今年は長期連休となった年末年始。
みなさんはどんな場所に遊びに行ったでしょうか?
世のファミリーの皆様は初詣だったり、初売りだったり、なんなら海外旅行なんて事をした人もいるでしょう。
登山者の人たちも各地の年末年始営業の山小屋を利用して、素敵な雪山登山を楽しまれた事でしょう。
もちろんスキーやスノボなどに興じたりと、皆それぞれがこの連休を楽しまれたはず。
僕はと言えば、長期連休を「胃腸風邪」という形で大変華々しいスタートを切りました。
もちろん即座に嫁によって隔離部屋が設置され、僕は暗い一室に監禁されました。
今年は毎年やってた大晦日の仕事がなかったので、初めて家族みんなで紅白歌合戦が観れると楽しみにしていた矢先の出来事でした。
結局僕は例年通り、一人きりで大晦日を過ごしたんですね。
そして次男こーたろくんも同時期に別の風邪を引いてしまい、家庭内は大騒動。
家族みんながこーたろくんに付きっきりで、これにより「誰も僕の事を心配してくれない」という図式が出来上がった訳ですね。
僕と息子の「ゲロ吐く歌合戦」は僕の惨敗で終わったんですね。
そりゃあもう、トイレの中は「祭り」でしたよ。
そんな中で元日を迎え、多少症状が弱まった僕は長男りんたろくんと実家の岡崎に帰ったんですね。
その状況で2日目に悪魔の囁きに遭遇し、よせばいいのにあの「新春ロンリーマラソン」に突入してしまった訳です。
結果はご存知の通りの大惨敗に終わった挙げ句、今度は「胃炎」に苦しむ事になったんですね。(参考記事:新春ロンリーマラソン2014)
そしてその日のうちに、雨のマラソンで獲得した全身倦怠感と胃炎を引っさげて岐阜に帰宅。
もちろん夜は風邪で苦しむこーたろくんの夜泣きを1時間単位で楽しみ、寝ては起こされの拷問タイム。
新年早々、心身共に限界まで追いつめられたんですね。
しかしまだ1月3日。
休みはまだあと3日残されている。
徐々にこーたろくんの症状も落ち着いて来て、僕の体力も戻りつつある。
この長期連休中に、どこにも遊びに行かないなんて事はあり得ない。
だってまだ初詣だってしていない。
さあ、我がファミリーのお正月はここから始まるのだ。
そんな父の高らかな宣言とともに、長男りんたろくんが「おなかいたいの…」と呟いた。
やがて彼のお腹の痛みはヒートアップ。
よくよく考えてみたらこの男、大晦日前からうんこをしていないという「越年便秘野郎」だという事が発覚。
やがてりんたろくんの大腸の反乱は最高潮に達し、彼は大声で「ぐあああああッッッッ」と泣き叫ぶ。
ご近所からすれば、新年早々幼児虐待かと色めき立ちそうな局面だ。
結局まだこーたろくんも治ったばかりだし、僕もまだ胃がシクシクしてた状態で、りんたろくんが戦闘中という事もあって外出は却下。
ひたすら家の中で待機。
我が家の住人は、嫁もお義父さんもお義母さんもみんな家でテレビを観ていれば満足な人たちばかり。
外が晴れていようが行楽日和だろうが、ひたすらに家族総出で引きこもっている。
はっきり言って僕にとっては家の中でじっとしてるなんて地獄以外の何物でもない。
全くどうでもいいテレビ番組を観つづけられる感情が僕には理解できない。
というか僕は家の中でどう過ごしていいのかが分からない。
世の人は「のんびりとコタツにみかんで寝転がってテレビ」が最上の幸福のような人がいるが、僕のような人間にその行為を強いると言う事はナチスの拷問に匹敵する精神破壊行動だ。
なにか秘密を吐いて救われるならいくらでも吐くが、残念ながら僕は国家を左右するような秘密は一切持っていない。
むしろ今の僕に吐けるのは胃液だけだ。
僕は時折「うううう」と唸ったり、「アッ」「ウッ」などの奇声を発するようになる。
よく考えたらこの家族、ここまでの7日間一歩も家を出てないじゃないか。
挙げ句、「世界の果ての日本人」なる番組を見ては、大自然の中で僕にとって憧れのような生活を送っている家族に対し「気が知れんわ」「病気になったらどうするんだ」「こんな所で育てられてる子供がかわいそうだ」とか言ってる始末。
この徹底的に噛み合ない僕との価値観の違い。
永遠に分かり合えない巨人ファンと阪神ファンのような確執。
しかし僕はこの家庭内ではあくまでもマイノリティで弱い立場の存在なので、無表情でグッと感情を押し殺す。
危うく新年早々、去年みたいに家出しちゃいそうになった程だ。(参考記事:ムコドノ脱走〜37歳の地図〜)
まあ、それでも世間一般的に見たら僕の方が変態寄りの異端児になる訳なので、きっと彼らに罪はない。
平和で平穏な日々を求める彼らの姿勢は尊重するから、どうか私だけでも不条理で陰惨なマゾがひしめくアウトドアの世界に解き放っていただきたいものだ。
その方が幸せを感じられる人間だっているってことを認識していただきたい。
そんな感じで、中2男子の夏のように悶々とした感情を募らせて行く男。
しかしまだ子供2人に不安要素が残っている今、勝手に外出しようものなら新年早々嫁の無言の目力だけで殺されるのは必至。
そしてお年玉のように、そっと市役所から持って来た緑の紙が手渡されてしまう事だろう。
しかしさすがに一歩も家を出ないお正月なんて耐えられる訳がない。
そこで僕は強攻策に打って出た。
こーたろくんの風邪はもう終焉に向かっているから、目下の不安要素は越年便秘中のりんたろくんだ。
僕は静かにアルマゲドン(浣腸薬)を手にして、「頑張って自力で出さないとコイツをインサートしますよ」と我が子に脅しをかける。
りんたろくんは、進撃の巨人の巨人に遭遇したかのような絶望感たっぷりの表情で「いいいやあああああっっ!かんちょーさん、やめてぇー!」と泣き叫ぶ。
しかし父は容赦しない。
このアルマゲドンに「家族で外出して初詣に行く」という夢が託されているのだ。
この脅しが相当効いたのか、彼は「自分で出すからあぁぁ!」と言って元父の隔離部屋に自主監禁。
そして30分程時間をあけて完成。
アップルパイの出来上がりぶりを確認するかのように、僕は彼のオムツの中を確認する。
そして優しく親指を立て「グッジョブ」と囁いてやり、我が子もそれに対して「ニヤリ」と応対。
さあ、これにて明日1月4日の不安材料は全て取り除かれたぞ。
随分と遅くなってしまったが、いよいよ明日は外出&初詣だ。
ついに出かけられるぞ!
1月4日。
嫁が風邪を引いた。
まさに図ったかの様に。
そして何事もおおごとにしてしまう心配性のお義父さんが、「病院だ!」とテンションが上がってしまった。
そして僕は嫁を引き連れて、正月という事で救急病院へ搬送。
そう、こうして僕は望み通り「外出すること」に成功したのだ。
思いがけない形で達成された、夫婦水入らずの「救急初詣」。
待合室は病人達の重々しい空気で彩られたおごそかな雰囲気。
やっぱりお正月はこうでなくっちゃね。
やっと健康になった僕がそこにいたら感染してしまう危険があるため、嫁により「外で待て」という指令。
僕は切ない声で「ワン」と吠えてから、静かに待合室の外の冷たい廊下のイスに座る。
正月の救急初詣会場は大変な賑わいで、待てども待てども終わりが見えない。
いよいよ底冷えし始めた男。
そんな寂しさ満点の男の携帯に、ピロリと嫁からのメッセージ受信。
さすがにこの寒い廊下で待たされる僕を哀れに思って、ねぎらいのお言葉を送ってくれたんだろうか。
しかしそこには「鼻かみたいからティッシュ買って来て」と書かれていた。
当然救急の院内では売店はやっていない。
しかも僕の車の中のティッシュはちょうど切らしたばかり。
結局僕は再び「ワン」と従順に吠えたかと思うと、コンビニ目指して走り出した。
またこういう時は決まって近くにコンビニがないという追いマゾ。
結局普段着のまま往復2キロ程を走破し、なんとかティッシュを手に入れた男。
しかもご主人様に褒めてもらう為に、あえて奮発して「鼻セレブ」をセレクトしたと言う甲斐甲斐しさ。
しかし嫁はそのティッシュを受け取るなり、特に急いで鼻をかむ雰囲気もないまま僕を再び冷たい廊下に追いやった。
「さては最初からティッシュ目的ではなく、サド目的だったんじゃないのか?」という疑問が湧いてしまうような仕打ち。
この無情な仕打ちに対し、身を震わせてヨロコビに浸るマゾ犬。
このような救急SM夫婦による夫婦漫才がおめでたく披露された後、嫁は見事に「典型的な風邪」と診断された。
その診断は同時に、僕のお正月の終わりを告げる診断となった。
翌1月5日。
僕も子供達も体調万全だが、もちろん嫁はダウンしている。
しかもこの日は、嫁が会社で貰って来てお義父さんとお義母さんにプレゼントした「コロッケ新春ものまねショー」のチケットの公演日。
なのでご両親は珍しく名古屋まで出かけて行った(こういう事がない限りこの2人は出かけない)。
こうしてこの「お正月休み最終日」を、一人きりで家事・育児全般に費やす事になった男。
もちろん、この日がこの長い連休の間で最も大快晴の日本晴れだった事は言うまでもない。
しかし何気にこの「ご両親も嫁もいない状態で育児をする」という初めてのシチュエーション。
なんだか猛烈に「楽」だった。
当然すべてを自分でやらねばならんのだから大変なんだが、妙に落ち着いた気分で楽しく育児が出来た。
ここではっきりと僕は認識した。
今まで育児で疲れきっていたと思っていた毎日は、ただの「気疲れ」だったという事を。
この「誰にも監視されていない感」という新しい快感。
初めて自由の光を見てしまった養子グラディエーター。
僕はただただ視線に怯えていただけなのだ。
こうしてやっとこさ育児の喜びを噛み締める事が出来た気疲れ養子男。
初詣に行く事は叶わなかったが、自分の中に眠る本来の自分の姿を初めて詣でる事に成功した。
しかし思いがけない速さで帰って来たご両親。
せっかく名古屋に行ったのに、一切の寄り道無しにコロッケだけを堪能してそのまま帰って来たのだ。
こうしてグラディエーターはいつもの日常に戻って行った。
彼の束の間の「お正月休み」は幕を閉じたのである。
このままではさすがに精神が持たない。
せめて「お正月に何かを勝ち取った」という痕跡を残したい。
そこで仕事始めの1月6日。
仕事を終えた僕は、嫁に「ごめん、残業になっちゃった」と2014年度のファースト・ウソをメール。
その足で大急ぎで栄に直行し、石井スポーツでの残業を開始した。
嘘をついてまでここに来た目的はただ一つ。
それはこの2014年の運試し。
なんとくじ引きで、最大「50%オフ」という金券が当たるというビッグチャレンジ。
もちろんこの日がこのイベントの最終日。
残り物には福来るというように、ここまで辛酸を舐め続けた僕には必ず50%オフの栄冠が舞い降りると踏んだのだ。
僕はこの日に全てを賭けていた。
あの自宅内で監禁中に、僕はひたすら欲しい商品をリストアップしてこの50%オフに照準を絞って来た。
本来中々手が出ない商品(スントのAMBIT2やアバランチギア各種)を、この機に一気に我が手中に収めてやるのだ。
ここでそれが達成できれば、この苦難のお正月の全てが報われるのだ。
僕は抽選のガラガラに対して一度手を合わせて拝み、静かに呼吸を整える。
もう気分はドラフト会議のくじ引きに挑む球団オーナー。
喉はカラカラになり、ここまでの辛かった日々が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
渾身のガラガラ。
運命の一回転。
やがて「コロン」と落ちた一粒の夢の玉。
会場は静寂に包まれる。
この沈黙を引き裂くのは店員さんの「おおー当たりー」の声か。
玉の色。
それはなんと「赤」。
このめでたい新春に投下された、めでたすぎる色「赤」。
赤って言ったら、戦隊ものだとセンターの色。
店員さんはニコリと笑い、そして静かに「おめでとうございます」と言い放った。
ついに来た。
さあ、そこにある大当りベルを高らかに鳴らすがいい。
店内にいる愚民どもに、我が50%オフ当選の栄誉を宣言するといい。
店員は言った。
「10%オフご当選でございます」と。
どれほど気を失っていただろう?
まずは現状をしっかり見つめ直して、このざわついた心を落ち着かせる必要があるようだ。
とにかく今、この目の前にある現実を受け止めるのだ。
10%オフじゃ通常のセール時と何ら変わらないじゃないか…。
そもそもこれ、空くじ無しのガラガラだろう…。
なんだ、正月早々からこの激しい敗北感は。
しかしいつまでも落ち込んでいる場合じゃない。
今日が最終日だから、この10%オフチケットも今日が有効期限。
しかも閉店の時間まであと30分しかないぞ。
僕は大急ぎで「何か得をした」という戦果を残すため、必死で店内を回る。
そもそも50%オフしか狙ってなかったから、リストアップして来た商品が高額なものばかりで手が出ない。
50%オフという名の「ゆうしゃのつるぎ」を武器に戦いを挑むはずだったのに、とても10%オフ程度の「こんぼう」ではその高額ボスには太刀打ちできない。
やがて散々かけずり回った挙げ句時間切れ。
結果、その手に握られていたのは「インナー手袋」という地味すぎる1品のみ。
この所有欲を全く満足させない商品が、この僕の魂を賭けた戦利品。
近所のヒマラヤでも売っているこの商品を、わざわざ嫁に嘘ついてまで購入したガラスの勇者。
おごそかに流れ出した「蛍の光」のバックミュージックが、そんな勇者の切なさに拍車をかける。
そしてレジでお会計をしながら、その心のガラスはバキバキに割れて崩れ落ちていた。
まあいいさ。
1470円の商品を10%オフの1323円で手に入れる事に成功したんだ。
今の時代、1円だって無駄にする事なんて出来ないからね。
そんな失意にまみれて駐車場へ。
さすがは大都市・栄の駐車場。
この駐車料金は何事だ。
私はバカなのか?
それともアホなのか?
はたまたハゲなのか?
結果として、僕は1470円の商品を2323円で手に入れる事に成功したようだ。
50%オフどころか、まさかの158%アップで購入しているという事実。
このお正月で一番めでたかったのは僕だったと言う事か。
こいつは春から縁起がいいぜ…。
こうして仕事始め早々、早速僕は残業してまで社会貢献にいそしんだ。
このような男がいる限り、日本の経済は緩やかな上昇気流に乗るはずだ。
2014年の日本の景気は明るいものとなるだろう。
そして現在。
男は何と「風邪」に冒されていた。
嫁の風邪が移ってしまったのか、胃腸風邪明けからの風邪という「新春闘病フルコース」へ突入。
家族みんなの回復を見守ってから、再び振り出しに戻ってしまった万年風邪男。
私は一体どんだけ体が弱いのか?
しかし家族の笑顔が私の喜び。
僕は新春ジョークとして、嫁に「君の僕への愛が強過ぎて風邪まで移っちゃったよ。愛を溢れさすにもほどがあるぜ。」と小粋にかましてやった。
僕はちょっとした嫁の笑顔が見たかっただけなのだ。
しかし彼女はこう言った。
「そんなものは1ミリもねぇ。」と。
新年一発目から、随分と核心に迫った事をズバリと言われてしまった気がしてならない。
薄々は気づいていた事だが、こうもはっきりと言う事ないじゃない。
こうして男は2014年の華々しいスタートを切った。
その足取りはしっかりとしており、いつもの場所に男らしく入って行く。
そう、
いつもの隔離部屋にね。
その表情には一片の曇りもなかったという。
しかし時折その暗い一室から嗚咽の音が漏れて来たという。
彼の2014年は、まだ始まったばかりだ。
僕らのステキなお正月〜おめでた男の虚弱デイズ〜
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MATATABI BASE
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