◉日々のツレヅレ

サクラデファミリア〜黒い三連星の襲撃〜

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先週末。

僕は実に楽しみなイベントを二つ予定していた。


土曜日は天気も良いみたいなので、最近目を付けていた山に早朝トレラン。

日曜日は久しぶりにチーム・マサカズのメンバーとの登山を控えていた。


中でもチーム・マサカズの登山は今期初という事もあって、ひときわ僕は力を注いだ。

早い段階でFacebookでメンバーに呼びかけ、山の選定からルートに至るまで練りに練ったプランニング。

白熱した議論は前々日の金曜日まで続き、やっと「養老山」に行くという事が決定。


そこからはアゴ割れMの電車の時間まで調べたりと、水も漏らさぬ綿密なる計画。

そして今回は新メンバーの参入という事や、養老公園の桜も満開近いという事でとても楽しみの多い登山。

さらにはインドア息子りんたろくんが「お山行く。早くおっさんに会いたい。」と言ってくれたのだ。(彼はチーム・マサカズのメンバーの事を総称して「おっさん」と呼ぶ)

これで僕は完全に浮かれてしまっていたのだ。



今思えば簡単な事だったはず。

何度同じ事を繰り返せば気が済むのか?

僕のような男が、浮かれて「登山を楽しもう」なんて思ってしまったのがいけなかった。

マゾ神のお怒りに触れてしまったのだ。



養老山登山決定の3時間後。

唐突に仕事中の僕の所に5人の友人たちが遊びに来た。

彼らの名前は「悪寒さん」と「節々の痛みさん」と「ゲリさん」と「吐き気さん」と「倦怠感さん」。

チーム・五連邪(ゴレンジャー)の皆さんだ。


たちまち僕はガタガタと震え出し、腰の痛みも尋常じゃない状況へ。

もはや椅子にもまともに座ってられなくなり、机に突っ伏しながら片手で一個一個キーボードを打つのがやっとの状態。

しかも最近は定時上がりばっかりだったのに、この日に限って終業時間10分前にデザイン修正案件が大量発生。

雪崩のようにファックスから吐き出されて来た修正原稿を見て、僕はそのまま便所に急行して雪崩のように吐いた。


僕の代わりはいないので、会社の人にお粥を作ってもらってまでして鞭打ってお仕事。

よりによって待ちに待ったプロ野球の開幕日に、テレビ観戦すら出来ない現実が苦しみに彩りを添える。


そして残業により、子供達のお風呂に間に合わない事を電話で嫁に告げる。

明らかにおかしい僕の様子を嫁に気付かれ、僕は大人しくチーム・五連邪にまとわりつかれている事を嫁に報告。

すると「絶対に明日は病院に行け。登山の件も早々に断っておくように」と言われ、早々とワイフストップ。

試しに「病院の結果まで待って、それから登山の事決めてはダメでしょうか?」と問えば、即座に「何考えとんじゃ!殺すよ!死ね!」と言われてしまった。


もはや病気を心配しているのか死んで欲しいのかよく分からない大迫力。

このままでは、病院の結果の前に僕はチーム・五連邪ごと嫁に殺されてしまう。

この体のガタガタした震えは寒気だけが原因ではないようだ。


こうして散々に計画を立てるだけ立てて、男は無念の不参加表明。

一番楽しみにしていた男の悲しき末路。

お膳立てだけして病に倒れ、結果的にただの「世話好きな人」として終わってしまった。


曇り予報だった日曜の天気予報は、曇り後晴れに変更されていた。


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そして土曜日朝。

トイレで放尿中、耐えられずにゲロってしまうほどの惨状。

上と下の夢の競演。

同時放水ウルトラCで、たちまちトイレは大賑わい。

一足早くトイレ内の桜は満開だ。



ヨロヨロと病院へ向かうべく玄関を出ると、そこには突き抜けるような青空が。

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テレビでは人を馬鹿にしたような笑顔のアナウンサーが「本日は絶好のお花見日和でしょう」と言い放つ。

はらわたが煮えくり返る気分だが、ゲリまみれの僕の腹の中はもう煮えくり返るものは何も入っていなかった。


そして病院で見事に「胃腸風邪」と診断された男。

世間の皆様がお花見で優雅な春を満喫している時、僕は孤独に点滴を打ちながら冷たい天井を見つめていた。

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ちょっと楽しもうと思っただけでこの仕打ち。

こうなったら「この天井ですら春を感じてやる」と意気込んでみるが、所詮天井は天井。

目からも点滴の雫がこぼれ出してしまう局面だ。



やがて帰宅。

胃腸風邪でしたと告げた途端、自宅内の一室に隔離されてしまった男。

もはや嫁からの扱いは「菌」そのもの。

当然だが、僕の心配よりも子供に移るかどうかが彼女の唯一の心配ポイント。


こうして晴れ渡るお花見日和の土曜日、僕は薄暗い一室に軟禁された。

たまに携帯のFacebookを見れば、なんとも楽しそうなみんなの行楽写真投稿の数々。

この時ばかりは「いいね!」ボタンの他に、「くやしいね!」ボタンがない事を呪った。



地獄のような療養タイムを満喫していると、菌から逃げるようにみんなが出かけて行った。

そこでモゾモゾとリビングに這い出て、外の事を考えないで良いように光テレビで映画鑑賞。

チョイスしたのは20年前のハリウッド映画「ミスターベースボール」。

僕の大好きな中日ドラゴンズを舞台にした名作だ。

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僕は20年前、実はこの映画のエキストラ出演に応募した過去を持つ。

ナゴヤ球場の観客役として、当時大々的に募集がかかって話題になっていた。

そしてそんな大勢のエキストラにさえ落選した男。

当時から浮かれる程に結果を残せない男だった事を思い出した。


やがてこの映画唯一のセクシーなラブシーンに突入。

そしてそのタイミングでお義父さん達が帰って来るというまさかの展開。

ここで急にチャンネルを変えるのは怪しい。

ただただ早くラブシーンが終わる事だけを心の中で祈り続けた。


しかしあくまで野球の映画なのに、こんな時にやたらとお風呂でチュッチュし始める主人公達。

ご両親からしたら「こいつ、みんながいない間に何観てたんだ?」といった心情だろう。


もうなんだか、風邪とは関係ない妙な汗が体中の毛穴から吹き出す。

さっさとラブシーン終わってくれと祈るが、ここぞとばかりにハリウッドらしい艶かしい演技が濃密に展開。

確実にこの時、僕の病状は悪化した。


なんとか無事にラブシーンが終わって、やっと野球の場面になって一安心。

さあこれから面白い展開になっていくぞ。


しかし突然現れたウルトラマンタロウが大暴れして妨害。

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まるでストーリーが頭に入って来ない。

そればかりか、ヘロヘロの僕に対して本気の怪獣ごっこを挑んで来るタロウ。

すると2階から降りて来た嫁に「なんで部屋出て来たの!りんちゃん、お父さんから離れて!」と一喝される始末。

ただ映画が観たかっただけなのに、どこから歯車が狂ってしまったんだ?


こうして僕は朦朧とした意識のまま、ミスターベースボールを最後まで観る事なく再び「ミスター隔離ボーイ」へと戻った。

そしてゲリゲロ関節痛の地獄の三重奏へ。

長い長い快晴の土曜日は更けて行き、僕は老けて行った。


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日曜日。

チーム・マサカズの登山日。

僕以外のメンバーの数人は予定通り養老山へ行っている。


今回は初参加のKさんがいて、彼は「晴れ男」で名を馳せる人。

鳴り物入りで入団を果たしたゴールデンルーキーで、いよいよこのマゾなチームにも「晴れ男」という明るい材料が入って来たと期待は高まるばかりだ。


しかし今回は僕と並んでチーム随一の悪天候男「アゴ割れM」が参加している。

新規参入の晴れ男 VS イボ流出の悪天候男。


窓の外を見れば、その結果は明らかだった。

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窓から見えるはずの養老山はすっかり雲の中に埋没し、曇り後晴れ予報だったにもかかわらず見事に雨が降っている。

アゴ割れMは十分に僕の穴を埋めてくれたようだ。


たまには他人のマゾをはたから見るというのも良いものだ。

ルーキーの元晴れ男K(仮名)には厳しいマゾの洗礼となっている事だろう。

お花見こそ出来なかったが、今は朝からこうして「おマゾ見」を堪能できている。

チームのメンバーのアツい友情に感謝感謝だ。


おかげで僕も午後からは大分体調が回復し始め、何とか子供達と過ごす事を許された。

正直、苦しい孤独な隔離生活で僕の心は弱っていた。

でもこんな時こそ彼らの笑顔には心底救われる思いです。

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たまにはこうして病に倒れてみるのもいいものだ。

確かに最近のお父さんは生き急ぎすぎていた感がある。

ちょっとは落ち着いて養生するのもアリかもしれない。



多少動けるようになった夕方、改めて本当の花見に出かけました。

まだまだ気持ち悪かったが、病床のみで休日が終わる事はあってはならない。

こーたろくんをご両親に預け、嫁も久々に外出です。

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いつもはお父さんとばっか遊んでるりんたろくんもとても嬉しそうだ。

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ほんと、山や川以外だと良い笑顔するなあこいつ。

僕はと言えば、実はすっかり疲弊して目が開いてません。

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実は屋台の唐揚げなどの匂いに反応し、今にもゲロ吹雪を吐いてしまいそうです。

次第に白目をむく始末。

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肝心の写真はいつも逆光やブレブレなのに、こういうどうでも良い写真は実にキレイに写す嫁のサドモード。


それでもリハビリがてらの桜並木ウォークは実に良い感じです。

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多分元気だったら、このままりんたろくん担いでランニングを開始していただろうから、今日ぐらいの体調がちょうど良かったのかもしれない。

そんな平和な気持ちにサドモードが奇跡の反応。

珍しく嫁が、実に良い感じの写真を切り取ってくれたのだ。

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やはり親子と夫婦が平和な気持ちになってこそのこの1枚。

胃腸風邪で苦しんだが、我々ファミリーの絆は強まったのかもしれないね。


しかし、このりんたろくんが首から下げている「エアマスク」と言われる一品。

これは携帯しているだけで1ヶ月ほどウィルスをガードするというものらしく、嫁がわざわざネットで家族分買ったもの。

そしてこの後、僕はこのエアマスクをズボンのポケットに入れたまま洗濯機に入れてしまうという強烈なミスを犯してしまう。


今更ウイルスブロックもくそも無い程に胃腸風邪に冒されている男。

しかも1ヶ月もつはずのエアマスクをたった1回の使用で洗濯してしまった男。

瞬く間に僕のエアマスクは、このファミリーに訪れた平和までもブロックしてしまった。


嫁が笑ってくれれば救われたが、能面のような無表情で「アホじゃない?」とピシャリ。

すかさず何事もおおごとにしてしまうお義父さんが「変な液が出てるだろうから、洗濯やり直せ!」とお義母さんへ命令。

せっかく洗った洗濯物を、渋々再び洗い出すお義母さん。

この時の僕の針のムシロ感たるや筆舌に尽くしがたし。


嫁に見下され、お義父さんを興奮させ、お義母さんに迷惑をかけるという三段アタック。

まるで黒い三連星のジェットストリームアタックのような破壊力だ。

もちろん、治りかけた僕の風邪が再び悪化した事は言うまでも無い。



週が開けた今も、ウォーキングだけで息が切れまくる程に体力は回復していない。

しばらくは大人しくしている必要があるようです。

もちろん2個目のエアマスクも買って貰えなかったんで、新たな風邪にも気をつけます。


みなさんもマゾり過ぎにはくれぐれも気をつけましょうね。



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