DAY5・5月1日(水)
令和元年初日。
世が新時代の幕開けに浮かれている中、我々は「あれ?今日から大正だっけ?」っていう状況の中に身を置いていた。
カンムギエリアの神崎自体かなり僻地ではあるが、ここはさらにその奥の奥にある今島(こんじま)というエリア。
かつては100軒ほどの家が建って賑わっていたそうだが、現在はそのほとんどが消滅して今は定住者もいない。
こちらの家主さんも現在は麓の町で暮らしているが、その人が「古いものを残していきたい」って想いで今もこの家の手入れを続けているのだ。
普段は一般公開していないが、夏には子供たちや海外から来た人の宿泊体験が行われているそう。
ここはいずれ「川の学校」の子供たちの合宿所だったりイベントやツアー客の宿泊体験、そして以前チラッと書いたアルベルゴ・ディフーゾの宿泊候補地としてもいいなあと思ってた場所。
今回は家主さんのご好意で特別に我々だけでテスト泊させてもらえることになったのだ。
ただ今回は家主さんが来れなかったんで、どこに何があって、何をどうしたらいいか何も聞いていないというミステリーツアー。
しかも鍵をお借りする時、家主さんは「本当にこの時期にあそこに泊まるのかね?多分落ち着いて飯も食えないくらい苦労すると思うけど…」と謎の言葉を残していた。
どうやらこの時期に泊まる人はほとんどいないらしい。
僕は「新緑が気持ちいい最高の時期じゃないですか。楽しんで来ますよ!」と言って鍵を受け取ったが、その言葉の意味は数時間後にたっぷりと味わうことになるのである。
この家の事前情報が全くない我々は、まず家の各所の探検をスタートさせた。
いきなり登場するのは、この見事なる「五右衛門風呂」だ。
こういうのが大好きな僕はこの雰囲気だけで飯が3杯は食えそうな状況だってのに、なんとこの湯船の窓の先にはこのようなステキな光景が広がっているのである。
しかもである。
家の中に入れば、ノスタルジックここに極まれり!といったこんな状況が展開。
土間には昔ながらの竃がズドンと鎮座し、昔囲炉裏があったという場所には味のある薪ストーブ。
各部屋も綺麗に手入れが行き届いており、とても山奥の古民家とは思えない快適さがそこにはあった。
各々が「おお!ここすげえ!」「この農具、味があるぜ!」などと感動しながら家内を探検。
しかしそんな浮かれる我らのことをジッと見つめる奴らがいた。
それはこの時点で我々侵入者の存在を察知した「先客たち」。
かつてアメリカの開拓者とインディアンがそうであったように、いつの時代も「侵入者」と「先住民」の戦いは避けては通れぬもの。
そう、実は杉の多いこの時期のこの場所は「カメムシ天国」になるのである。
古民家内に響き渡る「おえ!おええええ!」というルマンドフジタの断末魔の叫び。
しかしそれでもひるむことなく、歴戦の野営猛者であるスナフキンNがその先住民たちをことごとく捕獲していく。
スナフキンNは、「確かにたくさんカメムシはいるけど別に飯が食えないってレベルじゃないね。」と余裕の表情を見せる。
だがこの数時間後、彼の顔から余裕はなくなるのだ。
そう、実はここで捕らえたカメムシたちは、所詮少数の「斥候部隊」だったことがのちに発覚。
ここで生き残ったカメムシが今本隊に向けて援軍要請に走っているなど、この時の我々には知る由もなかったのである。
先住民たちを成敗した我々は、ここからは侵略者としての開拓の歴史を歩み始めた。
まずは何するにも真っ先に行うのは薪割り作業である。
一方「五右衛門風呂チーム」のスナフキン&ルマンドペアは、お風呂の使い方などの事前情報が全くない中で「この板をここにはめるのか?」「浴槽の栓はどれなんだ?」「どうやったら水を溜められるんだ?」と推理戦に突入していた。
事前情報がないと、なんだか謎解きゲームとかリアルRPGをやってるみたいで楽しい。
パーツがハマった瞬間「ガコンッ」って突然床が開いて次のダンジョンへの階段とか出てきそうだ。
全てが揃ったホテルもそりゃそれでいいんだが、ただお風呂に水入れるだけでみんなでああでもないこうでもないとワアワアやれる幸せな不便さがここにはある。
さっきまで「おえええええ!」って言ってたルマンドさんも、この頃にはもうゴキゲンの表情だ。
一方その頃、「竃炊飯チーム」の鯉さん&鮎狂いUペアは実に絵になる光景の中にいた。
無骨な男が眉間にしわを寄せながら竈に薪をくべる姿の辛口一献的な雄々しさよ。
そして「ここは永平寺の厨房か?」と見まごうほどの、鮎狂いUの調理姿。
実は彼はただの編みパンを穿いた変態ではなく、こう見えて元料理人という繊細な一面も持ち合わせている。
しかもこの日は彼の地元の猟師さんから分けてもらったという鹿とイノシシのジビエ肉を持参。
もはや素敵な夜は約束されたようなもんである。
夕暮れ時。
竃やお風呂の煙突から出る煙がなんとも言えぬノスタルジックな雰囲気を醸し出し、静かで豊かな時間が過ぎていく。
ここで今日だけ参加のルマンドフジタとイッツミー監督は無念の帰宅。
でも今思えば、彼らは一番いい状態の段階で帰れたのかもしれない。
ここから先に進めるのは、修羅に打ち勝つマゾい心の持ち主だけだからである。
二人が帰った後は、各々がこの芳醇な時間を堪能していた。
そして、そろそろお湯も沸いてお風呂に入れる時間に。
もちろん温度チェックもバッチリである。
ここは「前衛ダンス男」「葉巻山賊親分」そして「編みパン永平寺」が跋扈する魑魅魍魎のパラレルワールド。
ちなみに響き的に気に入ったので、鮎狂いUは令和元年を機に「編みパン刑事」に改名することにします。
そこからはこの開放感抜群の五右衛門風呂を堪能。
まずはもちろんレディファーストで女性から入ってもらう。
ブログに掲載していいか迷ったが、本人の承諾があったからサービスショットです。
今すぐ横にティッシュを用意してとくと味わってほしい1枚なのである。
実にむちむちで豊満なバスト。
このような昭和感溢れる場所だと、壇蜜的な色気がムンムンに溢れ出てしまいます。
良きオカズになっただろうか?
もちろんこの日本のトラディショナルな風呂スタイルには、マッカーサー元帥も満足げな表情を見せていた。
そんなこんなで各々が交代で五右衛門風呂を堪能。
体もさっぱりしたし、そろそろお待ちかねの古民家宴会タイムの始まりだ。
って思って小屋に入ると、中から「ぬおおおおお!」という野太い悲鳴が聞こえてきた。
慌てて部屋の中に行くと、そこでは山賊の親分と家来がバタバタと動き回っていた。
彼らは「敵襲!敵襲!」と叫んでいる。
そう、ついに奴らの「本隊」が到着したのである。
音もなくじわじわと侵略を開始し始める先住民の精鋭部隊。
そしてここに気を取られていると、背後から「ジャーン ジャーン ジャーン」という奇襲攻撃の銅鑼の音。
慌てて振り返ると、網戸にビッシリと布陣した奇襲部隊の姿が!
「きゃあああああああッッッ!」と叫ぶ男たち。
隙間という隙間、溝という溝の全てから「今だ!突撃ィッ!」と叫んで溢れ出てくるカメムシたち。
慌ててスナフキンNがカメムシキャッチャーで迎撃体制に入るが、全く追いつかない。
もはや数時間前の余裕の表情はぶっ飛び、「ひい!ひいいい!」という悲痛な表情のスナフキンN。
止まらないカメムシ軍の直進行軍。
気がつけば我々の「鍋用豆腐城」はあっという間に占拠されており、
重要な兵糧拠点である虎牢関(キッチン)も瞬く間に陥落。
しかし百戦錬磨の我々はこの段階で一度冷静さを取り戻し、すかさず作戦会議に入った。
やがて名軍師・鯉による「これ小屋内を煙で燻してみたらコイツら苦しんでいなくなるんじゃないか?」という「カメムシ燻製の計」が発案され、早速それを実行に移すことに。
しかし実際に小屋内を煙らせてみたら、なんとそれが驚くほどの逆効果。
煙によって刺激されてしまった待機兵たちも一気に戦場に出てきてしまい、奴らは全軍による一斉攻撃を仕掛けてきてしまったのである!
人間5人vsカメムシ1000匹部隊。
気がつけば奴らの「立体機動装置部隊」までもが飛び回り、そいつらが僕の背中に侵入してきて現場はリアルな進撃の巨人の討伐風景に。
家主の人が「本当にこの時期にあそこに泊まるのかね?多分落ち着いて飯も食えないくらい苦労すると思うけど…」と言っていた意味を痛感する男たち。
後で聞いた話だと、今のこの時期が一番カメムシが「旬」の時期で、夏からはパタッと彼らはいなくなるという。
だから通常の時期に泊まる分には全く問題はなく快適なんだが、この時期だけここは「修羅の国」と化すのだ。
で、人間たちは結局庭で飯を食う羽目になり、まさかの「虫に家を追い出される」という結果に。
皆一様に放心状態で、虫ごときに負けた悔しさ噛みしめる。
しかし我々だって人として、いつまでも黙ってカメムシの支配下に収まるわけにはいかない。
そこで「竃で炊いたご飯だけは救出しよう!」という、「竃ご飯奪還作戦」が実行にうつされたのである。
5人をそれぞれ「突入係」「おとり係」「竃の蓋開け係」「ご飯よそう係」「殿(しんがり)係」に役割分担。
とにかく勝負は一瞬だ。
突入からご飯救出までを最短でこなさないと、ご飯の中に奴らが入り込んで「カメムシご飯」になってしまう。
決死隊たちは一旦入り口の前で待機し、目配せとフィンガーサインで突入のタイミングを図る。
そして「突入!」と叫び、ドカンと扉を開く。
すると中にいる奴らの数はさらに膨れ上がっていた。
そこには「ここはウッドストックか?」と見まごうばかりの壮絶な状況が展開していたのである。
このロックフェス状態の中に、茶碗としゃもじを握りしめた5人の決死隊が突入していく。
囮になって「ぎゃあああああ!」となってる僕の屍を乗り越え、その隙にスナフキンNとテスリンYが拘束された同志たち(ご飯)の解放作戦を遂行。
わずかでも隙を作ればあっという間に竃内とご飯にカメムシが突入してくる。
しかし二人の息のあった呼吸の甲斐あって、なんとか無事にご飯の救出に成功。
あとはここから脱出するのみだ。
そこで殿の網パン刑事が、「お前たち…美味しいご飯を食べてくれよな…」とグッと親指を立てたかと思うと、彼は我々を逃がすためにそのままカメムシの中に突入して行ったのである。
「あ、網パーーーンッ!!」という我らの声も虚しく、彼はそのままカメムシたちの餌食となった。
網パン刑事
令和元年初日
〜殉職〜
ついに一人の尊い戦士が犠牲となってしまった。
生き残ったレジスタンスたちは、沈痛な面持ちで美味しい竃ご飯を貪り食うのである。
何はともあれ、とりあえず飯を食うことはできた。
ある意味、この時期この古民家は色んなアウトドアの技術やサバイバル能力が試される戦場である。
一杯のご飯を食うだけでも命がけ。
正直このメンバーじゃなきゃ対応不可能だった。
今思えば低血圧Mちゃんは来なくて正解だった気がしてならない。
屋内での虫との戦いに敗れたものの、庭にはほとんど虫もおらず、敗戦の戦士たちにもようやく静かで楽しい時間がやってきた。
この頃には今日の改装作業を終えたカワグチさんも合流し、素敵な酒宴タイムがスタート。
ここでのテーマは、もちろんいつものように世界の政治経済の話から神崎の未来に関するものばかり。
炎を見つめながら真剣に神崎の未来像を語るカワグチさんの熱いお話に、鯉さんも神妙な表情で耳を傾けている。
議論は白熱し、カワグチ氏もジェスチャーを交えながらコーヒードリップ論を炸裂させる。
これに触発された鯉さんは、突然西郷隆盛の「征韓論」のお話を始め、歴史に興味のあるメガネ二人は前のめりで食らいついて真剣な表情で話を聞く。
熱い議論は深夜まで続き、夢を語り合う男たちの青春の時間はあっという間に過ぎていくのである。
炎ってやつは人の心を素直にしてくれる。
素直になり過ぎてしまって、正直ここでは書けない内容の議論ばかりだ。
本当に素敵な青春の一ページの夜だった。
もう一度言おう。
本当に低血圧Mちゃんは来なくて正解だった気がしてならない。
DAY6・5月2日(木)
情熱の一夜が明けた。
夜は多少カメムシの被害が少なかった部屋があったことで、なんとかそこで寝ることはできた。
しかし仰向けで寝ると、いつ口の中にカメムシがポトッって落ちて来ないかというドキドキの一夜だった。
目覚めた僕は、爽やかな朝の空気を吸おうと庭に出てみた。
するとそこには、昨晩殿として殉職した男の死骸が転がっていたのである。
どうやら彼と鯉さんは「カメムシと寝るくらいやったらダイレクト寝のが快適やで」と、結局今日もこの姿のままダイレクトに寝ていたという。
古民家泊しにに来たのに結局外でノーシュラフで寝てるあたり、さすが日本屈指のダイレクト寝の達人たちだと言わざるを得ない。
そして狂乱のロックフェス会場跡地を見にいくと、そこには燃え尽きて息を引きとっている観客たちの姿が多数確認された。
あれほど埋め尽くされていた観客たちは、また次のフェス会場に向けて移動して行ったようだ。
こうしてジミ・ヘンドリックス以来の伝説のライブは幕を閉じた。
とりあえず分かったことは、GWの時期はここに来ちゃダメだったってことである。
とは言えカメムシ以外は本当に素敵な古民家だった。
これが他の季節に来ようもんなら、前を流れる円原川の清流も相待って本当に素敵な宿泊体験ができることだろう。
新緑の樹間を見ればわずかばかりに光芒も姿を現し、新たな1日の始まりを告げている。
昨晩の代償戦争のおかげで、この日はこのGW始まって以来の超快晴。
6日目にしてようやく晴れて、やっとGWらしい活動ができそうだ。
今日は「武儀川」でプライベート川下り。
カメムシで払った代償、しっかりと快晴で応えてもらおうか。
ってことで、本来はこのGWの記事、前編後編で終わらせるはずだったけど、ロックフェスのくだりを無駄に長く書き過ぎてしまったんでまさかの3部作に変更です。
今回は「中編」で、次回後編としてこれ以降のお話を書いていこうと思います。
とりあえずお食事中だった皆様、カメムシやら編みパンやら豊乳やらで大変ご迷惑をおかけいたしました。
次回は爽やかな武儀川の様子をお届けいたします。
ぼくらの七日間戦争〜カンムギGW滞在記 後編へ〜 つづく
お疲れ様でした。
まさか、神崎というのどかな里で
伝説のロックフェス「ウッドストック」が再現されるとは思いませんでした。
家主さんからカギをお借りするときの「ご飯を食べるのも苦労する」という言葉
ボクは、「大袈裟だなー、岐阜ジョークってやつか?アハハハ」って笑い飛ばしてました。
まさか、あんな惨劇が起こるとは…
しかし、ボクとしてはルマンドフジタさんにカメムシ掃除の嫌がらせ、もとい貴重な経験が出来たのと
ユーコンさんの
「カメムシが首スジから侵入!すかさず脇腹がつる!」
という、もはや様式美ともいえるユーコンカワイ芸が見られたので満足です。
野外フェスに移行してからの、炎に照らし出された漢たちの熱いトーク
素晴らしかったですね。
絵面だけは情熱大陸でした。
鮎狂いさん改め、網パン刑事さん、鯉ヘルペス山田さんのロードウォーリアーズのような安定感、ダイレクターとしての格の違いを見せつけられました。
なんて言っても、人の家の庭ですからね。
網パンさん、鯉さん
鹿と猪めっちゃ美味かったです。
ほんとに美味しくてバクバク食べちゃいました。
お礼にそば粉を献上しますので、抱きしめて下さい。
ウッドストック、盛り上がりましたね。
僕も伝説をあんな場所で目の当たりにできるとは思ってなかったんで、興奮して思わずツッちゃいましたよ。
今でも鼻腔にかすかな余韻を感じてあの興奮を思い出しております。
そしてあの炎とともに燃え上がった情熱大陸の男たちの凛々しい顔。
改めて写真で振り返ると、あの内容の話でよくもあそこまでかっこいい表情ができるもんだと感心してしまいます。
なんにしても色んなものが濃密すぎるフェスでした。
もう一度落ち着いた場所であのお肉食いたいっすね。
めちゃうまかったしご飯も美味しかったですもんねえ。
またあのメンバーで飲んで語らいたいっす!