木曽川/岐阜

木曽川〜天下一武道会のゆくえ〜

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快晴の空に素敵な渓谷美。

このブログではあまり見ることが出来ないレアな光景だ。


だからといってこの写真はCGで作った合成写真ではない。

天を欺く「敵をだますには味方から」作戦が的中したのだ。



週末、僕は仕事で現場にかり出される予定になっていた。

僕は普段デスクワークだが、人が足りない時だけ現場に登場するレアキャラクター。

会社にとっては、ムラッと来た時だけに都合良く呼ばれてしまう女のような存在だ。


で、僕が週末仕事だと確認した天はガッツリと土日に快晴を持って来た。

いつものように、僕の落胆ぶりを見てほくそ笑むのが狙いだろう。


しかし金曜の夜に突然「お前はいらない」と言われた男。

もちろん会社からだ、嫁からではない。

どうやら人が足りてしまったようだ。


この急展開にはさすがに驚いたが、見事に天も不意をつかれたようだ。

もうこの短時間で雨雲を発生させるのは天にも無理だった。


この「敵をだますには味方から」作戦は、あの富士山以来2回目の発動となった。(参考記事

あの時は登山日を一週間勘違いしていた事もあり壮絶な急展開に巻込まれたが、見事に大快晴をやってのけた。


こうして僕は他力本願の快晴を手に入れ、一路木曽川へと向かった。


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木曽川。

地元の川でありながら、実は僕は初めてこの川を下る。

10数年カヌーをやり各地の川を下った僕が、なぜこの近所の川を一度も下った事がなかったのか?

しかも夏でも鮎釣り師を気にせずに下れる数少ない貴重な川なのにだ。


それはどうやら夏の木曽川は「くさい」と有名だったから。

しかも富士の瀬というハードでロングな難所があるってこと。

この二つの理由が僕を木曽川から遠ざけていた。


しかし「ついに時が来た」と僕は判断。

僕の新相棒「ゴエモン」ことNRSバンディットを手に入れた事で、多少の荒波は越えて行ける。

しかも最近僕の加齢臭がレベルアップし、嫁からも「ドブくさい」と言われる日々。

どうせ臭いなら、いっそ臭い木曽川に潜って「臭いもの同士」トコトン熱く語り合おうと思い立った。


僕と木曽川、どっちがより臭いのか?

真の「岐阜のバクテリアン」を決める天下一武道会が始まった。


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ここに大荷物も持ってとぼとぼと車道を歩く男がいる。

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ついに彼は嫁に家を追い出されてしまったのか?

マスオを引退し、旧姓に戻ってしまったのか?


さにあらず。

今回は川沿いを電車が走っている事もあり、電車での移動を試みたからだ。

ゴールの桃太郎神社に車を停め、カヌー道具一式持って電車でスタート地点へ行くのだ。

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まるで変身前のヒーローの衣装道具一式のようだ。

このまま「アベンジャーズ」の撮影現場に行っても怪しまれないんじゃないか?


それにしても行けども行けども駅に着かない。

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もうかれこれ40分ほど歩き続けている。

僕はカヌーをしに来たのかハイキングしに来たのか?

地図で見た時はそこそこ近いと感じたが、随分と駅まで時間がかかるな。


結局1時間程を費やして鵜沼の駅に到着。

僕は早くもこの過剰な準備運動によって酸っぱい香りに包まれてく。

木曽川と戦う準備は万端だ。


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美濃太田駅で下車。

そこから川までの距離も何気に長かった。

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延々とこの家出スタイルで彷徨い続ける。

やたらと暑いし、この時点で僕はすっかり疲れ果ててしまっていた。

まだカヌーも始まってないというのに、もう十分汗もかいたし帰ろうかななんて弱音も飛び出す。

次回から木曽川の回送方法は再検討の余地があるようだが、マゾ的には最適な方法だったかもしれない。


やがて川へと急降下する階段を発見し、くそ重い荷物を背負って降下。

やっとスタート地点に到達した。

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近所の川なのに、家を出てから実に4時間の時が経過していた。

始まってもいないのに、この僕を包み込んでいる達成感は何事だ。


ああ、なんだか暑いし疲れたし、ゴエモンを膨らますのも面倒だ。

どっかに都合良くこいつを膨らましてくれる人の良い奴はいないものか?

しかもブラジル人みたいに情熱的な半裸の美女とかいないものか?


と、思っていたらそんな奴がいた。

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美女ではなかったが、半裸の自称ブラジル人のおっさんが妖精のように登場した。

しかも喜んで自ら進んで膨らましてくれているではないか。


どうやら近くでBBQに興じていたら、得体の知れない大荷物の男が現れて興味津々で来てしまったらしい。

試しに「膨らましてみます?」って言ってみたらやってくれたってわけ。

言ってみるものだ。


で、漕がせてみた。

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彼はひどく感激していた。

カヌーを膨らませてもらいつつ感謝もされるとは、なんだか凄くいい気分だ。

出来る事なら彼をこのままホイホイカプセルの中に封印して、膨らませる度に呼び出したいものだ。


片言の日本語は話せたので色々話してみると「さっき川に飛行機が落ちた」って言っている。

信じられないことを言っているが、何か日本語を間違えていたのか?

しかし、彼の言っていた事は本当だった。

後に僕はその凄惨な墜落現場に遭遇する事になる。



ひとまず彼に別れを告げて、いよいよ出発だ。

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本流に出ると、やはり水量豊富で流れも早い。

そしてやっぱりちょっと臭い。

その匂いが川からなのか僕からなのかはまだ判断出来ない。


一本目の橋を越えた時、僕の眼前に本当に飛行機が墜落していた。

川猿の僕はバディーのゴエモンと共に急いで人命救助に向かった。

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しかし遠巻きに見て、生存者の安否は絶望的なものだと判断。

二次被害に巻込まれる前に僕は撤退した。


「家出ハイキング」「ブラジル人の急襲」「飛行機墜落事故」

木曽川、中々やる。


この日見た釣り人は2名のみ。

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川幅が広いから全く問題なし。

川が奇麗で臭わなければ最高の川なんだがね。


やがて前方からいよいよ不気味な瀬音が聞こえて来た。

上陸してスカウティングに向かう。

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そこでは随分と騒々しいカーニバルが開催中だった。

そこには生唾もののセクシーな女性ダンサーズがいない代わりに、ゴクリと唾を飲み込んでしまうような恐ろしげなスタンディングウェーブが連続してる。

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写真では全く迫力がないが、強烈なウェーブだけでなく渦巻いてる所やボイルして盛り上がっている所など複雑怪奇なカーニバル。

まさに川の流れの乱交パーティー会場。

ここに飛び込んで行くのは中々に勇気と経験が必要だ。


奥の方では岩に流れがぶちあたって東映みたいになってる箇所もある。

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一体どんな壮絶な映画が始まろうとしているのか?


僕は意を決してそのパーティー会場に突入して行く。

もちろん写真を撮っている場合じゃないからその時の画像はない。

僕はただただ波や渦に翻弄され、無心でもみくちゃにされていく。

恐怖と快感が交錯するロックンロール。


長い瀬の途中で上陸ポイントを見つけて息をつく。

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ずーっと続いて行く複雑な流れ。

写真で伝えられないのが非常に残念だが、長くて結構な恐怖。

でもそれだけに乗り越えた時の快感は素晴らしい。

いつも怖いヤクザな男が、たまに急に優しくなって女をとろけさせる原理と同じだろうか?

そんなヤクザな木曽川にすっかり骨を抜かれて放心状態の男。

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正直のんびりと川を一人で旅するのは大好きだが、この川に関しては友達と来た方がいい。

清純派の女性よりも気性が荒くて少々臭い女性のが好きな奴がいたら、ここに連れて来てやろう。


この連続する瀬を越えると流れは緩やかになり、景色は一気に秘境感が増していよいよ「日本ライン」と呼ばれる区間に突入だ。

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まるで熊野川の瀞峡のような雰囲気だ。

ご近所の川でこのような秘境感が楽しめるとは、あの激流を越えて来た甲斐があったってもんだ。

水がキレイなら言う事はないが、この景色に面して勘弁してやろう。


もう「寝そべって漕がない」という得意の漕法に切り替える。

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こんな時、一人の時間は格別な贅沢時間となる。

ゆーっくり流れながら、日本ラインの奇岩怪石を愛でて行く。


やがてこの様な場所が現れた。

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細い岩の回廊と滝。

冒険心が刺激され、ワクワクとする空間だ。


早速僕は吸い込まれるように滝に向かう。

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暑いから「カヌーに乗りながら滝浴びをする」という一度はやってみたかった事にトライだ。

しかしこの時僕は素晴らしい景色に浮かれていてすっかり忘れていたのだ。

この戦いは真のバクテリアンの称号を掛けた天下一武道会だったことを。


僕は岩にカメラをセットして、意気揚々と滝に向かった。

そして滝に突入した。

すると滝は僕の想像を超える「ぬるさ」で、さらに想像を遥かに超える「臭さ」だった。

そしてあまりの臭さにのけぞってしまった姿が撮影された。

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ぬるさにビックリし、臭さにさらに驚愕するダブルパンチ。

突然過ぎたバクテリアンの奇襲攻撃。

なんだこれ、汚水でも流してんのか?


たちまち全身汚水まみれで汚物と化した男。

完敗だ。

真のバクテリアンの称号は木曽川に譲ろう。


そう思った時、会場の裏で悟空が叫んだ。

「マゾリン、お前は蓄膿症じゃないかー!」


そうだった。

僕は年中鼻が詰まっている蓄膿症野郎だった。

臭うはずないじゃないか。


こうして僕は汚水の匂いと加齢臭の合わせ技で勝利し、真のバクテリアンの称号を手に入れた。


そして岩の回廊を通って僕は武道会会場を後にした。

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男という奴はこのような隙間を通って行く事が好きなのは何故だろう。

なんだかワクワクするんだよね。


そして今、この岐阜県下で最も臭い男が美しき日本ラインを臭気を振りまきながら突っ切って行く。

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ううむ、中々に気分がよろしい。

外見が臭くても中身は美味しいドリアンみたいな川だ。


日本ラインの観光船も復活したみたいで、2隻ほど通って行った。

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乗客も突然岩の間に僕が一人で現れるのでビックリしていた。

彼らには木曽川に暮らす妖精にでも見えたかもしれない。


そしてせっかく夏の川だ。

臭いからと言って潜らないわけにはいかない。

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この場所で潜ってみたが、そこまで酷く汚いわけではない。

しかし潜っていても濁ってて視界はないし、実に楽しくない。

やはりこの川は下る事メインで向きあった方がよさそうね。


ちなみに質問される前に書いておこう。

なぜ一人なのに川でこのような写真が撮れるのか?

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この川は岩壁が多いから、このようなカメラ置き用の岩がうまい事せり出しているんです。

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ここに一眼レフをセットして移動するわけだが、いつ風が吹いて落下するか分からない中でのこの行為は激流よりもスリリングなプレイだ。



やがて日本ラインの区間を抜けると、最大の難所「富士の瀬」が現れる。

当然慎重を期して上陸して入念にスカウティングです。

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瀬の入口からいきなりの激しい落ち込み。

プレイボートのサーフィンスポットとしても有名な富士の瀬だけはある。

その後は水流のセンターが強烈なスタンディングウェーブで連続し、その周囲はまたしても渦やボイルなどの複雑な乱交激流。

しかも長い。

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一発目で沈したら一体どこまで流されてしまうのか?


突入して行く時は、バンジージャンプで飛び立つような気分だった。

出来るだけ激しいスタンディングウェーブを避けようと右にそれようとするんだが、凄い力で押し戻されて中央へ。

横波、返し波など四方から予期せぬ流れが次々現れる。


もう頭は真っ白。

声も出ない。

前から横から大波が襲いかかる。


走馬灯のようにりんたろくんの笑顔の顔が浮かび、続いて嫁の見下した顔が浮かぶ。

しかし相棒ゴエモンが、ご主人様をドザエモンにしてなるものかと張り切って波を砕いて行く。


そしてついに富士の瀬を抜けた。

そして確信する。

この川は一人で来ても何も楽しくないと。


口、ケツの穴、毛穴などの全ての穴から僕のエクトプラズムが流れ出していた。

怖かった。

でも、楽しかったかも。


そして激しい戦いが終わるとゴールはすぐそこ。

放心状態でただ流されて行く。

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嵐の後のこの静寂は最高だ。

ヤクザに散々弄ばれた後の優しいピロートークのような瞬間。

怖いと分かっていても、この瞬間があるからやめられない。


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夢うつつで流されてゴールした僕は、不思議なおとぎの国にたどり着いていた。

そこにはとても可愛らしい猿と犬とキジが僕を待っていた。

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若干猿がラリッてる感じがするがここはどこだ?

傍らにはのぼりの旗が頭にめり込んでいる鬼がいるぞ。

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なんという荒技だろう。


さらに奥に進んでみると前方にピンク色の妙な奴がいるぞ。

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なんだこのおっさんは?

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桃の上に立っているから桃太郎なんだろうが、酔っぱらって上半身裸で万歳三唱する新橋のおっさんに見える。

僕は川を下っていたはずだが、一体ここはどこなんだ?


さらに進むと信じられない生き物がいるぞ。

もはや関節が人間化した犬がこっち見てる。

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僕はひょっとして富士の瀬で死んでしまったんだろうか?

そしてこのような怪奇な地獄に突き落とされたのか?


この奇妙な犬人間の奥にはマゾ的な白豚がいたり、

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やけにスタイリッシュなグリーンの鬼がいたりする。

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シュッとしてセクシーだ。


奥に行けば行くほど手抜きになっていき、入口であれ程リアルだったキジがこんな姿になっていたりする。

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さらに奥には僕みたいな奴もいるぞ。

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なんだここは、僕の心の中の世界を投影しているのか?


そう、実はここは東海地方の人にはお馴染みの「桃太郎神社」。

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以前ご紹介した衝撃的夢のテーマパーク「関ヶ原ウォーランド」と同じ作者の作品が異様に立ち並ぶ、東海地方屈指の怪奇スポットだ。

関ヶ原ウォーランドで、我が息子りんたろくんに強烈なトラウマを植え付けた思い出の作品群が再び現れたのだ。(参考記事


この神社下の桃太郎港が今回のゴール地点。

行かれる方は是非ここに立ち寄って、この苦い気分を堪能して欲しいものだ。


で、今回のログはこんな感じです。


より大きな地図で 木曽川 を表示


まあ、ツーリング志向というより、迫力ある川下りが楽しみたい人向けですね。

ここは単独行よりも何人かでわーわー言いながら下るのがいいかも。

でも本来は仕事の日だったから大満足です。



家に帰ると見事に嫁が「くさっ!」って言って来た。

眉間にナイフでえぐったかのような縦じわを寄せながら。


その後夕方の買い物から帰って来た嫁が僕にプレゼントを買って来てくれました。

誕生日プレゼントも買ってくれなかったのに、突然のサプライズプレゼントです。

中身は「8×4」(エイトフォー)でした。



加齢臭との長い長い戦いはまだ始まったばかりだ。



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