九龍島/和歌山

良い子の犠牲者たち〜九龍島編〜

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ロマンを追い求める男達の旅路は終わらない。


前日の古座川ロマン海賊団は、空を浮遊し、飛び降り少女と電流有刺鉄線に思いを馳せ、行き着いた先の体育館で魔法の雑炊に遭遇した。(意味が分からない人はコチラ→参考記事

しかしまだまだ満足はしない。

やはり海賊は海賊らしく海を目指すのだ。

大海原に飛び出し、無人島に向けて猛々しくを進んで行くんだ。


しかし川しか知らない男達にとっては、これは大冒険だ。

今の人達風に言えば「ワンピース」的な冒険とでも言うんだろうが、我々世代はやはり「小さなバイキングビッケ」的な気分だ。

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(※余談だが、僕が小さい頃にソーセージの懸賞に応募してビッケのTシャツが当選した事がある。僕の歴史上、それ以降何かが当たった事はない(ビンゴ大会含む)。あのビッケTシャツで、僕は全ての運気を使い果たした。)

(※さらに余談だが、今この歳で最近ワンピースにはまっている。車の中でDVDを見て、一人で号泣している。痛々しい36歳だ。)



あん時のアイツシリーズ第17弾の続き。

古座川編に引き続き、今回はその翌日の九龍島(くろしま)編。

かつて熊野水軍の拠点だった、まさに海賊の島。


遥か彼方の九龍島を目指し、大海原の壮大な旅が今始まる。


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で、あれが九龍島。

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近い。

古座川河口から目と鼻の先の距離。

そこには「大海原」も「大冒険」も「壮大なストーリー」も感じられない。

実にお気軽な「お近くの無人島」でした。



散々冒険心煽っておきながら、申し訳ない。

所詮僕らは川用の「レクリエーションカヌー」しかないから、大海原なんて土台無理な話です。

そもそも、なんか海って怖いし。

気持ち悪い生き物いるし。

実は、海で冒険する資格も度胸もないのですよ。



それでも一応、男達は出航して行った。

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まあ、なんだかんだ言っても海は海。

初の海でのカヌーなんで、それなりに緊張しているんです。


しかし負けてはいられない。

この先の島には、プライベートビーチとわくわく洞窟探検が待っているんだ。

そしてそのビーチで美味い鍋を作って食らうんだ。



九龍島は、実は近いように見えて結構遠く感じる。

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やっぱり川とは全然気分が違う。

なんだか非常に怖いのだ。

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岸がない事と、どんだけ深いか分からない不安感。

川の流れと海の波は全然感覚が違う。

正直、「楽しい」というより「恐ろしい」という気持ちで一杯だった。

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この角度だと、「大海原を冒険中」って感じだけど振り返ればすぐそこは町です。


20分ほどで、島の近くまで到達。

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島に近づくほどに、波が高くなって行って怖さは倍増だ。

横波と風に気をつけないと簡単に横転しそうだ。

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しかも波の下に結構鋭利な岩が隠れていて、引っ掛けて座礁の恐怖もつきまとう。

この時「もう海ではカヌーはしない」と心に誓った事を覚えている。

後に石垣島でシーカヤックするまで、6年間僕はその誓いを守り続ける事になる。



やがて、やっと九龍島を捉えた。

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あそこに見えるは、海賊の洞窟なのか。

しかし好奇心より恐怖心のが圧勝して行かずじまいです。



そしてビーチに上陸。

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無人島の割には、何やらやたらと人がいるぞ。

しかも物々しい撮影の機材を持った人がうろつき、非常に大規模な撮影をしている模様。

その中の人に「何の撮影してるの?」って聞いたら、「観光PR用のビデオの撮影です」って言う。


しかしどうも観光用のビデオの撮影にしては人が多すぎるし機材が本格的すぎる。

しかも何やら洞窟の中で撮影しているようで、僕らが洞窟に入ろうとしたら激しく止められた。


観光用のくせに、観光客である我々を閉め出すとは何事か。

本当に観光ビデオの撮影なのか?

実は洞窟の中に「蒼井そら」とかいるんじゃないのか?


こっちははるばる海を越えて(近いけど)、洞窟探検とかプライベートビーチとかを堪能しに来てるのに。

洞窟に入れないばかりか、ビーチまで占領されている。


これだけが楽しみで、あんな怖い思いを乗り越えてきたのに。

なのにあからさまに「邪魔者扱い」だ。

なんてことだ。



しかし、実はこの旅の2週間後くらいにこの時の撮影隊の謎が解けた。

彼らは実は「悪い子」ではなく、「良い子」だったのだ。


思いっきりあの時の九龍島が、全国放送のテレビに映っていた。

それはテレビ朝日「いきなり黄金伝説」の無人島サバイバル生活。


まさにあの時、あの洞窟内で「よゐこ」が無人島生活をしていたのだ。

しかもテレビ演出の恐ろしさで、九龍島がさも「絶海の孤島」チックに撮影されていた。

テレビを見ながら、ぼそりと「実はすぐ近くに町があるのに」って呟いてしまったほどだ。

しかもこの時、一番苦渋に満ちた表情をしていたのは濱口でも有野でもなく、追い出された僕らだったのに。




結局、シッシされた我々は別の小さな洞窟を「渋々」探検しに行った。

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メイン洞窟じゃないけど、これはこれで中々良い感じ。

益々、あっちの洞窟の方が気になってしまったが、それでもさらに奥へ奥へ。

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いいぜ、いいぜ。これぞ冒険だ。

すっかりずぶ濡れになった山田も「トレインスポッティング」ポーズ。

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夜道を歩いていたら、突然複数のパパラッチに撮影されたハリウッド俳優みたいだ。


洞窟内は、海賊の拠点だっただけあってどことなく人工的な雰囲気がする。

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やがて洞窟は島の逆側に到達する。

まさかこの先の海の中で「よゐこ濱口」がサメと戦っているとは思いもよらない。



洞窟探検を終えた我々は、続いてこの島の頂点を目指す。

なにやら登って行く細い道があったのだ。

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この先に何があるのか?

ワクワクが止まらない。


ハアハア言いながら登って、あったのはこの祠だけ。

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何の感動もなく、即下山。

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とても無意味な時間を過ごした。



結局、よゐこの犠牲になって我々は無念の撤退。

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こうした「一般人」の切ない犠牲のもとに番組は作り上げられるのだ。

我々の貴重な青春を返していただきたい。


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で、浜に戻ってきた我々は昼メシを作り出す。

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本来であれば、極上のプライベートビーチで洞窟探検の思い出話とかしながらやるはずだった事だ。

しかも追い討ちをかけるように、山田がゆで卵を踏んずけて割ってしまう始末。

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出番を待つ「食卓塩」が悲しげだ。


どうにもうまくいかない。

そんな時は、極上の浜メシでテンションを上げるのが吉だ。

男の浜鍋をお見舞いしてくれる。

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このアルミ製ダッチオーブンみたいな鍋は僕の持参。

僕の母さんが若い時に大阪で買ったもので、それ以来数十年美味しさを提供してきた優れものの鍋だ。


当たり前だが、本日も最高のメシとなった。

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昨日も今日も意図しなかった場所でのメシとなったが、こいつが美味ければ全てが救われるのだ。



こうして、我々初の「海の大冒険」は思わぬ形での敗退の記録となった。

今度九龍島に来るときは、「ちゃんと」この島を堪能したいものだ。

ご紹介しておいてなんだけど、実際僕らはこの島の良い所を全く見れていないから、いまいちプッシュ出来ないのが残念だ。

多分夏場に来たら素潜りで遊べるし、相当最高だと思います。

撮影さえしてなければですけど。



九龍島編 〜完〜


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ーーおまけーー


あの後、すっかり時間が余ったんで大人しく観光した時のダイジェスト。

お馴染みの「橋杭岩」ですな。

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こうして「浮かれた姿を撮影してもらってる姿を撮影される」と随分アホっぽく見える。


せっかくなので、この海賊団の記念撮影をする事に。

たまたまいたおっさんに撮影してもらうと、実に画期的な構図で切り取ってくれた。

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凄い斜面で撮影しているみたいだ。

もうちょっと、撮影慣れしてそうな人を選ぶべきだったね。


そして、その日も寒かったから野宿ではなく「ホテル浦島」で素泊まり。

東海地方の人には有名な巨大温泉ホテルだね。

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ここでトラブルが発生。

なんとビビるSが、翌朝から(確か?)「仕事」だった事が発覚。

てっきり休日と思っていたビビるSは、まさかの「ホテル浦島からの出勤」となった。

浮かれて温泉になんか浸かってる場合じゃなかったのだ。



翌日は僕と山田の二人旅となった。

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生粋の漁港好きの山田だから、もちろん行き先は「漁港」です。

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なんかこの写真だけ見ると、記憶を失って漁港に辿り着いて呆然としている男に見える。

それこそ浦島太郎のようだ。

随分落ち込んで見えるのは、彼が愛してやまない漁港食堂がなかったからだろう。


その後はどこをどう帰って行ったか分からない。

ビビるSが仕事に間に合ったかどうかも、山田の記憶が戻ったかどうかも定かではない。

このおまけ記事が必要だったかどうかも定かではない。



ただひとつ言える事は、和歌山って良い所だよってこと。

ひどい締め方だが、ほんとそうなんですよ。

ぜひ、みなさんも古座川〜九龍島の旅に行ってみてはどうでしょうか?



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