春うららかな平日。
満開だった桜もそろそろ散り始める頃。
僕はいつものように仕事をしていた。
携帯に取引先の人から着信。
僕はパソコン脇で充電中だったiPhoneを手に取る。
その時、僕の手に予想だにしない感覚がほとばしった。
ふいに熱湯に手を入れてしまったかのような火傷感。
あまりの衝撃に我を失う僕。
なんと、我がiPhoneが強烈な熱を帯びているじゃないか。
まさか電話をかけてきた取引先の人がもの凄く怒っているのか?
ついに相手の感情までもiPhone本体で表現出来る時代になったのか?
手が火傷しそうなほどに熱いが、電話に出る。
熱さを我慢しながらなので「ハァハァ」と吐息が漏れてしまう。
変な噂が立たなければ良いが。
無事に電話を終えて、iPhoneの本体チェック。
充電中だったバッテリーケースのコネクト部分が凄い熱でひん曲がって周辺にもヒビが入ってるじゃないの。
なんてことだ。
このバッテリーケースは半月前に届いたばかりの新品。
例の「香港からの遅れてきた刺客」のケースだ。(参考記事)
「養老の悲劇」に始まった、僕の割れたiPhoneとの長い攻防戦。
もうこの話は終焉を迎えたとばかり思っていたのに。
注文から1ヶ月半待たされ、やっと届いたと思ったら半月でご臨終の時を迎えた。
なんという儚さだ。
今まさに散り始めようとしている、美しい桜みたいな儚さとはまるで別物。
この空しい喪失感といったらどうだ。
安いから、ある程度覚悟はしていたがまさか半月とは。
さすがは本場中国の逸品だ。
しかもこいつ充電する時間が2倍くらい時間かかったから、ハッキリ言ってまるで意味のないケースだった。
恐らく電圧かなんかの問題なんだろうけど。
さすがは香港からの刺客。
凄い威力だったぜ。
油断させてからの自爆テロとは。
こうして僕があれ程自慢げに記事を書いたバッテリーケースは、ただの「重くて分厚いケース」へと画期的な変貌を遂げた。
春うららかな平日。
満開だった桜もそろそろ散り始める頃。
男は窓の外の桜をただ静かに眺めた。
手の甲に落ちたものは桜の花びらか。
それとも男の涙なのか。
火傷した手のひらだけが、じんじんと春の終わりを感じていた。
春に想ふ〜ある刺客の死〜
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MATATABI BASE
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