長良川/岐阜

長良疲労宴〜筆おろしの延長戦〜

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彼の貪欲さには脱帽だ。


富士川での壮絶な日帰りカヌードラマの翌日。

あの男は早くも長良川に出没していた。


あれ程に己の体を酷使して、もはや燃え尽きたかと思われた病み上りのジャックバウワー。

しかし何度も言うが今は5月。

カヌー野郎のゴールデン期間の休日を、体力回復なぞに費やすはずが無い。


今回は嫁がエステに出かける13時までのわずかな午前中の時間を拝領することが出来た。

そのわずかな時間で、チーム・マサカズのアゴ割れMと矢作Cのド素人二人を長良川に連れて行く。

前日のドラマ「22」を遥かに凌ぐわずか4時間のスピードドラマ。

「過M死」一直線の男の休日はまだ終わらない。


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朝目覚めた僕は、異様に重たい体で起き上がる。

すごい疲労感だ。


そして、昨日の夜に見た「赤い妖精」の事を思い出す。

あれはさては夢だったんじゃないだろうか?

随分疲れていたから幻を見てしまったんじゃないだろうか?


しかし枕元にはしっかりと妊娠検査薬が置かれており、改めて赤い陽性のシャアを確認。

ああ、やはり僕は二児のパパになるのだね。


これは今後益々頑張って行かないと。

立派なお父さんにならないと。


というわけで僕は早速川に遊びに行く準備を始める。

パパは頑張って立派に川でのお勤めを果たして来るぞ。

そんな我が背中を見て立派に育てよ、子供達よ。


男は「わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい」と渋く呟いて、家を飛び出して行った。



家を出てすぐにコンビニに立ち寄り、栄養ドリンクを買って体に流し込む。

体よ、あと少しだけ持ってくれ。

こうして僕はフラフラの体を引きずって、長良川に向けて移動して行った。


ほんと、やめときなさいよ。


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曇り時々晴れの予報だったが、晴れる気配は微塵も感じない。

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まあ、正直あんまり晴れてもらっても「犠牲」を払う事になるから丁度いいか。


最近どうも濁った川ばっかり下ってたから、この静謐な雰囲気の清流長良川がとても優しく感じる。

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シーズンに向けて、鵜飼の若い船頭さんが朝練でもしてるんだろうか?

なんて絵になるんだ。


集合時間より早く来た僕は、しばしその静けさを楽しんだ。

そうそう、本来川ってのはこんな感じでゆったりと嗜むものなんですよ。

しかし残念ながら僕にはあと4時間しか時間はないんですがね。


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アゴ割れMと矢作Cと合流。

変態風工事現場男がアゴ割れMで、操り人形みたいになってるのが矢作C。

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二人とも川でのカヌー初体験の川童貞コンビ。

ゆえにあり合わせの格好になるので、このような変態の雰囲気が醸し出される。

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しかも顔に塗った日焼け留めクリームがおしろいみたいになって、よりその変態度が際立っている。

晴れ間なんて一切出そうにないのに日焼け留めクリームを塗るあたりもよく分からない。


完全にカヌーは初めてなので、僕が優しく脱童貞レクチャー。

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川の口説き方から、デートスポットやここぞと言う時の決め文句などを伝授して行く。


そしてコンパ前の出陣記念撮影。

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しかし彼ら二人はまだ何も知らない。

「まずはコンパから」と思っていた彼らだが、実は僕によって強制的に「プロによる筆おろし」へと突入させられる事になる。

未体験の人にこの短時間で満足してもらうには、手っ取り早く激流に突入させるのがマゾ塚カヌースクールの指導方針だ。


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何も知らずにカヌーに乗り込む現場監督。

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この人達はダム建設予定地の視察にでも行くつもりだろうか?

彼のヘルメットにはちゃんと血液型まで記載されている。

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これで万が一の大出血時でも素早い輸血が可能だ。

しかし彼も立派な「大痔主」なので、もうこの時点で輸血しておいた方がいいかもしれない。


こうして彼らはプロが待つ泡の世界へとその一歩を踏み出した。

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僕は懐かしい気持ちで彼らを見守った。

くしくも彼らが乗るキウイ3は、僕が初めて買った相棒艇。

実は今回、これを機にアゴ割れMに贈呈する運びとなった。


僕同様、このカヌーで彼らもまた新たな歴史を刻んで行くんだろうな。


まあ、このカヌー。

穴空いてるんだけどね。


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やがて魚道の瀬が見えて来た。

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突然こんなお店に連れて来られて、アゴ割れMもこの表情だ。

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どうやら想像以上の「現場」だったようだ。

しかもこの日は渇水気味で、いつもある「チキンコース」が全く下れない状態。

必然的に、行くならこの「男前コース」のみ。

そう簡単には大人にはなれないんだぞ。


まずは僕がお手本を見せる。

入店は颯爽と男らしく。オドオドしてはいけない。

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とにかく大切な事は「笑顔」だ。

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はやる気持ちは分かるが、ここはグッとこらえてお互いに会話を弾ませよう。

万が一相手が知り合いだった場合は、このように顔を隠す方法もいいだろう。

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この先は心をフリーに解き放つのみだ。

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こうして僕は彼らに道を示した。

何も恐れる事は無い。

思いっきりその身を委ねて来るんだ。

全てお任せすればいいのだよ。



こうしてプロの瀬に強制突入させられる事になった川童貞の二人。

早速彼らは僕の教えを破り、まったくのノースマイルでのご入店だ。

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あれ程オドオドするなと言ったのに、パドルをばたつかせる現場の男と後ろでフリーズする男。

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言わんこっちゃない。

泡だらけじゃないか。

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そして彼らは観念して大人しく川にその身を委ねた。

そしてお店から出て来た時の、彼らの突き抜けた姿がこれだ。

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よかったなあ。

これで君たちはもう立派な大人だぞ。

僕も役目を果たせてホッとしているよ。

今後は自信を持って生きてゆけよ。


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すっかり激流にはまってしまった彼らは、その後も次々とお店をハシゴして行く。

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誰しもが通る猿の惑星。

いい加減にしとかないとお小遣いが無くなっちゃうぜ。


僕はもう瀬はお腹いっぱいなので、のんびりと彼らの蛮行を見守った。

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正確に言えば、もう僕にはあまり体力が残されていなかった。

栄養ドリンク程度では回復するはずも無い疲労が僕を蝕んでいた。


そしてここは自分で選んでおきながらも、午前中だけで下りきれるわけが無い7キロほどの長いコース。

後半のトロ場は僕にはまさに拷問だった。

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もはやこれは部活動だ。


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そして、無事に我々はゴールした。

水抜きをするアゴ割れMは、まるでずっとここにあるオブジェのようだ。

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まるで「人という字は支えあって出来ているんだよ」と語りかけて来るようではないか。

遠目で見ると、何やら前衛的なアートに見えるから不思議だ。

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やはり一皮むけた男は、その雰囲気すら逞しく見えるものだ。


一方で矢作Cは素人らしいミスを犯す。

川童貞を失った感動から、ついにおもらしをしてしまったのだ。

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これは素人が犯しやすい「乾いたと思ったパンツの上からズボンを履いて大惨事」の一コマだ。

いい大人がこの姿でうろつけば、たちまち方々から黄色い悲鳴が上がるだろう。

君たちはまだ所詮「素人童貞」だという事を忘れるな。

浮かれるんじゃない。


と言ってる自分が一番やばいことになっていた。

この時点で13:30。

見事にタイムリミットオーバー。

三人の中で最も余裕が無かったのは自分でした。



こうして男は一目散に帰宅して行った。

そしてこの二日間ですっかり汚れて、全く新車の面影が無くなった車の洗車指令を食らう。

午後からは失いそうになる意識を必死でつなぎ止めながら、りんたろくんの面倒を見ながらの洗車プレイ。

人生で一番ハードな洗車となる。


後に彼は呟いた。

「本気で疲労で死ぬかと思った」と。

そして翌日は原因不明の頭痛と倦怠感に支配され、男は軽く嘔吐することとなった。

もちろん、洗車後の車に雨が降った事は言うまでもない。


しかし何度も繰り返すが今は5月。

まだ最後の週末が残っている。


男の無理が止まらない。



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