今、はまっているワンピースの名シーンにこんなものがある。
長く冒険を共にして来た海賊船が、船の修理で訪れた島で船大工によって突然廃船を宣告される。
もう船はボロボロで、これ以上は乗れないと言われたのだ。
さっきまでこの船は元気に航海していただけに、その事実を受け入れられないルフィ達。
結局すったもんだの末に、彼らは涙ながらに旧船に別れを告げて新しい海賊船に乗り換える事になる。
そんなシーンを、僕は車中のDVD鑑賞でボロボロ涙を流しながら観たばかりだった。
しかし、その物語は現実のものとなって僕に降り注ぐ事になる。
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土曜日の夕方。
僕は翌日のお花見カヌーに向けて、車にカヌーの積み込み作業をしていた。
通りかかったお義父さんが僕のタイヤがまだスタッドレスだという事に気づき、急遽その場でノーマルタイヤに履き替えた。
僕のノーマルタイヤを見て、お義父さんは怪訝な顔だ。
タイヤの限界を現すスリップラインがモロ出しだったのだ。
本来そんなタイヤを履いて走ってはいけないし、これで事故っても保険もおりない可能性もある。
見事に怒られてしまった。
車に無頓着すぎる僕はそんな事も知らずに走り続け、オイルだって限界まで替えない男だった。
おかげで最近エンジンが一発でかからない事もしばしばで、ヘナちんエンジンになってしまっている。
そして車検も来月末だということも判明。
タイヤを買い替えて車検もって事になれば軽く30万円は飛んで行く。
その次の車検まで持たせたとしても、新しくしたタイヤがもったいない。
そもそも車自体がちゃんと動いているかも疑問だ。
しかも、この車は嫁にすこぶる評判が悪い。
「臭い、色がイヤだ、酔う」という理由で、毎度毎度僕は非難の的になってきた。
お義父さんも「そんな危ないもんに乗り続けちゃいかん。いい加減新しいの買いなさい。」と言って来る始末。
ついに来る時が来てしまったようだ。
僕と数多の冒険を共にし、苦楽を共にしてきた相棒のエクストレイルとの突然の決別を迫られる事になった。
思えば納車直後に当て逃げされて以来、10年近く僕と共に日本中の川に行った我が海賊船。
嫁は嫌がっていたが、単に僕がドラゴンズファンという理由で決めた青い車。
いつも青い空に恵まれない僕に、雨の中で一抹の希望を与えてくれたものだった。
しかし出会いがあれば別れあり。
そうと決まれば来月の車検までには新車が届いてなきゃいけない。
すぐにでもディーラー巡りをして新しい車を決めないと。
と、いう理由があって翌日の日曜日のカヌーは温泉も行かずに帰ったんです。(参考記事)
日曜日の夕方からのわずかな時間で、どの車にするかは決めておきたいところだ。
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僕は近江八幡から帰ってきて、大急ぎでカヌーを洗った。(水郷巡りは泥だらけになるんです)
しかし、すぐにディーラーに行けるわけではない。
時間がないというのに、見事なタイミングでその日は「選挙の投票日」。
今までは選挙の投票なんて行かない僕だったが、養子に入ってからは行かないと怒られるのだ。
カッパに長靴の姿のまま投票所へ移動し、よく分からない人に投票。
さあ、もう18時だ。
急いで家族を乗せて、水郷巡りからディーラー巡りへと気持ちを切り替えるぞ。
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実は土曜日の夜にネットで調べながら目星を付けていた車があった。
マツダの新型SUV「CX-5」だ。
散々悩んだ挙げ句、SUVの中で一番燃費が良くて安価な軽油で走る車ってことで絞り込んだ。
ここまで絞り込むのは大変な作業だっただけに、実際に見に行くのが楽しみだ。
しかし思わぬ展開。
僕がカヌーに行っている間に、なんと当事者以外のお義父さん、お義母さん、嫁、りんたろくんですでにマツダに行って「CX-5」を見てきたというではないか。
なぜなんだ?
しかもお義父さんが「ありゃダメだ。使い勝手悪そうだわ。あれはやめときなさい。」って言うじゃない。
それを決めるのは僕なのではないだろうか。
結局散々悩んで絞り込んだ車を、僕は一度も見る事なく断念した。
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続いて、次候補だったスバルの「フォレスター」を見に行った。
いいなあ、カッコいいし高級感もあるね。
中も広いし、車中泊するのに十分だ。
これでカヌー載っけて旅したら、なんだかオトナのカヌーイストになったって感じだよね。
しかし、僕の隣で眉間にシワを寄せている女がいる。
嫁が「何かこう、しっくり来ないわ。あんまりいいと思わない。」と言い放った。
店員さんの前であまりそんなこと言っちゃダメだよ。
ここでも僕の意見は尊重されることはなかった。
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続いて向かったのは日産。
僕のエクストレイルはフルモデルチェンジ前の古い型だから、新型のエクストレイル(って言ってもフルモデルチェンジからもう5年くらい経ってるけど)を見に行った。
今僕が乗っているエクストレイルと外観はほとんど変わらない。
新車を買うというのに、まるで新鮮みがない。
しかし、中を見るとかなり変わっていた。
もの凄く冒険心を刺激するギミックに溢れていて、たちまち魅了された。
パドルやトレッキングポールを収納しできる引き出しなんか、相当にエロかった。
中もちょっと広くなっていて、車中泊でピッタリサイズだった車内の長さにも余裕ができてる。
そして、何と言ってもやっぱり非常に落ち着く。
やっぱり僕のライフスタイルにはエクストレイルが一番しっくり来る。
もう19時を超えていたが、試乗を開始。
どんなに遅くなろうと、営業マンも必死だ。
乗り心地も良くなっていて、嫁もこれなら酔わないと納得した。
とりあえず見積もりを貰っておくか。
実際にエクストレイルにするかどうかは、もうちょっと熟考してみよう。
しかし僕は忘れていた。
無趣味なお義父さんの唯一の趣味。
それは「値切り交渉」だという事を。
僕そっちのけで、お義父さんと営業マンの激しい攻防戦が始まった。
凄い勢いで営業マンを追い込んで行き、相当まけさせた挙げ句に次々とオプションをタダで追加させて行く。
特に必要のないナンバープレート周りのアルミ枠まで付けさせる始末。
もういよいよここまで来てしまったら、この営業の人の手前「やっぱりやめます」なんて言いづらい状況になって来たぞ。
見事に戦いは長期戦と化し、時間はすでに20時オーバー。
早朝から起きて一日カヌーをして来た僕は、次第に意識が朦朧として来た。
僕にはもはや正常な判断能力が欠乏していた。
ハッと気がついた時には、僕の前にはとてもにこやかな顔をした営業マンがいた。
そしてなぜか笑顔の店長までいて、僕に名刺を渡しているぞ。
なんと僕はエクストレイルをお買い上げしているではないか。
僕は朦朧とする意識の中で、この事態をいまいち飲み込む事が出来なかった。
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昨日の夕方に思いついて、今日の夜にご購入だなんて。
車ってそんな簡単に買う物だったっけか?
しかも、まさかの「エクストレイル」からの「エクストレイル」。
しかもそろそろモデルチェンジがあるって噂のエクストレイルだ。
これはiPhone3GsからiPhone5が待ちきれずにiPhone4sを購入してしまったパターンと似ている。
今年の中頃にiPhone5と新型エクストレイルが出た日に、僕は立ち直る事は可能なのか?
しかも、当たり前だがとてつもない出費だ。
コツコツ貯めた定期をすべてつぎ込んで、いよいよ「万が一のお金」まで底をついたぞ。
嫁の「おい、豚。分かってるだろうな?」っていう視線が痛い。
しばらくは金を使わずに、考えて行動しろよときつく言われた。
これは益々遊びに行く時に、言いづらい環境が整ってしまったようだ。
アウトドアでガンガン使えるタフギア「エクストレイル」。
しかし、こいつを買った事でしばらくはアウトドアでガンガン遊べないという不思議な矛盾を抱えて生きて行く事になった。
車がどんなにタフでも、僕自身が出て行けなければ意味がない。
納車は5月中旬。
とりあえずは、今の相棒の青エクストレイルとの最後の旅が待っている。
GW後半の四国遠征。
彼は最後にどんな走りを見せてくれるだろうか?
まさかの「事故って廃車」などという華々しいフィナーレが待っているかもしれない。
もしそんな事になったら、そのままお遍路さんでもして来よう。
朦朧野郎の海賊船
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MATATABI BASE
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