ユーコン川漂流記

ユーコン川漂流記〜3日目〜フルライフ

8/14(土)

現在9:30、テスリン川をカヤックにて漂いながらこれを記す。



気持ち流れが出て来たので、ゆらゆらと流れに身を任せてみる。

DSC01801.jpg

そして実に今日は体調がよろしい。

さすがに10時間以上も寝れば、時差ボケも取れて調子が出てくる。

やはり必要以上にマイナスイオンが溢れすぎているせいか、まるでドラクエの宿屋のように一夜にしてHPが全快だ。


100マイルランディングに上陸しようと思ったが先客がいて、犬に吠えられて断念。


しばし快調に進んで行く。

すると奇麗な小川が流れ込んでいる所があったので、嬉々として水を補給する。

DSC01798.jpg

驚いたリスが慌ててスプルースを駆け上がり、僕と見つめ合う。


これでしばらくは水は大丈夫そうだ。

地図を見る限り川幅も徐々に狭まって行くようなので、頑張って漕いで流れのある所まで行こう。

今日も快晴だ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さっき100マイルランディングにいた二人と一匹が、モーターボートですごい勢いで横切って行った。

軽く手を挙げると手を挙げ返してくれた。

久しぶりの人の姿だった。



さて、ユーコンジャックというお酒について。

DSC01764.jpg

ホワイトホースで買ったこのウイスキーはなんと甘い。

小さい頃病院でもらう液体の甘い薬を思い出す味だ。

名前の割になんて貧弱な味なんだ、こんなん飲めるかと思ってたんだけど、これが中々どーして長距離カヌー時の体力回復に最適な酒だった。

甘い物不足なので、大変元気が出るし、アルコールも40度なので体がカッとして力がみなぎるのだ。

その名に恥じぬ、ユーコンを旅するに適した酒だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


現在13:40。

漕がなくても進んで行くから、もう川の上で日記を書くのが当たり前になって来てる。




あの後、ビール飲みながらのんびりと流されていった。

DSC01807.jpg

DSC01809.jpg

気持ちのいい場所があれば上陸して、至極の一服をかましたりする。

DSC01805.jpg

僕だけの世界が展開していく。

どんどん自分が自然に同化していくのを感じる。

DSC01811.jpg

DSC01812.jpg

この上ない幸せな時間だ。



さらに下って行くと、スィフトリバーの流れ込みの所に人影が見えた。

この旅で初めてのカヌー野郎との出会いだ。


彼はちょうどファルトボートに荷物を積み込んでいる所で、挨拶しようとしたがこちらに気づいていない。

なんとなく日本人ぽい感じだったがどうだろうか?

今後、彼とは何度かすれ違う事だろう。

(筆者注:この時の出会いが後に「八重山諸島放浪記」へと続く運命の出会いとなった。)


やがて地図に「Fast Water」と書かれた場所が近づいてきた。

ついにこの川旅初の瀬で緊張したが、ざざ波程度で大した事はなかった。

ただここを境に流れが速くなり、やっと快適なパドリング環境になった。


しかし、後ろに人がいると思うだけでなんだか落ち着かないな。

ここでは一人でも他のカヌーを見たら、それはもう渋滞だ。


そういえば今回の川旅を始めてから、一度も寂しさを感じた事がない。

この川の懐がでかすぎる事と、一人で生きて行く事で精一杯になってしまうからだ。

この川に団体で来る事を考えるとゾッとしてしまう。

一人だと苦しい事は本当に苦しいが、楽しい事は強烈に楽しい。中途半端がない。

この感じが分からない人はここに来るべきではない。退屈なだけだ。

これぞフルライフ。最高だ。

単独行バンザイ。


その後もユラユラ流されていると、さっきの人(青いファルトに乗っているから、とりあえず今後は青木(仮)さんと書く)が、いつの間にか後方にいた。

ちょっと鼻歌まじりだったので恥ずかしかった。

僕はエディに入って彼が通り過ぎるのを待つ。

今度はちゃんと挨拶が出来て、青木(仮)さんも手を挙げてくれた。

DSC01814.jpg



そんな感じでこれを書いてたら結構進んだ。

さあ、旅の続きだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


16:00


体力が限界に近い。

というのもあの後、地図上に別の細いルートが書いてあった事から始まった。

ずっと大河を下っていたから、例え大回りでも細い流れに乗りたかっからその小川を攻めてみた。


たまに船底をすってしまうが、ライニングダウンすれば奥まで行けそうだったので進んでみる。

DSC01818.jpg

だんだん奥に行く程、雰囲気がただならぬ感じになって来て、妙に何かの気配をビンビン感じるようになる。

その時、岸にクマの足跡がたくさん(しかも新しげ)あるのが目に入った。


細い川で、両サイドが深い森。

状況としてはバッチリだ。

大量のクマにジッと見られている感覚が抜けない。

心の底から恐怖に支配され、僕はカヌーを降りてカヌーを引っ張りながら全力でその場を離れた。

DSC01819.jpg


このバカな行為の為に、貴重な体力を大いに消耗しグッタリする。


そんなおり、おもいっきりな逆風(扇風機の強よりも強な感じ)が僕の行く手を阻む。

頑張ってひたすら漕ぐが中々進まない。

もうクタクタでパドルを握るのも億劫になって来た。

適当なキャンプ地があったら駆け込もう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


現在20:05。

晩飯を食べ終わりグッタリしている所だ。



あの後もう目眩がしそうな程、体は限界に近かった。

逆風は続き、しまいには下を向きながら漕いでいたぐらいだ。

日本で日々の生活をしている時、一日で使えるパワーをフルでその日に使い切る事はなかったが、こちらの日常は毎日がフルパワーを使い切る日々が日常だ。


そういえば、今まさに遥か遠くアテネでオリンピックが行われている。

全く僕は蚊帳の外だが、気分は毎日フルマラソン。

メダルはもらえないが、それに勝る物を今僕は手に入れている。



紫外線が強すぎるので、唇がまるでバオー来訪者のようにバキバキに割れて来た。

疲れすぎてリップスティックを取り出す気にもなれない。


やがてやっとgood camp地に到着した。

DSC01825.jpg

DSC01824.jpg

古びたキャビンがあったが、なんかコワくてそこでテントを張る気になれず、少し離れた場所でキャンプイン。

近くにムースの足跡があるので、明日の朝あたり見られるかも。

DSC01823.jpg



テントも張り終えて、ちょっとフライフィッシングをしてみる。

グレイリング(北極カワヒメマス)がいるだろうクリークの流れ込みを狙ってみた。


すると1投目でいきなりヒット。

釣れると思ってなかったから、かなり動揺しつつも糸をたぐり寄せると30cm程のグレイリング。

DSC01827.jpg

今までの疲れが一気に吹っ飛び、フライを投げ入れるたびにヒットの嵐。

まさに入れ食いだ。


楽しくてしょうがないので、しばらく釣りまくる。

釣りすぎて困ってしまい、針の返しを潰して釣り続けたほどだ。


30分程で20匹近く。

日本ではあり得ない。

DSC01832.jpg

腹は減っていないから、キャッチ&イートが信条の僕もさすがにリリースした。


そして晩メシを食って、風のおかげで蚊が少ない外にてこれを記す。

DSC01834.jpg

DSC01833.jpg


これからクリークで歯を磨いて明日の為に寝るとしようか。

DSC01836.jpg

今日もよく漕いだ漕いだ。

今日の日が終わっていく。

僕は今心から充実感を味わっている。



ユーコン川漂流記〜4日目〜へつづく



記事が気に入ったら
股旅ベースを "いいね!"
Facebookで更新情報をお届け。

MATATABI BASE

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)




カテゴリー

アーカイブ

おすすめ記事

  1. イベント告知

    第1回 川の学校「カンムギ冒険教室」生徒募集!
  2. カンムギプロジェクト

    カンムギプロジェクトについて〜川遊びの聖地を作る〜
  3. 板取川/岐阜

    板取事変〜警察のちクレーン時々竜巻〜
  4. 甲斐駒ケ岳/長野

    甲斐駒男塾 前編〜進め!果てしなき直進行軍〜
  5. 京都一周トレイル/京都

    京都一周トレイルラン〜東山コース前編〜
PAGE TOP