◉ りんころ成長記

ファイティング田沢のささやかなる休日風景

相変わらずのハードなる日々。

わかっちゃいたけど、一からWEBサービスを作り上げていくことはやはりとんでもなく大変なことだ。

そもそもBBGがやろうとしてることは、ありそでない前例のないサービス。

もちろんそれを今まで誰もやらなかったのは、やらなかったなりの理由がある。

それは「アホほどしんどい作業だから」に尽きるのである。

僕が記念すべきリアル嘔吐を決めた南アルプス小太郎尾根。

そこをうどん一杯だけで500往復くらいさせられてる感じの、ハードかつ地味な毎日なのである。

今年に入ってからほとんど休んでないというリアル廃人一直線。

さすがにこのままではプレオープン前に喀血して、三途の川への入り口がプレオープンしてしまうことは火を見るより明らか。

子供たちとも満足に触れ合えていないため、いつか「知らないおじさん」と呼ばれてしまう可能性だってある。

そこで作業にわずかな隙間を見出した日に1日休みを取った。

本音を言えば心いくまで家で眠り続けたかったが、この溜まりに溜まった「アウトドアへの渇望」が体を休ませることを許さない。

山に行きたい。

子供たちとも触れ合いたい。

嫁の機嫌も取っておかねばならない。

そんな私に残された道は「スキー場で家族団欒」という選択肢のみ。

これなら雪山への渇望も、家族との触れ合いも果たせて一石二鳥。

天気予報を見れば「快晴」の二文字。

働き詰めで滅多に休めない僕に対する天からのプレゼント。

さあ、しっかり焼き付けておこう。

この疲れ果てた体に快晴という名のこの猛吹雪を。

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太陽の光は1mmも注がない核戦争後のようなこの世界観。

まるで食料と水を求めて核の灰にまみれた200X年の世界を彷徨う流浪の親子。

僕が長いことオフィスで仕事している間に、世間では吹雪のことを快晴と呼ぶようになったのだろうか?

いや、よく考えたら昔から快晴と言えばこうだったな。

たまの休みだからこそ、神はいつもと同じ世界を提供するという小粋な計らいをしてくれたのである。

感謝感謝である。

そのあまりの豪雪っぷりに、駐車場からゲレンデまで行くのに「ラッセル必要か?」と覚悟してしまったほど。

これは雪山に飢えた身にとってはたまらないご褒美だ。

しかもハーネス持参で子供二人を引きずっての行軍。

たとえ家族サービス中だろうと、己へのおマゾサービスにも万事抜かりはない。

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久しぶりのそんなお父さんとの触れ合いに喜ぶ子供たち。

今まで天候不良で散々現場で悲惨な目にあって来た彼らの、「またか」というこの嬉しそうな顔。

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たまに帰ってきて連れ出されたと思ったらこの苦行。

雨のような勢いで降る雪で、ゲレンデに着く前からずぶ濡れ遊戯。

せっかく遊びに来てまだ何もしてないのに、僕はただただ「ごめんね、ごめんね…」と言うことしかできない。

しかも今日は子供たちだけじゃない。

今日はあの伝説の嫁まで一緒なのである。

普段は絶対に外遊びについてこない嫁を、僕は「せっかく快晴なんだし、たまにはあんたも一緒に行ってみようよ」と誘ってしまっていたのだ。

まさかこんな吹雪にまみれるなんて予想もしていなかったので嫁は普通に街行きの格好。

当たり前だがみるみる嫁はずぶ濡れになって行き、全身から怒りのオーラを振りまきながらの漆黒の無言。

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時折その闇の無言の中から小さな声で、「帰りたい…」とか「ふざけるな…」とか「やっぱりな…」とか「死ね…」とか聞こえてくる。

僕は毎回彼女にアウトドアを好きになってもらおうとたまに連れ出すが、毎度雨か強風か吹雪。

彼女がアウトドアを好きになれない一番の要因はどうやら僕に原因がありそうである。

ゲレンデに着くと、普通なら子供達が「わーい」と走り出して雪遊びがスタートする局面。

しかし眉間にしわを寄せまくったこの家族は、無言のままレストハウスに直行。

到着直後のまさかの「避難」である。

ひとまずまだ何も遊んでないのになぜかずぶ濡れの体を乾かすべく、腹も減ってないのにもう昼飯。

嫁は「こんなところの水は信用できぬ」と水は飲まんし、基本的に駐車場から一貫して笑顔がない。

子供達も、やたらに激しい外界より、このレストハウスで携帯ゲームしてる時の方がはるかに楽しそうである。

さすがに天も「これじゃさすがにかわいそう」ってんで、ほんの少しの間吹雪を止めてわずかな晴れ間を提供。

「嘘?遊ぶの?帰らんの?」とオーラで語る嫁に見守られながら、僕はやっと子供達とソリ遊びなのである。

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そこはやはり子供。

いざそり遊びが始まれば実に楽しそうに笑顔が弾ける。

お父さんももう少しで「知らないおじさん」どころか「虐待おじさん」と呼ばれる寸前だったが、ここでようやく楽しいひと時。

かと思いきや、2発目のこーたろくんのソリがものすごいスピードで落下してくるではないか。

これは危ないと判断した僕は、慌てて下で激しい勢いのソリを受け止める。

そしてそのまま車に轢かれた人みたいに跳ね飛ばされて一回転。

カマーホリック以来の衝撃。

そしてその瞬間、背中に「グギッ」という鈍い音色。

僕は「ぐああっ!」と叫び、背中に手を当てようとしたら四十肩の痛みが襲って来てさらに「ぬぐおおおおお!!」と悶絶。

もはやどこが痛くて何が起きたのかもわからない、「倍率ドン!さらに倍!! 」といった痛みのクイズダービー状態。

もちろんそんな僕を見る嫁の表情はご覧の有様。

そこには「心配」という言葉が入る余地が一切ない、鉄壁の無表情が存在していた。

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基本的にどんなに僕が災難に見舞われても「またか」といった感情以外が彼女から生産されることはない。

むしろ死んでなかったことへの苛立ちすら感じてしまうほどである。

それでも戦うお父さんはここで止まるわけにはいかない。

結構ヤバめの痛みだが、これはたまの休みなんだ。

子供達の笑顔のために歯を食いしばってソリ遊び続行だ。

すると僕の「不運」というDNAを受け継いでいるのか、すごく楽しそうに笑ってソリしていたこーたろくんに他の子のソリが激突。

たちまちこーたろくんとその子は大号泣。

別に大した激突じゃなかったが、さっきまで能面だった嫁がすごい勢いでこーたろくんに駆け寄り「大丈夫!」となでなで。

圧倒的な格差を感じた瞬間である。

で、これによりこーたろくんが「スキー場怖い。もう嫌。」と一切遊ばなくなり、仕方なくソリ遊び中止。

僕も背中が激痛だし、嫁も不機嫌なのでもう帰ろうとも思ったが、実際遊び始めてまだ30分も経ってない。

たまの休みで、こんな早漏撤退をかますわけにはいかない。

りんたろくんも「かまくら作ってよ」と手負いの父に容赦ないリクエストをしてくる。

なのでここからは、背中と腰に最も負担がかかるかまくら作りに背中と腰と肩を痛めた疲労蓄積男が挑む。

で、汗だくになりながらなんとか完成。

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勢い余って貫通してかまくらというかトンネルになってしまったが、これが父の愛である。

しかしこのかまくらに最初は喜んでいた子供達だったが、光の速さで「飽きた」と言ってその渾身の作品を見捨てて違う場所で遊び始めた。

そこに残されたのは悲しいかまくらの残骸と、激痛と疲労に耐える一人の老人のうなだれる姿だけである。

それでもその手負いの老人は、子供達をバックフィリップやダブルアームスープレックスで新雪に向けて放り投げる。

きゃっきゃっと喜ぶ子供と、痛みに耐え脂汗にまみれる男と、能面の女。

とりあえずこれで家族との触れ合いも果たせたし、山の空気も吸えたし、マゾれたし十分でしょう。

そんな感じで、やっと手に入れた休みを余すことなく肉体破壊に費やすことに成功。

おかげでその日から寝返りだけで背中に激痛が走り、四十肩も相まって遊びに行きたくても遊びに行けない体が仕上がった。

これでまた遊び心を封印して、ひたすら仕事に集中することができる。

休みの日に体を休ませることなく、いかに疲労蓄積と肉体破壊を成し遂げられるか。

そこが仕事のできる男の秘訣なのである。

そして現在に至る。

今の僕は背中の痛みと肩の痛みだけでなく、喉の痛みと頭痛というアドオン機能が追加されている。

そう、おなじみの風邪である。

「絶対に風邪ひかないように」って、ジョンボーAがわざわざ僕の真横に空気清浄加湿器を設置してくれたにもかかわらずである。

嫁や子供たちには愛されないが、いつだってウィルスだけは僕の味方だ。

彼らだけはいつでも僕を愛してくれるから、ありがたくて涙と咳が止まらない。

でもって、弱り切った状態な上、実際作業は難航している。

2月中のプレオープンを目指していたが、波状攻撃のように問題が山積しまくってもう少し先に伸びてしまいそうな雰囲気。

このまま課題のラッセル中に雪崩に巻き込まれてオープン前に死んでしまいそうだが、それでも前に前に進んでいくしか道はなし。

とりあえずダメだった時は仕方がない。

そのまま松尾とともに、借金返済のためにしばらくはベーリング海でカニ漁に励むことにします。

いつかこのブログの更新が途絶え、ディスカバリーチャンネルで見慣れた東洋人が二人出演していたらそれは松尾と田沢です。

肩と背中抑えながら廃人顔でカニ引き上げてるのが僕で、荒波によって極寒の海に放り投げられてる若手クルーが松尾でございます。

そんなことにならないよう、なんとか家族のためにも頑張らんと…。

山も川も行きたいが、とりあえず整形外科に行く時間が欲しい…。

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