8/11(水)7:30。バンクーバー、サンドマンホテル
とんでもなくデッカイ音のアラームでびっくりして目が覚める。
ああ、そう言えば僕はバンクーバーにいるんだって思う。
時差ぼけは特にない。
歯を磨いていると、また爆音アラームが鳴り出す。
何度止めても5分おきに鳴るようだ。
しかも完全な止め方が分からない。
しかたないので昼の1時頃にセットしてみた。
おそらく1時頃にこのアラームは鳴り続けるだろう。
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8:00
昨日ディナーを食ったカフェレストにて朝食。
コーヒーを頼んだら、これまたビッグサイズでミルクが6個も付いて来た。
そして昨日と同じく英語で訳分からんメニューの中から、適当に指差して注文。
そしてやがて出て来た朝食に驚く。
巨大おばけクロワッサンに何重にも重ねられたハム、卵、トマト。大量角切りポテトにメロン3切れ。
朝からこんなに食えるか!
だからあんた達はそんなに体でっかくなるんだな。
カナダ人が日本のモーニングを見たら、こんなんで金とるんかって逆に怒りそうだよ。
コーヒーに至っては、まだ飲んでる途中なのに次々と注がれてコーヒーのわんこそば状態だ。
今までダイエットして来たが、昨日と今日でもう帳消しだね。
さあ、いよいよホワイトホースに向けて移動だ。
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10:10
現在国内線ロビーにて出発を待つ。
朝食を食べた後ホテルの部屋に戻ったら、なぜかまた爆音アラームが鳴っていた。
昼の1時にセットし直したのに一体どういう事なんだ。
この目覚ましなら朝の弱い僕でも絶対起きられるな。日本に持って帰りたい。
しかし、あんまりうっとうしかったから電源ごと切ってやった。
その後、チェックアウト。昨夜の電話代を支払って8:30発のシャトルバスに乗り込む。
今日も乗客は僕だけだ。
昨日と同じヒゲのおっさんドライバーが話しかけて来た。
ヒゲ「お前はどこから来た?」
僕 「日本だ」
ヒゲ「日本は行った事がある」
僕 「まじすか。どこ行ったの?」
ヒゲ「東京」
僕 「おう、東京」
会話終了。
中1英語の教科書に出てきそうな程のありふれた英語のやり取り。
全く実のない会話が終了し、5分程気まずい時間が流れてバスは国内線ターミナルへ到着。
「チエツクイン」と書かれたチェックインの受付へ行くと、何故か僕だけ荷物を持ってついて来いと言う。
どこにつれていかれるんだ?
一気に不安に襲われる。
どうやら雰囲気的に荷物がトランクケースではなかったから、別の荷物場から荷物を積むようだ。
英語でいろいろ聞かれたが、日本人的ハニカミスマイルで「I don’t speak English」と言い続けた。
続いて機内持込み荷物の検査が始まる。
日本ではすんなりOKだったのに、何かが画面に映ったようで、検査員が不審げに荷物を開けていいかと聞いて来た。
またも不安に襲われる。
すると別の検査員が、僕のフライフィッシング用のリールを持ってどこかへ行ってしまった。
うそでしょ?と思っていたら、しばらくして戻って来てOKと言って返してくれた。
どうやら画面に映った不審物は、リールケースの中に入っていたハサミの形をした針外しだったようだ。
にこやかに荷物を返して来た検査員が「Do you know ASAMI?」と言ってきた。
アサミ?そんな女は知らんぞと思ってNOと言ったら、「Scissors mean ASAMI ? No?」と言う。
あ、ハサミね。
僕「Oh,Yes.HA SA MI」、検査員「ARIGATOGOZEMASU」僕「アリガトゴザイマス」。
ほんとストレスたまるわ。
やっと、搭乗ゲートに着き水を買って現在に至る。
頭上の扇風機が壊れて落ちてきそうで怖い。
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現在12:15 カナダ上空。
あの後、ホワイトホース行きのゲートが開いたので列に並んだら、何故か僕以外みんなじいさんばあさんだらけ。
一瞬、名鉄観光バスの信州安曇野バスツアーかと思ってしまう光景だった。
飛行機は離陸してすぐに、また眼下に広がる素晴らしいパノラマ世界。
この景色は一生目に焼き付くだろう。ほんとに惑星探検してるような景色だった。
さあいつ眼下にあの憧れ続けたユーコン川が姿を現すのか?
野田さんの本のくだりに「初めての国の初めての川を下る時の気持ちは、16歳の頃の初デートに似ている」ってのがあったが、そのデートのお相手がもうじき僕の前に現れるのだ。
こんな壮大な恋は中々できるもんじゃない。
やっとカナダに来たぞって感じになって来た。
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現在22:30 テスリン川の川原にてテントの中で記す
あの後、飛行機からの景色は激しい雲に覆われてしまい、下の世界が見えなくなってしまった。
ああ、ユーコン川との素敵な出会いが見えないじゃない。
やがて飛行機はしだいに高度を下げ始め、その雲海の中に吸い込まれてゆく。
しばらくすると、フッと雲を抜けて視界が一気に開けた。
突如として僕の眼下にユーコン川がその姿を現した!
それはまるで「天空の城ラピュタ」で雲の中に浮かぶ島が出現したその時に似ていた。
憧れ続けたユーコンのそんなオシャレな登場の仕方に、感動で体が震え、じんわりと目には涙が浮かんでいた。
ついに来たんだ!目の前にユーコン川が広がっている!
空港着陸寸前になって、機内には何故かクイーンの「We are the Champion」が流れ出しウケる。
そしてホワイトホース空港に着陸。
機内から外への階段を下りる時は、もうずっとニヤニヤしてた。
ホワイトホース空港は実に小さな空港だが、その面積はさすがに広い。
しかし、寒い。バンクーバーの倍は寒いぞ。
そして空港内で荷物の到着を待つのだが、荷物が出てくるベルトコンベアーが二つしかなく、それが交互に動くもんだからその度に民族大移動がおこる。
荷物を取ってタクシー乗り場へ移動し、タクシーを待つ。
しかし待てども待てどもタクシーがこない。
やはり電話で呼び出さないと来ないのか?
タクシー会社の電話番号を電話帳で調べて、緊張しながら電話してみた。
当然またわけのわからん英語でのやり取りになったので、「ホワイトホースエアポートtoハイドオンジャッカル」とだけ伝えたら「10分待て」と言われて電話を切った。
黄色の車体が目印だと書いてあったタクシー会社を頼んだのに、5分後に来た白いタクシーのおっさんが「ユー、ハイドオンジャッカル?」と聞いて来たのでよくわからんがそれに乗った。
タクシーなのに何故か助手席に座らされ、無言の気まずい時間が過ぎる。
このタクシー、フロントガラスにいくつもひびが入っている。実にワイルドなタクシーだ。
そんなこんなでやっとこさハイドオンジャッカルに到着。
ネットで何度も見て、随分遠くに感じてたこのホステルが目の前にあるのだ。
結局、飛行機の遅れのせいで今日は泊まらないけど。
なんだか体調が優れないので、続きは明日書こう。
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8/12(木)2:15
ギンギンに目が覚めてしまったので、昨日の続きを書こう。
ハイドオンジャッカルに着いたら、すぐアツシさんが出迎えてくれた。
ネットで見たよりも細身で、ユーコンの男にしては声が小さい。
さっそく車を回してもらい、買い出しへ出かけた。
さっきのタクシーも凄まじかったが、アツシさんの車もフロントガラスにひびが入りまくっている。
これはアラスカハイウェイ等を高速で走っていると、対向車がはじく小石がバンバン当たってそうなるのだそうだ。
ホワイトホースの街は思っていたよりもキレイで、そこそこ広かった。
見るからにワイルドな感じの店や、ゴールドラッシュ時代を臭わせるお店もあり、マクドナルドもある。
まずは大型スーパーにて食料品の買い出しだ。
その間にアツシさんはカヌーを取りにいくというので、一旦そこで別れた。
店に入ってまず迷ったのが、ショッピングカートの出し方である。
日本みたいに並んだカートを勝手に持っていくことが出来ず、鍵がかかっている。
よく見ると1ドルコインを刺して抜き出してください的な事が書いてあるが、コインをどこに刺すのかが分からない。
未だ入店も出来ず、眉間にしわを寄せて5分程悩んでいると、見かねた外人のおばちゃんが「Like this」ってなかんじでやってみせてくれた。
それを見てなんとかカートを取り出す事に成功し、店内へ。
ちょっと行ってお肉コーナーに来ると、鶏の丸焼きがでんでんでんと並んでいる。
どうにもすべての商品がキングサイズで、まるで業務用だ。
まずはサラミ、キャベツと白菜それぞれ1玉ずつと日持ちしそうなパンを買う。
米はタイ米みたいな細長い米ばっかだったけど、「錦」と言う名の米があったのでそれを買う。
いろいろ買って、最後にアルミホイルを探していたらアツシさんが合流。
クマ対策に、食べ物の匂いが漏れないようにジップロックがおすすめと言ってカートに入れてくれた。
しかし実はこのジップロック、後で判明するのだが野菜の水切り用なのかなんと穴があいているタイプだった。
これじゃあ匂い洩れまくってクマ寄ってくるじゃない。
さすがのアツシさんもスイマセンと謝っていた。
そして、レジに行くがこれまた日本とは勝手が違う。
ベルトコンベアの上に自分で商品を置いていって、流れ作業のようにお会計。
お店を出て、次は酒屋に向かうがこのあたりから体調がすこぶる悪くなって来た。
過喚起だ。(筆者注:この頃過喚起症候群に苦しんでいた。突然呼吸が浅くなるいわゆるパニック障害)
とりあえずビールの500mlを12缶と、ユーコンジャックという名のウィスキーを買う。
続いてアウトドアショップに行ってベアスプレー、モスキートオイル、焼き網、ガス缶を購入。
このモスキートオイルは、肌につけてもいいが服につけると服が溶けますという大変恐ろしくも、大変効き目がありそうなオイルだ。
そもそもそんなオイルを肌につけていいのか不安が募る。
そして本屋でユーコン川の川地図を購入し、最後に雑貨屋さんで6日分のフィッシングライセンスを買って準備万端。
いざ、スタート地点のユーコン川支流のテスリン川のジョンソンズクロッシングへ向けて出発だ。
ホワイトホースを出てしばらく進むと、もうザ・カナダって感じの風景がどこまでも続き心から感動。
そりゃこんだけ森が深けりゃクマ出るわって思ってたら、突然アツシさんが「あ、クマだ。」と言う。
僕が見渡した時はもう隠れてしまっていたが、改めてこれからクマのテリトリーに踏み入るんだという実感が湧いて来た。
ホワイトホースから約2時間。
大きな橋が見えて来た。
スタート地点の「ジョンソンズクロッシング」だ。
橋の下のスタート地点に到着。
頭上にはハクトウワシがお出迎え。
カヤックを降ろし、荷物をパッキングしていく。
隣では、学生達なのか手作り巨大カヌーを運んでいる。
もうこの辺りから、日本じゃないスケールを感じてしまう。
アツシさんとの手続きを終えて彼とはお別れ。
僕は一人になりいよいよテスリン川経由でユーコン川に向けての憧れの単独行が始まる。
そしてついに僕はテスリン川に漕ぎ出した。
もうここから370キロくらいは人が済む街もない、完全な大自然。
ゴールしないと生きて帰れない旅が始まった。最高だ。
ユーコン川にはずっと先で合流するが、ついに憧れ続けたカナダの川を自分は今確かに下っている。
この時の感激はとても言葉では言い表せないものだ。
水はきれいで、下に生えている水草の上をスイスイと進んでいく。
今回は人生初のシーカヤックでの川下り。
少し慣れるまで時間掛かったが直進性はさすがなものがある。
それにしても耳が痛い程の無音の世界だ。
昔「Sound of Silence」なんて歌があったが、まさにこれが「静寂の音」なんだ。
水の音もしなければ、鳥の声も聞こえない完全なる無音の世界。
これは日本では絶対に味わえそうにない感覚。
もうそれだけですこぶる感動だ。
やがてインディアンのフィッシュキャンプが左岸に見えて来た。
遠目で見るとキングサーモンが吊るされている。
スモークされているのだろうか。
その後20分程夕日に目を細めながら下り、川地図に書いてあったgood campの印のあった所に上陸し探検。
確かにgood campなところだったが、よく見ると木板に「Henry’s Fish Camp. No Camp」と書いてある。
どうやらここもインディアンのフィッシュキャンプのようだ。
しかし時間ももう遅いし体調も悪いので、そのキャンプ地の下の川原にテントを張った。
ふらふらしながらもまず川でビールを冷やし、ホワイトホースで買った何味か分からないラーメンを食う。
何味かと尋ねられたら、薄味としか答えようのない味のなさだった。
時間は22:00なのに本当に夕方並みの明るさだ。これが白夜ってやつか。
あんまり体がしんどいからテントに入って日記を付けていたがすぐ寝た。
しばらく寝たが、1:30に目が覚めてしまった。
おしっこしたくてテントの外に出たら、思わず「ワオッ」って声を上げてしまった。
空に信じられない量の星空が広がっている。
本当に信じられない光景だ。
流れ星が間断なく流れていく。
どんだけ願いが叶う事だろう。
これが大自然で見る本物の星空なんだ。
残念ながらオーロラはなかったけど。
コーフンして寝付けずに今これをテントの中で書いている。
当分寝付けそうにない。
ユーコン川漂流記〜2日目〜につづく
ユーコン川漂流記〜1日目〜静寂の音
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MATATABI BASE
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いやぁ、懐かしさが込み上げてきた!
静寂の音。
と、カヤックに砂粒が当たる、サーッて音が聞こえてきそうだ!
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いいですね、やっぱり分かってくれますか「静寂の音」。
耳がツーンと来るような不思議な世界でしたね。
サーッて音もユーコン合流からより感じるようになりましたね。
あの音もとても好きな音です。
ただ、テントで寝てる時のテントの外の「パキパキ」という枝折れ音だけは厳しい音でした。
クマなのかリスなのかの緊張感がたまんないですね。