死して屍拾う者無し。
ここは男の道場、南アルプス。
苦難の長行軍からのジョジョ的ホーリーナイトで、すっかり疲弊した二人の挑戦者。
それでも彼らは持ち前の負けん気とマゾん気を奮い立たせ、その足を山頂へと進ませる。
待ち受けるは南アの女王・仙丈ヶ岳。
戦いの舞台は、風速15mで-19℃のお下劣極寒ワールドへ。
いよいよマゾがマゾを呼ぶ3,000m雪山世界と、12時間耐久大長行軍。
2013年を締めくくるにふさわしい、濃厚マゾ納め。
それではそんな彼らの修行模様を振り返って行こう。
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小仙丈ヶ岳での大満足のご来光。
ついにここから、本格的な3,000m峰での雪山稜線との戦いだ。
ご来光に背を向けて動き出す挑戦者達。
耐寒準備も万全にし、そのいでたちは仮面ライダーの新シリーズが始まったかと見まごう程。
そんな新種の仮面マゾラー達が向かうは、陽光で頬をピンクに染めて恥じらう女王様。
甘い表情で我々を誘惑しているが、彼女の本性はサディスティッククィーンだという事は分かっている。
このまま女王様の懐に飛び込めば、とんでもない罵倒の嵐を浴びせられる事も承知の上。
しかし分かっちゃいるけど、その足を止められない白ブタ達。
だってこんなに艶かしい流線的な肢体を晒された日には、我々のような純朴な男達では到底抗う事なんて出来はしない。
しかも女性らしい演出で、雷鳥の足跡で我々を優しく誘導。
甘い蜜だと分かっていても、その懐に導かれて飲み込まれて行ってしまう。
もちろん左を見れば、常時「ご来光」「富士山」「北岳」という絶景三点セットももれなく付いてくるというお得さ。
さらに右を見れば、雲海に浮かぶ北アルプスの山並み。
ここに辿り着くまでに随分と時間がかかったが、やはり来てよかった。
簡単には辿り着けないからこそ、この快楽に身を委ねられる権利を得たのだ。
風も比較的強風ではなく、優しい稜線上をひたすらに女王様めがけて進んで行く男達。
しかしそうは言ってもここは-15℃の世界。
外界に肌を露出すると、たちまち凍傷の危険に晒されてしまう極寒ワールド。
昨日の山小屋で会った人も、耳が凍傷になってパンパンに膨れ上がっていた程だ。
しかしそんな過酷な状況で、ついに一発目の女王様の攻撃。
なんと猛烈な「尿意」が襲いかかって来たのだ。
これから先、進むにつれて状況は厳しくなって行くはず。
しかしこの状況下での放尿は自殺行為ではないのか?
男は悩みに悩んだ末、風が弱まるのを待ってついに決断の時。
地肌を晒せばたちまち凍傷になるというこの世界で、命がけの露出行為を開始した。
標高3,000m、-19℃の世界で己の最重要拠点を解放させる極限露出男。
風のない今がチャンスだが、もしここで強風が吹けば凍傷は免れない。
たちまちカチカチに凍り付き、その小さなマイバナナで釘が打てるかもしれない。
そうなれば3人目のベビー誕生は絶望的。
まあここで凍らなくても、嫁の愛が凍結しているその男には関係のない事だったのかもしれない。
しかし何とか無風状態の時に放尿を完遂。
見事にこの難局を乗り越え、女王様に己の男気を示してすっかり満足げなマゾ男。
ひょっとしたらマイバナナがフリーズドライ化している可能性はあったが、まあ下山後の温泉で元に戻るだろう。
その後もズンズンと進んで行く男達。
やがて、いよいよ息を飲む程に美しさを増す女王様。
むさ苦しい男の世界で一夜を過ごした男達には、いささか刺激が強すぎるエロスティックさ。
女王様の誘惑が止まらない。
しかしそのエロスの先に待っていたものは、強烈な「急登オブジョイトイ」。
それは月に向かって一直線に伸びる、素敵なSMの館だったのだ。
まさに月を目指して登っているかのようなエンジョイマゾタイム。
マゾが冒した罪と罰。
いよいよ我々が月に帰る時がやって来たのか?
後方からは荒い息づかいの中年後輩が必死に登って来ている。
さっきまであんなに優しかった女王様が、ここに来て豹変。
我々は急登という名の鎖で絡めとられ、容赦なく猛烈なムチをノーガードで浴び続ける事に。
この角度を見ていただければ、そのお下劣さがよく分かっていただけるだろうか?
この酸素の薄い中での急登プレイは、さすがの我々でもおマゾがすぎる。
登れども登れども、アームストロング船長の月面足跡のような光景がひたすら月まで続いている。
NASAの月面ヤラセ写真はここで撮影されたんじゃないかって程の、この人間を寄せ付けない異質な雰囲気。
しかも足下は氷と深雪が入り乱れ、時折思いっきり足を取られるハード行軍。
一歩一歩がムチで叩かれているかの様にしんどいプレイ。
まさに今、我々は女王様に試されているのだ。
やがて我々はそんな急登オブジョイトイを乗り越える事に成功。
もうこの男なぞは、天を見上げてその快感に身を委ねてしまっている。
この山に入って以来、一体何度目の昇天だろうか?
さすがに我々はもう若くないので、そう何度も昇天してられない。
もう我々には「回復力」という力は無いに等しいのだ。
しかしここで撤退を決断させないだけの美しさはさすが女王様。
すぐさま我々は延長料金を支払い、さらに女王様めがけて進んで行く。
その延長指名に気を良くしたのか、ご褒美に再び美しき絶景を披露してくる女王様。
美しいが、足下は完全に氷の海。
嫁の心の中をビジュアル化したらきっとこんな世界が広がっている事だろう。
そして北アルプスの山並みをバックに、女王様を激撮する新種の仮面ライダー。
しかし女王様によって、ここまでの急登プレイで飼いならされてしまった彼は「イッー!」と言って従順を示している。
すっかりショッカー戦闘員に成り下がって、女王様の言いなりだ。
こうして元仮面ライダーだったショッカー戦闘員達が、氷の道をさらに進んで行く。
そんな従順なしもべ達に対し、女王様は容赦ない仕打ち。
このナイフリッジのような場所で、猛烈な突風を吹かせて来たのだ。
左から右上にかけて、強烈に雪が舞っているのがお分かりだろうか?
時折耐風姿勢をとりつつ、体を持って行かれない様に慎重に進んで行く。
いよいよ抜き差しならない「雪山やってます感」。
風は強風に変わり、瞬く間にゴーグルも凍って行く。
もはや風の音と、己の喘ぎ声しか耳に入らない厳しい時間帯。
なんという壮大なスケールでの自慰行為なのだろうか。
もはやこのような世界でしか快感を得られなくなってしまった二人。
手を握っただけでコーフンしていたあの頃(夏の低山ハイク)には、もう戻れないのだろうか?
やがてそんな二匹のマゾショッカー達の前に、ついに女王様の頂点が現れた。
いよいよ絶頂まであと少し。
しかし我々のコーフン以上に、女王様の動きが激しくなって来た。
この段階で、この日一番の大烈風が炸裂だ。
雪煙が狂喜乱舞し、乱れに乱れまくる女王様。
そして風速15mのファンタジーの中で、素敵なラスト急登。
一歩登っては一歩止まるの厳しい戦い。
後方ではこれでもかと雪煙のムチ。
必死でパシッ、パシッとムチを振り下ろす女王様と、喜んでそのムチの嵐の中に身を投じる2匹の白豚ショッカーズ。
やがて三人は、ついに絶頂の瞬間を迎えた。
そこには、360℃見渡す限りの絶景が広がっている。
強烈に素晴らしい。
これが冬の女王様からの眺めなのか。
さあ、ラストは女王様と我々白豚ショッカーズの3人で記念撮影だ。
しかしこの強風下で「三脚を立てる」という行為が実に大変な作業。
3,033mという相当な高飛車なこの女は、やはり我々のような下々の者とは一緒に写りたくないのか。
今にもジョンボーAがカメラもろとも吹き飛んで行ってしまいそうだぞ。
それでも何とか三脚を雪にぶっ刺し、大急ぎで女王様の元に駆け寄る。
そして、ついに女王様と奴隷2人による、奇跡のスリーショット撮影達成です。
調子に乗って浮かれまくる奴隷達と、やっと「女」の顔になって素直に我らを受け入れた女王様。
奴隷にだって、その気になれば女王様と戯れる事は可能だったのだ。
白豚ショッカーズたちはガッシリと握手と抱擁を交わし、お互いの健闘を称え合う。
昨日駐車場を出発してから、実に24時間目で辿り着いた歓喜の瞬間だ。
さあ、だからと言ってあまりのんびりもしてられない。
まだ我々は、ここから7時間以上歩いて駐車場まで帰って行かねばならんのだ。
女王様とのアバンチュールもそこそこに、我々はすぐさま下山を開始した。
女王様との別れを惜しみつつ、ホクホク顏で下山を続ける2人。
しかし気の緩む下山にこそ「闇」は潜んでいる。
ほんの出来心だったのだ。
僕は実に軽い気持ちで、ちょっと数mほどシリセードしてみようと思ってしまった。
すると、自分が想定した方向と逆の方向へと滑って行くではないか。
しかも強烈に滑りまくり、一気にスピードアップ。
その光景を見たジョンボーAは口から心臓が飛び出る程ビックリしたらしい。
だってその先は奈落の底ですもの。(写真左側)
猛烈に焦り出した時、露出していた岩に右腿が激突。
かなり痛かったが、そんな事よりちゃんと止まった事への安堵感のが勝っていた。
その時はピッケルではなくポールだったから、本気でヤバかった。
これにて猛烈に反省。
自分が別の立場でそこにいたら、恐らくぶん殴って怒っていただろう。
己のあまちゃんぶりが急に情けなくなってしまって、一気にテンションダウン。
こういう場所で気を抜くとどういう事になるかを勉強させてもらった。
その時の打撲した右腿は、1週間近く経つ今もジンジンと痛んでいる。
そんな姿に女王様も飽きれたのか、一気に天候が暗転。
青空はどす黒い雲で覆われ出し、風も止む気配がない。
そんな時に登場したのが、登りの時に大急登で死にそうになった場所の急降下地獄。
行きは暗かったし登りだったから良かったが、下りとなるととんでもない斜度に感じる。
写真では伝えきれないが、もうビルの5階くらいから飛び降りるような気分。
2,3歩下ってみたが、あまりの恐怖で再び元に戻ってしまったほど。
なんとか後ろ向きで降下をして行くが、さっき死線を覗いてしまった身としては恐怖で体がこわばっている。
そしてなんとか下まで降りきった時は、もうすっかり虫の息。
そこからはもうゾンビのような下山が続く。
樹林帯に入るといよいよ2人の疲労は色濃くなり、何度もグッタリとその場に立ち尽くす。
もう「我々は永遠にこの樹林帯から出られないんじゃないか」と思う程、全く終わる気配がない樹林帯。
その間の写真はほとんど撮っていないが、今思い出しただけでも吐ける自信がある。
やがて、やっっとの事で長衛荘がある北沢峠に到達。
もうすっかり疲労困憊でうなだれる男達。
またいつものヤラセ写真だろうと思われるかもしれないが、これはほぼリアルなこの時の2人の状況でございます。
そして長衛荘でカップラーメンを食べ、その場で死んだ様に仮眠。
山荘のご主人が我々を仮眠中のスタッフと思って起こしに来るハプニングがあったが、きっとそれがなかったらそのままご一泊のコースだっただろう。
そしてグロッキーな体を引きずったまま、昨日散々「もう飽きたよ」と言わしめた川原地獄目指して下山開始。
やはり15分程度の仮眠で体力は回復するはずもなく、激しく足をもつれさせて転倒する38歳。
もちろんこの時、痛めている右腿裏を岩で強打する事も忘れない。
相棒のジョンボーAも「大丈夫ですか」と言う前に、「はい、それ頂きます」と言ってすかさずシャッターを切っていた。
我々はあくまでもザイルパートナーではなく、ただのマゾパートナー。
お互いを助け合える程の余裕は持ち合わせていない。
長い長い下りの樹林帯を抜け、再び長い長い川原の旅へ。
もうこの頃にはすっかりお互いしゃべる事もなく、黙々と己の限界マゾと戦っていた。
そう言えば昨日の登りの時、挨拶しても無言で通り過ぎて行く登山者を見て「男塾だなあ」と思ったものだが、今まさに自分たちがその状態になっている。
これでやっと我々も、南ア男塾の1号生になれたのだろうか?
もうそんな事はどうだっていい。
今はただただこのクソ長い川原地獄から抜け出す事で精一杯だ。
永遠に続く彼らのマゾヒスティック放浪。
もう朝の快晴女王様との戯れなんて、3週間くらい前の出来事にすら思える。
そしてついに、志半ばで過労死に至ってしまった38歳。
もうリアルに立ち上がれない。
彼はジョンボーAに対し、喉元まで「君はまだ若い。私を置いていきなさい。家族の事は頼んだ…。」と言いそうになっていた程だ。
この時点で、朝4時に出発してから11時間の時が経過していた。
しかし最後のマゾ場のくそ力を発動。
2人はフラフラした足取りで、ひたすらに駐車場を目指して奮闘。
先輩マゾの方は、なんと血を吐きながらの行軍。
雪の上に鮮血が舞い、見事な赤いシュプールを南アルプスに刻み付ける。
まさに男塾を見ているかのようなこの鮮血行軍に、さすがのジョンボーAも声が出ない様子。
(注:もちろんこれは、猟師が獲物を担いで行った時の血です)
そして歩く。
まだまだ歩く。
ひたすら歩く。
アホほど歩く。
やがてスタートから12時間目。
戸台の駐車場。
そこには行き倒れた死体が2体転がっていた。
死して屍拾う者無し。
ここは男の道場、南アルプス。
彼らの上にしんしんと雪が降り積もって行く….
遠くにジングルベルの音色が聞こえる…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヘッドラインニュースの時間です。
24日未明、長野県の山中で身元不明の変死体が発見されました。
長野県警から発表された情報によると、一人はセレクトショップ勤務のAさん(35)で、もう一人は著名なマゾピニストのMさん(38)だという事。
2人は「男になる」と言って入山したあと、行方が分からなくなっていました。
しかしこの度地元の猟師さんによって遺体となって発見され、家族の元に無言の帰宅を果たしました。
発見当時まだかろうじて息のあったAさんは、「もうしばらくは山も見たくないです」と語ったと発見者は語っています。
一方、息絶えたMさんが残した最後のメモには「これで大人しく正月を過ごせそうです」と力なく綴られていた模様。
政府では、このような無謀なマゾの入山を規制しようという動きも出始めています。
是非皆さんは安全で計画的な登山を楽しんでください。
では、続いてのニュースです。
ニコニコ動物園で、カピパラの双子の赤ちゃんが生まれました。
クリスマスと言う事もあって、動物園は大変なにぎわいで….
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こうして彼らの戦いは幕を閉じた。
完璧なる2013年のマゾり納めが大成功。
もうしばらくは動けない程にボロボロになる事に成功したのだ。
さすがは南アルプス男塾。
2013年の締めにふさわしい決闘でした。
どうかみなさん。
南アルプスのご利用は計画的に。
南ア男塾 〜完〜
南ア男塾 後編〜白豚ショッカーズの絶頂行軍〜
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いやあ、後半も面白い!
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そんな訳で長衛荘フェイスブックページにシェアさせて頂きます~
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後半まで読んでもらってありがとうございます!
こんな汚い物をシェアまでしてもらって感謝感謝でございます。
この時の旅は本当に印象に残った良い山行でございました。
今後も年末年始は、行ける限りこの男塾にて己を見つめ直そうと思ってます!
またヨロシクお願い致します!