古都の山に跋扈する4匹の魑魅魍魎。
かつて安倍晴明が封印したはずの「まぞのけ」が今、雅なる都を混乱に陥れようとしている。
その妖怪どもは、荒ぶる息とともに加齢にまみれた異臭を解き放ちながら古都を汚して行く。
しかし衰える肉体とは裏腹に、彼らの熱い情熱はとどまる事を知らない。
これはそんな彼らのあまりにも美し過ぎた戦いの記録。
まぞのけ達がお送りする珠玉の古都物語である。
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京都一周トレイル。
それは京都の街をぐるっと取り囲む山に整備された、全長70kmのロングトレイル。
コースは4つのセクションに区分され、僕は去年その中の「東山コース」に挑んだ。
その時の戦いは、思わず大文字山の火床で大文字になってしまうほどのスペシャルマゾな戦いとなった。
しかし何度も吐きかけながらなんとか25kmを走破。
多くの感動に包まれながら、最終的には土砂降りの雨に追い立てられるかのように京都を脱出した激戦となった。(参考記事:京都一周トレイルラン〜東山コース前編〜、京都一周トレイルラン〜東山コース後編〜)
この時はまだ周りにトレランをしている人がおらず、僕一人での孤独なラン。
そもそも周囲からは「山を走る意味が分からない」「あんたのマゾも極まったな」などのお声を頂き、完全に変態扱いだった。
しかし時は経ち、去年の暮れにチーム・マサカズ内に「トレラン部」が発足。
それでも当時はまだ僕とジョンボーAの二人きり。
しかもそのジョンボーAは、記念すべき一発目の霊仙山の下りでヒザを負傷。
以来彼はしばらく山を走れないキズ物となり、トレラン部は早くも廃部の危機にさらされた。
しかしそんな部のピンチに立ち上がった男達がいる。
ジョンボーAの無念を晴らすべく、チーム・マサカズから新たなる入部希望者がなんと3名も手を挙げたのだ。
左から、京都でもクールマゾスタイルでスクープを狙う「パパラッチK」。
かつては「即バテ王」の名を欲しいままにしたが、最近めっきりランニングにはまって逞しくなった「ゲリM」。
そして体内から溢れ出るホルモンを制御できない絶倫イボ痔男「アゴ割れM」。
さあ、ついに4名に膨れ上がったチーム・マサカズ「トレラン部」の京都部活動。
今回は、前回の東山コースの続きである「北山東部コース」。
コースから逸れた「鞍馬寺」へも余計な回り道をかまそうという、マゾで雅な20km。
それではそんな彼らの部活動を、はんなりと振り返って行こう。
※今回は作者の都合で本来二部構成のものを無理矢理一話完結させてます。少年ジャンプ的に言えば合併号です。少々長いですがほとんど写真だらけなので、気長におっさん達の痛々しい遊びにお付き合いください。
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決戦当日の早朝。
なぜか我が家に二つの死体が転がっている。
よく見ると、こいつらはアゴ割れMとパパラッチK。
実は彼らは、集合時間よりかなり早く来てしまったために仮眠をとっているのだ。
やがてアゴ割れMの死体が突然動き出した。
なんとこの男つい数時間前まで会社の飲み会だったらしく、二次会・三次会とアホほど飲み倒して来たらしい。
まだ京都にすら着いていないのに、早くも二日酔いで虫の息。
この状況でこれから山の中を20km走ろうと言うのだから、さすがは絶倫男と言わざるを得ない。
やがてゲリMも合流して大移動。
そしてついに伝統ある京都の地に、マゾに汚れた男達が降り立った。
心強いトレラン仲間達を手に入れ、僕も気合い十分。
京都の町中のコインパーキングで、渋く乳首にワセリンを塗って臨戦態勢。
人一倍乳首の摩擦に弱いモチ肌敏感男としては、乳首問題は死活問題。
しかし腹回りの筋肉だけは誰にも負けない。
そして比叡ケーブル八瀬駅から、スタート地点目指して動き出す4匹のマゾ。
僕もTシャツの上に黒ブラジャーを装着した変態スタイルで、早くも気が高ぶっている。
そしてそのケーブル内では、各々がウォーミングマゾアップに余念がない。
誰よりも三半規管が弱い僕は、ケーブルと景色の傾斜のずれで激しい頭痛と吐き気に襲われ始め、
ゲリMはリザーバーの水を豪快に己の股間にこぼし、
アゴ割れMは公然わいせつ罪スレスレの顔でリザーバーの水をチュウチュウし、
パパラッチKはクールな表情で「ケーブルの中の音楽がスピッツとは意外ですね」と言いながら、
自分の持っているiPhoneのスピーカーから、大音量でスピッツが流れている事に気づいていなかったというまさか。
そもそも神聖な比叡山に向かうケーブルの中で、陽気にスピッツの音楽が流れている時点で異変に気づくべきだったろう。
このように、早くも男達の勢いが止まらない。
そんなやる気に満ちた男達は、やがてスタート地点で「出発の儀式」の為の準備を開始。
まるで家族に対する反省文でも書かされているように見えるがさにあらず。
前回も僕が挑んだ「かわらけ投げ」にて、願いを成就させて華々しくスタートさせようという試み。
このようにかわらけに願いを書き込み、
僕は往年の高津臣吾のようなサイドスローで、エイヤッと輪に向かってかわらけを投げる。
もちろん悲願の「嫁がやさしくなりますように」は、明後日の方向へと消えて行った。
その後も続々と願いを投じる男達。
誰か一人でも輪をくぐれば、本日のトレランもいい結果となるだろう。
しかしその結果は、遠くを見つめるアゴ割れMのこの後ろ姿が全てを物語っている。
ちなみに彼の願い事は「酒癖がなおりますように」である。
こうして無事に出発の儀式を終えた4匹は、改めて北山東部コース一個目の標識の前で出発記念撮影。
いよいよここから20kmに及ぶ、長い戦いが始まる。
もちろんスタート直後なので、皆の表情はまだ明るい。
序盤は実にほのぼのとした立ち上がり。
京都の山らしく、雅に咲き誇った花を愛でながらのウォームアップランだ。
かつてチーム・マサカズの辞書には「晴れ」と「お花」という言葉は掲載されていなかったが、この日は素晴らしい快晴でお花も綺麗。
そんな美しい世界にたれてしまった4滴の汚れた墨汁。
周りの景色が美しいほどに、彼らの醜さはひと際際立つ。
そんな中でも最も手がつけられないのがアゴ割れM。
数時間前まで二日酔いで死んでいたはずの男だが、早くも精力が溢れかえって己の勢いを制御できない。
気づいたときにはご覧の有様で山中を駆け回っている。
彼はこう見えて40歳。
しかし彼のホルモン年齢は20歳。
もはやその行き過ぎた絶倫がスパークし、アゴ割れMは我々の制止もきかずに空中乱舞を繰り返す。
まるでAボタンがいかれた実写板スーパーマリオのように、彼のジャンプが止まらない。
このままでは空中にある隠れブロックに当たって、スターが出て来てさらに彼がパワーアップしてしまう。
そんな事になったらもう誰も奴を止める事が出来なくなる。
まだスタート間もないと言うのに、早くもホルモンジャンプマンにペースをかき乱されるご一行。
それでもそのホルモンに必死で食らいつき、一丸となって無駄なハイペースで体力を消耗させて行く。
徐々に一体感を増して行くトレラン部員たち。
やがて大きな三本杉の下で「フュージョン!」と唱えたかと思うと、
ついに一体化し過ぎてアシュラマゾへと進化。
「かーっかっかっか」という野太い笑い声が比叡山にこだまする。
このような無駄な茶番行為の繰り返しにより、実はスタートからまるで進んでいなかったりする。
しかもこの局面で、あの男がクールに動いた。
なんとパパラッチKが、クールに「どうやら途中でiPhone落としちゃったみたいです。」と言い出すではないか。
こんな所でも彼の仕込み系マゾが炸裂。
これにて彼はせっかくここまで走って来た道を、またしても戻ってiPhoneを探しに行くという追いマゾ行為を開始したのだ。
そしてこの三本杉にて、取り残されて待ちぼうけを食らうアシュラマゾの残骸たち。
はるばる京都までトレイルランニングをしに来たはずが、もはやただの「トレイルひなたぼっこ」といった痛々しい情景へ。
そして、待てど暮らせどパパラッチKからの携帯発見の知らせが来ない。
やがて「20kmどころか、まさかこの2km地点で早くも敗退なのか?」といったムードが蔓延し始めた頃、僕が退屈しのぎで見ていたFacebookの中に突破口を発見。
なんとパパラッチKのランニングアプリが「私をフォローしてください」というコメントとともに、ランニングの軌跡を実況しているではないか。
私をフォローどころか、当の本人が己のiPhoneをフォロー出来ていないというまさか。
だが、これにて本人より先に我々がiPhoneの落ちている現在地を発見。
早速休養十分なホルモンマリオが、その情報を頼りにBダッシュで元来た道を戻って行く。
やがてランニングアプリが示した通りの場所で、iPhoneを拾ってくれてたおばちゃんから無事に奪還成功。
もはやゴールしたかのような達成感に包まれる「2km地点の男たち」。
先に進むどころか、マイナスの方向に戻り続る不思議なトレラン風景。
やがてヨロヨロと戻って来たパパラッチK。
まるでゴール手前の力を出し切った選手のような疲弊っぷり。
そして彼はiPhoneを受け取るなり、クールに土下座をかました。
こうして彼らの追いマゾ遊戯は終了。
この時点で、もうすでにスタート時に出会ったハイキングのシニアにすら随分と先を越されてしまったトレラン部。
まさかを楽しむのも良いが、いい加減先に進まないとリアルに日が暮れてしまう。
大急ぎで先を急ぐメンバーたち。
と、言いながらもこのトンネルでテイク3までこだわったシルエット写真を撮ったりする無駄な行為。
さらには地蔵ポイントでも余計な事をして先に進まない。
どうしても京都の雅さが、美に敏感な我々を足止めして来るのだ。
このままでは我々はトレラン部ではなく、ただの浮かれたハイキングのおじさん達になってしまう。
そこで一発気合いを入れ直し、やっとトレイルランナーっぽい感じで突き進む。
グッへグッへと登りきると、やがて「玉体杉」に到達。
「ハァハァ」と息の荒い男どもが、玉体を女体と勘違いして群がって行く。
そしてここでそんな疲労にまみれた男達に対し、突然さらなる大急登が登場。
ゲリMもすっかり疲弊して、「30分の格闘の末にトイレから出て来たゲリ野郎」のようなうつろな表情になって登って来る。
しかし必死で失った時間を挽回しようと頑張るトレラン部員達。
ついに這いずりながらも、横高山(767m)の山頂に見事到達だ。
さあ、大分時間を巻いたぞ。
そして「いやあ、がんばった」「つかれたつかれた」と言って、腰を落ち着かせて大休憩を始める本末転倒男たち。
そしてこうしている間に、再びシニアハイカーに追い抜かれて行くという失態。
皆の心の中に「これは歩いた方が結果的に速いんじゃないのか?」といった思いが渦巻く、現代版ウサギと亀状態に。
それでも負けじと動き出す汚れたウサギ達。
アゴ割れMによる狂言演目「ホルモンの舞」が行われたかと思うと、
これによりトレラン部員達にホルモンパワーが注入。
やがて元気が出たメンバーは、一気呵成に山中を走り抜けて行った。
だがここで気づいただろうか?
約一名、若干動きに精彩を欠いていると言う事に。
実はパパラッチKがこの時点でヒザをやられていた事が発覚。
しかもあの「iPhone騒動の時」という随分と早い段階ですでに痛めていたというまさか。
やむなくテーピングでヒザを固定し、痛み止めの薬を飲んでまで試合を続行すると言ったスペクタクルな展開に。
膝を痛めた幽霊部員ジョンボーAの敵討ちとばかりに挑んだ戦いで、まさにミイラ取りがミイラになるといった事態に。
進んだ距離は少ないが、悲壮感だけは100マイルレースに匹敵する痛々しさ。
それでも何とか次の急登を登りきり、
京都トレイルの最高地点「水井山(794.1m)」に到達。
しかしここで死んでしまったのはヒザ痛のパパラッチKではなく、なぜかあのマゾ男。
ここに来て彼の持ち味である、重い腰痛が反乱の狼煙を上げたのだ。
次々と現れる犠牲者。
ちなみに珍しく快晴が続いているが、このコースは全く展望がないのでただ暑いだけだったりする。
しかしそんな手負いのマゾ達だが、己の気持ちを奮い立たせてさらに先に突き進んで行く。
そんな状態だが、このようなグッドトレイルが続いて行けば気分は非常に良い。
そして気分が上がると、再び悪い虫が現れて余計な事を始める男達。
ついに4人での無駄な己撮りを始め出したのだ。
これがいけなかった。
この何の生産性もない不毛なジャンプで、ついにあの絶倫男のホルモンに異常が勃発。
登りでは精力無制限のホルモンだったが、こと下りとなると古傷のヒザに負担がのしかかる。
そのヒザが、この度重なる下りと余計なジャンプのせいで爆発したのだ。
で、結局この男もテーピングで固定して急場を凌ぐといった状況へ。
怪我に苦しむ角番大関霧島のような痛々しさ。
今思えば、前半の無駄なホルモンジャンプが懐かしい。
しかしこれこそチーム・マサカズのトレラン部。
普通に走ればいいんだが、あくまでも我々は無駄なマゾをかましたトレランの中にこそ「真の雅」が潜んでいると信じて疑わないのである。
やがて我々は、柵にぶち当たったかと思うと、
突然、穏やかな大原の里に抜け出たのである。
久しぶりの里の風景にホッとする男達。
しかし油断は事故の元なので、横断歩道はしっかりと旗を持って横断だ。
どんどん絵的にトレイルランナーから遠ざかって行く気がしてならない。
しかも4人中3人が負傷している事により、もはや彼らは走ってすらいない。
なんだかこののんびりした空気感にすっかり飲み込まれて、誰も「走ろうぜ」などと言い出さない。
一休さん的に言えば「慌てない慌てない。一休み一休み。」といった場面。
前方を見れば、トレランの我々とずっと抜きつ抜かれつを繰り返す「ハイキングの人」の姿。
もうすっかり戦意喪失のトレイルランナー達は、もうそのハイカーに追いつく事も出来ずに悠然と歩いている。
果たしてこれはトレイルランニングと言っていいものなんだろうか?
どう見ても「歩け歩け大会」の参加者にしか見えない。
しまいにはすっかり座り込んで、
ジュースで乾杯し始めるトレイルウォーカー達。
たまたま田舎だったからいいものを、この場所に居酒屋があったらそのままそこがゴール地点となっていた事だろう。
その後も彼らの健康ウォーキングは続く。
しかしさすがにこのままでは恥ずかしすぎる。
鞍馬までの最後の急登「薬王坂」にさしかかった所で、やっと重い腰を上げて走り出す男達。
さっきまでの平地区間で走ればいいものを、なぜかイバラの道を選択してしまうトレラン部。
ペース配分からスパートのかけ所に至るまで、全てが狂ってしまっている。
しかし登りとなると人が変わるアゴ割れMは、とても怪我人とは思えないスピードで坂を駆け上がって行く。
やがて誰も彼のホルモンに追いつく事が出来ず、見どころ記念写真ではついにアゴ割れの姿は無い。
それでもこの薬王坂を必死で駆け上がるトレラン部。
何気にゴール予定だった15時を越えてしまい、やっとこさ本気で走り出す。
しかし重傷のパパラッチKは、もはや歩く事が精一杯の痛々しい姿。
これが24時間マラソンだったなら、お茶の間の涙を誘う名場面。
しかし前の3名は「走っては止まってパパラッチ待ち」を繰り返す事で、走ってるけど結果的にそのタイムはハイキングよりも遅いスピード。
やがて薬王坂を降りきる頃には、パパラッチ待ちもこんな事に。
溢れかえる精力のせいで、普通にパパラッチ待ちができないアゴ割れMがブランコでホルモンを落ち着かせている。
何度も言うが、これは一応トレイルランニングである。
やがてヘロヘロと鞍馬の門前に到達。
ここで彼らは、まだ戦いの最中だと言うのに迷わず「そば屋」へ直行。
もうこれがレースだったら、立派な棄権選手達だ。
しかし言ってみれば、ここは我々にとってのエイドステーション。
正直もう腹が減り過ぎてやる気を維持できないのだ。
で、このそば屋に入るなり、アゴ割れMが店員さんと間違えて客の中国人女性に話しかけるというまさかも炸裂。
ヒザだけでなく、視覚にまで影響が出て危険な状態のようだ。
そしてアゴ割れMがそばを食い終わっても、ゲリMは注文したそうめんがいつまで出て来なくてうなだれている。
やがてやっとそうめんが来たが、ウズラの卵がうまく割れずにイラつくゲリM。
たとえそば屋の中だろうと、彼らの戦いは続いているのだ。
そしてこのエイドステーションで英気を養った我々は、よせばいいのに本来のコースから離れた鞍馬寺に向けて「せっかく来たんだから」と言って動き出す。
もちろん食後の低いテンションの彼らは、誰一人走ってはいない。
でもこの鞍馬寺への道は思いの外な急勾配で、歩いているだけでもグハグハ言ってしまう場所。
それでも拝観料200円を払ってしまった手前、引くに引けない男達。
なんとかトボトボ歩いて、大杉の前で記念撮影。
もはや、やたらとスポーティーな恰好のただの観光客である。
しかしトレイルランナーとしてのプライドなのか、アゴ割れMだけは非常に凛々しい表情でいきり立っている。
何やらただ立っているだけなのに公然わいせつ的な雰囲気が出てしまうあたり、彼の絶倫さが伺える。
40歳になっても、まだまだ彼は走るマカ王である。
しかし、かつて牛若丸が修行したこの鞍馬寺。
もう廃人間近の我々に対し、過剰な階段修行のおもてなしが止まらないのである。
どこまでも続く階段修行。
もはや腰の曲がったおばあちゃんとデッドヒートを繰り広げてしまうほどのスピード。
もう終わっただろうと思って角を曲がるとまた階段。
一体我々は、わざわざ200円払ってまで何をしているのか?
マゾにマゾを重ねていくチーム・マサカズトレラン部。
自然と皆の顔もほころんで行く。
やがてやっと階段から解放されて鞍馬寺に到達。
正直今日のコースの中で、観光客に混じって登ったこの鞍馬寺が一番ハードだった気がする。
アゴ割れMも万感の思いで線香に火をつけ、
イボ痔治癒祈願。
すると彼のケツから美しい花が咲いた。
ゲリMも「ほぅ〜」と言った表情で感動している。
などということをしていたら、まだ先に「奥の院」があるとの事でさらなる階段地獄へ。
誰彼ともなく「もう..いいよ…」という言葉もちらほらと。
やがてせっかく登った階段の先には、ヒザ痛男達には嬉しい下り階段地獄。
さすがに限界の先の世界の住人と化したパパラッチKには、ここで杖替わりに僕のポールを渡してみた。
しかし、もはやその姿は「盲目の男」と言った状態で、さらに悲壮感がアップ。
ついに京都山中で発見された盲目のトレイルランナー。
そのカクカクとした動きが、より盲目度を加速させる。
スタート直後から足を痛めてここまで持たせて来た挙げ句、ついにその視力まで失ったパパラッチK。
頑にリタイヤしない彼は、ある意味すごい男なのかもしれない。
やがてやっと奥の院が出て来たが、ほとんどスルー。
なんせ、もうすっかり日が暮れかかって来ているからのんびりはしてられない。
責任を感じてしまったパパラッチKは「もう僕を置いて行って下で待ってて下さい」と切ないコメント。
しかし先に行こうにも、抜かしてくれない観光客が立ちはだかってじりじりとした牛歩下山が続いて行く。
やきもきしながらもなんとか下山し、貴船の川床で有名な場所に到達。
そして遅れて盲目パパラッチもなんとか生還し、
みんなで無事に貴船神社まで辿り着くことに成功した。
ゴールは近づいて来たが、もういよいよみんなの限界も近い。
だがよせばいいのに、またしても進んで階段地獄に突入していく春のマゾども。
なんだか山を走ると言うより、ひたすら階段を走っていて気分はすっかり野球部員。
ある意味部活動らしい光景だ。
そしてわざわざ追加階段を楽しんだのには訳がある。
それはこの貴船神社名物の「水占みくじ」で今後の吉兆を占う為。
このように水に用紙を浮かべると、その紙の中に結果が浮かび上がるというもの。
しかしはるばるやって来たのは良いが、みんな小吉や中吉と言った中途半端なものばかり。
僕に至っては、このブログ上絶対やってはいけない大吉を出してしまう始末。
ゆえにここでの出来事は全て割愛。
この残念な結果に、言い出しっぺのゲリMも首をかしげて微妙な表情。
これにて全ての見どころを制覇。
そのままこの奇抜な恰好をした観光客達は、とぼとぼとゴール目指して再びウォーキング開始。
本来のコースから逸れた場所なので、ひたすら味気ない県道沿いを歩き続ける。
この車とすれすれの不快な道だが、これがまた意外なほどに長いのである。
本来は力を出し切ったゴール手前の感動的な局面なのに、男達は普通に談笑しながら県道を歩いている。
そしてそんな我々の横を、「本物のトレイルランナー」の人が颯爽と追い抜いて行った。
もはや悔しさすら浮かんで来ないほどの圧倒的な敗北感。
しかしこのハイキングスタイルこそ、我々のトレイルランニング。
あくまでも汗水たらさず、トレンディーに京都を闊歩するのが我らのトレランなのである。
そして世間話が盛り上がって来た頃。
唐突にゴールの標識が現れてしまい、キョトンとする男達。
出会い頭のゴールほど無感動なものは無い。
しかも記念写真を撮ろうにも、車が横行する県道脇にある為三脚も立てられない。
これではあまりにもフィニッシュとして哀しすぎるじゃない。
と言う事で、次の北山西部コースの1個目の標識をゴールにする事に。
しかしその感動のゴール手前で、この戦いの中で最大の敵が我々の前に立ちはだかった。
橋、通行禁止のカラーコーン、立て札。
この光景どこかで見た事がある。
標識を見れば「橋通行止め。事故が起きても責任は負いません。」と書いてあるではないか。
ここは京都。
そうまさに今我々の前に、あの一休さん伝説の「この橋わたるべからず」が展開しているではないか。
しかもこの橋を渡った所に我らのゴールの標識が見える。
まさか最後の最後で、このようなとんち攻撃に合うとは思ってもいなかった歩け歩け大会の男達。
しかしこんなものは所詮、桔梗屋さんが仕組んだただのとんちだ。
堂々と真ん中を歩いて行けば良いだけの事。
とりあえず、たとえ橋が崩落しても無傷で済みそうな男から先に行かせてみる。
まるで夜ばいに忍び込んだ村男のような忍び足。
当たり前だが、さすがの彼もここではホルモンジャンプを炸裂させる事は無く無事に渡りきった。
続いてパパラッチKがクールに渡って行く。
しかし若干動きがロボットのようにカクカクしている。
思えば彼は2km地点で膝を痛めて以来、その後の18kmを走り抜いた(歩き抜いた)のは称賛に値するガッツ。
まあ神聖な比叡山のケーブルで大音量スピッツをかましてしまった報いだったんだろう。
そしてゲリMも、トイレに一直線で向かうゲリ野郎のように颯爽と渡って行く。
結局今回の長い戦いで、唯一負傷もせずにやり抜いたのは彼一人。
かつての即バテ王も、やはり特訓の成果が出て比較的余裕な感じで最後までやり抜いた。
しかし全てを無難にこなしてしまったがために、ブログ上は非常に存在感の薄い男となってしまった。
このブログでは無難な男は取り上げられず、大きなミスを犯した者を徹底的に追及して行くという手法。
次回こそは彼の美しいゲリ顔をお送りしたい所である。
そして最後にチーム一のネガティブ思考男が、頭の中を「崩落死」で一杯にさせながらビクビクと渡って来る。
かつて周囲から変態扱いを受けながらも孤独なトレランを続けて来た男。
しかしこの度素晴らしい仲間達に恵まれて、この京都でナイスウォーキングを果たせて感無量。
トレランと言うよりただの軽装ハイキングとなったわけだが、一応これで京都一周トレイルの2コースを制覇だ。
先に橋を渡った男達に迎えられるマゾ男。
そして4人は静かに最後の標識に向かう。
ついに来た感動の瞬間。
京都トレイル、北山東部コース+鞍馬寺の20km。
今。
完歩です!
もの凄い達成感に満ちあふれているが、彼らの息はひとつも切れていない。
今シーズン、最も情けない写真である。
そして「おつかれー」と言って、再び二ノ瀬駅目指してトボトボ歩き出す。
だが駅に向かう道。
最後の追い打ち階段が登場。
誰彼ともなく「もういいよ」「かんべんしてよ」「いい加減京都から出させてくれよ」と言った歓喜の言葉が漏れてしまう。
この時点で本来のゴール予定から2時間半遅れの「17時半」。
カラスの鳴き声に追い立てられるように電車に乗る男達。
京都は夕暮れに包まれ始めていた。
で、その後この男達は駐車場に戻る途中、最後の京都の見どころ「餃子の王将」を発見。
そこでしっかりと脂ギッシュな食べ物を摂取し、本日せっかく失ったカロリーを取り戻す。
これにて真の北山東部コース完走。
男達はただただ情けない気持ちと、ヒザの痛みをお土産に帰って行った。
ちなみに、パパラッチKに対して「今後もトレランを続けるか?」と問うてみた所、彼はクールにニヤリとしただけだった。
今後もチーム・マサカズトレラン部は常に存亡の危機にさらされ続けるのである。
それでは、長々とおっさんたちの陽気なハイキングの記録を読んでくれてありがとうございます。
結局我々はこれを「完走」と呼んでいいものでしょうか?
そもそもこれは「トレイルランニング」だったのでしょうか?
走るも走らないも、
その答えを決めるのは
そう
あなた次第です。
京都トレイルウォーキング 〜完〜
京都一周トレイルラン〜北山東部コース〜
- 京都一周トレイル/京都
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