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〜おまけ〜
世界は広く、そして狭い。
マニアックな世界で生きる人々の不思議な繋がり。
僕は野田さんに憧れてユーコンへ行った。
ユーコンで同じく野田さんに憧れている和田さんと出会い今でも親交がある。
僕がユーコンを去ってから、その和田さんと共に後半のユーコンを旅した人が、なんとこの前の甲斐駒ケ岳の時B旦那の友達としてやって来たDさんだったことが最近判明。
そしてそもそもそのB旦那とは黒はんぺんSの紹介で出会った。
黒はんぺんSとB旦那は南米で偶然出会った仲だ。
その黒はんぺんSは僕のカヌーパートナー山田(仮)の同僚で、ユーコンを旅した奴がいるって紹介された。
ユーコンの後、その山田と豊川の野田さんのイベントに参加した。
そのイベントでスタッフで働いていた島田さんと後にアラスカのホステルでバッタリ遭遇。
その島田さんの知り合いで、そのホステルにいたのが写真家の松本さん。
その松本さんがカヌーを贈った相手がなんとこの麻生弘毅さんでした。
なんか同じような人が同じような信念で生きて行くと、必ずどこかでそれぞれに接点があるもんだ。
これぞ縁というんだろうか。
僕がかつて偶然四万十川で野田さんに遭遇したように、いつか麻生さんとどこかで(多分荒野だろうな)偶然出会う日が来るかもしれない。
そんな日が来たら、酒の一杯でも飲み交わしたいものだ。
男の着火材〜マッケンジー彷徨〜
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MATATABI BASE
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