前日と打って変わって、実にほのぼのとしたスクータートリップが続く。
この「屋久島一周」というものがメインイベントではなく、あくまで「予備日のついで」でやってる事だからとても余裕のある気分のいい旅になっている。
普段の生活でも目の前のものにガムシャラになりすぎて自分を見失うよりも、「生きてるついで」って腹づもりで余裕を持って行動したいものだ。
なんて事をこれ書いてて思い出しました。
でもあんまりケセラセラ的な生き方してると、嫁に「お前のそういう所が嫌いなんだ、この豚野郎」って言われるから注意が必要だ。
旅に比べたら、人生とは実に難しいものだ。
まあ、それでもなるようなるさ。
それでは話を戻して、屋久島一周野郎の後編です。
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永田川を堪能した所で腹も減ったので、通りすがりのメシ屋へ。
どうにも普通の民家のように見えるが、メシが食えそうな場所はここしかなかった。
しかしここのメシがスペシャルヒット。
中でも「でんぷん団子」なる郷土料理が甘辛つるり食感で最高にウマかった。
ふらりと訪れた店がウマいと、何だか人生得した気分だ。
この「じゃらん亭」はおばさんが一人で切り盛りしていて、とてもフレンドリー。
しばし談笑し、さらに屋久島の深部に浸れた気分。
屋久島に行かれる方にはおすすめだが、この店を見つけられるかどうかはあなた次第。
腹も満たされて、さらに進んで行く。
雰囲気のよろしい屋久島灯台を横目で見つつ、
道は「西部林道」に吸い込まれて行く。
この「西部林道」は、世界遺産登録指定地内の原生林を抜けて行く珍しい林道。
今にも道が大爆発しそうなネーミングの林道だが、ここには石原軍団はいない。
しかし、石原軍団の代わりに野生の軍団が続々と現れる。
まずはバンビ刑事が何度も僕の行く手を阻む。
普通に道の真ん中にヤンキーみたいにたむろしているから、あまりスピードを出すと追突しそうになる。
ゆっくり進んで行くと、モンキー刑事が殉職してるかと思ってビクッとする。
車にでも轢かれたかと思ってよく見ると、ただの毛繕い中。
紛らわしい猿芝居に勝手にビックリする男。
その後もバンビ刑事とモンキー刑事が交互に、そして大量に現れては僕を威嚇する。
谷底とか見ると、恐怖を覚えてしまうくらいの猿の軍団がいたりする。
この林道は圧倒的な鹿と猿の世界。
リアルな猿の惑星を体感することが出来る。
西部林道を抜けると、僕が昨日屋久島横断でゴールした近辺まで出て来た。
そして本来は横断後に訪れる予定だった「大川の滝」を目指す。
昨日の僕はほぼ「死体」の状態だったから、無念にも行けなかった滝だ。
やがて「大川の滝」が現れた。
すごくデカくてパワフルな滝だ。
写真ではそのスケール感が伝わらないが、この滝かなりデカい。
なんとかこのスケール感を伝えるべく、僕を入れて撮影しよう。
僕は一眼レフカメラを持っていた一番撮影が上手そうなおっさんを探し出し、撮影を依頼した。
宮之浦岳山頂では人選ミスで僕が真っ黒に映ってしまったから、今回は慎重に人を選んだのだ。
そして撮影された写真がこれだ。
何だこれは?ドッペルゲンガーか?
またしても人選ミスにより僕は真っ黒に映ってしまった。
やはり僕はセルフタイマーしか信用できない。
その後、僕はあの感動の「栄光の黄金水」を堪能した栗生の町に到達。
改めて見ると、この栗生川もカヌーにもってこいの美しい川だ。
実際ツアーもやっているらしく、二度目の屋久島はカヌー三昧になる事間違いなしだな。
昨日は死んでいたから、やっと本日この集落でのんびりできる。
のどかな小学校に侵入。
校庭で遊ぶ地元の子供達を眺めながらぼんやり。
なんか凄く旅してるって感じ。
見方を変えればただの小学生を覗く変態オヤジになってしまうが、あくまでも気分は寅さんだ。
観光地だけ見て帰って行くのは粋じゃない。
こうした「地元の生活臭」を感じて初めて見えて来るもんがあるんだよ。
分かるかい?さくら。
その後も栗生の集落をプラプラ。
で、その先の牧場まで行ってボケー。
贅沢、ここに極まれりだね。
頭空っぽで何も考えなくていい、素敵な屋久島タイム。
金もかからん、時間も気にしない、人もいない、ただなんとなくな時間。
どう考えても人でごった返す観光地よりも良いと思うんだが。
なぜみんな来ないんだろう?
縄文杉だけ見て帰るなんてもったいないですよ。
汗もかいて来たので、ひとっ風呂浴びようと「湯泊温泉」と書いてあった方へ向かう。
協力金100円を箱に入れて突入。
ううむ、抜群のロケーション。
実はここで、ここからさらに奥へ行く細い道を発見。
誰もいないから素っ裸でワイルドに岩場を移動して行くフルチン男。
その奥にあったのは、最強の露天風呂の姿だった。
最高だ、幸せすぎる。
あの四日間の壮絶な疲労が癒されて行く。
温泉ってやつは効能がどうのとかは関係ない。
ワイルドなロケーションであればあるほど僕は癒されていく。
ただし特質すべきはこの入浴シーンはもちろんセルフタイマー。
全裸で浴槽とカメラを往復するその男の姿が、ある意味一番ワイルドなロケーションだ。
そして温泉ハシゴ。
続いて「平内海中温泉」へ向かう。
ここは干潮前後約2時間のみ入れる有名な温泉。
時間もジャストタイムだ。
この素晴らしきロケーションを撮影しようと思ったら、風呂に入っていたおっさんに激しく叱られた。
この年になって大人の人に怒鳴られるのはとっても切なくて惨めで恥ずかしい。
それでもそのまま気まずい雰囲気の中で入浴。
ロケーションは上々だったが、僕のテンションは下々だった。
さあ、屋久島一周もそろそろ大詰めだ。
一度大きく海沿いの道から外れて、山へ山へ。
やがて出て来ました「千尋の滝」。
壮大の一言。
荒々しさの中に、どこか人工的な感じすらする不思議な光景。
さっきの温泉ですっかりへこんでいたテンションも復活して来たぞ。
でも喜んでばかりいられない。
実はレンタルスクーターの返却時間が迫って来ていた。
間違いなく僕は各所でのんびりしすぎてしまったようだ。
あれほど「屋久島タイム万歳」とのんびりを謳歌していた男は、たちまち時間に追われる事になる。
返却時間に遅れると、1泊料金になってしまう。
そこからは弾丸スクーター。
フルスロットルで屋久島を駆け抜ける暴走ライダー。
慣れてないからか、ゴーグル着けると見にくくなるから裸眼でラン。
風がモロに目に入って来て、大人のビデオを見る中学生のように目を細めながらの思春期ライド。
Tシャツで激しく風を浴び続けて風邪も引きそうだ。
やはり結局最後はこうなってしまうのか。
やがて返却タイム15分オーバーでスクーターを返却。
まだ係の人がいたから、ギリギリ1日料金で良しとしてくれた。
本日も限界まで遊び尽くしたぞ。
こうして僕は屋久島横断に続き、屋久島一周も完成させた。
この五日間でこれでもかと屋久島を堪能した気がするよ。
その日はさすがにテント泊ではなく、ゲストハウスに止まる事にした。
バックパッカーの宿として知名度の高い「晴耕雨読」さんだ。
素泊まり1泊3500円。
3000円以上の宿には泊まらないがモットーの僕だが、久しぶりに布団で寝たかったんです。
宿には年齢もバラバラな一人旅の男女が集う。
もう自然の流れで仲良くなり、共に飯を作り酒を浴びるように飲んだ。
そこには僕が一周野郎の前半でみたビーチのカップルもいた。
正式にはこの宿で知り合って、レンタカーをシェアして遊びに行っていたらしい。
何の事はない、僕が嫉妬していたあのカップルも一人旅の奴らだったんだ。
意気投合した僕らはそのまま近所の居酒屋に行って、そこでも酒酒酒。
ぐでぐでの千鳥足で宿に帰って来て、再び酒。
最高のひと時。
本日も完璧な一日だった。
何も予定がなかった予備日にしては濃すぎる内容だ。
屋久島は良いね。
なんだか良いね。
理屈抜きで良い島旅でした。
こうして男は酩酊状態のまま、気を失うようにして就寝。
屋久島の最後の夜がふけて行った。
〜屋久島横断野郎 エピローグへ つづく〜
屋久島横断野郎6〜叱られ太郎と猿の惑星〜
- 屋久島横断野郎/鹿児島
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