8/13(金)
あの後なんとか眠りについた僕は8:30頃に起床しテントを出た。
テントから出た途端、あまりの寒さで一気に全身が震え出し、慌ててドライバッグからありったけの服を出して重ね着する。
ちくしょう、なんて寒さだ。
改めて自分が今カナダの荒野にいる事を知る。
バーナーで即席みそ汁を作り、まずは体を温めてパンとサラミとソーセージで朝食。
荷物をパッキングし直して、9:30頃川の上の人になる。
言ってみれば今日からが本当のスタートだ。
しかし、見る景色全てが美しい!
日本の良い川で川下りしてる時「すげえ、まるでカナダの川を下ってるみたいだ」なんて言っていたりしたが、ここはすべてカナダ的風景なので夢のようだ。
僕はずっとにやけながら下っていった。
しばらく進むと、モーター音が前方の方から聞こえて来たので「船かな」と思っていたら、突然山の陰から水上飛行機が現れびっくり。
そして目の前で飛び立っていった。
うーむ、ワイルドな光景だ。
しかし、水がキレイだ。2〜3m下まで透き通っている。
だんだん日も高くなり、朝の寒さがウソのように暑くなって来た。
もう、半袖でも良いくらいだ。
早速ビールを飲みながら揺られていく。
空は快晴。
雨男日本代表もカナダでは通用しなかったか?
しかし当人は最高の気分である。(筆者注:快晴なのは最初だけだったけど。)
とりあえず地図を見てヘンリーアイランドという中州を昼の休憩ポイントと決めて漕ぎ続けるが、全く流れがなくなって来た。
漕いでも漕いでも景色がでかすぎて全然進んだ気がしない。
凄く奇麗なんだけど、僕はここを「テスリン川地獄のトロ場」と名付けた。
途中、何か動物らしきものが見えたので近づいていったらキツネ?(やたらとシッポがでかかったが)らしきものが慌てて逃げていった。
ユーコン(テスリン)初の野生動物に感動。
テスリン川は水草が非常に多い。
川の上から見てると、なんだか巨大な毛の妖怪がいるようでちょっと怖い。
昔水木しげるの漫画でこんな妖怪いたからなあ、と思いながら下っていく。
ひたすらトロ場を漕ぎ続け、疲労困憊でヘンリーアイランドに辿り着いた時には16:00を回っていた。
もう昼休憩ではなくなっている。
探検してみると古びたキャビンとハンモックがあったのでくつろいでみた。
しかもこの中州アブだらけでとてもゆっくりしてられない。
結局大した休憩も出来ぬまま地獄のトロ場をとにかく漕いで行く。
漕がなきゃ進まないつらさはあるが、目の前には「鏡」のような世界が広がる。
息をのむような美しい世界が展開されていく。
上陸してみると、キャンプパラダイスな川原や草原もある。
どこまでも広く最高なフィールドだ。
思わず子供みたいに走り回ってしまった。
ムースの足跡なんかもある。
そして彩りを添えるのは、川で冷え冷えのカナディアンビール。
ああ、最高だ。
さいこうだぁぁ!!
どんどん漕いで行く。
しょんべんをもよおして来たが、沼地だらけで上陸ポイントが見当たらない。
随分進んでなんとかぎりぎり上陸出来る所があったので、快感の放尿。
我慢し続けていた分、人生で一二を争うほど気持ちのいいおしっこだった。
しばらく行って沼地に入り込んだ所で、奴の足跡発見。
始めて見るクマの足跡は、実に生々しいものだった。
とりあえずもう体力の限界だったから次に現れたGood Campで落ち着こう。
なんとか沼地から上陸し、キャンプ地へ。
蚊が多いが仕方ない。
さあ、ここでいよいよやってきました、初うんこタイム。
ついにこのカナダの大地に僕の分身を捧げる時が来た。
シャベル・ライター・トイレットペーパーの3点セットを抱えていざ出陣。
ズボンを降ろした瞬間、待ってましたとばかりに蚊の大群が奇襲をかけて来た。
蚊にケツを刺されないように、必死でケツをふりふりして手でケツの周りをシッシしながらなんとか事を終える。
実に間抜けな光景だ。
しかも無念な事に、一カ所やられてしまったようだ。かゆいというより痛い。
焚き火を起こし、パスタを茹で始める。
サラダの缶詰かと思って買ったやつが、なんとコンビーフ缶だった事が分かりブルー。
蚊に襲われ続けながらも、なんとかパスタとコンビーフを平らげる。
そして、ここでついに持って来た水が尽きた。
いよいよサバイバルな雰囲気が立ちこめてきましたよ。
腹も満たされたので、少し木の上でのんびり。
絵本のようなシチュエーションで、最高な気分だ。
ふいに森の中から「バキバキッ」という音がして来た。
ついに奴が来たかと、ベアスプレーの線を抜きそろそろ近づいて行ったらリスでした。
かなり臆病なチキン野郎になりつつある。
ちなみにこのベアスプレー。
7種類のペッパーが入っており、これをクマの鼻先にシューってやるとクマが逃げて行くというもの。
しかしこれ、2M以内で使用して下さいとあるが、距離的にかなり危険な状況にある気がするがどうだろう。
しかも風下で使用した際はすべて己に降り掛かるので、可能な限り使いたくない一品である。
もう本当に体がクタクタなので、まだ19:00だがテントに潜り込んだ。
まだその時は暑かったから、銀マットの上にゴロリと寝ていたが、23:00頃あまりの寒さで目を覚ます。
もぞもぞと寝袋に入り込んでまたすぐに寝た。相当疲れていたようだ。
そういえばこの夜、狼の遠吠えを聴いた。
そして地元の友達と僕が、何故か黒人にピストルで殺されそうになる夢を見て5:30頃目が覚める。
テントの外に出てビックリ。
シャレにならん寒さは相変わらずだが、川の上に一面川霧が立ちこめていてなんとも幻想的な光景が広がっていた。
かつてこれほど幻想的な光景を見た事が無い。
感動に震えていたが、凄い寒さで体も震えていた。
凍死してしまいそうなので、即座にコーヒーを湧かしそれをすすりながらその光景を見ていると、遠くの方にムースを発見。
川霧の中に映えるムースのシルエットは、星野道夫の写真を彷彿とさせるとても美しき姿だった。
ただ、あんまり寒いのでテントに戻って現在に至る。
さあ今日は距離を稼ぐぞ。
ユーコン川漂流記〜3日目〜へつづく
ユーコン川漂流記〜2日目〜鏡の世界
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MATATABI BASE
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