アラスカ珍道中

アラスカ珍道中11〜トイレの神様のプレゼント〜

アンカレッジ到着後、レンタカーの返却時間まで随分時間があったので、REIに向かった。

REIはアメリカ大手のアウトドア専門ショップで、日本では買えないものが結構売っているから行ってみたかったお店だ。

しかし、一向にREIが見つからない。

一方通行だらけだし、地図が解りづらくてかなり苛つく。

やっとの思いでREIに辿り着いた時には既に閉店直後。

旅の神様の小さな追い打ちは続く。

IMGP1193.jpg

とりあえず土産でも買うかと思って、カンアラスカという土産物屋を捜すが、これもまた見つからない。

しだいに強烈にオシッコがしたくなって来た。
でも全然トイレが見当たらない。

膀胱が破裂寸前になってきたので、しかたなく勇気を振り絞って適当なお店に入ってトイレを借りる事に。

この時の偶然が、この旅でやっとささやかに神様が粋な巡り合わせをしてくれた。


偶然入ったお店の名前はファーアラスカ。毛皮を売っているお店だった。

中に入ると日本人っぽいおじいさんが一人。
なんと日本語を話せるじゃないか。

とりあえずはトイレを貸してもらい、アラスカ失禁男にはならずに済んだ。

落ち着いたので少しおじいさんと話をしてみると、今回の僕の旅に非常に興味を示してくれた。

見た目日本人だが彼の名はジャックといった。

彼のおじいさんが日本人で、ゴールドラッシュの時に一攫千金を夢見てアラスカにやって来た人のようだ。
かなりしびれる話だ。

ジャックは僕をお店の片隅にある毛皮の乗った小さなイスに座らせた。

なんとそのイスは、あの大冒険家植村直己が座っていたイスなんだそうだ。

これにはまいった。しびれた。体のそこから不思議な感情がわき上がっていた。


話してみるとこのジャックじいさん、かなり凄い人だという事が分かって来た。

ジャックさんはアラスカ山岳協会の会長で、マッキンレーを始めアラスカのあらゆる山を登っている。

ジャックさんに言わせるとブルックス山脈なぞは散歩だと言う。

植村直己はじめ、山岳方面のいろんな人の名刺が壁に貼ってあった。

IMGP1196.jpg

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試しに星野道夫さんとは面識があるかと尋ねたら、なんとここで働いていた事があったそうだ。

そして僕の事を、若い時の星野に君は似ていると言ってくれた。
とてもとても嬉しかった。

その後もいろんな話をする。

彼の考える事と僕の考えていた事がことごとく一致してかなり嬉しい。

一人での川下りと、集団での川下りでは同じ川でも景色が違うなんてことは深く同感してくれた。

日本人はなにかと集団で行動する。それでは物事の本質には迫れないんだ。

日本では中々そういった部分での会話が出来る人は数少ないが、こんなアラスカの街の一角でここまで協調できる人に出会えるなんて。

ちょっとトイレを借りる為に入ったこの店で、随分長時間話し込んでしまった。

今日の氷河クルーズのもやもやの最後に、彼に出会えた事は大きかった。

IMGP1198.jpg

もっと話をしたかったが、レンタカー返却の時間が迫って来たのでジャックさんとはお別れをして店を出た。

車に戻ると何やらワイパーに紙が挟んである。

なんと僕はアラスカまで来て駐禁をやられてしまったのだ。

とりあえず無視しておこう。
まさか日本まで罰金催促は来るまい。(筆者注:結局何の音沙汰もなかった)


アンカレッジ空港南ターミナルで、苦楽を共にしたこの車ともおさらばだ。

おっさんのヒッチハイカー乗せたり、ワイパー壊れたり、橋崩落で凄い距離走ったり、パンクして小さなスペアタイヤで100キロ以上走ったり、最後には駐禁まで貼られて。

お疲れ様でした。相棒よ。


シャトルバスで北ターミナルへ。

空港職員の態度が以上に悪くて、またも白人にムッとするが、そこはおさえて今飛行機を待っている。

現在4:35。もう空港というものが信じられなくなっているので大丈夫かと不安で一杯。

早く出発時間にならんかなあ。

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さっき日記を書き終わってから数分と経っていないが大変危ない所だった。

なんと搭乗ゲートがN6からN2へ変更になっていたようだ。

放送で流していたらしいが、こっちは英語がわからんのだ、ばかやろう。

英語が解らんと空港来るな的なこの感じがとても嫌いだ。

そして今は無事に機内にいるんだが、慌ててN2ゲートに走ったから、バックパックにくくり付けていたお気に入りのアウターを空港に落として来た事が発覚。かなりショック。

最後の最後まで細かいジャブを打ち込んできやがる。


飛行機が飛び立つ。

さらば、アラスカ。

正直かなりの不完全燃焼だったよ。
でも精神的、体力的には燃え尽きたよ。

君の厳しさはよぅく分かったから、次来た時はほんとに微笑んで下さい。

そんな僕をあざ笑うかのように、アンカレッジはこの旅一番の晴れ間が広がっていた。


〜エピローグ,台湾編へつづく〜



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