穏やかな平日の昼下がり。
唐突に誘惑の悪魔がiPhone越しに僕に囁いてきた。
とても甘美な言葉を並べて僕を激しく誘惑する。
ついに今年も「あの時期」が近づいてきたんだ。
「GWの予定ってどんな感じなのよ?前半3日間で槍ヶ岳登るけど来るかい?そして後半4日間で四国吉野川の大歩危小歩危のラフティング&仁淀川カヌーツーリングなんてどうよ?楽しいぜぇ。どうよ?どうなのよ?」
お馴染みのB旦那さんから、甘くとろけそうな誘惑の囁きが炸裂した。
なんてイヤらしくて官能的な響きなんだ。
エロすぎる。
GWってのはカヌー野郎にとってはまさにゴールデンだ。
何と言っても川に解禁前で「鮎釣り師」がいないから、カヌーな奴らが全身全霊を持ってして楽しめる唯一のお祭り期間。
まあ川に潜るって言う楽しみは出来ないが、冬の間に蓄えた「川欲」をぶちまけるには持って来いの期間なのだ。
受話器越しからでも、B旦那さんの背後に黒い翼が生えている事が容易に想像出来た。
僕には抵抗するなんてとても無理だ。
さらに悪魔は追い討ちをかけるように、「いやあ、こないだまでインドに旅行に行ってきてね。」などと旅心をくすぐるスパイスを利かせて来る。
心得てやがる。
僕はその甘い提案になす術もなく身を委ねて、誘惑の悪魔メフィストとGWの契約を結んだ。
しかし、誘惑の悪魔との契約は「家庭に於ける地獄」を意味する。
GWに旅立つ為には、立ちふさがる大きな門を越えて行かねばならぬ。
まずはその門を突破するべく、我が家の門番「ケルベロス嫁」との壮大な対決を制しなくてはならない。
僕はまず後半の「四国ラフト&カヌー」から切り出した。
さっきまで機嫌が良かったケルベロスの眉間に、ピシッと二本の縦筋が入った事を僕は見逃さなかった。
そこからの攻防戦はここでは割愛するが、比較的大惨事に至らずに了解を得る事に成功した。
思いのほか友好的にOKサインが出たので、僕は調子に乗って陽気にこんな事を言ってしまった。
「大歩危小歩危ってのは、多分日本一の激流なんだよ。そこをラフトで下るのよ。すっごい流れだろうなぁ。」
するとケルベロスは無表情のままぼそりと呟いた。
「死んで来い。」
ジョークなのか本気なのかは、その表情からは読み取る事は出来なかった。
この迫力は大歩危小歩危の比ではない。
結局この一言ですっかり萎縮してしまった僕は、とてもじゃないが「前半は槍ヶ岳行きたいです」なんて事を告げる事は出来なかった。
そんなことを言えば、翌朝に僕は槍が刺さった変死体で発見される事になるだろう。
正直槍ヶ岳ももの凄く行きたいけど、命あっての物種だ。
まだ諦めてはいないが、ここは我慢のしどころなのか?
良い人の仮面を被った養子野郎として、無難に家族サービスに努めるべきか。
それとも変死覚悟で切り出してみるべきか?
これからGWまでの間に、メフィストの誘惑とケルベロスの脅威の狭間で僕は激しく悩み続ける事になるだろう。
僕の中のファウスト博士はどんな決断を下すのか?
それによって今年はどんなGWになるんだろうか?
そしてGWが終わった先に得るものは「家族の愛」なのか「孤独死」なのか?
こうして今日も、男は悩みの波に翻弄されるのである。
ファウストの懊悩
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MATATABI BASE
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いやぁ、GW後半だけでも勝ち取れてよかった!
前半は槍ヶ岳の予定だけれど、まだ本決まりじゃないからd(^_^o)
yukon780の予定にあわせて1泊北岳、0泊甲斐駒ケ岳なんて予定も考えなくもないよd(^_^o)
と囁いてみるテスト
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うおお。
こんな所にまでメフィストが!
1泊北岳、0泊甲斐駒ケ岳。
甘美だ、甘美すぎる。行きてええ。
ちょっと、本気で交渉してみます。
中々言い出せないけど。
早めに返事いたします!