神崎川/岐阜

留守番発狂予防接種〜テンカラフティング事始め〜

taitoru.jpg


まだ記憶に新しい「パックトランピングの悲劇」。

どうしてもパックラフトと旅をミックスさせたいがあまりに冒してしまった過ち。

あれは結果的に、ただのセルフSMの模様をお送りしただけといった問題作だった。(参考記事:パックトランパーの軌跡



当時この奇行文に対し、多くの方から「意味が分からない」という暖かいコメントを頂いた。

そもそも本人自信が首をかしげながらやっていた事なので無理もない。

とにかく色んな物を一気に詰め込み過ぎたのがいけなかった。


という訳で、今回はパックトランピングの種目の一つ「テンカラ」だけに集中してみた回。

と言うか例のごとく時間制限ありの早朝一本勝負だったから、そこだけに集中せざるを得なかったのです。


大快晴の日に留守番を命じられた男が、「こんな日に家にいたら死んでしまう。わずかでいいから一回外の空気を吸わせてくれ。」と嫁に懇願して手に入れたプラチナタイム。

移動時間を除けば、許された時間は1時間ちょっと。

だから今回はただのテンカラの練習だけの回だ。


はっきり言って別に書くまでもない回なんだが、このブログは一応個人的なお遊び記録なのでやった事は全部書いておきたい。

ただの忘備録的なプチ記事なので、猛烈に暇な人だけ読むと良い。


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そもそも僕は釣りが苦手だ。

まず何だかめんどくさい。

そして何やら色々勉強したり練習したりしないと釣れない印象。

専門用語も多く、個人で一から始めるのは非常に気が重い。


それでも釣具屋に行ってはみるが、たまたまなんだろうが店員さんは素人にキビシい。

「君はそんな事も知らないのか?」といった目でみられ、軽くあしらわれてへこんでしまう。

だから入門書とかを読んでみるが、そこに書いてある言葉が理解できない事もしばしば。

その上道具も妙に高いし種類も豊富すぎ。

僕は手先が不器用なので、糸を穴に通す事にも難儀する。


そんなこんなの難関を乗り越えて、いざ釣りに行ってみても当然釣れない。

そして「私には釣りは向いてないんだ」と落ち込み、やがて「だから私は社会でもうまくやっていけないんだ」とネガティブ脱線。

そして最終的には「生まれて来てすみません」という闇に到達してしまう。

だからどうしても釣りにはあまり手を出さずに生きて来た。


しかしである。

ダーマの神の導きでパックトランパーに転職した僕には、どうしてもこの「釣り」という種目は避けては通れない道。

それはゲームフィッシングという観念ではなく、現地での貴重な「タンパク源確保」のための手段。

そして焚き火&焼き魚という「男のロマン源確保」という意味では、どうしても欠かす事の出来ない手段なのだ。


そこで前回の北アルプス高瀬ルートのパックトランピングで、ついに僕は渓流(源流)釣りデビューを果たす事になったわけです。

釣りのスタイルは、恐らく一番シンプルなスタイルであろう「テンカラ釣り」スタイルだ。


竿と毛鉤だけで勝負するテンカラ。

当然シンプルな分難しい部分があるし、そもそも渓流釣りなんて素人が簡単に釣れるもんじゃない。

もちろんデビュー戦での結果は無惨なものとなり、釣れる気配はミジンコ程も感じる事が出来なかった。



と言うわけで今回、禁漁前に「改めてちゃんと練習しておこう」と神崎川に向かったのであります。

もちろん無駄に背中にパックラフトを背負った「テンカラフティング」スタイルでございます。

IMG_2445.jpg

とにかくこの時点で早くも残り時間は1時間のみ。

わざわざコンビニで遊漁券買って来てるだけに、是が非でも1匹は釣っておきたい所。

しかし明らかに時間がなさ過ぎる。

まだ竿を一振りもしていないが、早くも敗色濃厚である。


それでも静かに気配を殺しながら、釣り上がって行く。

渓流釣りの基本は、どうやら「いかに殺気を消して己の存在を魚に気づかれないか」が勝負らしい。

かつては嫁に「お前の存在を消すまでだ」という名言を吐かれた身としては簡単そうな事なんだが、相手はあくまでも嫁ではなく魚だ。

この「短時間で何とか結果を出すんだ」という焦燥感がビンビン川に伝わっているのか、全く魚がいる気配がしない。


そもそもこのように己撮りしてドタバタとカメラの場所と行ったり来たりしてる時点で気配もクソもない。

IMG_2461.jpg

やはり釣りは釣りに集中するべきだ。


その後は出来るだけ余計な事をせずに、デューク東郷のように気配を殺して遡上して行く。

しかしアタリはさっぱり。

というかサングラスはしてるんだが自分の毛鉤とラインもすぐに見失うから、アタリがあったとしても合わせられない。


そうこうしているうちに、ついに朝日が昇って来てしまった。

IMG_2466.jpg

もう時間がないぞ。

本来は「さあ、朝日が昇って今日の一日の始まりだ!」という局面なんだが、早朝の闇の中でしか生きれない僕にとっては今日の日の終わりの合図。

一日のんびり釣りを出来る日なんて来るのだろうか…。

来ないだろうなあ…。

いつからこんなドラキュラみたいな遊び方しか出来なくなったんだろう…。


いかん。

あんまり釣れないもんだから、やっぱりネガティブ脱線しちゃったじゃないか。

これじゃいつもの「生まれてすみません」コースだ。

こうなったら意地でも1匹釣ってやる。


こうして益々全身から殺気をみなぎらせて釣り上がる男。

するとついにその時が。

僕は手元に何か異物感を感じ、サッと竿を上げる。

アマゴか?イワナか?

IMG_2486.jpg

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ドンコでした。


記念すべきテンカラ第一歩は「偶然引っかかったドンコ」という締まらない結果に。

まるで童貞を行きずりのおばさんに奪われてしまったかのような気分だ。


どうもイメージしていたのと違うな。

一応焚き火用のライターと串と塩を持って来てるんだが、またこいつは出番がないのだろうか?

一匹アマゴが釣れてくれればそれで満足できるんだが。



そうこうしている間に、早朝ならではの素敵な時間がスタート。

朝の川霧を陽光が浮かび上がらせて、実に幻想的な状況へ。

IMG_2494.jpg

こうなってくると、もう別に釣れなくてもいいやって気分に。

釣りだろうがカヌーだろうが、結局こうして川の中で遊べればそれでいいいやと。


ということで、釣りもそこそこに「川の遡上行為そのもの」を楽しみ出す男。

結局落ち着いて釣りに集中せずに、沢登り気分でいつものように「ハアハア」言い始めてしまう。

9月の水はキリリと冷えて、モーニングマゾとしては申し分ない。


で、お気に入りの川原まで遡上完了。

IMG_2558.jpg

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あとはここで時間切れまでしっかりとキャスティングの練習。

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ビジュアルだけで言えば、まるで映画リバーランズスルーイットの一コマのようだがやっぱり釣れない。

それでも頑張って練習し続けるが、ついに一番恐れていた事態に。

IMG_5783.jpg

不器用な男に突きつけられる絶望的なパズル問題。

ほどこうとすればする程複雑に絡み合って行く乱交パーティー会場。

まるでパロ・スペシャルのように、もがけばもがく程深く技が決まって行く。


正直これがあるから釣りは苦手なのだ。

大自然の中、指先の世界だけに集中して内職のような事をせねばならんこのキビシい時間帯。

何度も「アアアッ!」とか「キイイイイッッ!」とかの声が漏れてしまう。


そして全然ほどけないままタイムアップの笛が山間に響き渡る。

私は決して安くはない遊漁券を買ってまで、一体何をしに来たのか?

結果、川をはるばる遡上してあやとりしに来ただけじゃないか。


しかしである。

そこはただの釣り人とは一線を画すテンカラフター。

すかさずサッと背中のパックラフトを膨らます。

IMG_2572.jpg

これにより、たとえ釣果がボウズでも「私は釣りに来たのではない。川下りしに来たのである。」と言い切って己を慰める事が出来るのだ。

とりあえずこいつで川下っておけば、今日の一日が救われるのである。

IMG_2592_201410081703185ef.jpg

やっぱ落ち着くわ。

だったら最初から川下りだけやれば良かったじゃないって話だが、そんな事を言ってはパックトランパー失格なのです。

この限られた1時間で釣れなかったとしても「テンカラとパックラフトしました」という事実があるから、これから始まるお留守番に耐えられるのです。

いわば発狂を予防するための、インフルエンザ予防接種みたいなもんだね。


で、あっという間に帰還。

IMG_2601_20141008170325e6a.jpg

最高のアウトドア日和の朝だが、残念ながら私はドラキュラ城に帰る時間です。

嫌みな程に晴れてるから、パックラフトも乾くのが速い事。

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空、

蒼いなあ。



そしてそそくさと帰宅。

もちろんいつものように約束の時間に帰れず、嫁による「氷結の無視」。

完全に彼女の世界から僕の存在が見えないかのような美しい無視だ。

川でもここまで気配が消せればアマゴも釣れただろうに。


しかしやがて彼女は口を開いた。

普通は「どう?釣れたの?」くらい聞いて来そうなもんだが、やはりそうはいかない。

まるで大富豪の奥様が使用人に命じるかのように、僕の顔すらみる事なく「部屋の壁にこーちゃんが落書きしてるで消しておくように」との指令が炸裂だ。


そしてこの日。

僕は大快晴の外の世界を見ないように、部屋の中で日時計になりながらひたすら壁をこすり続ける。

IMG_5803.jpg

全然落ちないや…。


にしても。





蒼いなあ…。





遠く険しいテンカラ釣りへの道のり。

その歩みはまだ始まったばかり。

今回の記事を数年後に見た時、「こんな時もあったなあ」と言っていてほしい。

釣ったアマゴを焼いて食いながら言って欲しい。


でもその時も壁を拭きながらこの記事を眺めてる可能性は大だ。

もしくは涙を拭きながら。



それでも絶対に諦めない。


待ってろよ、アマゴさんイワナさん。


来年こそこのマスオさんがお前達を一網打尽にしてみせる。



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コメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    yukon780さん、こちらでははじめまして。
    ヤマノボラーのclimb likeと申します、以後よろしくお願いします。

    神崎川のテンカララフティングお疲れ様です。
    子育ての中の貴重な時間でしたね。
    家も同じような年の子供が二人います。(娘二人ですが)

    最近yukon780さんのブログを楽しみに読ませてもらっています。
    過去ブログも少しづつ楽しく読ませてもらってます。

    来年ぜひ神崎川に沢登に行きましょう。

    • yukon780
    • 2014年 10月 14日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    climb likeさん、ありがとうございます!
    メール送っておきました。
    是非来年はご一緒しましょう!
    と言ってもお互い中々時間作るのが難しいだろうけど…。
    子連れ登山でもいいんでうまいことやって行きましょう!

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