穴吹川/徳島

ユリア・・・永遠に〜穴吹川編〜

DSC03153.jpg

「四国なアイツ」の2回目一人カヌー旅6日目。

「海部川」「黒尊川」「四万十川」の川旅を経て、徳島県の「穴吹川」に到達。

実は今回の旅で、一番楽しみにしていた川だ。


穴吹川は大河吉野川の支流の小さな川。

この当時、「四国一の清流」と評価され始め、年々カヌーで下る奴らが徐々に増えていた頃。

何やら「最後の清流」とか「日本一の清流」とか、その手の称号を冠する川が増えていて大阪のたこ焼き屋みたいになっているが、僕はここで断言する。

四国で堂々と「清流」と名乗ってしかるべきは、この「穴吹川」だと。


黒尊川の夜に己の「穴」と「清流」を守り抜いた男へのご褒美タイムが始まる。

そんな穴吹川のカヌーツーリングの模様を振り返ってみよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

朝5時起床。

朝食をすまし、車でスタート地点の白人神社へ移動。

カヌーを膨らませ出発。

DSC03143.jpg

そして、出発後すぐに僕はもう感動の渦に巻き込まれていた。

なんなんだ、この水の透明度は。

DSC03144.jpg

とにかくもう素晴らしく美しい川だ。

ただただ呆然と立ち尽くし、その水質の良さに見とれてしまった。


四万十川のホッとする温かさが八千草薫で、海部川が落ち着いた美人の黒木瞳、黒尊川が平井堅だとするならば、穴吹川は北斗の拳のユリアような透明度の美しさを誇る川だ。

例えが自分でもよく分からないが、とにかく現実世界ではあり得ない程の美しさという事を感じていただきたい。

とにかく、こんないい女はそうはいないぞと呟きながら川を下っていく。


DSC03145.jpg

少し高い位置から川を覗くと、どでかい魚から小魚の群れがもう申し訳ないくらいに丸見えだ。

DSC03148.jpg

DSC03147.jpg

雨が降り続いた後なのに、この水質状態。信じられます?

上流の方でパートのおばちゃん達が大量のミネラルウォーターを流してるとしか思えない水質。

清流という言葉はこういった川のことを言うんだと思い知らされる。

DSC03149.jpg

DSC03152.jpg

全体の距離は短いが、漕いでは上陸、そして呆然を繰り返したので結構時間がかかる。

この時の僕は、ずっと口を開けて随分とアホ面だったはずだ。


深い部分に長いパドルを突き刺してもこの通り。

DSC03154.jpg

底まで丸見え。

羞恥心のかけらも無い川だ。

いくらなんでも見せ過ぎだろう。


周囲の風景も、道沿いではあるが色濃い自然で目にも楽しい。

DSC03156.jpg

山深い川というより、山里の小川といった感じがなんとも可愛らしい女だ。

さすがは南斗の慈母星と言われるユリア。

ラオウが夢中になるのもうなずける。


岸の水たまりでは大量のオタマジャクシ。

DSC03157.jpg

なんとものどかで良い感じ。

DSC03158.jpg

DSC03159.jpg

DSC03160.jpg

下を覗けば、僕とカヌーの影が川底に映り、まさに空を浮かんでいるような感覚だ。

DSC03164.jpg

僕はこの時までまで20本以上の日本の川を下ったが、それはこの川に出会うために旅をしてきたと思えるほどに感動していた。

和歌山の赤木川もすばらしいが、清流っぷりでは穴吹川は群を抜いている。

ジゴロのジュウザが夢中になるのもよく分かる。



ほんと、良い川と良い女はよく似ている。

その美しさと母性であっという間に男を魅了し、やがてずるずると引きずり込み男の動きを止める。

やがてラオウは愛馬黒王号から降ろされる事になった。

DSC03167.jpg

DSC03165.jpg

ユリアは時折愛が浅くなるので、カヌーを引っ張って川を下る事になる。

しばらくは川下りというか「川歩き」がつづく。

中々に大変な作業だが、美しいからすべてを許してしまう。

DSC03168.jpg

夏場だったら、多分所々で潜って遊んでしまうから全く進まないだろうな。

DSC03170.jpg

DSC03172.jpg

DSC03171.jpg


ただしこの素晴らしい清流もいつまで持つだろうか。

穴吹川の観光地化が着々と進められていたからだ。

観光客用の新しい施設がぽこぽこ出来てきており、途中大規模な河川工事も行われていた。

正しく美しい日本の川穴吹川が、どこにでもある日本の川になる日は遠くないかもしれない。

そうなる前に下る事が出来て本当によかった。

僕に権限があれば世界遺産にでも登録して保護したい程だ。

南斗の正統血統を絶やしてはいかんのです。

この時を境に、僕は南斗五車星の山のフドウと共に「マゾのフコウ」として彼女を守って行こうと決めた。

ちょっと不幸で変態なのが玉にキスだけど。


やがて、良い気分でゴールの川原に近づいてかなり驚いた。

DSC03174.jpg

朝ほとんど人のいなかったゴールの川原にファミリーデイキャンパー達がうじゃうじゃいたのだ。


家族連れがワイワイとBBQに興じる中、むさ苦しい男が一人で川上からカヌーに乗って下ってくるのである。

明らかに異質な空気を身にまとい、衆目に晒されるマゾのフコウ。

皆の視線を一身に浴び、子供達に指を指され、恥ずかしさにまみれてゴール。

他にカヌーやってる人もいないから、これは実に恥ずかしかった。


上陸して周りの視線を感じつつ、いそいそと昼飯を作る。

周りが大勢でBBQをやっている中、僕は一人黙々と具なしのマルタイ棒ラーメンを作り上げる。

まるで居残りで給食を食べる悲しげな小学生のように、黙々とそれを食べる。

重い。僕の周りだけ空気が重いぞ。

子供達の笑い声が、一層空しさに拍車をかける。


本来ならそこで昼寝でもしてゆっくりとバスが来る時間まで待つつもりだった。

しかし、もうその場にいるのが耐えられなくなって歩いてスタート地点まで行く事にした。



しかし、美しい川を見ながら歩いて行けるので苦にはならずむしろ楽しかった。

DSC03177.jpg

DSC03178.jpg

DSC03179.jpg

途中、拾った木を杖にして歩いてたらお遍路さんと間違えられた。

さらには地元のおじいちゃんに捕まって、延々と川自慢された。

そして地元民と思われたのか、観光客に沢ガニの穫れる場所を聞かれたりした。

知ってるわけ無いだろう。

DSC03180.jpg

歩いて行くのも中々おもしろいもんだ。


1時間半ほど歩いて、やっと車を回収。

カヌーを取りに戻るとさらにファミリーが増えていて僕は逃げるように穴吹川を後にした。


この川は絶対にまた来たい。

いつまでも「清流」であり続けて欲しい川だ。

変に夢を持って上京して、数年後「アリスJAPANから衝撃デビュー」とかはやめてもらいたい。

ずっと、ここで。ずっと変わらない純真な美しさを維持してくれる事を願ってやまない。

まさに名川中の名川だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その後、温泉に入ってフェリーにて四国脱出、和歌山港へ。

翌日の朝10時に大阪に修理中の自転車を取りに行かないといけないので、そこらの海辺でキャンプ。

DSC03196.jpg

DSC03197.jpg

翌日、朝5時起床。

海沿いだからなのか、凄まじい結露でテントから寝袋までビッシャビシャだった。


10時まで時間がたっぷりあったので、テント乾かしたり近辺をウロウロしているとマニアック武将の墓を発見。

DSC03198.jpg

普通の民家の間に突然出て来た。

こいつは実にレアな武将だ。

戦国のお騒がせ野郎「塙団右衛門」の墓じゃないか。

前回の長宗我部元親に続いて、出会い頭の武将の墓は実に興奮する。


まだ時間があったから、よく分からない山をトレッキング。

DSC03204.jpg

DSC03213.jpg

途中の滝で、滝だけに光が当たっていて強烈に神々しかった。

DSC03217.jpg

DSC03216.jpg

やはり、寄り道は悪くない。

そして大阪へ自転車取りに行ったら、結局「自転車は治りませんでした」というフィナーレだった。

3ヶ月で壊れた4万円の電動自転車を車に乗せ、僕は我が家に帰って行った。



こうして僕の2回目の四国一人カヌー旅は終わった。

この時の四国行脚も、とても思い出深い旅となった。

やっぱり四国は良い。

本当に良い。

是非みんな、四国へ旅立って欲しい。

僕のくせにこんだけ楽しめたんだから、普通の人が行けばかなり最高だと思う。


さあ、「四国なアイツ」特集はまだまだ続く。

次回は一番最近行った、2009年5月の3回目のカヌー旅。

この時はたまにこのブログに登場する山田(仮)との二人旅。

行き先は再び「四万十川」と「仁淀川」。

正直、カヌーよりも讃岐うどんばかり食い歩いていた思い出のが濃くてあまり内容覚えてないけど。

中年二人がグダグダと旅する様をお送りします。



記事が気に入ったら
股旅ベースを "いいね!"
Facebookで更新情報をお届け。

MATATABI BASE

関連記事

コメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    自分の事でないのは分かってはいますが子供の頃から身近な川だったので自分の事をほめられたような気がするレポートでした。ホントありがとう御座います。
    穴吹川は僕が幼かった30年以上前は水量も今より多く、旅のゴールだった川原と少し上流の拝村橋との間には右岸に立岩、黒岩といった深い淵がありました。
    小学校にはプールが無く、水泳の授業は拝村橋の袂で、夏の水泳は住む所によって上流部は拝村橋、下流部は徳島線の鉄橋の下で川遊びの毎日だった事を思い出します。
    お泊りになった川原の対岸には当時大きな川柳が二本生えていて学校への行き帰りに穴吹橋の欄干にもたれ、柳の葉擦れの音を聞きながら鮎が巴になって遊ぶのを見ていたりしていました。
    四国一の水質が言われ始めたのは15年程前からですが、そんな環境も当時は当たり前でしたね。今となっては長く残したいと思います。

    • yukon780
    • 2012年 1月 21日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    もう、読んでるだけで幸せな気分になるコメントありがとうございます。
    僕からすれば、ほんとおとぎ話みたいな夢の世界ですね。
    水泳の授業があの川だなんて、どんな大富豪の息子でも体験出来ない幸せな体験だと思います。
    どの川に行っても、昔の川を知る人の話を聞くとうらやましくてしょうがないです。
    僕は愛知の生まれで、近くの川はどぶ川・泥川しかなく育ちました。
    なので川で遊んだ記憶がほとんどありません。
    その反動で今清流を求めて色々と彷徨っている訳です。
    なので四国はほんとに憧れの土地ですね。
    絶対にまた行きたいと思っています。

    • maya
    • 2012年 9月 16日

    SECRET: 0
    PASS: d205b635a368e2845f327dc042ad5eea
    すごく綺麗ですね!!来週四国の穴吹川にいってみたいとおもいます。
    写真で載せている場所は、どうやって行けばいいんでしょうか?大阪から行います。
    教えていただけたらありがたいです。

    • yukon780
    • 2012年 9月 16日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    はじめまして、mayaさん。
    穴吹川はほんとおすすめの川ですよ。
    日本各地の川に行ってる僕がベスト3にあげる最高の清流です。
    穴吹川自体は、大阪からなら淡路島経由か和歌山港からフェリーで徳島入り。
    徳島自動車道の脇町インターで降りて南下すれば行けます。
    大きな吉野川があってその支流の川になります。

    この記事の下の方に地図が載ってます。
    カヌーの発着場所や駐車場の情報も入れてあります。
    http://yukon780.blog.fc2.com/blog-entry-373.html

    カヌーですか?観光ですか?
    初めてであればTripというガイドさんがおすすめです。
    http://www.trip-yoshinogawa.com
    存分に穴吹川が堪能出来ると思いますよ。

    雨上がりになると若干小濁りになることも増えて来たようですが、間違いなく感動しますよ。
    いってらっしゃい!

    • maya
    • 2012年 9月 17日

    SECRET: 0
    PASS: 9b2d85901c7e81770fdf8770cec005a4
    岡山まで新幹線でいってそこからレンタカーでいこうとおもったりしてるのですが、遠いですかね( ; ; )
    それに明後日からいこうとおもっているのに、明日四国が雨みたいでどうしようかとおもっています 汗


    ぁ、カヌーぢゃあなくて、普通に泳ぎにBBQなどしに行きたいとおもってます♪(´ε` )

    • yukon780
    • 2012年 9月 17日

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    岡山経由だと瀬戸大橋の方ですね。
    地図を見た感覚だと2〜3時間って感じでしょうか?

    本日の穴吹川はだいぶ増水したようです。
    https://www.facebook.com/photo.php?fbid=375363032533058&set=a.314137261988969.69052.308034315932597&type=1&theater
    奇麗な川なんで復帰も早く、雨上がり数日後に水がひけばはさらに奇麗になるんですけど明後日だと微妙ですね。
    わざわざ遠くまで行く事考えると、ちょっと厳しいかもしれませんね。
    できればパーフェクトな状態の穴吹川を堪能してもらいたいですしねえ。難しい所ですね。
    明後日の川の状態を確認するならTripさんに電話して聞いてみるのも手かもしれません。

    • 2022年 8月 31日

    海部川の川遊びスポットを検索してて辿り付きました。
    文章力もあり読ませる文面でした。
    黒尊川の夜の出来事は笑いました。
    お気をつけてこれからも川を楽しんでください。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)




カテゴリー

アーカイブ

おすすめ記事

  1. 板取川/岐阜

    板取事変〜警察のちクレーン時々竜巻〜
  2. 前穂〜奥穂〜涸沢/長野

    紅葉挟撃作戦1〜岳沢編・快晴奉還への道〜
  3. ◉ りんころ成長記

    神々の理想郷〜デスゾーンの彼方に〜
  4. 槍ヶ岳/長野

    槍ヶ岳1〜僕らの熱中時代〜
  5. 富士山/静岡

    富士6苦フェス1〜マゾストーリーは突然に〜
PAGE TOP