今回は前回の記事(四国なアイツ〜仁淀川編〜)の続きで、一回目の四国カヌー行脚の後編「四万十川編」です。
初カヌー体験から数年が経っており、それ以来の四万十川だった。
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あの後、前日のロングマゾドライブや雨中のロングマゾカヌーツーリングでさすがにグッタリしていたので、四万十川ユースホステルに泊まった。
首つり用のヒモみたいな入口が画期的なユースホステル。
見た目、山賊の要塞のように見えるが、結構いい感じだったと記憶している。
昨日は暗くて見えなかった四万十川が、朝の神々しい姿を見せ始めていた。
やはり四万十川も増水し、濁っている。
でもどうやら、今日は天気は良さそうだ。
どこからスタートしたっけな?
多分江川崎からかな。
当時は随分酒飲みだったから、旅の相棒は地元の酒がお供だった。
これは中村の地酒「藤娘」ですな。
当時は「パドルは忘れても酒を忘れるな」という、勝手に僕が作った掟を堅守していた。
漕ぎ出しから、水量豊富で滔々と流れる四万十川。
増水気味なんで、結構なスピードが出るが悪質な場所も無いからとても気持ちいい。
風景はのんびりとしていて、気持ちも穏やかになって行く。
僕の四万十川の印象は、決して清流ではない。
でも、なにか他の川とは違う「懐の深さ」を感じる。
その懐の深さは、往年の貴ノ浪を彷彿とさせる。
川が濁っている事を除けば、相当に気持ちいい。
ツーリングリバーとして、晴れた日の四万十川に勝る川はやはり無いだろう。
時折現れる「沈下橋」がさらに雰囲気を高めてくれる。
古き良き日本の風景だ。
気持ち良さそうな場所があったら上陸して、周辺の村落を見て回ったりする。
沈下橋を渡って集落へ。
昔ながらの「正しい神社」の姿等を愛おしい気持ちで眺める。
今にも昭和な子供達が現れ、じゃんけんグリコでも始まりそうな雰囲気だ。
気分良く日本の原風景を眺めて、再び川の上の人となる。
ただただ、のんびりと流されて行く。
この川では僕はほとんど漕がない。
カヌーの上に寝そべったり、タバコをくゆらせたり、お酒飲んだり、鼻歌歌ったり、あくびしたり。
なーんにも考えない。
これぞ、カヌーツーリングの王道スタイル。
ブルー・スリー風に言えば「Don’t Think. Feeeeel.」。
最高の時間。
初日のゴール、口屋内の沈下橋に到着。
本日はここでテント泊。
ビールの調達をしに、口屋内の集落へ向かう。
沈下橋から川を見ると、その水量の豊富さが伺える。
買い物前に支流の黒尊川を見に行った。
野田さんの本では、黒尊川は普段は浅いが増水時は最高のツーリングスポットになるそうだ。
さすが、あれだけ雨が降った後でもこの透明度。
この川は2回目の四国カヌー行脚の時に下る事になる。
集落に戻ってお買い物。
写真は宮崎商店だが、僕が行ったのは「竹内商店」。
ここのおばあちゃんがとてもいい感じの人。
川向いに有志によって建てられた共同風呂があるんだけど、そこの鍵を管理しているのがこのおばあちゃんだ。
風呂の場所を聞いたら、おもむろに商品を床にばらまき説明を始める。
「えいか。このチョコがここだとして、沈下橋渡ってこのパンが学校や。そんでこの煎餅が風呂だ。」
商品で、なおかつ食べ物なのに床で説明するとは。
実に豪快で好感の持てるおばあちゃんだ。
店内を見ると、実に歴史を感じるアイスクリーム等が売っていた。
賞味期限とか細かい事は気にしちゃダメなんです。
ここで野田知佑さんのサイン入りのエビ鉄砲があったので購入した。
川エビを銛の付いた鉄砲みたいなやつで、パシュッと突く物だ。
手作り感たっぷりの、これぞ四万十土産。
野田さんのサインに感激していたら、おばあちゃんが信じられない発言をして来た。
「ああ、野田さんなら今日来とるで。そこの舟母(せんば)さんに泊まっとるよ。」
皆さんにこの時の僕の感激がお分かりになるだろうか?
僕の人生を180度変えてしまった、憧れ続けている男がすぐそこにいると言うのだ。
敬虔なクリスチャンに向かって、「ああ、神様ならそこにおるで」と言ったらどうだろうか?
そう、まさに僕にとっては神様なんです。
早速、おばあちゃんにうまいこと色紙とペンを買わされ、「サイン貰って来なされ」と送り出される。
恐る恐る舟母に入って行く僕。
そもそもこの「舟母」自体が、野田さんの本によく出て来ていたから感激なんだ。
気分は上京したての藤子不二雄が、トキワ荘の手塚治虫を訪問した時のように緊張していた。
そして宿の人に、
「あのう、川を下って来た通りすがりの者ですが。こちらに野田さんがいるって竹内のおばちゃんに聞きまして。ご迷惑じゃなければ、サインの一つでも頂ければと…。」
すると宿の人が「どうぞ、どうぞ。上がって行きな。」と凄く親切に案内してくれた。
そしてついに僕は神様と対面した。
野田さんはすごく物腰の柔らかな人で、まるでインディアンの酋長とでも話しているかのような威厳に満ちていた。
宿の人が、ライフジャケットとかにもサインしてもらいなよって言うんで、猛ダッシュで川原に戻ってライフジャケットを取って来てサインしてもらった。
この時のライフジャケットは今でも大切に使用している。
サインが終わると、おもむろに野田さんが僕に言って来た。
「メシ、食べて行きなさい。」
これは夢なのか。感激で全身が震える。
結局僕は泊まり客でもないのに、野田さん達の夕食にご一緒させてもらった。
野田さんとマネージャーの人、舟母の人と、撮影で同行していたテレビ朝日のプロデューサーの人と鍋を囲んだ。
四国らしさが全開で、がんがんと焼酎が消費されて行く。
僕はタダメシな上に、タダで酒を浴びるように飲んだ。
もうタダタダ夢の中。
やがて野田さんは寝ると言って2階へ。
その後も僕はみんなと飲み続けた。
次第に仕事の話になって来て、酔いも手伝って僕は悩みをこぼし出していた。
デザインの仕事で、「商業デザイン」の壁にぶち当たっていた時期だった。
そしてプロデューサーの人が、業界人らしい厳しい視点で僕を非難する。
とても親身に、とても厳しく。
悔しかったけど、全てが的を得ていた。
気づけば僕は号泣していた。
宿の夫婦は僕を励まし、プロデューサーの人は僕にムチを入れる。
泣いてはいたが、とても清々しい夜だった。
僕にもこんな青春時代があったんだね。
四万十川は「最後の清流」などと持ち上げられ、多くの観光客が川の上辺だけを見て帰って行く。
でもこの川の本当の魅力は、川に関わる「人」にこそあるんだと思った夜。
テントに帰る時、マネージャーさんが犬の散歩をしていた。
アレックスとハナだ。
もちろん元祖カヌー犬のガクには会えないが、この2頭に会えた事も感激だった。
僕は千鳥足で、川向いの共同風呂に向かった。
鍵を開けて入ると、畳がしいてあったからちょっとゴロンとした。
激しく酩酊していた僕は、なんとそのままそこで眠ってしまった。(絶対に真似しないように)
こうして、素晴らしすぎる四万十川の一日が終わった。
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翌日お風呂場で起床。
酷い二日酔いだ。
写真では分かりにくいが、号泣した事もあってまぶたが試合後のボクサーのようにぼってりしていた。
竹内のおばちゃんに鍵を返しに、沈下橋を渡って集落へ向かう。
すると地元の小学生達とすれ違い、凄く元気良く「おはようございます!」と言って来た。
見ず知らずの僕に対して、何のてらいも無い。
こんなに気持ちのいい挨拶をされたのは初めてだった。
やはり良い環境で育つと、子供は素直に育つんだなと感心する。
やがて2日目、出発。
しばらく進むと、別の場所に移動していた野田さん達が道の上で手を振っている。
なんだかまた泣きそうになる。
しばらくは頑張って漕いでいたけど、いよいよ二日酔いが気持ち悪くなって上陸&ゲロ。
ぐったりとうなだれる。
いい事ばかりは起こらない。
やがて四万十川のツーリングが終わる。
僕の心に強烈にしみ込んだ旅だった。
やっぱり四万十川は、カヌー野郎の聖地だわ。
そして僕はまた、長い時間をかけて帰って行った。
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以上、最初のカヌー四国一人旅。
僕の中で、かなりの輝きを放つ旅だった。
次回は翌年2005年のGWの2度目の四国カヌー行脚の模様です。
海部川、四万十川、黒尊川、穴吹川の贅沢川ハシゴです。
いかん、これ書いてたらまた四国行きたくなって来たな。
もういっそ移住してしまいたい。
神と私の酩酊ナイト〜四万十川編〜
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MATATABI BASE
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憧れの人に、しかも聖地でってすごい!
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まさしく。
後楽園ホールでアントニオ猪木に出くわす用なもんです。
しかもメシまで一緒に食って。
次の四万十もそうなんだけど、とにかく人がよろしいのです。
やっぱり、いい川を向いて育った人達は、良い人が多いです。
単独行なら、よりその恩恵にあずかれますよ。
おすすめです!
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良い経験しましたね~ ウラヤマシイ(**)
所で、穴吹川のレポート楽しみにしています。
実は僕、穴吹町出身、吉野川と穴吹川の合流部の川沿いに
実家がありまして幼い頃、夏の日は毎日川で遊んでました。
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なんという羨ましい幼少時代。
僕の中で穴吹川はカヌーで下れる川の中で、1、2を争う最高の清流です。
熊野川の支流の赤木川と、この穴吹川は何度でも訪れたい大切な場所になっています。
まさに現地に行った時、ここに自分の家があったらなあなんて思いながら合流部の家々を見ていたのを思い出します。
つんのこさんの実家を眺める怪しい男がいたとしたらそれは僕です。
また追々アップして行きますんで、見てやって下さいね。
きっと思い出のあんな場所、こんな場所が出てくるかもです。
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過去記事にすいません。
本当にすごい偶然ですね!
今年の夏は「yukonさんよっぽど遊びの計画立てたな」ってぐらい雨が多かったですね。
どの旅もたいてい天気に恵まれないことが多いけど、こんな超スペシャルな出逢いもあったんですね!
それにしてもyukonさん細ーい(笑)
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りんくさん、どうもです!
やっぱり野田さんの影響でカヌー始めた身としては夢のようなひと時でした。
なんか自分が本の中に入り込んでしまったかのようないかにもなシチュエーションでしたからね。
まあこんだけ遊び回ってりゃいつかは遭遇しますよね、狭い世界ですから。
この当時は確かに顔がシュッとしてますね。
まあ実はこう見えてお腹は当時からかなりなもんでしたけど。
今は当時よりがっつり運動してるのに、やはりもうどうしようもないみたいです…。
そして今年の夏に関しては本当に日本の皆様にご迷惑をおかけ致しました。
去年のように外出禁止令出てた時は本当にみんな快晴の行楽を楽しんでましたからね。
その分、今年は僕が浮かれて計画を立て過ぎたあまりにこんなことに…。
ブログには出てないだけで、散々計画して雨天中止ってパターンがほとんどでした。
ほんと、この能力、何か人の役に立てれないものですかね。