御嶽山/長野

御嶽失禁オールスターズ〜奇跡の蒼いそら〜

「週末は京都に行きます。」

「嵐山の紅葉を目指してトレイルランニングです。」

そう言っていた男。


しかしその週末。

京都で紅葉を満喫しているはずの彼が、何故こんな事になっているのか?

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どう見てもここは渡月橋ではない。

紅葉どころか、見渡す限りの白銀の世界だ。


数日前まで彼は「京都一周トレイル秋の陣」に向けて準備をしていた。

日々走り込みをし、Facebookでも「週末のトレラン32kmに向けて準備万端」と宣言。

地図もわざわざ京都観光協会から郵送で入手し、荷物も完全に準備完了して後は現地に向かうのみと言った状態。

そして決戦2日前の状態でこの奇跡的な天気予報。

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日曜日の岐阜方面の天気は微妙だったが、京都方面は晴れ時々曇りの絶好のトレラン日和。


以前から苦心して嫁から「1日フリー券」を拝領奉る事に成功していたこの日曜日。

僕は出発直前まで、ウキウキ状態で気持ちはすっかり京都に向かっていた。




と、見せかけて。


日曜日。

男は急転。

トレランザックを部屋に投げ捨て、雪山装備一式を担いで家を飛び出した。

向かった先は京都と全く逆方向の「御嶽山」。


てっきり僕が京都に来るとばかり思っている親友のモクモクさん。

彼はいつものように晴れと見せかけて現地で潜伏していた模様。

あれほど晴れ予報だった京都は、当日になって見事にモクモクさんに支配されていた。

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一方で僕が京都に行くと思って油断している御嶽山は、当初の曇り予報から一気に無防備な状態に。

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してやったり。


そう、これは「敵を欺くには味方から作戦」。

最近事前にFacebookに行き先を投稿すると、その情報がモクモクさんに漏れていた感があった。

恐らくチーム・マサカズ内にモクモクさんへの内通者がいるに違いないと思った僕は、直前まで隠密に雪山準備も進めていたのだ。


こうして僕は「徹頭徹尾大快晴」という奇跡の一日を手に入れた。

それはもうオリンピック並みの「4年に一度あるかないか」の奇跡。

突然長澤まさみに「好きにして」と言われるに等しい、我が人生では絶対にあり得ない快事なのだ。


人生で初めての大快晴の雪山登山。

吹雪にまみれて泣いていたあの頃にさようなら。

2013年ももう終わりが近いという段階で、やっと今年一番の快晴がやって来たのだ。


晴れただけで随分と大げさな前置きだったが、それほど貴重な事だとご理解いただきたい。



そんな一生のうちに二度と来ないかもしれない快晴記念日。

その大切な日に彼がチョイスしたのが「御嶽山」。

雪山3シーズン目にして、ついに冬の「3,000m峰」の世界に初アタック。


今シーズンしょっぱなからいきなりの大本番。

体力一本勝負の純粋な直球勝負ハードマゾ登山。

失った物もあったが、終止笑顔が溢れた絶景登山だった。


そんなレアな記録。

じっくりと振り返って行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


おんたけ2240スキー場のゴンドラに乗って、登山口付近まで到達。

もうこの時点で、空が青過ぎて直視出来ないほどのエッチな絶景。

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青空慣れしていない僕としては、あっという間に目がつぶれてしまいそうな青。


そしてスキー客にとってはここが最高点だが、登山者はここが出発点。

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そして何気にここに写っているのが、チーム・マサカズの「矢作C」。


僕は急遽行き先を御嶽山にした際に、急だから誰も来んだろうと思いつつも、一応一緒に行く人を急募してみた。

すると「独身フリーダム・矢作C」がスキー客として手を挙げた。

さすが時間がある男はひと味違う。


何気に彼は相当なスキーの腕前を持った男で、実は本業は「従軍キャメラマン」でも「テクノメガネ」でも「親父狩りMr.オクレ」でもなく「スキーヤー」なのだ。

そんな彼とはここであっという間にお別れ。

結果として一緒に来たのはいいが、ここからはお互いにストイックなソロの旅路が始まるのだ。

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僕は「帰ってこなかった時はよろしく頼む」と言い残し、この赤いデッドラインを越えて登山口に向かった。


そしていきなり氷の道で転倒して臀部を強打するという余興を楽しみながら、無事に田の原の登山口に到着。

ケツは痛いが、かつて彼がこれほどまでに笑顔で出発記念写真に納まった事があっただろうか。

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いつもは出発の段階で頭上は重い雲に満たされ、苦渋の出発写真が基本なのに。

晴れているとこんなにも気分がいいもんなんだね。


かと言って、実は彼はかなり緊張している。

そもそもこの「御嶽山」は独立峰なんで、一度天候が荒れると途端に難度の高い山と化す。

冬の富士山と似たような山だから、晴れたとは言え強風が吹くと非常に危険。


しかも彼の今までの雪山の最高標高は伊吹山の1,377m。

それがいきなりのこの「3,067m」の世界へ突入するって事で、体感的にどんな世界が待っているかも分からない。

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山頂付近に雪煙が舞っているのも確認できるし、ドキドキとワクワクが止まらない。

厳冬期ではなく、しかも快晴微風のこの日だからこそ今の僕でも挑戦できる山だ。


幸いしっかりしたトレースも付いてるし、他にも少し登山者がいる。

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しばらくは気持ちの良い林の中の雪道を進んで行く。

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やがて景色が開けて来たあたりで背後を見ると、ででんと恵那山。

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そして中央アルプスの山並み。

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スタートからわずか40分あまりで到達したエクスタシー。

長らく快晴絶景から遠ざかっている身としては、ちょっとした刺激であっという間に昇天してしまう。

まだパンツがこすれた程度の刺激なのに、こんな事で山頂まで持つのだろうか?

やはり雲一つない青い空は、もうそれだけで立派な公然猥褻罪です。


しかし先はまだ長い。

こんな所でエクスタシーにまみれてハアハア言ってる場合じゃない。


その後もグッハグッハと高度を上げて行く。

やがて8合目の金剛童子に到達。

頭上には流れ星のような飛行機雲。

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青い。

今までこのような写真を雑誌で見ては「こんなものはCGだ」と言って破り捨てて来たが、いざ自分がそこに身を置いてみるとたまらなく気持ちE。

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ひがみ人生を歩いて来た僕は「我がカメラはモノクロ撮影専門です」と言い張って来たが、この日初めてフルカラー撮影が出来る事を知った。

修行こそ我が登山と言って来たが、やはり登山は晴れてナンボなんだね。

ここはもう陽気に楽しんじゃっていいんじゃないか?

ほら、お地蔵さんだってこんなにスポーティーでファンキーなんだし。

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まるで「もうストイックはやめちゃいなYO!陽気に浮かれちゃおうYO!」とでも言っているようではないか。

そしてこのアディダス兄さんの登場から、一気に森林限界を越えた世界へ突入。

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写真では伝わらないが、いよいよこの辺りから風が強まって来た。

遮る物の何もない独立峰ならではの世界がここから始まるのだ。


そして斜面も急になって来て、雪にも氷が混じり始める。

そこでついにこいつが出撃。

以前、風邪を引いた勢いで買ってしまった「グリヴェル姐さん」のご登場です。(参考記事:極妻アウトレイジ〜風邪に吹かれて〜

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ついに現場で「12本爪アイゼン」を履く時が来てしまった。

もうこの姐さんを足に装着した時点で、僕はもう堅気の世界には戻れなくなる。

雪山登山という名の極道の世界に堕ちて行くのだ。


そして男はグリヴェル姐さんを装着し、「命のやり取りの世界」へとその一歩を踏み出した。

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やっぱり素晴らしい。

いままでの10本爪スノースパイク「なんちゃってモンベルちゃん」に比べ、本格的12本爪アイゼン「グリヴェル姐さん」の雪面への食いつきっぷりが凄まじい。

このような急登の場所ではモンベルちゃんではズルズル滑り落ちていた場面。

でもグリ姐さんの12本のドスが鋭角に突き刺さってしっかり体を支えてくれる。

なんて頼りになる姐御なんだろう。


一方で御嶽山も余計な回り道はさせないという、極道の山らしい男らしき「直登一本道」で歓迎ムード。

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いよいよ風とともに猛烈な急登が襲いかかる。

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もちろん僕としても、渾身の「己撮り」でその思いに応える。

急斜面の行ったり来たり程、無駄に体力がそがれる行為はない。

しかも風で三脚も不安定だから、カメラを壊す危険と隣り合わせのスリルも味わえる。


よく考えたら、ここん所やたらと手の込んだ変化球的なマゾが多かった。

変化急過ぎて現場にすら辿り着けない事もしばしばあった。

ここらでマゾの王道「グハグハ急登・体力一本勝負」にこの身を捧げて初心に還ってみようではないか。


やがて2,600m付近の「富士見石」に到達。

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そして御嶽山も、そんな直球マゾ勝負に花を添える演出を開始。

この辺りから猛烈な突風が吹き出し始め、ここから見る9合目付近は雪煙が舞いまくり始めた。

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中央やや右下にいるのが登山者。

その雪煙の激しさがお分かりいただけるだろうか?


いよいよ未知なる3,000m峰の雪山世界に入って来た感が強まって来た。

足下の雪も、ほとんどが氷になっててカチカチだ。

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高度を上げるごとに危険は増して来たが、それでも同時に景色の絶景っぷりも増して行く。

もう空に至っては、宇宙に向かって歩いて行っている気分だ。

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何とも言えない高揚感。

人は晴れてるだけでこんなにも幸せになれるのか。

そして幸せすぎる大急登が、その高揚感にマゾなスパイスをピリリと効かせてくれる。

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思わず「オー、モーレツ」と呟いてしまった程の登り。

モーレツすぎて、凄い勢いでエネルギーが失われて行く。

やはり3,000m付近の高所だからか、息が上がるのが早い。

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次第に10歩歩いては立ち止まって休憩するの繰り返しに。

やがてその10歩も5歩になって、いよいよヘコヘコ状態。

まるでイモトが山頂直下で一歩一歩フラフラ登って行くっていうあんな感じだ。


でもこの男には視聴者はおらず、誰一人感動させる事のない一人マゾ登山。

標高3,000m付近で勝手に行われる「地獄の果てまで、イッテM!」の撮影風景。


やがてそのドMハンターは、吐き気をこらえながらやっと9合目の中央不動に到達。

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不動尊に安全祈願をしようにも、その門はカチカチに閉ざされている。

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まるで嫁の心を見ているような気分。

子供達を置いて一人でこんな事してる僕には、とてもこの氷の扉を溶かせそうにない。

本当にすまない。

でもこんな晴れた日はそうないんで、大目に見てください。


そしてそんなのんきなお父さんの前に、いよいよ氷と岩だけになって来た道が立ちふさがる。

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ほんとグリヴェル姐さんと来なかったら、この先にはとても進めなかった。

でも何気に氷と岩の連続なので、結構神経を使って登って行く。

一方で横を見れば、ご覧の通りの美しき世界。

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いよいよ「雪山やってます」的な光景に、気持ちにも張りが出て気分が高まって行く。

寒いししんどいんだけど、やっぱりコタツでみかん食ってテレビ観てるよりかはずっと心は穏やかな充足感。

自分の心身をフルに使って自然と対峙する充実感と、それに付随する大絶景。

恐いね、雪山さん。

もう抜け出せないこの世界。

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もちろん危険が一杯の雪山登山。

でも世の中には雪山の悪いイメージだけが相当に浸透している。

正悪を知った上で、自分の力量と経験をふまえて物事は判断するべき。

一方的な広義だけで批判をするのは良くないことね。

でもほんと危険なんで、よくよくちゃんとした装備と経験積んで楽しんで欲しいもんです。


楽しんでって言いながら、苦悶の表情で最後の急登を登って行く男。

持って来た行動食の量が少なくて、すっかりガス欠に。

久しぶりに本気のパワー登山になっている。

それでもなんとか王滝口頂上神社に到達です。

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王滝口頂上って言っても、もちろんここは真の頂上ではない。

ここからいよいよ3,067mの剣ヶ峰を目指す戦いです。

当然足下はカッチカチです。

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神社も凍っちゃって「札幌雪祭り会場」に迷い込んだかのようだ。

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そしてツートン狛犬と顔面氷結男の石像も。

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さあ、ここからは氷と風の世界。

神社を越えると、そこには剣ヶ峰までの道がどどんと現れた。

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これが3,000mの世界。

猛烈な寒さと突風が支配する場所。

いよいよ美しさと恐ろしさが共存する「沢尻エリカ的」な世界の始まりだ。


スケートリンクのような道をアイゼンを効かしながら慎重に歩いて行く。

やがてお馴染みの「よく風呂場に落ちてる毛」というオブジェがいつにも増して美しい。

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そしてその奥には、すっかりエビのシッポまみれになった石像オールスターズの皆さんが。

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もはや芸術作品のような美しすぎる氷結っぷり。

もう原型がなんだったかも思い出せないほどだ。

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なんか台湾スイーツの「雪花氷」にしか見えない。

僕ものんびりしてたらこんな風に美味しそうに氷結してしまう。

急がないと。


しかし風の勢いはもはや台風並み。

何度か耐風姿勢をとっては、風の落ち着きとともに足を進めて行く。


そしてこの時、サングラスが外れかけた。

グローブで調整しようとした途端、僕のサングラスのグラス部分があっという間に風に乗って吹き飛んで行った。

それはもう全盛期の松井秀喜の打球のスピードと同じくらいの早さで、はるか彼方に飛んで消えて行った。

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慌てて追いかけたが、それはキャッチャーが松井のホームランを追うに等しい不毛な行為。

そしてそこには、インナー眼鏡だけになってしまった哀れなキャッチャーの姿。

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ザックを下ろしてゴーグルにする手間を惜しんだばかりに、大事なサングラスのグラスを失ってしまった。

しかしこれはいつもどおりの「快晴代償」の儀式。

僕はあえてこの御嶽山にサングラスを奉納したのだ。

たかだかサングラス程度のお供え物で、この大快晴が手に入ったと思えば安い物だ。

そう思いたい。

そう…おもいたい…。



さあ、やる事はやった。

ちょっと目からの水分で曇るけど、ゴーグルに付け替えて先に進むぞ。

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やたら鼻先だけが凍傷ぎみになって行く中、相変わらずのパワー登山。


やがて雪に埋まった頂上小屋を越えて、

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いよいよ最後の階段(雪の下だけど)を登って行って、

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鳥居をくぐって、

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雪が舞いまくる神社の先に、

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ついに山頂が見えた。

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急登一直線の雪山男道。

モクモクさんが京都で待ちぼうけを食らっている隙に…。


ついに「冬期御嶽山単独登頂」達成でございます。

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もう初の冬期3,000m登頂よりも、この「快晴をバックに登頂写真」という実現不可能かと思われた偉業に大感動。

もうこれはピューリッツァー賞ものの衝撃写真。

ジェームス・キャメロン監督ですらその快晴映像化を諦めたと言われた悪天候男が、ついにここ御嶽山山頂で歓喜に包まれたのだ。


しかし各方面から「これはほんとに本人なのか?」「顔が全く分からないじゃないか」「別の晴れ男マスクマンによるヤラセ写真じゃないのか?」という疑問の声が寄せられた。

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どうか信じてやって欲しい。

間違いなくこれは私なのです。


さあ、そして独立峰ならではのお楽しみタイム。

360度の絶景のお時間でございます。

北方にどっしりと佇むは「北アルプスの皆さん」です。

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乗鞍岳越しに、センターには槍ヶ岳の穂先が天に突き抜けております。

そしてそのまま左下に目を移せば、夏場は二の池がある場所が広大な雪原に。

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これ、写真よりも現物は猛烈に美しいです。

夜のお店の逆バージョンと言えば分かり易いでしょうか。

写真の美しさにつられて指名し、現物見たらビックリなんて事はここでは無いのであります。


そしてその流れでさらに左に目をやれば、あまりにも美しすぎる霊峰「白山」の秀麗なお姿が奥の方に。

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日本三大霊山の御嶽山から見る、もう一つの霊山白山。

まだ360度のうち90度くらいしか回転していないが、もう僕のパンツは感動失禁でびしょ濡れだ。


そしてさらに左に回転すれば、ここまで登って来た道と遠く恵那山。

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そのままさらに回転を続けると、「中央アルプス」と「南アルプス」が重なって登場。

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まさにオールスター夢の競演。

さらにその奥に目を凝らすと、

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富士子はん!


この瞬間、僕のエクスタシーは頂点に。

北・中央・南アルプス、そして白山・御嶽・富士と来て日本三大霊山そろい踏み。

おまけに大快晴。

もちろんこれは夢でもなければ、いつもの空想でもない。

今、我が周囲を日本の山オールスターズが取り囲んでいるのだ。


いよいよ失禁が止まらない。

感動のオシッコが油田の様に大噴出。

ファイントラックのアンダーウェアですら脱湿が追いつかない。


寒過ぎて鼻水も止まらないし、もうただの感動排泄マシーンと化した男。

しかし絶景だからと言ってこの場に長く留まるわけにはいかない。

長居してしまった日にはたちまちこの噴水失禁が凍り付いて、僕まで凍ってしまう。

そしてこの山頂に新しい像が増えてしまう。


夏山と違って「のんびり山頂で昼飯」なんてのんきな事を言ってられる環境ではない。

もちろん即座に下山を開始です。

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しかもこの時点で13時半。

僕は矢作Cに「13時をメドに引き返す。15時までには帰還する」と宣言していたので、実は結構なタイムアタック下山なのだ。

スキー場のゴンドラも16時が最終なだけに、大急ぎで下山します。


名残惜しいが、この人生最後の大快晴と大絶景を目に焼き付けながら元来た道を下って行く。

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ああ、最高だ。

やっぱり雪山は最高に楽しいや(晴れれば)。

神様もたまにこうした甘々な体験をぶち込んでくるから、こっちとしてもまた深みにはまって行く。

手口がイカサマカジノと一緒だ。

最初は稼がせていい気分にさせといて、その魅力から抜け出せなくなった段階できっともの凄い仕打ちを用意してるんだろう。

もしくは雪女の「お兄さん、ちょっと遊んで行かない?」という甘い誘惑で誘っておいて、後から恐いお兄さん達が出て来るパターンか。


それでもやっぱ良いもんは良い。

そうそうある事じゃないんで、この快晴登山を目一杯楽しんでやったぞ。

ほんとにここ最近、夜泣きな毎日でノイローゼ気味だったんですよ。

これでまたしばらくお父さんは頑張れそうです。



で、下りは急登で登って来た道を急下降。

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でもアイゼンはガッチリ効くし、目の前の絶景を堪能しながら快適に駆け下りて行く。


時間はないけど、いよいよエネルギー切れで体が動かんくなって来たから、8合目付近の風が落ち着いた場所でやっとこさ遅い昼食。

もうこれ以上ないテラスランチでございます。

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この場所で食うカレーヌードルの壮絶な旨さを想像していただけるだろうか?

それはもう三ツ星ホテルのランチを軽く上回る美味しさだ。


しかしのんびり食ってると、15時を越えて矢作Cによって捜索願が提出されてしまう。

ここから先はアイゼンも外し、ピッケルをポールに持ち替えてダッシュ下山。

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後半はもうほとんどトレラン状態。

今転倒したら、たちまちこの雪道に美しいカレー汁が巻き散らかされた事だろう。

それでもなんだかんだと、15時10分になんとか無事下山。

この全体的に素晴らし過ぎた登山に対し、この男も渾身の浮かれドヤ顔でフィニッシュだ。

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はしたない程のエクスタシーな表情。

今までは大概下山完了とともに息絶えている記念写真ばかりだったが、この日ばかりは素晴らしき笑顔写真。

恐らくもう二度とこんな満足顔で写る事はないだろうから、何かあった時はこれを遺影にしてください。


そしてすっかり待ちくたびれてた矢作Cと合流。

彼は「さすがに一人きりのスキーは寂しかった」と力なく語り、1時間以上食堂で孤独に僕の帰りを待っていた模様。

なんだか誘った手前悪い事をしてしまった。

リフトも1本しか動いてなかったし、これは矢作Cなりの「サポート快晴代償」だったんだろう。

こうして我々は無事に帰宅の途についた。



コアでサドな読者からは「おい、あんた何楽しんじゃってるんだ?あんたの笑顔なんて見たくないんだ。グッと来る死に様を見せてくれよ。」という非難の声が上がりそうな今回の登山。

しかし僕としても、そう毎回毎回死んでは生き返っていたらまるで男塾だ。

今回くらい大目に見てやってくれないだろうか。


サングラスを失い、ゲイターをアイゼンで引き裂いたというトラブルはあったが、それを補ってあまりある充実した登山。

雪山の訓練としても上々で、なにかと勉強にもなった。

反省点も多々あったんで、次回の雪山に向けてまた色々と調整して行こう。


さあ、これから本格的に各地に雪が降る。

今年こそ冬の八ヶ岳に行きたい。

鈴鹿の山も味わい尽くしたい。


ただ問題はやはり家庭内ホワイトアウト。

あの猛吹雪の世界をいかに迷う事無くラッセルして乗り越えて行けるかどうか。

もちろんGPSでも現在地が把握できない。

最悪、育児雪崩に巻き込まれて今シーズンの雪山がこれで終わってしまうなんて事もありえる。

怒った嫁の120本爪アイゼンで、ザクザクに心が切り裂かれる可能性もある。


これ以上彼女の心が凍り付かないように。


彼が川上屋の「高級くりきんとん」を、お土産で買って帰った事は言うまでもない。


雪山登山成功の秘訣は装備や経験ではない。


賄賂なのである。



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