◉ りんころ成長記

悶絶三連休〜もがき続ける逃亡者〜

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突如雪原に現れたパーデンネン。

インドア派の彼が、なぜ「お手上げ状態」でこのような雪原に立ち尽くしているのか?


そもそも彼は自分の父親に「温泉に行きたい」とリクエストしたはずだった。

一体彼の父親はなぜこんな吹雪の雪山に息子を連行して来てしまったのか?

その謎に迫ってみよう。


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三連休の初日。


男は最近しみじみと思う事があった。

それは「インドア」で一体何をすればいいのか見当がつかないという事だ。



男はここの所育児の為に家にこもりがち。

もちろん育児でやる事は沢山あるんだが、長男のりんたろくんの時と比べて違う事が多々ある。

当時は二人暮らしだったから、育児はもちろん風呂掃除・食器洗い・洗濯物の取り込み・買い出しなどとやる事が山ほどあった。

しかし今は養子として実家に入り、ありがたい事に家事全般はお義母さんがやってくれている。

ゆえに休日の男の役割は、主に「りんたろくんの面倒を見る」というスタンスが確立されたわけだ。


しかし嫁の手前と養子という立場、そして「ミルク製造機」としての立場上、今までのように子供を連れ出して外で遊びまくるというわけにはいかない。

だから必然的に「インドア」という、男にとって未知の世界で休日を過ごさねばならないという事になる。


しかし。

何をしていいのか皆目見当がつかない。

インドアで子供の面倒を見るとはどういう事なのか?

「子供と室内で遊ぶ」とは何をするのが正解なのか?


しかも天気のよろしいこの三連休。

溢れ出る雪山登山への欲求と何していいか分らない葛藤により、なぜか男は「筋トレ」という答えに行き着いた。

最初はりんたろくんを担ぎながらスクワットしたり、背中に乗せながら腕立てをしてみた。

これで体を鍛えつつ外遊びの欲求を鎮め、なおかつ子供と遊ぶという一石二鳥ではないのかと。

きっと世間一般のお父さんも、このようにしてインドアで子供と遊んでるのではないかと。


しかし時間が経つと飽きてしまったたりんたろくんはYouTubeでウルトラマンを見始め、僕はそれに甘えて黙々とストイックなトレーニングに埋没。

大概そんな時に嫁が扉をガラリと開け、必殺技「漆黒の無言」で僕とりんたろくんを凍り付かせる事になる。


確かに子供にパソコンを観せ続けるのはよろしくない。

かと言って、インドアでやる事なんて「寝る」くらいしか選択肢が無い僕にとっては何も思い浮かばない。


見かねた嫁が「しょうがないで、近くで遊んで来い。近くだぞ。」と言う。

僕が「じゃあ、りんちゃん。公園でも行くか?」と問えば、彼は3歳児らしく「温泉がいい」とぬかした。



近くの温泉なんて、イオンの中の「コロナの湯」しかない。

結局また「インドア」。

それでもりんたろくんとコロナの湯へ行き、この天気の良い日にただただその施設内で時間を空しくつぶした。


やがてその慣れないインドア暮らしで、若干風邪気味になって体を弱らせる男。

やはり天気の良いこの三連休をインドアで過ごすなんて無理そうだ。


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三連休二日目。


この日も実にいい天気。

しかし相変わらず陰鬱な気分で夕方まで家にいた。


たまらずりんたろくんを近所の「何も無い広場」へ連行。

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文字通り何も無い場所だが、やはり家にいるよりは断然落ち着く。

やがて「水遊び場」と書かれた、一度も水が張られた姿を見た事が無い場所に到達。

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そして我々はその中に「山」を発見した。

今の僕には標高1mだろうと立派な山で、輝いて見える。

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そしてこんな山で「人生初の自力登頂」を実に安く済ませてしまった息子。

この男はは将来、焦って手っ取り早く付き合ったアホっぽい女とさっさと結婚してしまうようなタイプなのかもしれない。

しかもこの程度の山で下山出来なくなり「ダッコダッコ」とせがんで来やがった。

残念ながら、この程度の山が彼の限界地点のようだ。



そしてここに来る途中でわざわざ買ってきた、バトミントンのオモチャで遊んでみる。

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するとすかさず我々親子の元に激しい突風が襲いかかり、たちまち僕らは強風の元に晒された。

僕のくせに、あわよくば楽しんでやろうと思ってしまった事に天が怒ったのだ。


バトミントンはまさに今最もやるべきではない遊びと化した。

球を前に打っても自分の後方に球は押し戻され、何一つ楽しくない。


そうこうして体も冷えた所で日も暮れて、我々はトボトボとと家路についた。

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一体なんだったんだ。

結局風邪をこじらせてしまっただけじゃないか。

こんな事でもう快晴の三連休の二日分を費やしてしまったぞ。

野に放たれれば、二日あればどれだけでも遊び尽くすことが出来るのに。


男のウズウズとソワソワが止まらない。

そして3日目を迎えた。


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三連休最終日。


もう限界だった。

何でもいいから外でガッツリと遊びたい。

僕はりんたろくんを連れ出して家を出て行く事を決意した。


僕はあえて嫁の前で「りんちゃん、今日どこ行って遊ぶ?」と尋ねる。

そしてまたしても3歳児らしく「ボク、温泉がいいの」と言うりんたろくん。

おっさんにも程がある発言だが、これはこれで想定内。

まさに狙い通りだ。

こうして我々は家を飛び出し、「温泉」に向かった。




やがて「温泉」に到着し、黙々と歩かされるりんたろくん。

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りんたろくんは「温泉はまだ?」と言いいながら渋々坂道を登る。

そしていつもの温泉のイメージとかけ離れた光景に戸惑うりんたろくん。

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僕は「温泉の前にちょっと寄り道ダネ」と暗示スタート。

そして「見てごらん、お友達がいっぱいいるよ。楽しそうだねえ」とゆっくり洗脳していく。

そして雪玉を作って忍び寄り、ねちっこく営業をする訪問セールスマン。

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「どうですか?この雪玉。今なら英会話の教材とパワーを秘めた壺もセットですぜ。」

雪原で繰り広げられた、執拗で怪しげなセールストーク。


こうしてりんたろくんの中の嫁の遺伝子の奥に眠る、「僕の遺伝子」に対して目覚めるように語りかけて行く。


やがて彼は根負け。

ついに「子供らしさ」を取り戻し、次第にこの雪山を楽しみ出した。

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もはや温泉の事など頭から消え去っている。

こうなればこっちのものだ。

さあ、遊んでやるぞ。



りんたろくんをソリに乗せ、カヌー用のタイダウンベルトで引っ張って行く。

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いいぞ。

すっかり気分は「雪山登山」だ。

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結構ハードで息もグハグハだ。

やっぱり外マゾはたまらねえ。


10分くらいかけて登ってはソリで滑り、再び汗だくになりながら登って行く。

実に素晴らしく、もはや滑らなくていいからどこまでも登って行きたい気分だ。


そんな親のマゾに延々と付き合わされるのに辟易した息子。

恐らく恥ずかしくて、穴があったら入りたいと言った気分だったのか。

たまらず彼は一目散に穴に逃げ込んだ。

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そしてそのまま冬眠を開始。

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帽子が熊だからちょうどいい感じだ。

でもこう見えて彼はもの凄く楽しんでいる。

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何に対して楽しさを見いだすのかが予測不能な部分は僕似だろうか?

彼は穴から出ると、なぜかひたすらローリングしながら坂を転がり落ちて行った。

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そして雪にまみれて愉悦の表情をもらす。

いよいよ僕の血が目覚めて来たのか?


ついに彼は自ら望んでラッセルを開始し、前人未到のルートに攻め込んで行った。

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おお、逞しい後ろ姿よ。

やっぱり子供は外で遊んでなんぼだ。

家でYouTube観てるくらいなら、こうして「お父さんと一緒に」外で遊びまくるべきなのだ。


そして登りきった末のこの誇らしげな表情。

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でもこれは、僕のマウントポジションを取った時の嫁の表情に似ている。

「さあ、こらしめてやるぞ。泣いて詫びても許さんぞ、このハゲ野郎」といった嫁の遺伝子が垣間見られる表情だ。

やがて嬉々として踏みつけた雪をバシバシ叩き出す。

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すいません、もうしません、ゆるしてください。



しかし僕だってやられてばかりではない。

力づくでマウントポジションを解除。

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すかさず背後を取り、

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ローリングしながら滑落。

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親と子の素敵な時間。

何が素敵かと言えばこれを沢山周りに人がいる中で、わざわざ三脚を立ててインターバル撮影しているという裏事情が素敵なのだ。

本来ならばお父さんと子供が遊んでいるのを、微笑みながらお母さんが撮影するのが一般的なんだろうか。

しかし何度も言うが、それはロト6に当選するよりも夢の世界のお話なのだ。



その後は、りんたろくんは楽しそうに穴という穴に入って喜んでいる。

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しかしそれも長くは続かない。

安い手袋だかららか、すぐに手袋と袖の間の肌が露出してしまいりんたろくんが寒さで苦しみ始めた。


いかん。

このままでは彼が「帰りたい」と言うのは時間の問題だ。

仕方ないので僕の手を犠牲にして、僕のアウターグローブを彼に装着した。

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画的にかなり気持ち悪い人間が完成した。

しかしこれによって彼のウルトラマン魂に火が着き、「ピグモン、ピグモン」と喜び出した。


いいぞ、ノって来たな。

まだまだ遊びは始まったばかりだ。

さあ、今からガンガン遊んで行こうじゃないか。


と、思った刹那。

楽しもうなんて思ってしまった刹那。

やはり我々は猛吹雪に晒された。

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たちまち雪のスペシウム光線の餌食になるピグモン。


なぜなんだ。

家を出る時は快晴だったじゃないか。

ちょっとくらい楽しもうと思ったって、たまにはいいじゃないか。

まだここに来て1時間も経ってないんだぞ。


こうしてたちまち「いつもの光景」に身を置く男達。

ある意味「ああ、アウトドアだなあ」と痛切に感じられた。

これはアウトドアを切望していた僕に対する、神の余計な優しさだったのかもしれない。


結局寒さで我に返ったりんたろくんが「温泉はどこ?温泉に入りたい」と言い出してしまう始末。

そして我々はレジャーですら撤退を余儀なくされるという悲しい結末を迎え、大人しく温泉に入って帰宅した。


言うまでもないが、街まで降りると素敵な快晴が広がっていた。

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僕はこの場でグッタリと肩を落とし、気分はすっかり「おじじ」になっていた。


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こうして結局快晴の午後を再び家で過ごす事になった。

そしてやっぱり家にいたら、ろくな事が起きやしないのだ。


非常に些細な事で嫁とケンカ。

僕がよかれと思って、「一日くらい僕がミルクでこーたろくんの面倒見てるから、たまには買い物とかエステとか行っておいでよ」と言ったのが嫁の気に障ってしまった模様。

「母乳じゃないと突然死する可能性が高まるから私は頑張っている。私だってそうしたいさ。お前は何も分っちゃいない」とピシャリ。

育児でピリピリしているこの時期は、思いもよらない所に地雷が潜んでいるのだ。

やはり僕は外で遊んでいた方が家庭円満な気がする。



この日以来今日までの3日間、未だまともに嫁と話が出来ていない。

お互いにもう怒ってないんだろうけど、こうなると中々歩み寄るタイミングが難しいのだ。


そして悪い事に昨日、チーム・マサカズのゲリMが「今週の土曜日に登山はどうだ?」とFacebookに投稿。

今の僕にはあまりにも甘い香りのするエサだ。

猛烈に行きたいんだが、とても今嫁にそれを切り出す勇気が無い。

玉砕覚悟で切り出そうものなら、恐らく僕は今年の桜を見る事は出来ないだろう。



デッドor登山。

もはやレジャーも命がけ。

でもインドアにこもり続けては発狂死間違いなし。

行くも地獄、こもるも地獄。

いっそ地獄に落ちて針の山の登山を楽しむしか無いのだろうか?


何とか嫁と仲直りしないとどうにもならない。

幸い今日はバレンタインデー。

きっと素敵なチョコが用意されていて、あっという間に仲直りさ。





チョコに毒が入ってなければね。



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