変質者クラスの岩雪の壁に、真っ青な顔をした秀麻呂がへばりついている。
彼は今、男になろうとしている真っ最中。
しかしこの時点で彼のイチモツは塩をかけられたナメクジ状態。
もはや男を通り越して新宿二丁目の世界に足を突っ込んでしまっているような状態だ。
しかしここが男とオネエの境界線。
この理不尽な世界から生きて戻ってこそ真の漢。
家に帰るまでが「八威波阿論愚直進行軍」なのである。
あまりにも長過ぎた初日ですっかり体力を失った松尾・田沢・虎丸・秀麻呂の4人。
そこに追い打ちを仕掛けて来た死血状教官の理不尽精神攻撃。
いよいよ彼らは限界に達した。
しかしこの甲斐駒男塾は、限界の先にある「根性」という世界に到達した者だけが先に進む事を許される男の殿堂。
いわばこの七丈小屋から先の世界は、TSUTAYAの奥にあるのれんの先の世界と同じ価値がある。
まさに荒波をかき分けた大人の男だけが入室できる珠玉のパラレルワールドなのである。
さあ、いざ2日目。
甲斐駒ケ岳山頂を目指すアタックチャンス。
男塾教官「個堕魔鬼世死(こだまきよし)」が拳を激しく上下させる。
永流腐乱巣(エールフランス)で行く巴里挑戦権獲得へ向け
登るも地獄、下るも地獄
男塾名物「阿龍苦二重獄(あたっくにじゅうご)」が今始まるのである。
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目が覚める。
何やらやたらと喉が渇いている。
そしてこのリズミカルにこめかみを刺激する痛みのビートは何事か?
いや、その問いは愚問だ。
全て分かっている。
これは「二日酔い」であると。
田沢は昨晩、その持ち前の明晰な判断能力で「2日目のアタックはどうせ強風でアウトだろう」と予測。
その結果見事に「ビール→ワイン→いいちこ」という欲望トライアンングルの沼に埋没した。
しかしその結果、この2日目が「あれ?意外と風ないじゃないの。アタック出来るじゃないの」という奇跡を発生させる。
田沢は松尾に痛み止めの薬を貰いながらこう言われる。
これぞ反省しない男田沢のマゾ根性。
彼は自らが事前代償生贄となって、この奇跡の微風アタックチャンスを呼び寄せたのである。
そんな仲間想いの熱き暴飲魂に感動した二号生筆頭赤石剛次。
田沢を責める松尾に対し、赤石先輩はこう言い放つ。
そして「俺も一緒に甲斐駒山頂を目指すぜ」と共闘宣言。
これにより松尾・田沢・虎丸・秀麻呂の4人の一号生に、頼もしい助っ人赤石先輩が加わって5人体制に。
さあ、粉雪がちらつく中いざ決戦の時。
ここから先は「日本三大急登」のトップの座を欲しいままにする黒戸尾根の本気の姿。
約一名、すでに吐きかけてる奴もいるが気にしない。
昨日駐車場をスタートしてから実に24時間半。
やっと我々は真のスタートラインに立ったのである。
そして開始5分。
早くも我々は大急登に飲み込まれて行く。
まだ起きて間もない時の大急登ほど体と精神に堪えるものはない。
田沢に至っては、一歩一歩登る度に一本一本ペヤング焼きそばを吐き出しそうな勢い。
そして息も荒く、「ゼハッ!ゼハッ!ゼハーッ!」とワンピースの黒ひげ状態に。
そんな中、大急登がいよいよ「壁」みたいになって来た頃、あの男に火がつく。
状況が変態になればなるほどに「小向のりピー」化が止まらない虎丸龍次だ。
これも完全な田沢の采配ミスだが、この小向のりピーに先頭を歩かせてしまったのがいけなかった。
彼は「うへ、うへ、うへへへ」とニヤケながらもの凄いハイペースでガスガス直登して行く。
目は完全にイッてしまっている状態で、後続のヘロヘロっぷりがまるで目に入っていない。
これには昨日の疲れを引きづりまくってる秀麻呂も、「待っ……て…くだ…ぐええッ…」と早々に遅れ出す。
田沢も口からペヤング出しながら「待て虎丸!正気に戻れ!」と言うが、言った側からどんどん闇に消えて行く虎丸。
よく考えたら彼は昨日2日間寝てない状態だったから大人しかったが、今日の虎丸は睡眠十分で元気モリモリ。
もはや松尾・田沢・秀麻呂が涙ながらに大声で「頼むからペース遅くしてくれ!もうお手上げだー!」と叫んでも、
その声はハイ状態の虎丸には聞こえない。
そんな時、突然赤石先輩が抜刀。
突然虎丸に切り掛かって一刀両断。
これにはたまらず虎丸も泡吹いて白目に。
その隙に先頭を赤石先輩にチェンジ。
これでやっとペースが落ち着いた。※ちなみにやたらと漫画のコマが乱立してるのは、しんどすぎてあまり写真撮ってないからです。
しかし虎丸の暴走は収まったが、この7-8合目間の変態急登さはいささかも衰える気配がない。
あまりにしんどすぎてたまらず休憩。
そして松尾がiPhoneで現在地を確認してしまい、「おい…全然進んでないぞ….」という余計な事を口走って全員で絶望を共有する。
正直山頂まで行ける気が全くしない。
しかし前日の人が付けてくれたトレースのおかげで、なんとかラッセルせずに登る事は可能だから根性で足を進めて行く。
だがその前日の人のトレースが実は罠だった。
どうやらそのルートは登り易い道から逸れていた事が後に判明。
あえてもの凄く歩きにくい、踏み抜きハイマツワールドに突入してしまったのだ。
急登→踏み抜き→急登→踏み抜き→急登というスペシャルコンボが続き、もはや昇竜拳→波動拳→昇竜拳→波動拳→竜巻旋風脚を食らってるかのような重いダメージ。
もの凄い勢いで体力ゲージが減って行き、いよいよ誰一人言葉を発する事の出来ないマゾリートファイター達。
まさに男を鍛えるのに持ってこいの地獄である。
そんな中、ついに8合目の御来迎場に到達。
いかにも男塾っぽい石碑が登場して、不安を煽りまくる。
そう、ここが急登地獄の終わりであり、さらなる地獄の始まりを告げる石碑。
石碑は静かに「この先に進む覚悟があるか?男とはなんぞや?」と我々に問いかける。
そして赤石先輩が進んでいく先を見ると、暗くて良く見えないが何やら嫌な予感しかしない世界が展開。
松尾も思わず田沢に不安を漏らす。
松尾がこう言った時は間違いなく良い事は起こらない。
そしてその予感は早速的中。
暗くて分からないだろうが、右側は断崖絶壁という愉快な岩登りがスタートだ。
もはや死のうと思えばいつでも「男塾万歳!」と叫んで滑落できるお手軽さ。
手をかける場所がなく、鎖に身を預けながらアイゼンで岩のわずかなくぼみに足をかけて「フンガッ」と力技で登るという試練。
目の前を颯爽と登って行く赤石先輩の姿を見て、高所恐怖症の田沢などはこの表情。
それでも進まなきゃ男になれないから、得意の九九斉唱を繰り出しながら田沢も行く。
だが「フンガッ」の瞬間、体中の穴という穴から脱糞。
それでも田沢は必死で乗り越える。
後方を振り返れば、同じく高所恐怖症の秀麻呂も「プシュッ〜…プシュッ〜…」と言いながら必死でよじ登って来る。
恐らくこの時の田沢と秀麻呂は、恐怖のあまり男としての生殖機能はゼロだったはず。
例え今目の前に全裸の深田恭子が現れた所で「邪魔だ!あっち行け!」と言ってしまったに違いない。
それほどまでに彼らは追い込まれていたのである。
そんな難関を突破した所で、もちろんそこに安息の地は存在しない。
死者の屍にムチを打ち込んで来るような急登の仕打ちは止まらず、もう秀麻呂なんて立ったまま死んでいるほどだ。
写真には写らないが、田沢の目にはしっかりと秀麻呂の口からエクトプラズムが大放出されているのが見える。
しかしその背後を見れば、夜も白んで来て強烈な雲海も目に飛び込んで来るではないか。
しかしその「雲海」よりも、本気で虫の息の秀麻呂の「後悔」の方が際立っている。
しかしこれこそ彼の男を鍛え直すための試練。
前回の藤原岳でサプライズバースデーを企画した我々に対し、「当日ブッチで参加しない」というサプライズ返しで応えた彼に対する厳罰の儀式。
メンバーから「罰としてパンチパーマになれ」と言われた男の、必死の償いなのである。
やがてそんな我々の前に、文字通り「壁」が現れた。
もはやビビりすぎて写真すら取り損ねているが、その雪の壁は体感70度ほどの斜度。
ピッケルを突き刺し、アイゼンでしっかり足場を作りながらじゃないと到底登れぬ超難関。
田沢がここで振り返ると、この雪の壁を見た秀麻呂が完全に青ざめていた。
人は自分より恐怖に取り憑かれている人間を見ると、何故か妙に落ち着く生き物である。
秀麻呂の哀れな姿を確認した田沢は、目の前の雪の壁だけに集中して何とかこの難関を突破。
そして振り返った時に根性で撮影したのがこの写真。
もはや地獄から亡者達が這い上がって来る地獄絵図にしか見えない。
後方から来る秀麻呂は、もう「スイマセンしたァ!」と土下座しているように見える。
でも実際は↑が田沢の足だから、彼は這いつくばってるんじゃなくて這い上がってる状況。
しかしこれを越えてこそ男。
甲斐駒山頂はあと少しだ。
そしてその超難関を越えた我々は二本の剣が突き刺さった岩場に到達。
ここで風も吹いて来たし、疲労も溜まってたんで一時岩陰に避難。
そしてここでまたしても松尾がやってはいけないiPhoneチェック。
そしてお決まりの「うそだろう…まだ全然山頂遠いじゃねえか…」と言ってしまう。
瞬く間にメンバー内に広がる厭戦ムード。
難所を乗り越え、「さああとは山頂だ!」という状況で言い渡された「まだ先長いぜ」という悪夢。
そしてもうこのまま無理してしまえば、確実に予定タイムをオーバーしてしまう事も判明。
で、折からの風と下り坂の天気。
誰ともなく呟く。
「俺たちよくやったよな..」
「ああ…もう男になれたんじゃねえか…?」
「そもそも最初から俺たち男じゃねえか…」
「山頂ばかりがゴールじゃねえよな…」
「結果よりも課程が大事じゃねえのかい….」
「もう….十分なんじゃねえか….」
そして田沢は叫ぶ。
この長い挑戦を見守って来たヒゲ教官も感動して田沢の決断を讃える。
そう。
誰が何と言おうとこれは男気ある撤退。
我らのメンツは丸立ちなのである。
さらにである。
サプライズ返しの失態を冒し、仲間から「パンチパーマになって責任を取れ」と糾弾された秀麻呂がここで動く。
おもむろにザックから何かを取り出す。
そして秀麻呂は標高2,900m付近でパンチ秀麻呂となった。
そして「その節は大変ご迷惑をおかけしました」と男として筋を通した謝罪。
この意外すぎた彼の命がけのスベリ芸に対し、仲間達も「お前も立派な男だぜ!」と賞賛。
そして「偽り登頂記念写真」である。
何と言われようとも、我々はこの戦いに勝利したのである。
だがこんな茶番には引っかからない男が一人。
それはもちろん赤石剛次。
彼は「俺はこの先も行く。」と言い残し、負け犬4匹を置いて颯爽と風雪の中へと消えて行った。
しかも後で聞いた話だが、彼はこの後急に腹痛に襲われて激しい便意をもよおしたらしい。
そして標高2,900mの極寒の世界で、下半身を晒して男らしく「一文字流脱糞剣」を炸裂させたと言う。
そして彼は、
と言ったかと思うと、見事に登頂を果たしたと言う。
さすがは我らが男塾、二号生筆頭の男である。
さあ、見事な途中敗退を決意した4人だが、本当の恐怖はここからだ。
いよいよあの垂直の区間を「下山」するという二重地獄へと突入。
当たり前だが下る方が怖すぎるのである。
まずは白い絶景を前に行われる恒例の儀式「心眼の儀」を執り行う。
昨日あんなに大快晴だったのに…なんて口が裂けても言ってはダメなのである。
そして虎丸がモンスターハンターのように地獄の入口へ向かって行く。
そして恐怖の大降下へ。
この時ばかりは虎丸の変態的性癖が羨ましい。
彼は「ハァ..ハァ..たまんねえ…もっと垂直を….もっと命のやり取りを…アッアッ…あぁ〜」と恍惚の表情。
一方田沢は緊張で体を悪魔将軍ばりに硬化させ、カッチカチ状態で下降開始。
もう出だしは飛び降り自殺感覚。
ひたすら目の前の壁だけに集中して「これはお子様にも安全な遊具です。1m下は地面です。」とブツブツ言いながら下降。
でも下を見ないわけにはいかなくて、脇から下をチラ見するとこんな感じ。
ここで足を滑らしたら、虎丸ごと遥か彼方まで男塾万歳コース。
そして上を見れば秀麻呂もプルプルして落ちて来そうな雰囲気。
しかしここをクリアしても超下降はまだまだ終わらない。
虎丸が血路を切り開き、
泣きながら田沢と秀麻呂が続く。(※最後尾の松尾にまで神経が回らんかったから、この頃松尾がどうなっていたかは知らない。多分白目になっていたんだろう。)
そしてまだまだまだまだ下降は続く。
この頃になると、もう虎丸の小向のりピー勝新化は大スパーク。
喜びの絶叫と共に、背後から「ドピューッ!」と何かが放出された。
虎丸龍次、享年38。
彼は遠い世界へと昇天してしまった。
でもすぐに王大人に無理矢理蘇生させられて再び愉快な下降タイム開始。
ちょうど行きで田沢がガクガクブルブルした「フンガ脱糞岩」の場所。
で、そこ抜けて落ち着いたかと思うと、
またこの状態。
こんな状況、登山雑誌でしか見た事ない。
まさか自分がこんな状況に身をさらす事になろうとは思いもしなかった。
しかしそんな地獄の果て、やっと8合目の御来迎場まで到達するとついに報われる時がやって来る。
それがこの素晴らしき大雲海である。
まあ目線上にもちょうど雲かかっててその先にある富士山とかは全く見えないが、この旅で初めてまともに拝めた絶景だけに感慨もひとしお。
「これは改めて記念撮影だ」と意気込む田沢。
そしてセルフタイマーをセットして立ち位置に移動すると、見事に罠にはまって雪を踏み抜く田沢。
せっかくちゃんと思い出に残れると思ったのに、やはり所詮田沢は田沢なのである。
でも改めてぱちり。
秀麻呂・松尾・虎丸・田沢。
結果は途中敗退だが、なんだかんだみんな男の顔になっているではないか。
そう、山頂が全てではない。
ここまでの課程でどれだけ男を示せたか。
それこそが重要なのである。
と、かっこよくみんなで言い訳を言って傷を舐めあい、この撤退を正当化させる。
これぞ一号生名物「負犬之遠吠(まけいぬのとおぼえ)である。
そんなとき、この場所に一人の男が登って来た。
「ごっついのぅ〜。」と言いながら笑顔の眩しいこの男。
そう。
彼こそ二号生筆頭代理の江戸川先輩である。
江戸川先輩は言う。
「本当は阿弥陀岳南稜行くつもりだったんですがね。5日前に車にひかれて膝やられましてね。だからリハビリ兼ねて黒戸尾根に来たんです。」と。
そのまさかな言葉に戦慄が走る一号生達。
我々が限界の根性で敗退したこの黒戸尾根を「リハビリ」で登って来たというまさか。
そして江戸川先輩は「ごっついのぅ〜」と言いながら、同じ二号生の赤石が待つ甲斐駒ケ岳に消えて行った。
何というごっつい男気。
赤石先輩といい、この江戸川先輩といい、やはり二号生達は男の格が違う。
そもそもこの厳冬期の黒戸尾根に単独で来てる時点で、二人とも群を抜いた変態である。
そんな先輩達の男らしい姿に感動し、「俺もいつかあんな男になりたい」とリベンジを誓う松尾。
しかし田沢と秀麻呂は「俺らはもう二度と来ないけどね」とボソリと呟く。
そして虎丸はまだラリってるのか蟷螂拳の使い手になっている。
急いで下山しないと仲間に襲いかかって来そうなので、さっさと下山開始。
そして小屋で飯。
これからまたあのクソ長い尾根を下山せねばならんので、詰め込めるだけ腹にエネルギー注入だ。
するとこの時。
バタンッと扉が開き、なんと早くも赤石先輩が帰還。
そして彼は言う。
「なんかあれからすぐのとこに山頂あったよ」と。
そのまさかな言葉に唖然とする一号生達。
あとほんのちょっと歩けば山頂で、そこまで大した危険箇所もなかったと言うではないか。
我々は松尾の「うそだろう…まだ全然山頂遠いじゃねえか…」というガセiPhone情報をもとに、まさかの寸止め敗退を決めてしまったようだ。
なんだか野球を観に行って9回表で帰っちゃったのに、9回裏の大逆転満塁ホームランを見逃してしまったかのようなこの空虚感。
田沢は「正直もう二度とこの尾根に来たくないから登頂しておきたかった」と、その無念の思いをコンプレッションザックの圧縮作業にぶつける。
しかし松尾は何も悪くはない。
時間的に制限時間だったし、あのあと天候がもっと悪化していたかもしれない。
しかし田沢は静かに松尾に言う。
「この無念。責任とって近々一人でリベンジかましてくれ。もちろんテント泊装備でだ。」と。
そして4人は抱き合って激しく号泣したかと思うと、一気に下山開始。
おりゃおりゃー。
おりゃおりゃおりゃおりゃー。
おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃー。
おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃー。
途中、虎丸が2mほど滑落するというアクシデントが勃発。
虎丸自体は平気だったが、その様子を見ていた秀麻呂が「死んだかと思いました。心臓のバクバクが止まりません」と血の気を失っていた。
そんな紆余曲折を経て、5合目到達。
なんとその5合目には、我らが飯食ってる間に追い抜いて行った江戸川先輩がいた。
どうやら江戸川先輩はマットを風で谷に飛ばされて困っているようだ。
しかし「谷底に物を取りに行かせたら右に出る物なし」と言われる松尾が動く。
しっかり谷からマットを回収して江戸川先輩も「お前、ごっついのぅ〜」と大喜び。
さすがはかつて八方尾根で、己のテントとシュラフを谷底に飛ばしてからの回収マゾで伝説となったジャギ松尾。
戦いのステージが谷となれば、彼は2号生達にも負けない男気を示す。
そしてその後もひたすら下山。
ただただ下山。
どこまでも下山。
終わらない下山。
いい加減飽きて来る下山。
くんずほぐれずの下山。
そして38回ほど嘔吐した頃。
たった数枚の写真で豪快にまとめたが、何気に小屋を出てから実に5時間。
ついに男達は、総合計35時間に及ぶ「八威波阿論愚直進行軍」の修行を終えたのである。
やりきった男達の精悍な顔つき。
男から漢になった雄々しさを感じる面構え。
約一名、昨日のいいちこを引きずってる男がいるが、これで彼らも立派に男道を貫いた。
しかし38歳コンビの虎丸と田沢は「もう俺たちしばらく休塾します。あとは松尾に託します。」と休塾宣言。
新入塾生の秀麻呂も、今後の男塾企画に対してうつむいたまま何も発言しない。
どうやらしばらくは松尾の一人男塾スタイルが確立されそう。
我々一号生の筆頭は剣桃太郎ではない。
今回終始絶好調を貫いた、松尾鯛雄なのである。
その後は意識を失った秀麻呂に対して、新一号生筆頭による男塾名物「魔津佐阿痔(まっさーじ)」で蘇生作業。
やがて息を吹き返した秀麻呂を連れて温泉に行くが、男塾名物「恩戦灸漢尾(おんせんきゅうかんび)」によって我々の癒しは阻止された。
しかし負けじと我らは男塾名物「汁夜鬼蘇波(しるやきそば)」で対抗。
ここで、前回叶わなかった秀麻呂に対する「左府羅威頭婆巣出亥(さぷらいずばーすでー)」の幕贈呈。
秀麻呂も「ありがとうございます。やっと男になれた気がします。」と号泣。
これでやっと彼の罪も無事に償われた。
あとはさっさと結婚してくれるのを待つばかり。
こうして彼らのあまりにも長過ぎた戦いは幕を閉じたのである。
男が男であるために、決して避けては通れぬ道がある。
その道の名は黒戸尾根。
最近彼女から「男らしくない」とか「情けない」と言われるモヤシ男どもよ。
とりあえず何も言わずに男塾に入塾するがいい。
そして黙って黒戸尾根を目指すがいい。
もしくは手っ取り早くライザップか東京上野クリニックにでも行くがいい。
再びこの男塾シリーズが再開するかどうかは分からない。
しかしたった二つだけハッキリしている事がある。
それは「もう二度と黒戸尾根には行かないだろう」ということ。
そして「宮下先生すいませんでした」ということだけである。
甲斐駒男塾 〜完〜
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田沢の戦いは終わらない。
あれから毎朝4時に起きてはシコシコつくったおまとめ動画です。
それではまた。
男塾で会いましょう。
甲斐駒男塾 後編〜岩陰パンチと男達の挽歌〜
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MATATABI BASE
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超おもしろいですね
僕も今日登ってきました。押忍
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押忍!
hogeさん、ありがとうございます!
変態厳冬期道場、甲斐駒男塾を堪能して来たんですね。
あのクソ長い尾根を歩いた上でこのクソ長いブログを読み切るとはさすが男塾の塾生。
我々はビクトリーロードをあえて残して謎の撤退をかましてしまいましたが、先週の日曜ってことは結構良い天気だったのでは?超絶羨ましいです。
少なくとも田沢はもう二度と黒戸尾根に近づく事はないですが、見かけたら声かけて下さい。
得意の英語と九九斉唱で対応します。
今後もよろしくお願いします!
阿離我闘伍座威魔死多!!