もうすっかり1ヵ月前の出来事だけど、そろそろ書いとかなきゃ。
ってことで、先月6月23日に行われた「木曽川をパックラフトで釣り下る!」というイベントの模様をザクっとお送りして行きます。
主催は毎度お馴染み、サディスティック・アガタ隊長の元気商会さん。
場所は激流で有名な木曽川だけど、今回はその区間じゃなくて夏でも川幅が広く釣り師が少ない中下流域。
普通に下ると退屈気味な区間でも、そこを雑魚釣りに興じながら下ることによって夏でもお得に楽しめるという、パックラフトの新たな可能性を模索しようという実験的なイベントである。
果たして参加者たちは爆釣&爆笑のツアーを楽しめたのか?
それとも隊長のサド心を満足させるだけのマゾ行脚となったのか?
もはやダウンリバー会場なのか、コスプレ会場なのか、はたまたSM会場なのかよく分からなくなった「木曽川ダウンリバーフィッシング」の模様を厳かに振り返っていこう。
第1章 進撃のアメリカンポリス
僕はまだ夢を見ているのだろうか?
何度か目をこすり、ほっぺをつねってみる。
しかし目の前の現状は変わらない。
なんと空が雲ひとつない大快晴なのである。
雄々しくそびえる国宝・犬山城と、それを鏡面のように映し出す木曽川の水面。
僕ははやる気持ちが抑えられず、待ち合わせ場所に一番乗りして皆の合流を待った。
その時である。
その犬山城をバックに、とある二人の異様な男たちが歩いてくる姿が目に入った。
僕は再び何度も目をこすってはほっぺたをつねってみる。
やはり僕はまだ夢を見てるのだろうか?
どうしても目の前の状況が理解できない。
僕はできるだけ彼らと目を合わせないようにした。
しかし奴らは迷いのない足取りで僕の方ににじり寄ってくる。
僕は今日「パックラフトで釣りをしようぜ」という参加者を待っていたはずだった。
じゃあこのバドワイザー持ってるアメリカンポリス野郎は一体何者なのか?
よくよく見ると、彼は毎度お馴染みの「鯉さん」だった。
そう、かつてカンムギの神崎地方を恐怖のどん底に陥れた、あのマッカーサー元帥がパワーアップして帰って来たのである。
そしてそのアメポリ野郎に職務質問を受けてるかのようなフグ野郎は、鯉さんのシーカヤックパートナーである「荒くれ太鼓Tさん」だ。
荒くれ太鼓Tさんは普段は温厚だが、和太鼓を叩く時と鍋を作る時だけ突然荒くれる男として著名な方。
以前僕が殺されかけた和歌山の海での「荒くれ白菜もぎり」の勇姿は未だ記憶に新しいところだ。
この突然の濃厚な二人の不審者に対し、関西慣れしてない犬山市民たちは動揺を隠しきれない様子だ。
そうこうしてると、ようやくまともな参加者たちが続々と到着。
はるばる東京から木曽駒ケ岳経由で来た渡辺いっけい似のイッケーTさんが合流。
そして前回の伊豆の狩野川のイベント時に、いきなり川に突き落とされた「ボッシュートS」と、その友人の「ヒャダインT」の若手二人組。
そしてアガタ隊長、そのJET仲間の「洞窟特攻Oさん」と釣り仲間の「テンチョーT」、そしてテスリンYさんも合流。
こうして総勢10名のパックフィッシャーたちが集結。
多少変な人は混じってるが、いざ、ダウンリバーフィッシングに向けて移動開始である。
第2章 獅子との遭遇
葉巻をくわえるポリスの誘導で、次々と川へと下降していく参加者たち。
こういう時、相変わらずリーダーのアガタ隊長は参加者を一切待つことなくどんどんと先に行ってしまう。
その後を慌てて追いかける参加者たち。
アガタツアーズは、基本的に参加者たちを甘やかさない。
なぜならこのツアー会社は、参加者たちがマゾって「ひいいい」って言ってるのをアガタ隊長が見て楽しむのがメイン目的だからである。
やがてスタートの川原に着くと、何とそこには「猛獣」が待ち構えていた。
そう、木曽川流域に時折現れる百獣の王「木曽ライオン」が襲いかかって来たのである!
このままでは隊長が食われてしまう。
僕は「け、警察を!警察を呼べ!」と叫ぶ。
すると背後から「ミーに任せな!」と颯爽と飛び出したのはアメリカンポリス。
彼はすかさずその荒ぶる獅子を抑え込み、「どう!どう、どう」と手懐けてしまったのである。
危うく大惨事になるところだったが、偶然そこに居合わせたポリスのおかげで事なきを得た参加者たち。
しかし川原の危険は何も獅子だけではない。
ここで僕に襲いかかって来たのは「パックラフトを膨らませてた下に偶然あった犬のフン」である。
広い川原で、偶然その一点でパックラフトを膨らませていたという奇跡。
木曽ライオンといい、フントラップといい、川原には危険がいっぱいなのである。
第3章 荒くれパックチェイス
数々の困難を乗り越え、ようやくダウンリバースタート。
空は快晴、風も穏やか。
前回の狩野川の時もこんな感じのスタートだったが、あの時は急に天気が崩れて寒波も襲来し、土砂降りの中で一夜を過ごしてからの爆風撤退というまさかだった。
今回はそんな予感は一切せず、気持ちいいダウンリバーと爆釣の予感でワクワクのスタートである。
しかも今回は警察の方が常に僕らを見守ってくれてるので安心感が違う。
彼は「違法な釣りしてる奴見つけたら、ことごとくアルカトラズに送り込んでやるぜ!」と気合い満点だ。
というかあんな綿バリバリの服着てるけど、濡れたらあっという間に低体温症まっしぐらではないのだろうか?
まあその辺はアメリカ人だから寒さには強いんだろう。
スタート直後は穏やかな感じで、各々がのんびりと流れていく。
荒くれ太鼓Tさんも、僕の穴の空いたフニャチンラフト(ED号)をレンタルした事で徐々に沈みながらもとても楽しそう。
しかしその姿があまりにも不審だったのか。突然背後から「おいそこのフグ、止まりなさい!」と警告。
すかさず逃げるフグ。それを追うポリス。
という茶番の後は、いよいよ川原に上陸して釣りのスタート。
某有名釣具屋に勤めて店長まで経験しながら「店長だと忙しくて釣りに行けねえ!」と自ら降格を申し出たという釣りキチ、テンチョーTさんも気合い十分。
僕も早速釣りたいところだが、今回はテスト的に「餌は全て現地調達」というスタイルに挑戦。
餌も調達したし、さあ釣るぞ!と気合い入れると、遠くの方から「プシュッ」という音が聞こえた。
何と本来の「釣り」という目的を根本から否定する「趣旨見誤り隊」の宴会がスタートしているのである。
ポリスも「ユーコンさん、生ハム食います?」と誘ってきて、せっかくの釣りへの闘志が一気に寸断。
ポリスとアガタ隊長に至っては、「お前も色々辛かったんやろ?まあ一服しぃや。」「へい。もう二度と食い逃げなんてしません。」といった感じですっかり腰を落ち着かせてしまっている始末。
ここですっかり談笑して全然釣りを始めない「趣旨見誤り隊」の4名。
しかし流石にこれじゃ何しに来たのかわからんのでいよいよ釣りスタート。
するといきなり我がキショ餌にフィッシュオン!
出だし好調で「こりゃあ今日は一体何匹釣れちまうんだ?」とウハウハに。
しかしそこからパタリと釣れる気配はなくなった。
そこで1時間半ほど粘るが、アガタ隊長とテンチョーTさんが小鮎を数匹釣っただけで誰も釣れない。
先に言ってしまうが、本日の釣果は僕はこのミニミニオイカワ1匹で、他の参加者は全員がことごとくボウズ。
ここから先はただただ長い不毛な戦いの始まりなのである。
第4章 アガタズブートキャンプ
中途半端に僕がオイカワを1匹釣って浮かれてしまったのがいけなかったのか。
スタート時はあれほど快晴だった空は、あっという間に重い雲に覆われてしまったではないか。
どんよりとした空、そして全然釣れなかったことでどんよりとする参加者たち。
しかもここで「意欲的に次の釣り場に向かう組」と「ゆっくり昼飯食ってから出発する組(堕落組)」の二班に別れたのがいけなかった。
もちろん堕落組を率いるのは僕。
おかげで川が二股に分かれる場所で違うルートをチョイスしてしまい、見事に皆とはぐれてしまうという大失態。
のんびり飯食ってたせいで、すっかり皆からはぐれて焦る4人。
しかもこの頃から逆風が吹き荒れ始め、空はどんよりだわ釣れねえわ風つらいわ皆とはぐれるわで厭戦ムードが蔓延。
さらにアガタツアーズが設定したコースがかなりのロングコースで、そこを釣りしながら下るってことで時間がどんどん押して来ていた。
そこからはもう必死のパドリングで、何とか皆に追いつこうと盛り漕ぎで頑張る堕落組メンバー。
ここでようやくボッシュートSとテンチョーTさんに追いついた。
しかし周りを見渡すと他に誰もいない。
そう、アガタツアーズは「遅れた者は置いていく」という男塾スタイル。
今回は初心者対象ツアーじゃないから、余計サディスティック・アガタ隊長のサド心に火がついてしまっている模様。
当然アガタ隊長は遥か遥か先をぶっちぎっているのである。
釣りは得意でもここまでのロングパックラフトが初のテンチョーTさんも、何度も乗り沈をかますほど足腰がガクガクになっている。
それでも何とか皆に合流。
お昼に別れてから実に3時間ぶりの再会で、同じツアーなのに思わず「お久しぶりです」とか「ご無沙汰してます」という声がそこかしこで聞こえたほどだ。
快晴の中スタートしたのが朝の9時。
そしてこの時点で既に夕方の16時。
一体何時間漕いでるんだ?
ゴールまでまだまだ距離があったので、流石にここでツアー中止かと思ったが、そんなことは我らがYES!サディスティック・アガタクリニックが許さない。
僕は必死で「もうここで上陸しましょう」と目で訴えるが、その思いは軽くいなされてツアー再開。
もう本来の「優雅に釣りしながら…」という趣旨から大幅に踏み外している参加者たち。
扇風機の「強」くらいの逆風が吹き続ける中、ただただ歯を食いしばり、黙々とゴールを目指すアガタズブートキャンプの生徒たち。
やがて途中の橋の下に上陸。
この頃には寒波と風も勢いを増しており、ついに「全身綿生地男」が人生初のマジで低体温症5秒前の状態に。
寒がりの僕もこの頃には「これじゃ狩野川の時と一緒じゃないか…」と呟きながら、すっかり寒さでガタガタと震えていた。
そんなギリギリの我々に対し、アガタ隊長は信じられない一言を言った。
「さあ!ここでもうひと釣り頑張りますか!」と。
我々が参加したのは「パックフィッシング」ではなく、さては「人生フィニッシング」だったんだろうか?
体力、寒さともに限界の中での謎の釣り修行。
もう魚なんて正直どうでもいい。
寒風によってみるみる体温は奪われ、僕はパックラフトを膨らませる用の袋で何とか寒さをしのぐ。
もう釣れなくてもいいから、とにかくこの寒さから解放されたい。
やがて僕はもう釣ってるどころじゃなくなり、エマージェンシーシートをかぶった要救助者状態に。
過酷なり、アガタズブートキャンプ。
決して痩せることはないが、「限界の一歩先の自分」に出会える素敵なキャンプである。
第5章 弾けるコーク
スタートから実に8時間。
既に17時を回っているというのに、我々は未だ漂流の中にその身を置いていた。
そもそも日帰りツアーは、個人的には快適ラインは7〜8kmくらいが妥当だと思っている。
それが途中で釣りをするんだから、6kmくらいで十分だ。
しかしこの日はここまでで実にその3倍に当たる「18km」というワンパクさ。
もちろん後半は川幅も人がって流れもなくなり、その上逆風だから「これ後退してねえか?」という一進二退さ。
それでもただただ黙々と漕ぎ続ける参加者たち。
この時点で僕は激しく右肩を痛めており、何やら四十肩が復活してしまったような不穏な気配。
それでも根性で何とかゴール地点へ。
皆諸葛孔明の奇襲にあったかのように這々の体でゴールする。
そしてここでこれまでの鬱憤が爆発したのか、突然イッケーTが「イイェええええ!」と狂って、一人コーラファイトを炸裂させたのである。
周囲の人はせっかく洗ったパックラフトがコーラまみれになって「うああああ!やめてえ!」と混乱。
いよいよ錯乱者を輩出してしまったアガタツアーズ。
もう誰も当初の予定だった「フィッシング」のことを考えてる余裕のある者はいない。
まあ釣れなくたっていいじゃない。
その代わり、上腕二頭筋に良い筋肉がついたことの方を喜ぼうじゃないか。
こうして9時スタートのツアーが18時に終わるという、長い長い拷問のお時間が終了したのである。
そしてここからもとにかく長かった。
歩いて笠松競馬場の駅まで行き、そっから一旦岐阜駅に出て、そこからさらに延々と犬山遊園駅まで。
で、そっからはまた徒歩で駐車場まで行くという、追いの1時間が地味にきつかった。
実にハードなツアーだった。
今思えば、その辺の川原で最初からずっと釣ってたほうがよっぽど釣果があったんじゃねえのか…?なんて思ってしまうが。無駄にパックラフトでロングに漕いだことに意味がある。
釣れたかどうかは重要じゃない。
そこにロマンがあったかどうかが大切なのである。
果たして次回遠征ツアーはどうなってくんでしょう。
二回やってわかったことは、スタートで晴れてても油断はするなってのと、アガタ隊長のペースに合わせてはいけないってことだけである。
さあ、次回はどこでやりましょうかね。
一度は本場の熊野方面でTHE川旅ってのもやってみたいし、秋は紅葉の天竜川あたりでもいいねえ。
次回パックラフトツアー、ご期待ください!(期待できるこれ?)
※今回使用したウェア&ギア一覧は次のページへ
今回もお疲れ様でした。
記事楽しみにしていました。
相変わらず壮絶なツアーですね。
いつか道具も揃えて、参加したいなと考えつつ、
いろんな意味でハードルが高いなと思いながら
読んでいました。
いつか、是非ご一緒することを夢見ております。
いやあ、ようやく書けました。
これ書くまで色々と忘れてましたが、書きながらふつふつと当時のしんどさが蘇ってきましたよ。
なんなんでしょう?なぜ毎回こうなってしまうんでしょう?
いや、ほんとの初心者用ツアーはこんな過酷じゃないっすよ!
なんかパックラフトを普及させるつもりが、逆効果になってる感が…
ハードルは低いです!今回は..今回もたまたまっす!
ぜひまずはほんとに軽ーいやつからご参加してくださいませー。
こんにちは!
パックラフト欲しくてたまらないんですがどこで乗るのか…子供とキャンプしつつならダッキーの安いようなのがいいのでは…なんて思いながらいつも記事見てます笑
木曽川でも意外と乗れるもんですね。
ノルティック気になりますが元気商会さんは土日突然伺っても現物見せていただけるんでしょうか。
装備揃えたら(初心者用から)イベント参加したいっす!
こんにちは!
やっぱりMYZ505さんのように、パックラフトに興味あれどなかなかどうして良いか分からない方はきっと多いんでしょうね。
木曽川や長良川って激流のイメージあるけど、穏やかな中下流域なら初心者でものんびり漕げたりするもんですよ。
とはいえやっぱ色々不安はあると思うんで、なんとかそういった人向けの体験イベント出来ないか今色々と模索中です。
元気商会さんは事前に連絡して、縣さんの都合が合えば大丈夫だと思いますよ。
兎にも角にもぜひ一度体験してもらいたいっす。湖もいいですが、やはり川を流れていく爽快感を味わってほしいですね。
そういうイベントやった時はぜひぜひご参加くださいませ!