和知野川/長野

闇の魔物と野宿野郎〜和知野川〜

DSC03729.jpg

これからのカヌーシーズンに向けて、久しぶりに過去の川旅記事を書いておくか。

今回はちょっと軽く、長野のマニアックリバーをお一つご紹介。

マニアの間で、密かな清流として愛されている川だ。

長野って言っても、愛知と静岡の県境くらいの天竜川の支流。

時は2005年の3月。

久々の「あん時のアイツ」シリーズ第16弾は「和知野川」(わちのがわ)です。



そもそもこの和知野川。

一昔前までは、カヌーフィールドとしてはほとんど認知されていなかったマニアックな川だ。

しかし数年前、これまたマニアックな雑誌「カヌーライフ」にて紹介された事がきっかけで、少数のマニアの間で静かに注目を浴びた。


そしてマニアックな僕も、そのマニアックな記事を見て、噂のマニアックな和知野川へ向かった。

しかもマニアックついでにあえて3月のクソ寒い日を選んでの、まさかのマニアックな寒中テント泊を敢行。


まだ登山どころか雪山登山に全く出会ってない頃だから、春が待ちきれなくて行っちゃたんだね。

3月ともなれば、とにかく「早く川を下りたい」「早く野宿したい」の欲求が膨らむ季節。

もうちょっと暖かくなってから行けば良かったのに。

当時からやっぱり馬鹿な男だ。


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確か、週末の仕事を終えてそのまま移動したのかな?

冬期で無人の和知野川キャンプ場にてロンリー野宿。

当たり前だが、ハンパなく寒かった事を記憶している。

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山深い山中にての一人きりのテント泊。

今まで一人野宿なんて何度もしてきたが、何やらここは少々雰囲気が違っていた。

とにかく闇が濃い。

めちゃめちゃ怖かったのだ。


ヒンヤリしすぎていた事と、だだっ広い場所にポツンとテントを張った事もあり、グングン上昇する僕の恐怖。

一度そう感じてしまうと、嫌な想像だけが膨らんで行く。


実はこの時、携帯でこの焚き火を撮影した。

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この写真はデジカメで撮影した別のものだが、携帯で撮った写真の方には嫌なものが写っていた。

ただの炎の揺らめきなんだけど、どうもそれが見れば見るほど「人の顔」に見えてしまった。

そんなものを、この「現場」で見てしまったのだ。


もうこうなったら、人は「恐怖」という魔物にあっという間に主導権を握られて、恐ろしい想像の世界へと引きずり込まれる。

僕は背後の暗闇の世界に激しく「何かの気配」を勝手にビンビン感じまくる。

ちょっとした音にも敏感に反応し、体中はさぶイボだらけだ。


なぜ、こんな時期にこんな場所で野宿する道を選んでしまったのか?

ただただ恐怖と後悔にまみれる男。


頑張ってテントの中で眠ろうとするんだけど、恐怖とあまりの寒さでとても眠れない。

次第に足先の感覚も厳しくなって来る。

この体の激しい震えは寒さからなのか、何か別の現象によるものなのか。

多分このまま眠れたとしても、そのまま凍死(もしくは変死)して二度と目覚めない気がした。



結局僕はその場から逃げ出した。

テント等も置き去りにして、着の身着のままで車で逃げた。

逃げてる時も、背後から何かが追って来る気配を勝手にビンビン感じていた。

非常に情けない話だが、あのままあそこに居続ける事なんて出来なかった。


僕は車の暖房をがんがんにして、遠くのサークルKへ避難。

大自然が好きな僕も、この時ばかりは人がいる事と文明の喜びを噛み締めた。

アツアツのおでんを食って体温の回復を図った。

アツアツの後悔の味がしたのを今でも鮮明に記憶している。


結局この日は、街灯があった場所で車の暖房をかけながら車中泊した。


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恐怖の一夜が明け、キャンプ場に戻る。

昨日は真っ暗だったから分かんなかったけど、こんな場所でテント張ってたんだね。

DSC02611.jpg

今後は真っ暗でだだっ広くてクソ寒い所では野宿しないでおこう。

というか、大人しく家で寝て早朝に出てこれば良かった話だ。

どんだけ春が待ち遠しかったんだ、この男は。



ここで当時の僕のスペシャルアイテムをご紹介しておこう。

それはこの「折りたたみ式電動自転車」だ。

DSC02609.jpg

当時楽天で、怪しげな大阪の業者から4万円ほどで手に入れた代物。

もちろん、僕の大好きなチャイナ製。

充電したバッテリーを搭載すると、原付のように走って行くっていうもんだ。


当時、単独行でのカヌーの回送問題で頭を悩ましていた僕が辿り着いた答えがこれだった。

上流にカヌーを置いて、車でゴールに移動し、コイツでスタートまで行って、ツーリングが終わったら車で回収するって寸法。

今では僕は普通にMTBをその手段として使っているんだけど、当時はとにかく「楽」することしか考えていなかったから、こんなものに手を出してしまったのだ。


我ながらナイスアイデアだと思っていたが、その後1年と経たずにぶっ壊れた。

結局4回くらいしか実戦で使用しなかった。

こんな事なら、タクシー使った方がよっぽど安上がりだったね。

そして2回目の四国一人カヌー旅の時に、直に大阪の業者に修理依頼に向かって「直りませんでした」という衝撃的なラストを遂げたレアアイテムだ。(参考記事

今となっては、貴重な写真だ。


そんな事になるなんて微塵も思っていないこの男は、その哀愁の自転車にまたがって上流へ向かう。

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こんな写真を撮ってるくらいだから、自分のアイデアに惚れ惚れしていたんだろう。

そこに写っているのはただのアホ野郎だという事も知らずに。


そして道すがら眺める和知野川は素晴らしく美しかった。

まさに「清流」だ。

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水深こそ浅いが、愛知近郊でこんな川があったなんて。

そんなレアな美しき川を、レアな自転車で移動して行く。

距離的にはかなり短いが、この美しさなら結構楽しめるだろう。



和知野発電所から上流のスタート地点到着。

DSC02619.jpg

ううむ、奇麗だ。

砂利の川原ではなく、砂の川原なのにこの濁りのなさったらどうだ。

どうでもいいが、この美しい砂浜のはじっこの方にうんこして埋めておいた。

ここに行った際は、十分に気をつけてもらいたい。

マーキング済みなので、もうここは僕の縄張りだ。


この川、奇麗なんだけどなんせ水量がない。

スタート直後は見事な「川歩き」を楽しめる。

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時は3月。

僕の足が瞬く間に無感覚になって行ったのは言うまでもない。

何度も言うが、皆さんは暖かくなってからこの川に来るべきです。


発電所の放水口以降は流れも早く、突然の落ち込みや瀬もあったりする。

DSC02625.jpg

道路沿いだけど、なんせ山深い川だから結構いい気分。

今が3月じゃなければね。


漕げる区間が短いから、何度も上陸しては清流を堪能する。

DSC02629.jpg

DSC02628.jpg

こりゃ、夏場に遊びに来たら気持ちいいだろうなあ。

多分下れる区間がもうちょっと長くて水量もあったら、そこそこメジャーな存在になれただろうに。

この「もう一つメジャーに達しない」感じが結構好きだったりするけどね。


1時間もせんうちにゴール。

DSC02632.jpg

このたったの1時間の為に、あれ程の長くて辛い一夜を過ごしたとは。

やはり、当時からこの男のマゾは群を抜いている。


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という事で、改めてこの年の7月に再挑戦している。

もちろん「暖かい」季節です。


あのスタート当初の「極寒リバーウォーキング」をした区間も、この時期なら快適そのものだ。

DSC03724.jpg

やっぱりリバーツーリングは冬にやるもんじゃねえな。

まあ夏場だから当然渇水気味だけど、山深い雰囲気がまたよろしい。

DSC03727.jpg

そして、例のごとくゆっくりと下って行く。

でも冬と違う点は、潜って遊べる所だね。

DSC03731.jpg

気に入った場所で潜って遊びながらの川下り。

全行程のほとんどは潜ってばかりで、全然カヌーなんて漕いだ記憶がない。


鮎釣りでも有名だとネットでも書いてあったけど、全然釣り師はいなかった。

潜っても鮎を見る事もなかった。

釣り師が居ないのは気楽だが、川の中に生き物がいないのもちょっと味気なかったなあ。


と、こんな感じの川でした。

DSC03732.jpg

ゴール地点の和知野川キャンプ場をベースに、子供とか連れて遊んだら結構楽しめるだろうな。

まあ、嫁は楽しめんだろうけど。



この近くには「遠野川」ってのもあって、そこも下れるらしい。

いずれはそこも下ろうとは思っています。


ぜひ、皆さんもこのマニアックな川に行ってみては?

あくまで「夏」に行く事をお勧めしますけど。


ただ激流とはまた違ったスリルを楽しみたい人は、ぜひ「冬の野宿」をお勧めしたい。

人は一度恐怖に取り憑かれると、どんな精神状態になるのか?

一度試してみる価値はあるかもしれませんよ。



和知野川、闇の都市伝説。

マゾるかマゾらないかは、あなた次第です。



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コメント

    • hamatoshi
    • 2013年 9月 16日

    SECRET: 0
    PASS: b3bb5cd395e548c0aa567ecda8f1ac1c
    先日、やっとここまでさまのぼりました。
    キャンプサイトに限らず、気になるとはまりますよね。
    以前それなりに怖い思いもしたことがあります。
    以来、ソロでもそうじゃなくても、場の直観を信じる事にしていますw

    • yukon780
    • 2013年 9月 17日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    hamatoshiさん、どうもです。

    いやあ、これは懐かしい記事ですねえ。
    そもそも霊感強い方じゃないんですが、この時に感じた何とも言えない感覚は未だに忘れる事が出来ません。
    特に冬のだだっ広い無人キャンプ場は、夜の学校レベルのただならぬ空気が漂ってました。
    僕も場の直感を信じたいですが、いつも嫁から「場の空気を読めない男」と言われてるくらいなんで多分事前に感じる事が出来ないかもしれません。
    いっそとことん鈍感でいたいんですが、想像力豊かなのでたまりません。
    想像力もモザイクかかったやつ見る時には役立つんですが。

    あまり冬はソロキャンプするもんじゃないですね。

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