思いがけず三部作になってしまった、日帰りカヌードラマ「22」。
いよいよタイムリミットまで残り6時間を切った。
撤収&帰宅時間を考えると、残り1時間以内で下りきらねばならない。
一体僕はいつからこんなせわしないカヌー野郎に成り下がってしまったのか?
昔はのんびりと清流を優雅に下っていたもんだが。
ここの所の僕は、酷い体調を引きずって、限られた時間の中で濁流の激流を下るのが専門になりつつある。
しかも毎回ろくにメシを食わず、今回もおにぎり一個しか食ってない。
大した休憩もせず、わずかな時間も惜しんで川に向きあうストイックな日々だ。
しかしこうでもしないと遊べない、幼い子供とドSの嫁を抱える男の涙の奮闘記。
パドルと情熱だけを武器に果敢に富士川に立ち向かう病み上りのジャックバウワー。
向かい風地獄の先に待つのは、この旅最大の瀬「ラストの瀬」。
僕は感動のラストを迎える事が出来るのか?
それとも結婚生活のラストを迎えてしまうのか?
ドラマはラストに向けていよいよ加速を始めた。
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〜タイムリミットまで残り5時間40分〜
14時20分。
いよいよ時間が無くなって来た。
そんな僕をあざ笑うかのように、向かい風の勢いは増すばかりだ。
そんな容赦のないDMレボリューションの中、前方から激しい音が聞こえて来る。
正式名称を知らないので、僕は勝手にここを「闇金の瀬」と呼ぶ事にした。
その瀬に一度足を踏み入れると真っ逆さまの転落人生が始まる。
瀬の入口の先が見えず、その先にある落ち込みの凄まじさが恐怖を増長させる。
そんな中に突入して行く僕と山田のマゾ田コンビ。
ガツンと落ち込み、闇金による激しい取り立てが開始された。
そのまま階段状に堕ちて行く債務者マゾ田。
ここから転落人生が始まり、闇の世界に引きずり込まれて行く。
そしてこの瀬の最後には巨大な隠れ岩と激しい落ち込み。
容赦ない取り立て部隊の最後の追い込みが始まる。
大岩を越えた後、バスンと泡の世界へ堕ちて行く。
ついに石鹸まみれのバブルの世界へと落とされてしまった純情な二人。
長くて辛い返済生活が始まった。
そして続々と借金にまみれる後続部隊。
バターNと黒はんぺんSのバターはんぺんコンビの登場だ。
あまりにも激しい取り立てに、バターNが早くも泡の世界に引きずり込まれた。
もはや後ろにいるはずのバターNの姿が見えない。
一体いくら借金したんだ?
黒はんぺんSに至っては、この瀬の前に「寒いから」という理由でユニクロの服を羽織っての「カジュアル突入」。
しかしずぶ濡れになったユニクロはたっぷりの冷水を吸い込み、より彼の体を冷やす結果となった。
闇金にすっかり肝を冷やされたバターはんぺん。
そして彼らはそのまま金津園の世界へと消えて行った。
やはり素人が闇金に手を出すべきではない。
こうして我々は続々と闇の世界に送り込まれ、そのまま「ラストの瀬」に流されて行った。
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〜タイムリミットまで残り5時間20分〜
14時40分。
ついに辿り着いた「ラストの瀬」。
文字通りこの区間、最後にして最大の瀬。
その暴れっぷりにただ呆然と立ち尽くす債務者の人達。
体だけを資本にここまで借金を返して来たというのに。
最後の最後でとんでもない客が舞い込んできやがった。
まず最初にこの客に弄ばれるのはマゾ田コンビ。
「いらっしゃいませー」とにこやかに突入だ。
左側は突き刺さりそうなほどの落ち込み、右側はえげつない隠れ岩。
突っ込むコースは90分コースのただ一点のみ。迷いは許されない。
ジャグジー区間で泡まみれとなり、熱湯で茹でられるパスタ気分。
もう何が何だか分からない。
加藤鷹ばりの容赦ない波状攻撃に腰が砕けそうだ。
なんだこの壁のような返し波は。
この時ばかりは顔から笑顔が消えた。
ここに乗り上げた時、感覚的にその場でバック転するんじゃないかってくらいカチ上がった。
でもなんとか我々はこの「ラストの瀬」を乗り越える事に成功し、闇の世界からの脱出を果たした。
さあ、続いては多額の多重債務で苦しむバターはんぺんコンビ。
突入の激しさは、やはり群を抜いて豪快だ。
出だしの段階で、もはやはんぺんの頭しか見えない。
しかし、ユニクロを脱ぎ捨てたはんぺんは果敢なパドリングでジャグジーを抜けて行く。
そしてそのまま強烈なバックウォーターへ突っ込んで行く男達。
そして「バカンッ」と突き破る。
お見事。借金完済。
次々に自由になって行く債務者達。
続いてダッチ女房コンビの突入。
骨折疑惑女と絶賛風邪男の危険な「病み中」ペア。
ある意味もっとも危険な債務者の、完済に向けた果敢な挑戦。
見よ、このダッチャーSの咆哮を。
とても病気中とは思えない嬉々としたこの表情に、僕は新たなマゾ野郎誕生の姿を見た。
そして病み中の二人は、そのまま川に突き刺さって行った。
もはや彼らのこの姿に美しさすら感じる。
二人は見事に借金を完済したばかりか、ダッチャーSはマゾ塚カヌースクールの卒業までも決めてみせた。
最後に突入するのは、満を持してのB旦那。
ここまであのプレイボートに乗り続け、恐怖と孤独に耐えて来た男の挑戦。
もちろんダッキーに乗り換えて、バターNがサポート。
そして突入からさすがの落ちっぷりを披露する。
しかし孤独と不安定なカヤックから解放されたB旦那は恍惚の表情だ。
順調に下っていたが、ここにきてバターNが反旗を翻す。
なんとあの最後のお下劣バックウォーターに対し、横向きのまま突入して行ったのだ。
僕はこの光景を見た瞬間、思わず「サヨナラ」と呟いてしまった。
こっちを見るB旦那の視線が必死で助けを求めているように見える。
バターNも、もうそのまま後ろにひっくり返る寸前だ。
今までありがとう。
安らかに散ってくれ。
しかし彼らが乗るダッキーは、何と言っても我が相棒「ゴエモン」だ。
渾身のパワーでこの難局を見事に乗り越えて行った。
こうして、無事にみんなでラストの瀬を乗り切った。
借金完済。
晴れて皆で自由の身だ。
みんな実にいい笑顔をしている。
しかし、ただ一人顔を曇らせている男がいる。
実はこの借金完済時の時間は15時15分。
どう考えても子供のお風呂に間に合う気がしない。
ラストの瀬なんて目じゃない恐怖が、僕の体を蝕み始めた。
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〜タイムリミットまで残り4時間20分〜
15時40分。
ついに病み上り決死隊の18kmロングマゾツーリングが完結した。
スタートから実に6時間以上。
おにぎり1個だけのチャージでほぼ漕ぎ続けた富士川の奇跡。
はっきり言って長すぎだ。
より大きな地図で 富士川18キロコース を表示
しかしのんびり休んでる場合じゃない。
本当の勝負はここからだ。
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〜タイムリミットまで残り3時間〜
17時。
やはりロングコース。
当たり前だが、撤収&車の回収作業も見事に時間がかかった。
すべてが終わった時にはもう17時。
20時の子供の風呂まで残り3時間だが、ここから岐阜までは5時間かかる予定。
ついに絶望的な覚悟を決める時が来たようだ。
慌ただしく皆と別れ、僕と山田と黒はんぺんSは逃げるようにして富士川を後にした。
もはや道中「どう言い訳するか?」に焦点は絞られ、全く晴れやかな気分ではない。
これはもう「遊び」なのか「修行」なのか区別がつかなくなって来た。
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〜タイムリミットまで残り1時間〜
19時。
山田と黒はんぺんSを森SAで降ろす。
ついにここからは孤独なラストラン。
心が折れそうな僕の前に安西先生が現れ「諦めたらそこで試合終了ですよ」と囁く。
まだ残り1時間ある。
今こそ風になってやる。
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〜タイムリミットまで残り10秒〜
19時59分。
僕は一人、愛知県豊田市近辺の高速道路上で静かにカウントダウンを始めた。
やがて車のフロントパネルの時計表示が機械的に「20:00」に変わる。
車内に長いホイッスルが響き渡り、無情にも試合終了が告げられた。
豊田IC付近の「トヨタの悲劇」。
そのままピッチに倒れ込んだ僕はしばらく動くことが出来なかった。
諦めて家に電話。
嫁は今日は大残業で帰って来るのは深夜だという事で、お義母さんへ敗戦を告げる電話だ。
でもここでお義母さんから思わぬ情報が。
「りんちゃん夕方に寝ちゃってね。まだ目が堅いからお風呂は9時くらいでも大丈夫。」とのこと。
「目が堅い」という言葉は、僕は岐阜に来て初めて聞いた表現だが、意味は「全く眠そうじゃない」という意味だ。
ここに来て、我が息子の奇跡のアシストが炸裂。
こうして僕は「ロスタイム1時間」を手に入れた。
思わぬ形で手に入った23時間目。
ドラマ「22」の続編スペシャルニュース番組「入手23」が始まった。
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21時10分。
僕は壮絶な23時間の日帰りツアーから生還した。
ほぼ走り続けた23時間だった。
こうして僕は見事に子供を風呂に入れる事に成功した。
僕の人生で、ここまで感動的な入浴は過去に見当たらない。
「日帰りで遊ぶ」ってこんなにもハードな事だったっけか?
もう思い出せない。
そして僕とりんたろくんは、そのまま寝室で泥のように眠った。
終わった。
これですべてが終わったのだ。
僕の閉じたまぶたの中ではステキなエンドロールが流れ始め、僕は深い深い眠りの闇に落ちて行った。
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ドラマは終わったはずだった。
しかし、24時間目に誰も予想できない驚きの結末が控えていた。
夜。
何者かが僕の頬をぺちぺちとビンタしている。
何事かと僕はうっすらと目を開ける。
正直疲労困憊過ぎて、まぶたもハンパなく重い。
それでも少しづつ目を開けると、僕の前にぼんやりと小さな赤い妖精が立っていた。
何だ?
僕は死んでしまったのか?
ついに僕は「過遊死」してしまったのか?
次第にぼんやりとした赤い妖精が、小さな赤い縦線だと気づく。
この赤い縦線、何やら以前にも見た事がある気がする。
こ、これは…。
これは妖精なんかじゃない!
陽性だ!
なんと嫁が僕に妊娠検査薬を突きつけてビンタで起こそうとしていたのだ。
何が何だか事態を把握できない男。
赤い縦線の陽性反応が出てるってことは、妊娠してるって事じゃないか。
正直今シーズンの僕は代打でヒット1本しか打った記憶がない。
まさかあの1本のヒットが優勝を決める見事な決勝打になっていたとは。
こうしてドラマは信じられないエンディングで幕を閉じた。
どうやら僕は二児のお父さんになってしまうようだ。
いつまでもこんな事をしていていいのだろうか?
でも、これはこれで非常に喜ばしい事。
来年は二人担いで3000mの山に登ってあげよう。
子は親を選べないとはよく言ったものだ。
悲惨な親を持ったと、どうか諦めてくれ。
こうして僕は再び泥のような眠りに落ちて行った。
男の育児大河ドラマはまだまだ続いて行きそうだ。
〜病み上り決死隊 完〜
病み上り決死隊 後編〜真夜中の妖精〜
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MATATABI BASE
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つか、さすがに予想外!
ユージュアルサスペクト張りだわ!
おめでとう♩
ま、これで一層縛りがきつくなりそうだが、
Mだし、ウエルカムだよねw
来月は今度こそ清流、凪な川に行こう!
おつかれさまd(^_^o)
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お疲れさまでした。
ほんとうに…。
16キロだとばかり思っていたら、ログを見たら18キロでした。
そりゃ長いですわな。
そして衝撃のラスト。
嬉しさと恐怖が一緒にやってくるラストでした。
今後益々過酷な状況になります。
またみんなに無理させる事になるかもしれませんが、どうか付き合ってください。
次は大井川「20」位のドラマでしょうか?
よろしくお願いします!
ゆこんブログ4週目ですがいつ見てもここのラストの展開は胸が熱くなり、素敵ですなぁ
まさかの四周目!
この長いブログを…なんてマゾなんだ…
そしてこのコメントきっかけで改めて読んで色々思い出しました。
あの赤い妖精が今ではもうすっかり立派な小学2年生ですからね…
そして形は変われど、未だに猛烈な日々を突っ走ってる落ち着けない父。
今では赤い妖精ではなく、赤い死兆星が見えまする。