5月ラストスパートに入ったカヌー野郎。
何度も書くが、鮎釣り解禁前のこの5月にどれだけ川を遊び尽くせるかがカヌー野郎の勝負所。
この「祭り」とも言える強化月間は、どんな手を使ってでも川に行くのだ。
しかし彼が川に行けるかどうかの鍵は、あの伝説の嫁が握っている。
家庭内での彼女のディフェンス力は、往年のイタリア代表の「カテナチオ」を彷彿とさせる鉄壁なガード。
僕は毎回強引にドリブル突破を試みるが、その度に簡単に弾き返されて来た。
正攻法では嫁のカテナチオをこじ開ける事は出来ない。
そこで前回は、センターに守備を集中させた上で「子供のため」という右サイドからの絶妙なセンタリングが炸裂。
これによって見事に「根尾川」という1点をもぎ取った事は記憶に新しい。(参考記事:ネオ・ブラボー!〜蝶の楽園への虫捕り大冒険〜)
しかしこの5月中に、どうしてもあと2点は入れたいカヌー野郎。
3本の岐阜隠れ清流を全て漕破し、歓喜のハットトリックを達成するのだ。
彼はどうやって嫁のディフェンスラインを崩そうかと思案していた。
するとふいに、本当にふいに嫁がこう言った。
「おい、この5,000円の化粧水買ってくれ」と。
あまりに唐突すぎた嫁のドリブル中央突破。
何の記念日でもない平日に、全く予期してなかったジャイアン的な金銭要求が発動だ。
僕は慌てて自陣に戻る。
しかしこのようなピンチにこそ光がある。
僕はすかさず「はい。買わせていただきます。」と美しいスライディング。
基本的に僕の困った顔が見たいだけのサドFWは、若干ふいをつかれたようで簡単に僕にボールを奪われた。
ここで僕は渾身のカウンターアタック。
守備の乱れたカテナチオに対し、「その代わり、川行っていいですか!」と叫んで右足を振り抜いた。
僕の熱い想いを乗せたボールは、無回転のままゴールネットに突き刺さる。
ゴォォォーール!
こうして僕は2点目の「神崎川」を決めた。
ピンチをチャンスに変えてこそ、出来るアウトドアマン。
一見「神崎川を5,000円で買った」という情けない男に見えるだろうが、これぞ奴隷生活6年で得た処世術。
若干の悔しさはあるが、1日自由権が5,000円で買えるのなら安いものだ。
さあ、そんな激戦の末に手に入れた一日。
岐阜の隠れ清流3本の矢シリーズ・2本目。
神崎川編でございます。
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神崎川に行く3日前。
男は病院にいた。
彼はお約束のように風邪に倒れたのだ。
しかし5月は残りわずかなので、せっかくの神崎川を延期などしてる場合じゃない。
そもそも「5,000円払って自宅療養」なんて事になったら目も当てられない。
川に行かないと言った所で、あの伝説の嫁が返金などしてくれるわけがない。
しかしこの男は不思議な拳法を身につけている。
それは「風邪などは山や川で治すものだ」という、彼が開発した北斗根性拳。
それは現地で直る可能性は少ないが、うまくいけば治ってしまうというパルプンテ的な拳法。
かつて彼は何度もこの拳法で修羅場を遊び抜いて来たという実績がある。
そして勝負の日当日。
やはり彼は自宅療養などせず、北斗根性拳を炸裂させて神崎川を自転車で北上していた。
かつて富樫源次が「こと遊びに関しては奴の根性にはかなわない」と脱帽したほどの根性。
風邪なんてものは、6月の鮎釣り解禁後にゆっくりとぶっ倒れて完治させればいい。
梅雨入りとともに鬼籍入りする可能性もあるが、今はまだその時じゃないのだ。
やがて男が川を下見しながら北上していると、前方から来た一台の車が彼の前に止まった。
僕は一瞬、嫁が放ったヒットマンかと戦慄が走って死を覚悟した。
しかしその車の主は、思いがけない事を口にした。
「それが噂のナイト・オブ・アヒージョ号ですね」と。
なんとその人は、このマニアックなブログの読者だったというまさか。
僕としては現場で読者の人に声をかけられる事が初めてだったので、「ほんとにこんな公開マゾ日誌を読んでる人いたんだ」とビックリだ。
顔出しNGって事で写真こそないが、そのカヤッカーであり釣り人であるSさんは実に親切に神崎川の説明をしてくれた。
神崎川は情報不足の初の川だったから、入川口情報や釣り人情報はとても役に立った。
さらには車でスタート地点まで運んでくれるという親切さ。
北斗根性拳を駆使してまで無理する僕には、これは非常にありがたいサポートだ。
そしてスタートポイントで写真までを撮ってくれて、
後に彼が撮った写真もメールで送ってくれた↓
この手の写真を己撮りで撮ろうと思うと、非常に大変だという事を知ってくれた上でのご配慮。
この手の出会いがあると、ぐっと「旅感」が出て凄くいい気分。
このブログの読者が一体どれほどいるのか分からないが、もしあなたが山や川でカヌー野郎を見かけたらSさんのように手を差し伸べてやって欲しい。
きっと彼はその時も北斗根性拳中で、無理に無理を重ねている可能性が高いから。
そしてSさんと別れた直後。
男は早くもエクスタシーに包まれていた。
この素晴らしき清流度。
いくら私が清流早漏野郎でも、スタート直後にこんなの見せられたらチョコボール向井でも2分ともたないぞ。
もちろん漕いでる場合じゃないから、速攻で上陸してその清流を堪能。
ベッドの上からも綺麗だが、こうして客席からじっくり見るのもたまらない。
四国オンデマンドの清流女優さんにも負けてない、岐阜企画のS級清流女優さん。
まさに灯台下清し。
はるばる9時間かけて四国まで行かなくても、家から1時間ちょいの所にこんな大清流が存在していたとは。
そしてこの山深い雰囲気も中々良い。
Sさん情報によると、この先の区間は入川道がない渓谷区間で、もしかしたら夏でも鮎釣り師の人が入れない区間かもしれないとのこと。
ほとんど情報のない川だったけど、こいつは期待感が高まるぞ。
ただやはり長良川支流の武儀川のさらに支流の川だから、当然場所によっては水量は少ない。
そして時折このような「ドSカーブの瀬」とか登場したりする。
ドSの激流を散々家で味わっている僕は、もちろんこんなところはパックラフト神拳(ポーテージ)で軽々と越えて行く。
そしてここからは「清流」と「瀬」が交互に攻めて来る。
清流女優神崎川さんの、スペシャルな飴と鞭タイムがスタートだ。
まず神崎川さんはスケスケの肢体を晒してじっくりと僕を誘惑し、
うかつに近づいた所で、突然鞭でピシッ。
その度にパックラフト神拳を繰り出さねばならんので、結構気を使う女優さんだ。
しかし僕は知っている。
このような難しい女優さんほど、その内に秘めた純情度がハンパ無いという事を。
いよいよ神崎さんの奥深くまで侵入し、道路からは確認できない渓谷の中へと侵入して行く。
すると徐々に神崎さんは素の己をさらけ出し始め、その純情度に歯止めがかからない。
ついに彼女の美しくも清純な本性があらわになったのだ。
僕も空中浮遊しながら「もう僕の前では仮面を脱ぎ捨ててもいいんだよ」と、優しくピロートークをかましてやる。
浮かれるのも程がある光景。
これにて僕は神崎川に受け入れられたのだ。
ちなみに良く聞かれるからついでにここに載せておくと、このような己撮りはこのように撮影されております。
裏側はこうなってたんですね。
インターバルタイマーで数枚撮ってるんだけど、セットしてから大急ぎで漕いでまた大急ぎで戻って来る。
だから実際写真に写ってる男の息は「ハアッ!ハアッ!」と相当上がっています。
そういう裏事情を知った上で見ちゃうと、少しも優雅には見えないね。
人は「じゃあ誰かと行けばいいじゃない」と言うだろう。
しかしこんな酔狂な事に付き合ってくれる人がいないんです。
どうかその哀れな人を見る目をやめていただきたい。
「5,000円払ってまで何やってんだよ。哀しくて見てらんないよ。」って言わないでほしい。
彼は好きでやっているのであります。
そっとしておいてあげましょう。
その後、すっかり僕と打ち解けた神崎さん。
仮面を外した彼女の清冽な甘えっぷりが止まらない。
宝塚の男役トップスターが彼氏の前だけで見せるゴロニャン的なギャップに、僕はもうすっかりゾッコンだ。
そして何度も何度もステキな川原に立ち止まっては逢瀬を重ねて行く二人。
私は今猛烈に幸せだ。
本妻に5,000円払ってまで手に入れた、愛人神崎さんとのハニータイム。
若干の後ろめたさはあるが、男である以上このような清流を抱きしめてしまうのは本能というものだろう。
そして本日は、そんなステキな川旅気分を盛り上げるアイテムを用意して来ている。
それはこの絶頂気分を盛り上げる「頂ラーメン」と、具材の野菜。
最近の川旅は時間に追われる事が多く、メシはもっぱらカロリーメイトだった。
ここらで若かったあの頃と同じように、久しぶりにじっくりと焚き火でラーメンを作ってまったりしてやるのだ。
さあ、流木を集めて準備万端。
川旅で最も優雅なる時間が始まる。
さあ、勝利の聖火をともす時は今だ!
おや?
おかしいぞ。
持って来たはずなんだが。
ライターがないじゃない…。
今日ほど禁煙した自分を恨んだ事はなかった。
最近いつも肝心なものを忘れたり失くしたりする事が増えている。
体力の衰えより先に脳がやられ始めているようだ。
しかしどうしても焚き火を諦めきれない。
何気にこの「焚き火&極ラーメン」を本日のメインイベントと考えていたから尚更だ。
僕は記憶をたどり、過去に読んだ「冒険サバイバルブック」を必死で思い出す。
しかし本日はロープやナイフすらないリアルなサバイバル状況。
それでもそこにあるもので何とか火おこしグッズを製作。
しかし当たり前だが、こんな陳腐なもので火がおきるはずがない。
必死で摩擦を起こそうとするんだが、溢れ出て来るのは煙ではなく後悔のみ。
結果、彼は全てを悟って焚き火を断念した。
何気にこの一連の無駄な作業で、貴重な時間だけが過ぎて行った。
彼はここで焚き火で「まったり」するはずだったが、ただただ「げっそり」するという哀れな結果に。
楽しみにしていた分、このショックは計り知れない。
しかし腹はしっかり減っているし、頼みのカロリーメイトも持って来ていない。
結果、このような画期的な「極みラーメンセット」が完成した。
麺はバリカタやハリガネを遥かに越えた「コーテツ」の麺。
野菜はドレッシング買って来てないから、濃縮ラーメンつゆをかけた濃厚すぎる味わい。
贅沢品として用意して来た「くんたま」は、逆にみすぼらしさを助長するだけのアイテムに。
そしてこの珠玉の一品に食らいつく。
ラーメンを食ってるはずだが、何故か山間に「バリッボリッ」という効果音がこだまする。
やはり川で食うラーメンはコーテツ麺に限るぜ。
そして味が濃すぎるサラダを水で薄めて、つけ麺風にして涼を楽しむ。
僕も若い頃と違って大人になったんで、食べ方も随分とオシャレになって来たな。
しかし一つだけはっきりと言っておこう。
僕は今日まで38年の人生を歩んで来た。
その中でも、この極みラーメンセットは群を抜いてまずかったぞ。
こうして男は、「若い頃とは経験が違うのよ」と言わんばかりの格の違いを見せつけたランチを終了。
すっかり気持ち悪くなってしまったが、まだまだ先に進むのである。
と言っても、早くも自転車を置いておいたゴール予定地に到着してしまう。
まだまだ不完全燃焼なので、ここで終わったらもったいない。
5,000円の元はしっかりとらねばならんのだ。
こうして彼はさらに先に進んで行く。
でも今思えば、ここでやめておけば良かったのだ。
彼はあの極みラーメンの時点で、己の運命がマゾに傾いてしまっている事に気がつくべきだったのだ。
そうとも知らず、飛んで清流に入る初夏のマゾ1匹。
この清流に引き寄せられるように、彼は神崎さんのさらに奥へ奥へと吸い込まれて行く。
もうすっかり清流無しでは生きて行けないカラダにされて行く純情な中年。
そして時にはこのような瀬を越え、
サーフィンで遊んで浮かれ出す。
こうしてどんどん神崎さんの愛欲に溺れて行く男。
一度燃え上がってしまった中年の恋は全てを盲目にする。
この男は愛に浮かれるあまり、自分がすでに抜き差しならない修羅場に足を踏み入れている事に気づいていない。
しかし百戦錬磨の小悪魔女優の神崎さんは、そんな男を巧みに誘惑する。
このような平和でステキすぎる光景を惜しげもなく披露して、僕を川から上がらせようとしない。
これだけでも十分メロメロ。
しかし彼女は突然、眼前にこんなラブリーアイテムまで登場させて来やがるのだ。
我が目を疑ってしまったが、これはまさしくブランコ。
川フェチの男どもを狂わせる魔性のアイテム。
もちろんすっかりメロメロメロウなこの男は、蜜に吸い寄せられるようにフラフラとブランコへ。
こんな絵に描いたようなブランコに乗ってしまえば、38歳のおっさんだろうとあっという間に少年に戻ってしまう。
神崎さんは母性むき出しで我が少年心をくすぐって来たのだ。
もちろんこのハイジ(ハイになったじじい)は、このブランコからのジャンプを試みる。
でも思いのほかブランコが揺らせなくて、真下に落ちて苦笑いのハイジ。
でもこんな事すら彼は「ああ、僕たちは今ニャンニャンしてるんだなあ」と悦んでいる。
もうすでに神崎さんの術中にはまっているとも知らず、実にめでたい男である。
愛人とは、少しの時間でたまに会うから燃え上がるというもの。
彼のように深入りしてしまっては後々痛い目に遭うのが世の習い。
ここからは、彼は一気に「朝ドラ」の世界から「昼ドラ」の毒々しい世界へと足を踏み入れて行く事になる。
ここでついに神崎さんが牙をむき出し始めたのだ。
もうそこには清純派女優の神崎さんの姿はなかった。
本性を現した神崎さんは、いきなり「神取忍」となって僕に襲いかかって来たのだ。
突如会場に流れ出した神取さんの入場テーマ曲「GET IT BACK」の轟音。
そして何の前触れもなく試合開始のゴングが鳴り響く。
とんでもない落ち込みの嵐。
思わず「殺す気か?」と言ってしまったほどの激しい攻撃。
何が起きたのか分からない浮かれ男は防戦一方。
かろうじてパックラフト神拳を使って、神取の攻撃をかわすので精一杯。
なんとか一つの落ち込みを越えても、その先は「滝があるのか?」と思ってしまうような先の見えない落差。
そんな殺人的な落ち込みアタックが、階段状に先の先まで続いているのだ。
神崎さんから神取さんへの凄絶すぎる変貌に、全くついて行けない男。
「もう許してください。勘弁してください。」と叫びたい気分だが、この時にはすでに道路に上がる道はなし。
本気で泣きべそをかきながら、浮気男は崖を越えて行く。
もはや生きた心地がしない。
川も地獄、崖も地獄。
もう気分はキレた嫁の前にいるかのような絶望感。
愛人に溺れた男の末路とはこんなもの。
しかしこの程度のお仕置きで終わらないのが、昼ドラが主婦層から絶大な人気を誇る所以。
浮かれたダメ浮気男は、その後も延々と徹底的に懲らしめられるのだ。
男はパックラフト神拳を炸裂し続け、もはやヘロヘロの状態に。
そして、ついに一番恐れていた事態が。
ここで神取忍は、とどめだとばかりに「真ん中は落ち込みで両サイドは崖」という「パックラフト神拳封じ」を発動して来たのだ。
ついに進退窮まった僕は、この落ち込みに突入して行く羽目に。
もう生きた心地がしない。
それでも進まないとおウチに帰してもらえない浮気男は、「もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ」と叫びながら突入。
ドカーンと1mほど落下し、水びたりになりながらも何とか突破。
振り返るとこんな感じ。
もういやだ。
僕はのんびり清流派であって、変態激流派ではないのだ。
しかし容赦ない神取さん。
僕は必死で「もうやめて!負けでいいですからここから出してください!」と訴えるが、まるで聞く耳をもってくれない。
この究極に弱った状態の僕に、さっきよりも酷い状態でパックラフト神拳封じを炸裂させる。
まじか。
まじなのか。
本当にここを行かねばならんのか?
私は嫁に5,000円払って、わざわざ死にに来たのか?
妖艶な神崎さんの数々の誘惑は、全てここに僕を連れて来る為の罠だったのか。
俄然盛り上がる昼ドラ。
うなぎ登りの視聴率。
浮気する夫に鬱憤を抱く全ての主婦の恨みを一身に背負い。
男はドロドロのお仕置きワールドへと突入して行った。
たちまち轟音の中で、強烈な瀬にもまれる男。
それでも必死で漕ぎ続ける。
そして最後の大岩を右へ抜ける。
すると、さっきまで見えなかった階段状の落ち込みの嵐。
男は激流に逆らえず、落ち込みに突入しながらその先の岩に激突。
そしてそこを起点に回転し、今度はケツを岩にぶつける。
これにより、彼のパックラフトが落ち込みのど真ん中でガッチリ固定。
たちまち艇内に水が大侵入。
あっという間に男は水中に没し、流される。
主婦層からはヤンヤの喝采。
この瞬間、視聴率は20%を越えたという。
やがて流された男は岸に漂着。
振り返れば、たった今楽しい水泳の時間を提供してくれたステキな落ち込み。
そしてその場には、精魂尽き果てたドブネズミの哀れな姿が。
かつて長良川で沈して人間洗濯機になって以来、実に9年ぶりの沈。(参考記事:ナガラデイズ 後編 〜さよならシャクレ野郎〜)
あの時以来僕は絶対に沈をしないように生きて来たが、ついにその操も神取忍に奪われてしまった。
しかしもはや白旗を揚げて従順を示しているというのに、この昼ドラの脚本家はさらにどん欲な台本を用意していた。
視聴者から寄せられた「その浮かれた浮気男を徹底的に懲らしめてちょうだい」という多数のリクエストに応えて、やり過ぎた演出が止まらない。
もちろん、ここでも「パックラフト神拳封じ」はしっかり発動していて逃げ場無し。
男はもう、ひっくひっくと泣きながらその瀬に突入。
そして美しく岩に斜めに乗り上げて、再び神取忍のパワーボムの餌食に。
そして川の中の岩のリングでもみくちゃにされて、再びよろよろと岸へ。
そして男が、最高に情けなく「もうやめてよう〜」と泣きじゃくった瞬間。
視聴率は脅威の30%越え。
こうしてこの昼ドラは、浮気人・遊び人を持つ主婦層から絶大な支持を得たモンスタードラマとなったのだ。
しかしいよいよこの主演男優に気力と体力の限界が近づいて来ている。
もうかれこれこの川を7時間近く彷徨い続けている。
もはや前半の浮かれた清流イチャイチャ区間の事など思い出す事も出来ない。
そもそもそれ以前に風邪を引いていた事すら忘れている。
ある意味で、今回の北斗我慢拳のパルプンテは成功したのか?
それとも壮絶な失敗だったのか?
もう何がなんだか分からない。
さっさと逃げ出したいが、神取忍は執拗な「断崖デスマッチ」を仕掛けて来て逃げ場がない。
途中、かろうじて道に上がれそうな場所はあるが、ゴールとしてはあまりにも険しく悲しい道。
ここまで来たら、なんとかあと1キロ先の確実なゴールまでは辿り着いて完漕したい。
僕は両頬をぴしゃりと叩き、「ヨシ!もう一踏ん張りだ!」と気合いを入れて先に進む。
するとその2分後、今までで最大の落ち込みが口を開けて待っていた事を確認。
男はそれを確認すると静かに頷き、フッと笑ったかと思うと再び遡上して戻って行ってしまった。
やがて男は先ほどの道に上がれそうな場所まで戻り、無念の強制ゴール。
そしてゴール記念写真には、精魂尽き果てて川原に転がる浮気男優の死体が写っていた。
浮かれた果てに辿り着いた失楽園。
この壮絶な最終回には、さすがの主婦層も「殺す事までなかったのに..」と、涙を流して眺めていたという。
それでもこの不死身の男優は再び息を吹き返し、先ほどの大急登の獣道をガシガシと登って行く。
そして神取忍の断崖デスマッチリングからなんとか脱出。
なんだかやたらと体がヨロヨロするのは疲れすぎなのか、それとも風邪が悪化したのか?
とりあえず生きてるんだからそれだけで十分だ。
で、途中で僕が敗退を決意した最後の落ち込みの姿が道路から確認できた。
もう真っ白なんだもの。
もし行っていたら完全に息の根を止められていたね。
やがて男はゾンビのように歩きながら、車へ到達。
これでもう全ては終わったのだ。
私はこの地獄から解放されたのだ。
もうこれ以上動けない。
そう思ったその時。
彼は気づいてしまう。
大事なパドリンググローブがないってことに。
男は記憶をたどって行く。
そう言えば轟沈かました時に撮ったこの写真。
実はこの時にずぶ濡れのグローブを外してカメラをセットしていた事を思い出した。
そう。
彼はこの無駄な写真を撮る為に、この場所にパドリンググローブを置き忘れていたのだ。
そんな事も気づかず、その後の沈でのんきに己撮りしているその手にはグローブはもうない。
なんという愚かな男なのだ。
ここで気づくべきだったのだ。
嫁に5,000円払った挙げ句、また無駄に5,000円くらいかけてグローブを買うわけにはいかない。
結局僕はフラフラの体に鞭打って車を走らせ、轟沈ポイント付近へ。
そこで川からは確認できなかった、川に降りるポイントが。
そしてグローブがあると思われる場所はこの遥か先。
こうして男は7時間の壮絶川下りの後の夕方から、まさかの沢歩きタイムに突入。
もはやカメラも全て置いて行ったから写真は残っていない。
男は薄れゆく意識の中、足場の悪い岩場を越え、そして時に泳いでグローブを目指す。
その姿は、もう痛々しいとしか表現しようのない悲壮感溢れる姿だ。
そして約40分後。
彼は無事に生還した。
夕日を浴びながら登場した男の手にはパドリンググローブ。
その姿は谷底からミートくんの腰とともに生還したテリーマンのような勇姿。
こうして彼は限界まで神崎川を遊び(?)尽くしたのだ。
やがて男は自転車の回収へ向かう。
するとそこにはなんとあのSさんの姿が。
実は僕の自転車が夕方になってもずっと置きっぱなしなので、「ついにカヌー野郎が死んだのではないか?」と心配して待っててくれたのだ。
危うく捜索依頼が出されてしまう所だったが、人の優しさに飢えていた僕にはとても嬉しい事だった。
大変ご心配おかけしました…。
こうして彼はこの5,000円で買った神崎川をフルで遊びきる事に成功。
実に7時間に渡る天国と地獄のドラマでした。(渓谷部だったからかログが安定してません)
より大きな地図で 神崎川 を表示
このボリューミーな一日の出来事の事を思えば、5,000円は安いものだ。
おかげで風邪まで治って(忘れて)しまったし。
やはり風邪を治すのは川に限る。
これにて岐阜の隠れ清流3本の矢の2本をへし折る事に成功。
若干へし折られたのは僕の方な気がしてならないが、あくまでもこれは私の勝利である。
残す一本は亀尾島川のみ。
そして実は、彼はこのヘビーな川旅の翌日も川へ行くのである。
それは「武儀川ファミリーカヌー大会」。
どん欲俳優の無茶なスケジュールは留まる事を知らない。
5月も残りわずか。
セクシー浮気男優の無茶が加速する。
岐阜隠れ清流3本の矢・神崎川編 〜完〜
天国情事と地獄事情〜浮かれた男の失楽園〜
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ども!tun_nokoです。
相変わらずのストイックな川下り、もう若くないんだから無理しないように頑張って下さい。
所で、船買ったのでこの連休(アメリカでは6月末に連休があります)マッドリバーを下ります。一人なので回送は自転車か?!
僕も若く無いので無理せぬよう頑張りま~す。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
tun_nokoさん、ハローです。
もう若くないんですが、なぜか年を取るほどにやりたい事や行きたいとこが溢れかえってて困ってます。
精神とカラダの分離が日に日に凄くなって来て、結果このような乱行に至るわけですね。
世の中の「暇だ暇だ」と言ってる人に時間を分けて欲しいですよ…。こんな無理しなくても良いように。
そしてやっと買ったんですね。
結局パックラフトですか?
マッドリバーはもちろん全く知らない川ですが、ひょっとしてカナディアンカヌーのマッドリバーと関係がある所なんですかね?
回送はもうそこはアメリカらしくヒッチハイクでしょう!
今後もお互い気持ちだけは若くもがいて行きましょう!