8/18(金)6:05
ライリークリークキャンプ場近くのオーバーナイト駐車場にてこれを記す。
朝目覚めると、実に寒かった。
べらぼうに寒い。
おまけにかなり雨が降っている。
初っ端からブルーな気持ちになる。
雨の中そそくさとテントを片付け、車の暖房をMAXにして体を温める。
中々にキビしい。やっぱり僕は僕なりの旅になってしまうんだな。
昨日買ったシナモンロールを朝飯で食うが、甘すぎてとても全部食えない。
6:30のバスでワンダーレイクのキャンプ場に向かうんだが、ちゃんとこっちの方までピックアップに来るのかどうか心配でならない。
そして何度も書くが、とにかく寒い。
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18:40
現在ワンダーレイクキャンプ場にてこれを記す。
まりにもキツすぎる!
言いたかないが、少々日本が恋しくなってきた。
かつて旅先でこんな事思う事はなかったのに。
あれからキャンパーバスはちゃんと来た。
このキャンパーバスに乗って(一般車両は乗り入れ禁止)、四国程の大きさのあるデナリ国立公園をひたすら奥へ奥へと移動するのだ。
陽気なファットママがドライバーだ。
乗客は僕の他にアメリカ人カップル、フランス人カップル、アジア系アメリカ人二人だ。
単独の日本人はどうしてもストイックな感じになってしまう。
バスはどんどん進んで行くが、思いのほか野生動物が全く出てこない。
おまけに雨で景色もぱっとせず、テンションが中々上がらない。
ちらりとフォックス、ちらりとウサギは見た。
さらに進んで行くと、ついにフランス人カップルがクマを発見。
俄然テンションが上がるが、乗客のみんなが思いのほか盛り上がっていない。
やがて最初の休憩所に到着。
外人のおばちゃんに景色をバックに写真を撮ってもらうが、おばちゃんシャッターを押し切れてなくてカメラには何も写っていなかった。
バスはどんどん進んで行く。
遠巻きにムースとドールシープを見る。
やがて、なんと道に3頭のクマが現れた。
わりと近距離でクマが見れて非常にコーフンした。
やっと、今日一日の意味が見いだせた気がした。
その後、ストーニーヒルあたりの休憩所へ。
ファットママは休憩5分だって言っていたのに、さんざん待って40分後にやっと出発。
またも気ままなアラスカンだ。もう慣れたけど。
やがてアジア系の二人がMTBを持って途中下車。
フランス人ももう降りていたので、ファットママとアメリカ人カップルと僕の4人になる。
カリブーが登場。
2年前のユーコンでついに見ることが出来なかったカリブーに感動した。
バスはおよそ6時間の旅を経て、ワンダーレイクキャンプ場に到着。長かった。
キャンプ場はやっぱりおもいっきり雨。
雨はもうとてもあがりそうもない。
目の前に悠々とそびえ立っているはずのマッキンレーはかけらも見えない。
分かってた事だが心から悔しい思いで一杯だ。
晴れていれば目の前がマッキンレーで間違いなく最高の場所だったのに。
(筆者注:↓ちなみに晴れてればこんな景色ね。※他ページ引用)
しばらくうなだれて時を過ごした。
何度見てもマッキンレーは見えない。見えるのは蚊取り線香くらいだ。
雨で大量発生の巨大蚊に悩まされながら昼メシを食う。
雨ではおもいっきりやる事がないので、無意味とわかっていつつもトレッキングに行く事にした。
これが後にかなり辛い事になるとは思っていなかった。
マッキンレーバートレイルを雨の中黙々と歩く。
景色も良くないしだんだん気分が滅入ってくる。
歩けども歩けども終わりが見えない。
つらい。さむい。
疲れたら道ばたのブルーベリーを摘んでほおばりながらかろうじて進んでゆく。
やがてマッキンレー川に突き当たる。
おそらくここがゴールだ。
一面、全く色味というものがないグレイッシュな荒涼とした世界。
晴れていれば間違いなく、目の前に遮るもの無しでマッキンレーの姿をパーフェクトに拝める場所なのだろう。
しかし、僕には絶望という景色を拝めただけだった。
とりあえず一服して、またもと来た道を戻る。
もう手は冷たくなりすぎて、厳しい感覚。
凍傷になってしまう。
しかも、恐ろしい事についに靴の中に水が浸水してきた。相当に厳しい。
往復約3時間半程。
冷たい雨に打たれっぱなしで、よろけながらキャンプ場に戻る。
僕が居ない間にキャンプ場にクマが出たらしく、ベンチを破壊して去って行ったようだ。
そんな事よりとにかく手が冷たすぎるので、コーヒーを作って手を温めた。
ありったけの服を着込んで、カッパを乾かす。
濡れてすっかり冷えきった靴下を脱いで、新しい靴下を履こうと思ったら靴下が見当たらない。
致命的な事に、車の中に置いてきてしまったのだ。大打撃。
仕方ないので、絞ってまた履いてる。とても冷たい。
だんだんと足先の感覚がなくなってくる。
携帯灰皿の中身を捨てようとゴミ捨てに行ったら、手が震えてゴミ入れの中に灰皿を落としてしまった。
このゴミ入れ、クマ対策用に外からは中の物が取れない仕組みになっている。
もう取り出す事は出来ない。
極限のブルー状態。つらい。寒い。つらい。
明日は朝一でバスに乗って帰ろう。
デナリ国立公園は実にアラスカらしい厳しさを僕に叩き込んでくれた。
ドMの僕でもさすがにギブアップだ。
今日はまだ早いが、早々にテントに潜り込んでせめて星野道夫の本を読んでその世界に浸ろう。
ああ、マッキンレー、見たかった、くやしい、さむい・・・。
アラスカ珍道中7〜濡れた靴下の恐怖〜
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MATATABI BASE
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