富士川/山梨

病み上り決死隊 前編〜日帰りヤメトーーーケ〜

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死国激流どうでしょうから二週間の時が過ぎ、僕はやっと病魔から解放されつつあった。

実に長い発熱GWだったが、正直今は体調を崩している場合ではない。


今は5月。

5月とは、ツーリング派のカヌー野郎達にとって1年で一番重要な期間と言っても過言ではない。

6月から鮎釣りが解禁して、川は釣り師だらけでとても下れる状態ではなくなるからだ。

そんな状態の中にカヌーで突入するという事は、巨人のユニフォームを着て阪神の応援団の中に突入して行く事に等しい。

竿のアーチの中で罵声を浴びせられ続け、しまいには石を投げられる混沌たる世界。

僕は過去のそんな経験がトラウマになり、夏場の川カヌーは控えている。


だからこの解禁前の「5月」に全力を注がずにはいられない。

病み上がりの体力不足が何だ。

多少体と精神に異常をきたそうと、無理してでも僕は川に行くのだ。




そんな中、タイミングよく前回の四国遠征組から「富士川遠征」のお誘いがあった。

アユ解禁前に、即座にその餌に食いつくアホ。


早速嫁の了解を得るべく、寝下座覚悟で交渉のテーブルに着く。

5月の重要性を熱く説く僕の懇願に嫁から出された条件は「あくまでも日帰り。夜の子供のお風呂までには帰って来い」というもの。

正直片道5時間かかる富士川の日帰りはあまりにもハードな条件だ。

仮に朝8時に出たとしたら、現地に2時間しかいられない。


しかも得意の「職場から直行して車中泊」という技も、「子供を寝かしつけてからじゃないと出て行くな」命令で使うことが出来ない。


こうして子供の寝かしつけ完了予定の金曜日の夜10時から、土曜日の子供のお風呂予定の夜8時までの「22時間」が僕に許された日帰り許容タイム。

急遽始まった岐阜〜山梨往復日帰りスペシャルカヌードラマ「22」。

5月に賭ける男の、長くそして短かすぎる22時間のストーリーが開幕した。


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〜タイムリミットまで残り22時間〜

金曜夜10時。


今日に限って残業だった僕は、この時点で全く翌日の準備ができていない。

子供を寝かしつけてから準備をする形になってしまったが、今日に限って非常に寝付きが悪い。

暗闇の中、いつまでも「カッ」と目を見開くりんたろくん。

わざとかと思うほどに寝る気配を一切見せない我が息子。

早く出て行きたい男と、いつまでも寝たくない男との我慢比べが始まった。


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〜タイムリミットまで残り21時間〜

夜11時。


実に1時間に渡る息子との攻防戦。

危うく僕の方が先に落ちそうになってしまった程のデッドヒート。

しかしついに奴は陥落し、僕はやっと準備を始めることが出来た。

大急ぎで車にカヌーを積んだり、その他諸々の準備をする。

今日の仕事もハードだったし、この時点で疲労でヘロヘロだ。


でも5月なんだ。

吐血してでも僕は川へ行って遊んでやる。


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〜タイムリミットまで残り20時間〜

土曜日深夜0時。


準備は終わったが、さすがにこの疲れを抱えたまま寝ずに出て行く事は出来ない。

今回は静岡の森町で山田を4時にピックアップの予定になっている。

家を1時半に出て行かねばならんので、1時間半だけ寝る事が可能だ。


しかし僕は札付きの「寝付きの悪い男」。

こういった寝なきゃならない時に眠れないナイーブガイだ。

仮眠を上手に取ることが出来ない僕は、しょうがなく睡眠薬を服用する。

それでも中々眠りに落ちることが出来ない。


結局30分ほど後にやっと眠りに落ちた。


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〜タイムリミットまで残り18時間〜

土曜日深夜2時。


見事に寝過ごしてるじゃないか。

起き抜けから焦る男。


やはり日帰り富士川は相当にハードだ。

しかも睡眠薬の名残で、強烈に体もだるい。

仮眠のつもりが、より体を疲弊させる結果になった気がする。

それでも僕は重い体を引きずりながら車に向かい、気合いを入れて走り出す。


よく僕は「なんだかんだとよく遊びに行かせてもらってるよね」と言われるが、このような「無理をしてでも意地で遊び抜く」という裏舞台がある事に注目したい。

この情熱で仕事ができていたら随分稼ぎのいい男になってただろうに。

でも遊びごときに命をかける自分が好きだったりするから困ったものだ。


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〜タイムリミットまで残り15時間30分〜

4時半。


ノンストップで走り続け、新東名の森SAで山田と黒はんぺんSをピックアップ。

前回の死国遠征に参加できなかった二人も今回は参加するのだ。


横浜組の4人とは富士川で5時集合となっている。

もはや間に合わない。

僕の寝坊のせいでどんどん時間が詰まって行く。

最後にその皺寄せを食うのが自分だと分かっているだけに、中々キビシい局面だ。


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〜タイムリミットまで残り14時間〜

6時過ぎ。


やっと集合場所の波高島駅の近くの集合場所に到着。

「死国朦朧脱出」からわずか2週間後の皆との再会。

僕、B旦那、B女房、バターN、ダッチャーSの四国遠征組に、山田(仮)と黒はんぺんSの二人を加えた7人の侍たち。


しかし侍と言うにはあまりにも僕はフラフラで、長旅による腰痛も中々なものだ。

しかし天気は快晴。

無理して来たけど、こいつは素晴らしい一日になりそうだ。



でも僕は知っている。

晴れた時には、その代償として「犠牲」を払わねばならないという事を。

前回は「清流の激流化」と「38度の発熱」によって得た快晴の穴吹川。


そして今回の快晴代償予告は以下のとおり。


「カツオ、時間がないのに18kmロングコースでマゾる」

「波平、強烈な逆風向かい風に立ち向かう」

「マスオ、背中のツリと歯痛と偏頭痛を楽しむ」

の、三本でお送りします。


もはや無理をする事がスタンダードになりつつある男の「激流どうでしょう延長戦」。

タイムリミットまで残り13時間。

病み上がりのジャックバウワーに残された体力は僅かだ。



身を削って遊ぶ男の物語は後編へと続く。



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