木曽川/岐阜

僕と蝶野とエロ太郎〜そして星になる〜

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雪の伊吹山をバックに水上を漂う親子。

空は一面の曇り空で、非常に寒々しい光景だ。


前日に引き続き、本日も「変なお父さん」に連行されてしまったりんたろくん。

そんなお父さんがチョイスしたのは、季節外れの極寒カヌータイム。

このような「普通のお父さん」では考えつかない愚行に巻込まれるのがりんたろくんの人生。


近場を探検する「りん太の大冒険」日曜日編。

そんな親子の一日を微笑ましく振り返ってみよう。


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カヌーを積んで走り出す

行き先も解らぬまま

暗い朝の曇りの中に

嫁には怒られたくないと

逃げ込んだこの川に

自由になれた気がした

36の朝



僕はもがいていた。

ケンカ中の嫁との仲直りのきっかけが掴めないまま、またしても家出してしまったのだ。

りんたろくんを外で遊ばせて面倒を見るというのも大事な僕の役目。

でも本音を言えば、咳一つで怒られてしまう状態から逃げて来たというのが正解なのかもしれない。


家に居場所が無くなった男。

そんな男の向かう先はやはり「川」が最適だろう。

寒々しい川に身を委ね、もう一度己を見つめ直す必要があるのだ。


「そんな事してないで素直に謝りなよ」と人は言うだろう。

しかし僕は、昨日我が息子に「変なお父さん」と認定された男。

変人には変人なりの反省の仕方というものがあるのだ。


そんなアウトローな父の逞しき姿を、本日も我が息子に示すべく選んだ場所は「ワイルドネイチャープラザ」なる場所。

ワイルドネイチャープラザは国営木曽三川公園の一つで、愛知県稲沢市の木曽川下流域にある公園。

どちらかと言えばカヌーよりもウィンドサーフィンで有名な場所らしい。


本日は事前に天気予報で「晴れ時々曇り」で風も穏やかという情報を得ている。

3時間予報にも晴れマークが踊っていて、時々曇りと言っても昼過ぎの話。

冬と言えどそのように晴れて風もないと来れば、そこそこ楽しめるんではないかと踏んだわけだ。


やがてワイルドネイチャープラザに到着。

ほんとだ、すごくいい天気だ。

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この重々しい空模様は何事か?

「時々曇り」というレベルを遥かに超越した一面の曇り空。

時々晴れる予感すら感じさせない雲の重厚感。

まるで今の我々夫婦を暗示しているかのような嫌みな空だ。


しかし別段落胆はしない。

もはや「晴れ時々曇り」予報で「雨」が降っていない事を不思議に思ってしまうという強い心を僕は持っている。

長い年月をかけてここまで強いハートに育てたのだ。

むしろ天に「ありがとう」と祈らずにはいられない。


そして涙を拭ってから前方を確認。

なんとここからは僕と激闘を繰り広げた、あの雪の「伊吹山」が非常に美しく見えるではないか。

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あの山の三合目付近で流血の死闘(正確にはケツからの吐血)を繰り広げた事を懐かしく思い出しながら眺めた。(参考記事

思えばあの時も前日に「夜泣き時の子供のあやし方の見解の相違」で嫁とケンカした直後だったな。

そんな僕をいつだって優しく包み込んでくれるのは、やっぱり伊吹さんなんだね。


そして駐車場からすぐの位置に砂浜があり、カヌーのエントリーにはこれ以上無い場所だ。

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滔々と流れる「木曽川」と「伊吹山」と「息子」と「カヌー」と「看板」。

この場をわきまえない「看板」さえ無ければかなりいい写真だったのに。


それでも思いのほかないい感じの光景にテンションは上がる。

左を見れば養老山脈、

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正面には伊吹山、

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右を見れば小津三山とりんたろくん。

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頑張って想像力を働かせれば、なんとなくアラスカのコユクック川の風景と似ていなくもない。

中2の頃、薄目でモザイクなぞ吹き消したあの頃の「想像力」を蘇らせるんだ。

気の持ちよう次第で、稲沢市でも何とかアラスカに行った気にならんもんか?

まあ、ならんけども。



りんたろくんもテンションが上がって、岸を走り回って鳥と追いかけっこしてる。

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大分彼も少年らしくなって来たと微笑ましく眺める。

すると彼は無邪気な笑顔でこう言った。

「お父さん、鳥さん殺してヨ」と。

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なんて残酷な発言だ。

こんな表情と発言のギャップは、竹中直人の笑いながら怒る人以来の衝撃だ。

いつもお母さんがお父さんに対して「殺すぞ」と言っているのを聞いて、いつの間にか覚えてしまったのか?

確かにあれはある種SM夫婦のニャンニャンな光景だから、彼の中で「殺す=じゃれ合う」と認識しているのかもしれない。



気を取り直して出発前の記念撮影。

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やはりこの様な風景にはカナディアンカヌーがよく映える。

いつの日かここに嫁とこーたろくんが写る日が来るのだろうか?


背後はまるで湖のような風景だが、木曽川下流域は川幅も広くて流れもほとんどなく、ここからならスタートとゴールを同じ場所に設定出来るのが嬉しい。

近場にこのような湖はないから、この場所は今後も重宝しそうだ。



そしてどんよりとした空模様のもと、いよいよ出発です。

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りんたろくんも、分割予備パドルの「棒」の部分で必死で漕いでくれている。

随分成長したものだ。

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しかし当たり前だが何の戦力にもならない。

むしろ激しく持ち上げるから、筒の中に入った水が全部お父さんのズボンに降り注ぐんだよね。

まだスタートの段階で早くも体を濡らすのは、この寒い季節にはたまらないマゾなんだよ。

りんたろくんなりの親孝行かな?


やがてあっという間にそれに飽きると、彼はいつものスタイルに落ち着いた。

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山では「ぐにゃり」がいつものポーズだが、彼は川では必ず手を水に浸けて物思いに耽る。

毎度無表情で全く楽しそうではないんだが、その表情は毎回とても真剣だ。

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それはまるで、「毒手」でおなじみの男塾三号生・影慶の修行風景のような熱心さと言えば分かり易いだろう。


やがてその厳しい修行を終えると、彼はおっさんみたいな貫禄を身につけた。

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ベテラン漁師が若いもんに対し、海の何たるかを渋く語っているかのような落ち着きっぷり。

3歳にしてこの落ち着きっぷり(テンションの低さ)は中々のものだ。

さては楽しくないのか?


ついには遠くを見つめるようになったりんたろくん。

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彼の視線の先には理想の「普通のお父さん」が思い描かれているのだろうか?

一応試しに「楽しいか?」と聞けば、とても低い声で「楽しい」と言う。


こんな時のために用意して来たアイテムを彼に投入。

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「カヌーに乗ればもれなくお菓子が貰える」という洗脳作戦。

しかし彼は黙々とお菓子を食べ、全く笑顔を見せない。

再度「楽しいか?」と聞けば、さらに低い声で「楽しい」と言う。


そりゃ楽しいはずだ。

名峰伊吹山をこんな風流に眺められる場所はそうは無いのだから。

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きっと彼もこの光景に釘付けになっているに違いない。

興奮して、思わずカヌーから身を乗り出して落ちちゃダメだぞ。

と、思って再度彼の方を見る。

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うわあ、寝ちゃってる。

絶対に楽しんでないなコイツ。

試しに「楽しいか?」と聞けば、声にならない声で「楽しい」と言う。


しょうがない、あんまり引っ張ると突然「カヌー嫌い、お父さん嫌い」と言い出すかもしれないから今日はこの辺にしておくか。

最後は記念の己撮りで締めようか。

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凄くいい絵が撮れたが、裏事情は命がけ。

川の浅瀬に三脚を立ててのインターバル撮影なので、風でカメラが倒れて水没する危険と隣り合わせのハイレベル己撮り。

ゆえに僕の表情がカメラ目線で猛烈に強ばっている。

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平和な静水域ですら勝手に一人マゾプレイを始めたお父さん。


でも何やらここに来てやっと、りんたろくんのテンションが上がって来た。

ついに笑顔で「お父さん、楽しいねえ。キモチいいねえ。」と言って来たのだ。


お父さんは嬉しいぞ。

やっと努力が実ってカヌーの楽しさを解ってくれたんだね。

そしてさらにりんたろくんが眩しい笑顔で言った。

「じゃあ、おウチ帰ろうね」と。



間違いない。

僕は「3歳児に気を使われている」と確信した。




やがてむなしく上陸。

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そしてその瞬間を待っていましたとばかりに、あれほど分厚かった雲が「ぱぁぁぁぁ」と晴れて行った。

なるほどね。

僕待ちだったわけね。



まあでも中々いい所だったな。

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今度はちゃんと暖かい時期にみんなで来てBBQ&カヌーなんて洒落込むのも手かもしれない。

こんな寒い時期に来てマゾる必要なんてなかったんだよね。


なんて思っていたら上には上のマゾ発見。

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黙々と一人で「エスキモーロール」の練習している。

あの人もきっと子供に「変なお父さん」と言われている口だろう。

思わず僕も負けじと「カナディアンカヌーでエスキモーロール」という荒技で対抗しようと思い立ったが、なんとか理性で押し殺す。

そんな事したらただの沈没事件になるだけだ。


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さあここからはこのワイルドネイチャープラザをプラプラと散歩だ。

空はすっかりバカにしたような快晴に包まれているね。

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そして早くも歩く事を拒否したりんたろくんを担がされています。


中々に気持ちのいい散策路。

このようなBBQスポットもあり、家族づれには持って来いの場所なんだろう。

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いつか僕と嫁とりんたろくんとこーたろくんで、ここで笑ってBBQをする日が来るのだろうか?

なんだか最近(というかずっと)僕とりんたろくんのツーショットだから、このブログの読者から父子家庭と思われてないだろうか?


その後も園内を彷徨い続ける子連れ狼。

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カヌーしてる時と同じ日とは思えない程の快晴になってきやがった。

野球のダブルヘッダー初戦に0対1で破れ、2戦目に16対0で勝ったかのような空しさ。

そんなに打てるなら初戦でも打ってくれよという監督の気分。

できれば今は必要以上に晴れないでいただきたい。



そんな僕の気分をよそに、素敵な遊具コーナーが登場。

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もちろんこれにはりんたろくんのテンションがアップ。

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カヌーの上では一切見せなかった眩しすぎる笑顔が飛び出す。

その眩しさがお父さんには、逆にちょっと切ないよ。

やっぱ当たり前だけど、子供には過酷な登山や寒々しいカヌーより陽気な公園だよね。


一人で勝手に遊びまくる息子を眺めながら、お父さんはジッとイスに座って眺めてました。

そんな僕に太陽の光が燦々と降り注いでおりました。

これでもかというほどにね。




すっかり遊具を堪能したので、車まで戻る。

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うわあ、いいお天気だこと。

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こんな天気の日に、ここでカヌー出来たら気持ち良いだろうなあ。

こんな天気の日に、あそこで登山出来たら気持ち良いだろうなあ。

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さあ、そろそろ行こうかりんたろくん。

お父さんはもうこれ以上この風景を直視出来ないみたいだ。

おかしいな。

泣かないって決めたはずなのに。


山も川も目に入らない場所に移動しようぜ。


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ということで、ワイルドネイチャープラザのすぐ近くにこんな場所があったから寄ってみた。

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一体この土日で何件の公園をハシゴしてるんだろうか?

これだけ子供と公園で遊んでれば「良いお父さん」と評価されそうなものだが、いつもそこに無意味な登山やカヌーが挟み込まれてるから、いつまでたっても僕の主婦層からの支持率はアップしない。


そして必然的に二日連続の過ちを犯す親子。

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たちまちケツの痒さに悶絶するが、そろそろそれも癖になりそうだ。


やがてりんたろくんが一人で遊び始める。

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僕は遠くからそれを微笑ましく見守った。

全く人見知りをしない彼は、どんどん適当な子供を掴まえては執拗にウルトラマンタロウの説明をしている。

まるで渋谷で次々と女性を掴まえて「ちょっとした雑誌の撮影だから」と説明をする男のような必死な姿だ。


やがて意気投合したのか、可愛らしい女の子と仲良くなっているではないか。

僕も思わず「おお、いいぞ」と、なんだか甘酸っぱいキモチで息子の勇姿を眺める。


最初は軽い追いかけっこだったが、やがて激しさを増して行く二人。

ついにりんたろくんが彼女を押し倒して強烈に抱きつき始めたではないか。

大人だったら大変な現場だが、お互いに笑ってるからじゃれあっているのだろう。


しかしあんまり激しすぎるから、相手に怪我をさせては大変だ。

僕は二人の元に行こうとした。

すると女の子のお父さんらしき人が先に二人の元に到着。

そのお父さんが「昔やんちゃやってたけど最近はらーめん店の頑固店主やってます」的な風貌のコワモテのおっさん。

なんか蝶野に似ていて、めさめさ怖そうな人じゃない。


そんな蝶野が笑いもせず、腕を組んで愛娘と馬の骨のじゃれあいを眺めている。

何かしやがったらただじゃおかねえぞ的なオーラがひしひしと伝わって来る。


こうして、行くに行けなくなってしまった僕。

ひたすら「頼むからここに帰って来い」というテレパシーを送り続けるが、エロ太郎は目の前の女に夢中で全く周りが見えていない。

くそ、余計な所だけお父さんに似やがって。



手に汗握る攻防戦。

ちょっとしたきっかけで、あっという間に親同士の核戦争に発展しそうな冷戦会場と化した平和な公園。

でもしばらくすると、蝶野が娘を引きはがすようにしてその場から去って行った。


よかった。

これで年末の山崎邦正にならずにすんだぞ。

りんたろくんは懲りもせずに、すでに他の女の子めがけて突進している。

僕はダッシュで彼のもとに駆け寄る。

そして「試合は決しているのに相手にパンチを出し続けるボクサーを制止するレフェリー」のように、僕はりんたろくんの前に割って入る。

そして鼻息の荒い彼を抱え込み、蝶野に見つからないようにすかさずその場からトンズラした。



平和なはずの公園でも地雷は潜んでいる。

久々の命のやり取りだった。

これでしばらくは雪山に行かずとも「ああ、僕は生きている」と感じる事ができそうだ。


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こうして僕と息子の二日間に渡る「近所の大冒険」が終わった。

なんだかんだと、ご近所でも充実した週末を過ごすことが出来た。


しかし冒険はまだ終わらない。

近所よりもさらにご近所の冒険が残っている。

その近所とはもちろん家庭内。

結局嫁との仲直りのきっかけを全く作ることが出来なかった。

この週末は、言い換えれば「嫁から逃げてた二日間」だったとも言える。

りんたろくんにとっては良い迷惑だったかもね。


さあここからは「お父さんの大冒険」のスタート。

ある意味蝶野よりも遥かに破壊力があるラスボスとの対決が待っている。


僕は「平謝り」という名の勇者の剣を握りしめる。

家庭の平和の為に、今こそ必殺の禁断呪文「ドゲザ」を唱える時だ。

息子よ、父の頼もしい姿を目に焼き付けろよ。



そして男は城に突入していった。

待ち受けるは光か闇か?

みんなの元気をオラにわけておくれ。



(※この記事を最後にプログの更新が途絶える可能性があります。そうなった時、夜空を見上げてください。そこには新しい星が光っているかもしれませんね。)



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