8/20(金)
現在19:40。
ホワイトホースの3rdAve.にある、サンチェスという名のメキシコ料理の店のテラスでこれを記す。
今朝は7:30に目が覚めた。
テントの外に出たら、かなり驚いた。
川がない。
正確に言えば、ものすごい霧で全てが覆われていた。
全てが真っ白な世界。
まだ和田さんも起きてないので、テントの中でしばし本を読む。
8:00頃和田さんも起きたので、焚き火を起こしてコーヒーをすする。
太陽が見えて来たが、太陽も真っ白で月のようだった。
ひとまず時間があるし、和田さんの買い出しもあるので町に出る事にする。
スーパーにてヤニと電池を買う。
町を出ると、昨日のトムの息子が学校に通う所だった。
昨日と同じ格好だった事や、学校に犬を連れてい行くあたりが気になるが、彼は元気に挨拶して去っていった。
町を出ると、途中にネイティブの博物館みたいな所があったので寄ってみた。
犬と猫が凄まじいじゃれ合いをしていた。
殺し合いみたいに激しかったが、トムとジェリーみたいに仲良しのようだ。
どちらも人懐っこい。
こちらの犬は鎖につないでないので、人に慣れやすいのだそうだ。
展示物の周りを犬がウロウロする。
それがまた逆にリアルだったりもした。
そこそこの展示物を見てキャンプ場に戻る。
11:20。
朝飯がまだなので、ピエロ売店にてチーズバーガーを頼む。
出来上がるのを待っていたら、予定より早くアツシさんの車がやって来た。
テントも片付けてないので、少し焦る。
しかもアツシさんと一緒に、ポールさんまで来てるじゃないか。
初の生ポールに感激。握手を交わす。
非常にでかい腹だ。
和田さんがプレゼントしたという「旅」Tシャツを着ている。
出来上がったでかいハンバーガーを急いで食って、大急ぎで荷物を片付けて車に積み込む。
いよいよ和田さんともお別れだ。
これからまだまだ旅を続ける人と別れるのは、本当に途中下車みたいで悲しい気持ちになる。
みんなで写真を撮り、握手をして健闘を祈った。
これほど価値観の合う人も日本では滅多に会えないので、少し寂しい別れだ。
彼が四国に行ったら、今度は四万十川で語り合いたいものだ。
(筆者注:この7年後に四国ではなく、さらに南方の石垣島でその思いは実現した。「八重山諸島放浪記」)
車はカーマックスを離れ、一路ホワイトホースへ。
時折ポールが釣りの事(ポールはかなりのフライフィッシャーらしい)を聞いてくれたが、英語が解らずとても悔しい。
なんかもったいないなあ。
次はちゃんと英語話せるようになってきたい。
途中からは、旅の疲れがドッと出て寝てしまった。申し訳ない。
やがて2時間程でホワイトホースのハイドオンジャッカルに到着した。
ホステルには二人の日本人がいた。
一人は「熊ちゃん」と呼ばれ、熊のような男でポールからはスモウレスラーと言われていた。
一見怖かったが、話してみるととても気さくな人だ。
現在30歳で、日本から14万円くらいかけてオートバイを持って来てバイクツーリングをしているそうだ。
この人はアラスカで野田さんの「ユーコン漂流」に出会い、感動してホワイトホースまで来てニサトリン川を20日かけて下ってきたそうだ。
さすがだ、こっちの旅人はスケールが違う。
もう一人は名前がまだ分からないが、長髪でインディアンのような風貌だ。
今まで旅した国の数は覚えていないというくらい、旅をしたという男。
相当旅慣れた感じの人で、聞けば6月の頭からこちらに来ているようだ。
日本からファルトボートを持ち込んで、テスリンからアラスカの随分果ての村まで下って来たそうだ。
そして熊ちゃんと出会い、もう一人のクレイジーな38歳の日本人とニサトリン川を下ったらしい。
話をしていると、自分の旅がまだまだだとつくづく思い知らされた。
彼らは河原でで食事中にクマに出会ったそうだ。
その距離わずか10m。
全てを置いて必死で逃げたらしい。
クマはブラックベアーで相当怖かったそうで、もう二度と会いたくないと言っていた。
オーロラも見たそうで、羨ましい限りだ。
もう少し、色々と話をしてみたいものだ。
その後、自転車を借りてお土産を買う為にホワイトホースの町へ向かった。
メインストリートは距離も知れてるから、くまなく見て回った。
コレというものはなかったけど。
途中で若い男女がケンカしてた。
Fuck連発だ。
おお、これぞ映画でよく見る本場のケンカだ。
最後にインディアンショップに寄ろうとしたら、閉店だった。
お店の前で立ち尽くしていると、店員らしきインディアンのオバさんが寄って来た。
オバさんのくせに髭が生えていた。
店は閉めちまったけど、コレ買うか?とかなりかっこいいリストアクセサリーを出して来た。
かなり格好良くて欲しかったんだけど、当然カードで買えないのでやむなく断った。
でも最後までとても感じのいいオバちゃんだった。
僕は何だか、白人よりも日本人よりもインディアンが好きだ。
肌に合う。
人にもよるんだろうけど。
ハイドオンジャッカルに戻り、アツシさんに明日の6:30にタクシーに来てもらうよう手配してもらった。
その後はしばし、日本人の旅人同士で盛り上がった。
旅心が沸々と湧いてくる。
スバラシイ人達だ。
腹が減ったので、彼らに聞いたオススメのメキシコ料理の店に行った。
マルゲリータがうまいと聞いていたから、ビールとマルゲリータを注文した。
するとビールと同時に出て来たのはなんとカクテルだった。
「マルゲリータ」ではなく「マルガリータ」の間違いだったのか。
なんて事だ。
さすがにカクテルをつまみにビールを飲むほど喉は乾いていない。
これでは腹が満たされないので、タコスを頼んだら今はないと言われる。
仕方がないので、メニューがさっぱリ分からなかったが適当に指差して注文した。
随分待って来たのが、なんかタコスみたいだったがどういう事だ?
うまいけど量が少ないなあ。
そして、このお店のテラスで現在に至る。
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ハイドオンジャッカルに戻ると日本人がさらに一人増えていた。
見た目30代後半といったところか。
テスリン川からドーソンまでユーコン川を下るつもりで来たらしい。
でも田中(仮)さん(インディアンっぽいひと。名前分からず)に誘われて、ビッグサーモン川を下るかどうか迷っている所だった。
この人も旅慣れた感じの人だった。
ハイドオンジャッカルのテラスが、あっという間に日本人コミュニティーサイトになった。
僕、アツシさん、熊ちゃん、田中さん、竹原さん(仮、ボクシングの竹原に似ていた)の5人だ。
震える程の素晴らしいひとときだった。
みんな日本での生活や、自らの過去に触れる事なく、ただそこに集まった旅人同士の何気ない会話が展開された。
そこにはアラスカの話からメキシコ、アフリカ、イタリアなどの旅の話が日常会話のようにポンポン飛び出してくる。
巻きたばこを作る姿も実に様になっていた。
かなり僕は圧倒されていた。
日本国内でちょこちょこ旅をしていることがとても小さく感じた。
そして海外に飛び出していく事がとても身近に感じた夜だった。
恐らく彼らに再び会う事はないだろうが、旅を続ければまた別の場所でこんな濃密な体験が出来るんだ。
すっかり「旅」というモノに魅了された瞬間だった。
朝のタクシー代のキャッシュがなかったので、熊ちゃんに両替してもらった。
寝坊が怖かったから、朝5時に起きるという田中さんに起こしてもらう事も約束した。
そして何日かぶりのシャワーを浴びて、ココロもカラダもスッキリとして2段ベッドの上で眠りについた。
僕の中で、今後の旅に対する生き方が決まったかのような夜だった。
ユーコン川漂流記〜エピローグ〜へつづく
ユーコン川漂流記〜9日目〜目覚めの夜
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ハイドで出会ったんですね!
10mの距離で熊に会った話、僕もその場にいました。藪からいきなり出てきて、ぶったまげました。熊が去ったあと、まさに腰砕け。腰からガクッと地面落ちました、、、
トラウマになってます。
いまだに熊のプーさん見ても、かわいくもなんともなく、怖いと思ってしまいます。
テスリン~カーマックス、全部読んで、また行きたい!気持ちがふつふつとわいてきました。
いい川旅しましたね!!
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まさかまさかとは思ったんですが、やはりあの現場にいた人物の一人がDさんだったんですね。
熊にバッタリ遭遇した恐怖はその場にいた人間にしか分からない世界でしょうね。
僕は川の上から遠くに見ただけだったし、アラスカではバスの中からだったけど純分に引きつりましたよ。
熊ちゃんやアツシさんとハイドのテラスで飲んだ思い出はとてもいい影響を僕に与えてくれました。
僕はユーコン下ったって言っても所詮カーマックスまでなんで、正直まだまだ初期段階です。
次回はカーマックスからビーバーまで旅したいんですけど、子供が大きくなるまでは厳しいでしょうね。
いずれはうちの子を連れてまたユーコン行きたいと思ってます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!