大文字山の大文字焼き火床にて大の字に横たわる変死体。
ポートピア連続殺人事件を彷彿とさせる京都ミステリー。
犯人はまさかのヤスなのか?
いきなりマニアックなファミコンネタで始まった後編。
いよいよ体力勝負の「大文字山〜比叡山の修行ラン」に突入した男。
ここからが正念場だ。
佳境を迎えたキョウトライアスロン2013。
25キロの東山コースを完走し、宇治川カヌーに突入するという酔狂なイベント。
その後のこの中年選手の雅なる動向を追ってみよう。
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光の射す方へ突き進む男。
いよいよ昇天の時を迎えてしまったのか?
さにあらず。
彼は「ねじりマンポの辱め」から逃れて、街から山に逃げて来たフランケンシュタイン。
向かう先はいよいよ大文字焼きで有名な大文字山だ。
ここからは今までの道と違って、結構な急登が続く。
この先は「一見マゾさんお断り」の大人の世界だ。
フンガフンガと必死で駆け上がるフランケン。
もはや己撮りなんてしてる場合じゃないからこの区間の写真はほとんどない。
この時点でスタートから3時間走り続けていて、若干意識の朦朧感を楽しみ出している時間帯。
腿の裏も張りだしてきて、いよいよ肉体も精神もはんなりしてきた。
やがて「大文字山四つ辻」と言われるクロスロードへ。
本来の京都トレイルのルートはここを左に下山して、観光地「哲学の道」へと通じるルート。
しかしそんなお洒落な場所に行く気はさらさら無い。
もう観光客にまみれて恥辱にまみれるのはゴメンだ。
僕は迷わず大文字山山頂への急登へ再び突入していった。
そしてヘコヘコになりながらなんとか山頂に到達。
山頂には他にも数人の登山者がいたが、みんなはここが最終目的地。
そんな達成感に満ちた笑顔の登山者の中に、まだ道半ばで孤独と悲壮感にまみれるマゾ一匹。
実はここまで頑張って登って来たはいいが、いよいよ腿裏だけでなく腰が相当にやられて来たのだ。
エネルギー消費も激しく、あのクソまずかったエネルギージェルの甘みをすんなり受け入れられてる自分がいる。
それは、最初は甘すぎてカワイイと思えなかったきゃりーぱみゅぱみゅを、いつのまにかすんなり「かわいいなあ」と受け入れていた自分に気付いた時みたいな驚きだ。
本来は辛みを増した熟女好きな僕だが、今の僕はロリーポップな甘さしか受け付けない体になっている。
こいつはよっぽど体内のエネルギーが消耗されているようだ。
しかし山頂滞在時間は2分程度で切り上げ、大文字焼きの火床を目指す。
やがて火床に到達。
景色は素晴らしいんだが、もうそれを楽しむ余裕は無い。
この時、僕の頭の中の暗闇には「リタイヤ」という大文字焼きが煌々と浮かびあがる。
なんせこの先、この大文字山を一旦街まで下り、そこから比叡山まで600m以上のハイクアップが待っている。
とても完走できる気がしなくなってしまったので、ここで一旦大休憩。
そんな状況でもまだこんな無駄な事をする男。
しかもちょうどこの時に下から大量の中国人観光客が登って来たという羞恥タイム。
彼らも「これが世に聞く日本の大文字マゾか」と感慨もひとしおだった事だろう。
このプレイと大休憩で再び元気を取り戻す。
ここからの下山は、下から火床目指して登って来る大量の観光客とすれ違って行くというちょっと恥ずかしい下山。
やがて街に降りて銀閣寺へ。
もちろんこんな場所は素通りだ。
そしてこの時点で9時40分。
街はすっかり観光客で溢れていた。
想像してみて欲しい。
この観光客の中を、全身トレランの格好をしたフラフラの男が駆け抜けて行く情景を。
この恥ずかしさと疎外感は実に京都ならではだ。
そんなフワフワした感じで、やがて「哲学の道」に合流。
かつてマゾストテレスはこう言った。
「羞恥と苦悩を進んで自ら受け止めよ。そこに救いは無い。しかしそれこそが救いなのだ」と。
僕はその教えに則って、あえてこの場所で己撮り。
思いっきりタクシーのおっさんと目が合って、凄まじい恥ずかしさ。
しかしそれこそが救いなのだ。
そんな感じで哲学を楽しみながら進んで行く。
やがてひたすら味気ない住宅街を走って行くという地味な苦しみを堪能し、
地龍大明神という所から再び山道へ。
ここからが比叡山への道かと思いきや、もう一つ「瓜生山」という山を越えて行かねばならない。
そしてここまでの山は整備された登山道だったが、ここからは実に荒々しいゲリ道になって行く。
しかもここで道を間違えて、残り少ない体力を無駄に消耗させるというビッグプレーも飛び出す。
「引き返すなら今じゃないか?」と言う僕と、「ここからがショータイムじゃないか」と煽る僕がいる。
もちろん僕はスポットライトに引き寄せられる虫のように、フラフラとそのショータイムの舞台へと向かって行く。
分っちゃいるけど止められない。
そしてこの山はかつて白幽子という名の「仙人」が棲んでいたと言われる山。
非常にレベルの低い看板がある井戸を横目に、仙人の岩窟を目指す。
やがて白幽子がいたという岩窟へ到達。
白幽子 VS 婿養子の夢のご対面。
おそらくこの白幽子とやらも、嫁から汚物扱いを受けて家出して、山に籠ったはいいが戻るに戻れなくなってそのまま仙人に祭り上げられてしまった口だろう。
僕と白幽子との間に、時空を越えた友情が芽生えた瞬間だった。
そんな白幽子の無念を引き継いで、ひたすらに駆け上がって「瓜生山」の山頂到達。
簡素極まりない山頂看板を前に微妙な笑顔での登頂だ。
あとはひたすら比叡山を目指すのみ。
しばらくはアップダウンを繰り返して行くが、もちろん道は登り基調。
延々と走り(歩き)続け、ついに腿と腰に重い鈍痛が。
いよいよ老人のような佇まいになって来て、もはや平地ですらで走る事を諦めている。
「一体僕は何をしているのか?」という自問が巻き起こる苦しい時間帯。
しかしこれこそが修行の山、比叡山だ。
やがて沢を渡り、
林間に咲くわずかな花に癒され、
ただただ黙々と比叡山を目指す。
しかし黙々と走り過ぎてしまったのか?
あれ程快晴だった空が、いつのまにかモクモクさんに支配されているではないか。
頑張っている僕を見て、また余計な応援に駆けつけてくれたらしい。
これにより、道は薄暗くなって気分まで落ちて行く。
そんな中、いよいよ最後の長い長い急登に突入する男。
そしてその際、僕がかろうじて撮った最後の己撮りがこれ。
腰の曲がりっぷりは80代の老人のようで、いよいよ本気の限界が来たようだ。
まるで老人ホームから山に迷い込んでしまったかのような光景で、これ以降ほとんど無の境地にて山中を徘徊する男。
この先はとても己撮りする余裕は無くなる。
そしてここに来て、どこまでもどこまでも続くじめじめとした急登。
ここからしばらくは、写真も記憶も無くなっている。
やがてやっとこさ比叡ビュースポットへ到達。
もう京都の町並みは見飽きたよ。
いよいよゴールが近づいて来た。
陣営に逃げ延びて来た負傷兵のようにヨロヨロと進む。
やがてゴールのケーブル比叡駅が見えて来た。
そして東山コースの最後である「74番目」の標識へタッチ。
ついにゴールでございます。
実に長かった。
スタートから6時間半。
衣服の上から黒いブラジャーを着けた男が、ついにその目標を達成した瞬間だ。
しばらくはグッタリとその場で放心状態。
やがて心が落ち着いた所で周辺探索。
するとこんな場所が。
よくテレビとかで見た事ある「かわらけ投げ」とはここの事だったのか。
かわらけ投げとは、かわらけに願い事を書いてそれを吊るされた輪に向けて投げ、見事その輪っかの中を通れば願いが叶うというもの。
僕は早速100円で3枚のかわらけを手に入れ、3つの願いを記入した。
25キロを完走した僕には、きっと天も微笑んでくれるに違いない。
1投目。
勢い良く投げた「ストレスと白髪がへりますように」は、往年の今中のカーブのようにするどく曲がって輪っかの遥か左へ逸れて行った。
2投目。
かわらけの軌道を学んだ僕は軌道修正して「天気に愛されますように」を投げると、全盛期の岩瀬のスライダーのように輪っかの手前で左へ大きくスライドして惜しくも外れた。
3投目。
今までは全てこの「嫁が優しくなりますように」のための予行練習。
本当に叶えたい望みはこの一点。
僕は完璧に修正した軌道でかわらけを投じた。
見事に輪っかに向かって行く「嫁」。
しかし打者の手前で鋭く変化する川上のカットボールのように、輪の手前で急激に微スライド。
嫁の優しさは、そのまま輪っかに当たって粉々に砕け散った。
結局3つの願いは全て輪っかを通る事無く、京都の山中へと消えて行った。
それと同時にモクモクさんがみるみる上空を完全に覆い、辺りは夕方のように暗くなる始末。
願いも叶わず、せっかくゴールしたというのに何とも陰鬱なる気分。
しかしいつまでも落ち込んでる場合じゃない。
このキョウトライアスロン2013の二つ目の種目「宇治川カヌー」が残っている。
戦いはまだ終わっていないのだ。
急ぎケーブルカーにて下山。
大急ぎで電車に乗り換え、スタートの伏見稲荷を目指す。
でもGWで人だらけのはずの京都の電車内に、なぜか乗客が僕一人だけという不思議な現象でソワソワが止まらない。
何か大きなミスをしでかした気がするが、なんとか伏見稲荷駅へ。
スタートした頃は全く人がいなかった参道も、やはり観光客だらけ。
のんびり京都メシでも食いたい所だが、車で移動中に運転しながらいなり寿司を食うのが精一杯。
とにかく僕には時間が無い。
この与えられた「一日フリー」というゴールデンデイを、隙間無く遊び尽くすのだ。
大急ぎで宇治川のスタート予定地へ。
この水路から川に出られるはずだったが、全く出られる気配がない。
宇治川への水門は嫁の心のように固く閉じられている。
方々探しまわるが、スタート場所が特定できない。
別の場所を車で走行している間にも、貴重な時間がどんどん過ぎて行く。
いくら「一日フリー」と言えど、8時半の子供のお風呂までには帰らなきゃ行けないから気持ちだけが焦る。
そうこうしてスタート場所を探していると、空はこんな事に。
今日は一日晴れの予報だったのに、このフロントガラスを濡らしている液体は何事か?
数時間前の僕は、確かに大快晴の空の下で大文字になっていた気がするが。↓
なぜこのわずか数時間後に、僕のワイパーは左右に動いているのか?
そしてこのワイパーの速度を「MAX」にした時。
僕のキョウトライアスロン2013は終わりを告げた。
こうして男は無念にまみれてリタイヤした。
東山コースのトレランは完走したが、宇治川カヌーは出来なかったので結果的には惜敗だ。
男は無念のまま遊びを切り上げて、岐阜へ帰って行った。
やがて失意のまま我が家に帰還すると、嫁から「早かったじゃん。なんか頭痛いから肩揉んで。」と言われ、トレラン〜カヌーに次ぐ3つ目の競技「肩もみ」に突入。
さらにはとても些細な事から夫婦喧嘩に発展し、「こうなったら今日はとことん話し合おう」といったまさかな展開へ。
やがて論点は本筋からどんどん離れて「なぜお前はトイレで小便を飛び散らかすのか」という所まで飛び火。
実に1時間半に及ぶ長期戦へと発展した。
もちろん僕はまともな思考回路が無くなってしまっている程に疲れ果てているから、嫁の「日頃の鬱憤」をノーガードで打ち込まれ続ける事に。
最終的には「明日はこーたろくんの初節句だから、ひとまず仲直りしよう」と休戦協定。
もちろんこの日、僕は泥のように眠りに落ちて行った事は言うまでも無い。
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こうして第一回「キョウトライアスロン2013」は全ての競技を終了。
ある意味で僕は完走する事が出来たようだ。
次回大会は「キョウトライアスロン秋の陣」。
京都一周トレイルの「北山東部コース」と「北山西部コース」である紅葉の鞍馬・嵐山を駆け抜けて、京都の名川「保津川」をカヌーで下る戦いだ。
その時を目指して、今後も特訓の日々だ。
まずはそれまでに夫婦の問題をクリアにしておかないと。
まずはトイレにオシッコを飛び散らかさんように頑張る所から始めてみようか。
京都一周トレイルラン〜東山コース〜 完
京都一周トレイルラン〜東山コース後編〜
- 京都一周トレイル/京都
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ナッツさん、ありがとうございます。
この時は随分とハードな行程で、心地よい限界感を味わってマゾ冥利に尽きる戦いでした。
結局秋の陣は悪天候のため持ち越しになってますが、今月中には「春の陣」として北山東部コースを走る予定です。
次回もはんなりとしたグッタリ野郎の姿をお送りできるかと思いますので、吐きそうなくらい暇な時にでもまた見てやってくださいね。